知恵が可能にする「6次産業化」

地方の活性化に絡む仕事が最近幾つか続いているためもあり、小生は1次産業の「6次産業化」というものには強い関心を持っている。知人にもその関係で頑張っている人が何人もいる。そんな折り、テレ東の「カンブリア宮殿」で2人の若き「6次産業化コ-ディネータ」とでもいうべき人が紹介されていた。7月13日放送の『感動があって稼げる!農漁業の若き開拓者たち』だ。
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2017/0713/

山口県・萩市で巻き網漁業を営む「萩大島船団丸」(漁師20人)の代表、坪内知佳氏(31)。CAの夢破れて結婚を機に萩に移住、離婚後シングルマザーとしてコンサルタントになり、客に引っ張り込まれてこの事業に入ったという。漁業は未経験という異業種の参入者。しかし持ち前の行動力で全国でも珍しい漁師の直販ビジネスに成功(対料理店、対消費者とも)。“水産維新”を掲げて売り上げを大きく伸ばしていることが紹介されていた。

神奈川県・藤沢市の養豚業、宮治勇輔氏(39)は、慶應義塾大学卒業後、父の家業を受け継いだ。当初は “名もなき農家”だったが、父親が作る美味しい豚肉をブランディングした「みやじ豚」をスタート。常識破りの手法で直販を実現し、今やスーパーでも指名買いされ、年商を7倍にまで引き上げたという。

両者とも新しい発想を携えて、従来方式に固執する周りを巻き込みながら変えていったこと、そして漁協や農協といった既存流通側と単純に敵対するのではなく、うまく共存共栄を図っている。それもさることながらやはり直販により大きく収益とも伸ばしていることがすごい。工夫次第で6次産業化が可能なことを教えてくれる。
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ダボハゼ型の「機会主義」はリソースの無駄使い

オーナーがつい飛びついてしまった新規事業が貴重なリソースを食い潰して赤字を垂れ流す。世間には少なくない話だ。しかし不調な本業を中途半端に見放して青い鳥を探すというのがその動機の場合、事は重大で本末顚倒に過ぎる。


「新規事業を考えているのだけど…」という相談希望に応じて訪ねていき、すぐにコンサル契約をすることは滅多にない。経営者や事業責任者に背景事情をあれこれと尋ねた上で、どうしたいのかを併せて確認する。実際のところ、何割かのケースでは結局、「これは考え直したほうがいいですよ」と中止することを薦めることになる。

中小企業での典型例は、オーナーが知人からの儲け話、または記事やセミナーなどで「これが世のトレンド!」「間違いなく儲かる」といった情報につい乗ってしまった場合だ(大企業の場合には全く違うプロセスを経て新規事業が検討されるが、それでも調査の結果、「止めときましょう」となることが時折ある)。

大抵は、本業はそこそこ儲かってはいるが少しずつ競合が激しくなり利益が出にくくなっている事情があり、何とか他の事業での柱を確立したいという焦りが経営者に強くある。そのため隣の芝生が青く見えるのだ。

そういう中小企業オーナーや起業家の場合、同じような事情で手を出したまま開花していない新規事業が他にも2つ3つあったりする。これを小生は「ダボハゼ型経営」とか、あるいはもっと上品に「機会主義」と呼んでいる。当然、キャッシュフローと赤字を垂れ流しているし、人材や資金、経営者の時間という貴重なリソースの無駄使いだ。

中には、新規事業に人をアサインしたが、本格投資にはあまりに巨額の投資が必要と分かり、調査ステータスのままずっと継続している例さえ目にしたこともある(もちろん小生は調査打ち切りと、そこに携わっていた人材を本業立て直しに投入することを強く薦めた)。

不思議なことにニッポンの中小企業経営者には、本業がレッドオーシャン化しても全く対処しない人たちと、レッドオーシャン化したことに大慌てして他の場所を探すことに大わらわになる人たちが少なくないようだ。

レッドオーシャン化したはずの本業にも、よく考えてみると様々な切り口で(例えばセグメントを切り直す、隣接市場に展開する、新カテゴリーを創造する、競合や関連事業者と戦略提携する、等々)競争力アップの可能性はあるし、本業を再定義して立て直す(ビジネスモデルを変える等)手もあり得る。

今まで長い間成り立っていた事業であれば、顧客ニーズがあって市場が成立しているということだ。これがどんなに素敵なことか、日々新規事業に取り組む我々には身に沁みている。知識もスキルもノウハウも不足する新規事業より、ましてや世の中にまだ確立していない純粋な新規事業より、本業の立て直しのほうがよほど成功の確率は高いはずだ。

したがってまずは本業を立て直すことに全力を注ぐべきだというのが、新規事業コンサルを主に手掛ける立場ながら小生の見解だ(昔の著書『フォーカス喪失の罠』でもしつこく指摘していた)。

本業はそれなりにしっかりとしているが、そこで得た技術や知見、ネットワークを生かして別の切り口で新事業を生み出したいという前向きな話なら、ご相談はいつでも歓迎だ。

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アニメ業界はブラック産業のまま

ずっと前だが、知人がアニメ制作会社を子会社に持つ企業のコンサルをする際に相談され、その実態を聞いたことがある。その時はあまりの低い賃金と生産性に呆れたのだが、結局は深くタッチしなかった。ところが最近、その実態がほとんど変わっていないことを知らされ、暗澹たる気分になってしまった。

それが「クローズアップ現代プラス」で6月7日(水)に放送された「2兆円↑アニメ産業 加速する“ブラック労働”」の主旨だった。
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3987/

映画などの相次ぐヒットで活況を呈しながら、肝心のクリエータ達は貧困と長時間労働に喘いでいるなんて、この業界の人間は阿呆ばかりで、その顧客であるテレビ・映画産業の連中というのは人でなしの集まりなのだろうか。まともな製作費を払わなければ、この業界全体が崩壊するというのに、おバカなんだろうか。

どの業界でも下請けは不利な立場に追いやられがちだが、この業界は極端だ。単なる下請けから脱し、アニメ制作会社も出資して製作員会に参加すべきだと、なぜ経営者らしきことをしないのか、歯がゆい。そして介護や保育以上に“やる気の搾取”(東レ経営研究所・渥美由喜さんのこのネーミングはうまい)が徹底的に行われて構図を知ると、アニメ制作会社が業界団体を作って共同戦線を張ること、そしてアニメータ自身が退社(または自ら契約解除)してブラックな経営者を業界から排除することを真剣に追及すべきだと思う。

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「経営陣に女性がいる企業は業績がよくなる」という法則

経営先進国と考えられている米国でも実は、女性の昇進を阻む「ガラスの天井」が相変わらず分厚い実態がある。そうした中、経営陣に女性が含まれる企業はパフォーマンスがよくなるという実証研究が相次いで発表された。この意味を考えてみたい。


小生の母校であるテキサス大学のMcComb School of Businessが最近発表した2つのグループの研究結果によると、経営陣に女性が含まれる企業はパフォーマンスがよくなることが実証された。

 “トップマネジメントチームに女性を含む企業は長期的にみて業績が改善される”というのがDavid Harrison教授と博士課程の学生、Seung-Hwan Jeong氏のコンビの研究の結論である。
 “女性役員は(男性では難しい)特有の見識を追加的に取締役チームにもたらすが、それは平均で10%近くものスキルセット拡張に相当する”ことを証明したのは、McComb School のLaura Starks研究副所長とトロント大学のDaehyun Kim准教授(McComb出身)のコンビである。

2つの研究結果は次のURLから取得できるので、興味のある方は読んでいただきたい。
 https://www.researchgate.net/publication/303717036_Glass_Breaking_Strategy_Making_and_Value_Creating_Meta-Analytic_Outcomes_of_Females_as_CEOs_and_TMT_members
 https://www.aeaweb.org/conference/2016/retrieve.php?pdfid=1474

米国でも「ガラスの天井」は厳然と存在しており、上場企業では従業員の約半分が女性なのに、Fortune 1000(中堅以上)企業の女性役員の割合は17.9%、2013年から2014年にかけてFortune 500(大企業)のCEOに指名された女性はわずか3.2%のみだ。

こう書くと「なんだ、米国だって大したことないんだ」と思うのは早計で、日本の上場企業の女性役員割合は2016年時点で3.4%と、比較するのさえ憚られるほどお寒い状況だ(内閣府男女共同参画局のHPを見ると主要国間の比較が見つかる)。

話を戻そう。ではそんな内部環境下で、なぜ女性が加わることで経営陣のスキルセットが改善し、パフォーマンスが上がるのか?結論的には、「女性のほうが優秀だからだ」という単純な話ではなく、異なる視点が加わることによる「多様性の力」なのだ。

経営陣に女性が加わると、閉鎖的グループでありがちな「あうん」の呼吸で物事を決めていくわけにいかず、もたらされた情報を解釈し、評価・決断する際に「なぜそうすべきか」をきちんと説明することが求められるという。

その過程で、財務的数値に偏った視点だけでなく職場での働きやすさなどといった人的要素に注目をしやすいなど、女性特有の視点が加えられるのが功を奏す、というのがHarrison教授たちの見立てらしい。

「女性がもたらす多様性が企業を強くする」という見方は特に新しい訳ではなく、ここ20年ほど、世界じゅうのマネジメント研究分野で直観的には語られてきた。特に、女性の役員比率の高い著名な北欧企業が長期間にわたって安定的成長とグローバルな躍進を両立させていることで、そうした考えが注目を浴びるようになっていた。冒頭の2つの研究グループはさらに、膨大な事例と数値を基にそれを実証したことが特筆すべき貢献といえる。

多くの人が気づくように、こうした多様性は女性のみがもたらすベネフィットではない。昨今注目されているLGBT(性的少数者)や、外国人など人種・文化の異なる人たちも同じ役割を果たし得る。彼らマイノリティがいることで、マネジメントレベルでも非常に有用なインサイト(洞察)を、そして幅広い層でイノベーションへの刺激をもたらすことが度々指摘されている。

社外取締役の導入が先進諸国で活発になった理由もよく似ている。つまり、その会社のカルチャーにずっと染まってしまった純粋培養の役員ばかりでは、仮に経営トップの判断や価値観が世の中とズレてしまっていても、疑問すら湧かずにそれを指摘できない。仮にコンプライアンス的に問題のある行為(偽装など)が上位の人たちの間で行なわれていることに気づいても、つい目をつむってしまう。

こうした硬直的な思考が横行していては「取り締まり」ができず、会社が間違った方向に進むことを防止できない。このリスクに対する懸念が社外取締役の導入を推進しているのだろう(個人的には、形式主義的で実効性に難のあるケースも多いのではと疑問視しているが)。

そして我々外部コンサルタントにもまた、社内だけでは不足するものを補う「専門家としての知見と経験」だけでなく、「第三者の視点」による気づきやチェック機能というのも大いに期待されているだろう。

保守的傾向の強い日本企業でもこうした多様性の重要さを理解できる経営者が増えると、硬直的思考のリスクを抑えながらイノベーションを促し、VUCA(変動/不確実/複雑/曖昧)と呼ばれる予測困難な時代を乗り越えることができるのではないかと思う。

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米国・中国には買い物イノベーションの最先端がある

買い物事情が最近随分変わってきているのは、仕事をやっている中でも、プライベートでも強く感じる。それをまとめて見せてくれたのが、5月15日の未来世紀ジパング、「最新!世界のお買いもの事情」だった。

紹介されていたのはまず小売り先進国・米国の事情。
- Amazonに押されて閑古鳥の鳴くモールでは近所の住民が散歩場所として利用
- 有名百貨店のニーマンマーカスでは、客がいちいち着替えなくとも映像だけでバーチャルな着替えができる
- Amazon Goというコンビニ店ではいちいち精算せずとも支払いできる
- デジマークという会社の技術によりパッケージに商品コードが埋め込まれているため、レジ精算がバーコードに比べ格段に速くなる(しかもDNPが協力して、今まで印刷できなかったパッケージにも印刷できる)

続いて紹介されたワンダーレジというセルフレジの仕組みは消費者が素早く確実に精算できるものだ。日本でも間もなく導入されるという。

その次は、中国の最新買い物事情。日本に来ての爆買いが収まったのは越境ECの普及だという。紹介されていた日本好きの消費者はこの日だけで5箱57品、月に17万円ほど買うという。中国でのECではニセモノが多いが、なぜか越境ECではほとんど偽物を掴まされることが少なく、しかも速くて安い。中国内にある保税倉庫(中国政府の運営)から直送されるからだという。

紹介されていた越境ECサイトは「ワンドゥ」(東京赤坂本社のインアゴーラ社運営)。約200万人が利用しており、3万点の日本商品が出展されているという。鯖江の眼鏡製品など日本の良品を中国の消費者に紹介してくれる。単にサイトで紹介するだけでなく、消費者の代表にリアルの場で紹介し、商品にまつわるストーリー映像を載せたりと、丁寧なプロモーションを実施していることが感じられた。

ネット爆買いに伴い中国で生じているエピソードが幾つか紹介されていて面白かった。自宅ではなく確実に昼間いる会社に商品を届けてもらうとか、ネットで商品を紹介するKOL(Key Opinion Leader)が大金持ちになっているとか、日本では想像できない事情が分かった。

最後に紹介されていたのは、中国での自動販売機が急増しており、間もなく日本以上の出荷台数になるという。特に、駅構内や改札近くに売店がない上海では、ここ数年爆発的に増えている。富士電機の進出がそのきっかけらしいが、中国独自の事情が面白い。

裏面での広告を見せるため周りに何もないスペースに置いたり、電子マネーでの支払いが主流になりつつある(中国の紙幣は腰がないため自販では使いにくい、しかも現金泥棒対策にもなる)ことや、売っているものがどんどん広がっている(お菓子、裁縫道具、スマホケース、さらには店の冷蔵庫で売っているようなアイスクリームや肉・果物など)ことなど、まさに違う世界が広がっていた。自販の管理システムもこの国ではどんどん進歩していることがよく分かった。

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