「日本外交と領土問題」を聴いて

港ユネスコ協会主催による第2回国際理解講演会「日本外交と領土問題」(東郷和彦氏講演)を聴いた。

何ともタイムリーな企画のように思えたが、冒頭の主催者・協会長のご挨拶によると、全くの偶然で、東郷氏(元アランダ大使で、現在は京都産業大学の世界問題研究所長)の共書「日本の領土問題」が出版されたことでかなり前に企画されたもので、むしろ今般の情勢から開催見送りを検討したくらいだそうだ(なぜ見送りを検討したのか、主催者側のロジックは不明だが、講師本人がやる気だったとのこと。このあとの港ユネスコ協会副会長の挨拶は長く退屈だった)。

ホットな話題について外務書大物OBである東郷氏のナマの講演が聴けるというので、満員の盛況であった。本人いわく、珍しく提供したレジュメ内容は防衛省かどこかの役人に7月に講演したものをそのまま持ってきたのだが、その時には厳しめの見通しを言ったつもりだったのが、2ケ月後の現在、予想を超えたさらに厳しい事態になってしまったという。

7月時点では「ロシアとの北方領土」「韓国との竹島」「中国との尖閣諸島」の順に緊急性があったのに、今や全く順番が逆になってしまったという。それほど緊迫してきた尖閣諸島問題について氏は裏話的なものも含めて経緯を話されたが、それを聴くと確かに東郷氏の「事、ここに至っては打つ手なし。中国は何を仕掛けるか分からんぞ」という懸念を聴衆は共有できたのではないか。東京では3つの説がまことしやかに囁かれているという。すなわち、①(中国人が信じるが誤解の証拠があると氏が主張する)「石原―野田連携仕掛け」説、②「中国側による陰謀」説、③「ボタンの掛け違い」説である。氏は③の可能性が高いが②の可能性も否定できないと示唆していた。

中国のいう「核心的利益」は元々台湾とチベットだけだったはずが、今や南シナ海での領土問題と並んで、東シナ海の尖閣諸島問題が「格上げ」されてしまっているので、恐ろしい事態である。氏は2008年に中国の軍関係者(トップではない)が会見した際に「尖閣諸島に関し実効支配の実績を作る」と発言したのを聞いて「えらいことだ」と感じたという。それは、それ以降中国政府が鄧小平の遺訓を重視しないというサインだったという。

そしてその変化が2008年の中国公船の領海侵犯開始、2010年の中国漁船と日本の巡視船との衝突事件につながったと氏は見る。それに対し実効支配している側の日本の民主党政府は理解の浅さから直後の対処を間違っただけでなく、実効支配を強めておく対処をしなかったと氏は残念がる。まったくその通りである。「中国との間に領土問題は存在しない」という政府見解は全くの虚構であり、その虚構に基づき何もしない(つまり鄧小平の遺訓を重視する)ことを方針としている民主党政権のやり方は危ういという氏の主張は全くその通りである。

さて2番目のテーマである、韓国との間の「竹島問題」は氏にとっても扱いにくい問題のようで、明確な主張はなかった。知人の韓国人が、それまでの友好的な態度だったのに、この話題で日本の立場を口にするだけで般若顔に変身するそうだ。それほど韓国人のアイデンティティに関わる問題なのである。しかし元々この問題に関心が低かったはずの日本人の多くが、李大統領の振る舞いと行動、韓国人のコメントに触れるにしたがってこの問題を知り、韓国に対する反発を強めているのは皮肉である。これは先日のTV討論会でも思ったが、日韓の感情のぶつけ合いがエスカレートする原因は、韓国側の稚拙さ、被害者意識に根差す甘えのせいである。露骨に言えば、日本が大人の対応をし続けて黙っているのをいいことに、彼ら(一部の人間だが)はつけあがってしまったのである。決して中国のような戦略的な挑発や策略でないだけに、損得勘定で割り切れず、かえって厄介である。

ただ、この問題で角突き合わすと、韓国の反日連中は絶対、「日本はいまだに従軍慰安婦問題で本当には反省していない」というふうに欧米諸国に対しアピールして、対日感情を悪化させる戦術をとるだろうと東郷氏は指摘していた。理不尽にも現代の倫理観で過去の事象を評価する、そしてホロコーストと同列に論じる、欧米の欺瞞。「旧日本軍が強制した事実は確認されていないのだから、それでも日本を有罪にしたいのならば証拠を出せ」という真っ当な主張さえ国際社会で通じないということである。推定有罪にされる日本人としては腹立たしい限りだが、これが日本にとって本当のアキレス腱になっているとのことである(知らなかった)。

最後に10数分だけ、ロシアとの間の北方領土問題について、これまでの挫折の経緯(氏自身が深く関与している)と、何故か妙に明るい展望を聞聴いた。この3国の中で日本が戦略的につながりしかも本当に友好関係を築けるのはロシアだろうと小生も思っている。なぜなら悪感情を抱いているのは日本人であり、ロシア人は日本人にとりたてて悪感情を抱いていないからである。柔道家で親日家のプーチン政権のうちに具体的に動かねば、先はなくなるし、戦略家プーチンが交渉相手として価値なしと見捨てないのは、精々あと1年弱だろう。4島一括返還などという現実性のない主張に拘っていては、未来永劫北方領土は1島たりとも返ってこない。地域覇権を求める中国をけん制するためにも、失礼な韓国の目を覚まさせるためにも、北の大国・ロシア(同様にモンゴル、インドとも)と思い切った友好関係に進むべきであろう。

講演後、講師にご挨拶、名刺交換した。その際に小生の持論である「尖閣諸島問題を日本からICJに提訴すべき」という考えをぶつけてみた。「そういう策も確かにあるね」と氏は言ったが、すかさず「でも実効支配している側が提訴するのは例がないな」と仰った。どうやら外務省OBでもこの策はまともに検討されていないようで、驚いた。「この2つのうちボールが日本にあるのは尖閣諸島問題だけであり、これで中国が応じなければ、中国の説得力がないことを日本は国際社会にアピールできるじゃないですか」という小生の意見に氏は耳を傾けていた。もしかすると近々この大物OBから外務省に、この線で働きかけが生じるかも知れないと期待させる一幕であった。
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「ビックロ」が示唆するもの

本日、「ビックロ」=ビックカメラとユニクロの融合店が新宿で開店し、関係報道が賑わっている。前々日には近くまで行ったが、開店後は行く機会がない。報道ではユニクロファッションに身を包んだマネキンが家電を使っている図が幾つか映っていたが、実際の様子と客の反応は今一つ分からない。店を見てから改めて感想を述べたいと思う。

しかしこの家電量販店とファーストカジュアル店の融合という劇薬を試してみるところに両社の経営者の思い切り度合い、特にビックカメラの危機感が表れている。

家電量販店に関しては今年になってからも幾つかビッグニュースが発表されている。特にコジマがビックカメラ陣営の軍門に下ったこと、ベスト電器がビックカメラ陣営からヤマダ陣営に移ったことが有名だろう。これは規模を巡る国内陣地争いである。今後、買収された側の店のスクラップ&ビルドが続くだろう。特にコジマについてはここ1~2年の店の沈滞度合いはひどかった(欠品など)ので、ビックカメラの立て直し手腕が見ものである。

同時に、ベスト電器の資本提携に関してはそのアジアでの店舗網と経験という資産にヤマダ電機が目をつけて熱心に誘った可能性もかなりある。つまりヤマダ電機-ベスト電器のアジア展開は一層充実してくるかと思える。

そのヤマダ電機はさらに先を見ている。エス・バイ・エルという準大手の住宅メーカーを昨年買収し、スマートハウス事業を展開すると宣言した。住宅事業も太陽光発電事業も、家電メーカーから大量に買い付けた商品を大規模店で消費者に対し安値で販売するという同社のビジネスモデルとは全く異なる業界である。同社の凄いのは(あまり報道されていないが)、住宅設備機器の製造販売などを手掛けるハウステック(元々日立系)を今年になって買収したことである。住宅関連事業の拡大に本気であることは間違いない。

こうした家電量販店の上位2社の動きは、従来のビジネスモデルだけでは鈍化した成長を再び立ち上げるのは難しい、エコポイントによって荒らされた従来市場に頼っていては危機に陥るかも知れない、とみている証左であり、強烈な危機感が伝わる。小生もこの業界の目指すべきモデルについては意見もあるし、とても注目している。

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日中対立における別の視点

連日、尖閣諸島問題をきっかけとする日中対立が深刻化する様子である。

この結果、中国からの撤退や中国進出の取りやめを検討する日本の中堅・中小企業が増えていると聞かされている。小生の会社にとってはタイ・ベトナムあたりに代わりに進出しようと考える企業が増えるので、目先的にはむしろ「風が吹いてきた」状態である。しかしながら決して嬉しくない。それどころか深刻な懸念が拭えない。

この先、日中の対立が先鋭化し、(今は冷静な)日本側の市民のナショナリズム的感情論が刺激されると、この先どんな地政学的暴発が待っていないとも限らない。次期政権奪取の可能性が高いとされる自民党の総裁にタカ派を気取る安倍元総理が当選したことで、その危惧はより高まっている。

中国政府はまだまだ鉾を納めないだろう。官製デモと日本製品に対する不買運動をそそのかす。日本ツアーの自粛働きかけ、日本製の部材や製品の輸入制限(輸入審査に時間を掛けるという形をとる)とレアアースなどの日本向け輸出の制限など、どうしたら日本の企業や日本人が困るかを考え、仕掛けてくるのは間違いない。彼らは思いつきでやっているのではなく、こうした状況を想定して様々な手段を検討してきたはずなので、網羅的かつ執拗な動きになろう。この辺りが行き当たりばったりの日本政府との違いである。

なぜここまで中国政府はムキになるのか。それは彼らが「日本政府にメンツを潰された」という認識を明確に持っているからである。つまり中国政府は今回の尖閣諸島国有化の経緯を見て、「日本政府は戦略的に中国との友好の限界領域を測ろうとして挑発し、中国の警告を敢えて無視した」と考えているようなのだ。

平和ボケした日本人には理解し難いかも知れないが、中国政府(そして大半の外国政府)は国際関係において常に非常に戦略的に国益第一に考えて動く。それが国際政治だという明確な認識を持っている。そして日本の政治家や外務官僚などもそうした戦略的な発想で行動し発言していると想定している。しかし恐ろしいことに日本政府はそんな戦略的な発想はなく、ほとんど内向きの発想で発言し行動している。この認識ギャップが今回も悲劇を生もうとしている。

そうした日本政府のいい加減な認識は今回の尖閣諸島の国有化のタイミングに現れている。本当に最悪のタイミングである。第1に、中国の政権における権力者チームが交代する、すなわち「今度の国家トップは弱腰だ」などという批判を最もされたくないタイミングである。第2に日中国交回復40周年のタイミングである。第3に、柳条湖事件の9.18直前である。そのタイミングで仕掛けてくる日本政府の意図を深読みするなというほうが無理であろう。

中国政府からすると、石原都知事と日本政府が「やらせ」で挑発していると考えるのが当然である。こうした国際政治センスが日本政府には欠けている。石原都知事を出し抜いて国が購入することに地権者が同意した、地権者の気が変わらないうちに国有化しちゃえ、中国だって分かってくれるだろう、と手前勝手な論理で進めたのが、今回の国有化ドタバタ劇の真相であるようだ。中国の猜疑するような高度な意図など全くないのだが、国際政治的にそんな言い訳は通用しない。

こうしたボタンの掛け違いは過去も度々あったのだが、今回は後戻りできないほどの失態であり、中国リスクは今後より高まることはあっても縮小することはなかろう。ビジネス界はいかに脱中国をスムーズに進めるかに、否応なしに向き合わねばならない事態にあると冷徹に考えるべきだろう。

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「美容家電の女たち」

NHKの「プロフェッショナル」班制作のドキュメンタリー番組「TEAM 最高の自分になれる場所」の「美容家電の女たち」という番組を観た。非常に面白かった。

パナソニックの美容家電のマーケティングチーム7人の話である。ターゲットの生活者と同じ、全員「働く30代女性」である。等身大の悩みを解決するためのニーズを突き詰めて考え、広告宣伝と商品企画へのフィードバックを続けて改善させているのが伝わってきた。

7人のうち部署が同じなのは2人だけ。つまり6部署7人である。上下関係はなく、マーケティング担当の人がリーダー役を務める。週1回のランチミーティングが定例の打合せで、基本的にはあと1週間の間、それぞれが自分の役割を懸命に果たす。美容家電に関するマーケティングはこのチームが専属かつメンバー固定なのである。

こういった体制は、男性天下のパナソニックの社内では珍しい模様である(多分、男性だけでもこうしたチームはないのではないか)。スチーマー以来、連続してヒットを飛ばしている実績が、こうした社内でも特異な体制を許させているようだ。

それだけ人間関係が強固で、信頼感がベースになって本音をぶつけ合いながら仕事が回る様子が伝わってきた。1人がコメントしていた。「この仲間だからできる」と。まさしくチームである。会社では、意外と同年齢の男のチームだとこうはいかない。妙なライバル心や嫉妬心が出てしまい思わず足を引っ張り合うものだ(昔、優秀なはずの部下同士がそうした感じになってしまう場面を時折見た)。出世欲のない30代女性のチームならではのよさではないか。

番組ではそれぞれの女性のこのチームに出会うまでの葛藤、子育てとの両立など今向き合っている悩み、そして会社の論理とのせめぎ合いなど、色々な角度で、このチームがスーパーウーマンではなく普通の女性のチームであることを浮かび上がらせていた。こうしたチームに恵まれたことを誇らしげに語る彼女たちの表情は素晴らしかった。

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食料危機を防ぐ切り札!?「人口光合成」

NHK EテレのサイエンスZERO「植物パワーが未来を変える!夢の人工光合成」を観た(録画)。先日の食品廃棄物の番組で人類の未来の食料事情に不安がよぎったが、この番組はその未来に希望を与えてくれるものだった。

光合成とは、太陽光と水と二酸化炭素により、酸素と炭水化物を作る反応である。光合成の前段プロセスでは太陽光により水を分解し水素(=イオン)を取り出せれば、燃料電池の燃料を水から簡単に調達できる。光合成の後段のプロセスでは、二酸化炭素から炭水化物を作り出せる。

光合成を人工的に行うことができれば、現在人類が直面しているエネルギー問題、食料問題、地球温暖化問題を一挙に解決できるかもしれないのだ。

去年、ノーベル化学賞の根岸栄一さんが研究プロジェクトを立ち上げ、さらに豊田中央研究所が世界で初めて光合成のプロセスを再現することに成功した。また、200年間謎に包まれていた光合成のメカニズムの解明に、岡山大学の沈建仁教授のチームが成功(光合成を引き起こす酵素の形は椅子のようで、紹介された記事では「Plant Life's Boxy Heart」となっていた)、これはノーベル賞ものの発見である。沈さんは何と20年の研究がようやく実った格好であり、その粘り強さには頭が下がる。それにしても、このように一挙に関連技術が進歩するタイミングがあるのだと思う。

日本は人工光合成の分野では世界でも進んでいるそうで、ほかにも光触媒の研究や、金属錯体という粉を水に溶かして光を当てると水素が出来る研究などで成果を収めているようだ。まだまだ日本の技術水準は高いぞ!と意気が上がる内容であった。

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「食品廃棄物は減らせるか」

BS NHKのドキュメンタリー番組 消費社会はどこに?「食品廃棄物は減らせるか?」を観た(録画)。ドイツの制作である。

まずは「賞味期限」の話。これはメーカーが一定の品質を保障している期限で、それを超えたからといって食べたからといって食中毒にはならない。しかしスーパーやコンビニでは賞味期限が近づくとこうした食料品を廃棄処分する。理由は「顧客が買わなくなるから」だという。

次は規格外の問題。スーパーやコンビニで捨てられる前に、食料は農場でも大量に廃棄処分されるという。映像でも、小さすぎるジャガイモと大きすぎるジャガイモは直ちに畑に捨てられていた。「小売店の注文では大きさが決められており、それ以外のジャガイモは受け取ってくれないから」と農場主が寂しそうに述べていた。

どちらも日本でも同様に嘆かれている話だが、合理性大国のドイツでも同様とは深刻である。

フランス最大の卸売市場ランジスでは、当日せりで落とされなかった野菜や魚介類はすべて廃棄処分されていた。この廃棄物をフード・バンクメンバーが回収していたが、ごく一部に過ぎない。

国連食料農業機関の推計では収穫された農産物の約半分が何らかの形で廃棄されていると言う。しかも加工されたのも含め、小売店に並んだ多くの食料がさらに捨てられるのだから、一体先進国はどれだけの食料を無駄にしていることか。番組は問いかける。「これは誰の責任でしょう。そして誰がこの代償を払っているのでしょう」と。もちろん、消費者と小売業者の責任であり、消費者と地球の環境がその代償を払っているのだ。

まとめとして「消費者は賢く食べ、小売業者は責任を持って売り、行政は廃棄物に罰金を科せ」と番組は訴えているが、最貧国での餓死と世界での水不足が深刻化する中、先進国は何と愚かなことをやっているのかと愕然とする。

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「追跡 復興予算 19兆円」に役所の欺瞞を観る

NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災~追跡 復興予算 19兆円」を観た。震災復興を名目に大増税で集めた膨大な復興マネーがとんでもないところに使われ、肝心なところに使われない実態が、丁寧な取材により追求されていた。

19兆円の予算の実態に迫るため、取材班は専門家の協力を得て、5万ページ超の各省庁の予算関連資料を検証。500を超える事業のうち、被災地には直接投じられていない予算が次々と見つかった。反捕鯨団体対策費に23億円。国立競技場補修費に3億円。沖縄など全く関係のない地域の土木工事等々。被災地以外に205事業、2兆円超を計上していた(これは明らかにおかしいもののみ)。取材班の追求に答える経産省や外務省の予算計上部門の人間の白々しい言い訳コメントが虚しい。関係ない地域で予算執行される地元の人でさえ呆れかえるほどである。要は、元々震災とは無関係に予算に計上したかったが「事業仕分け」や「シーリング」により計上が難しかった事業を、どさくさに紛れて押し込んだのである。

一方で復興予算は、必要としている被災地には充分に届いておらず、津波で壊滅的な被害を受けた町の再建は進んでいない。「グループ事業」を申請した商店主たちは、予算枠が小さ過ぎて優先度が低いと判断され、支援を受けられず追い詰められている。医療現場では、被災した民間病院や診療所には再建資金が届かず、殆ど自己負担を余儀なくされるため年齢等によって再建を断念したり地域を離れたりするため、被災者が思うような治療を受けられない。全く理不尽なことである。彼らに再建してもらうために巨額の震災増税を国民は受け容れようとしているのに。

何ともやるせない現実を見せつけられた。役人のいい加減な仕事のせいで、最大4割程度が本来の政策目標とはかけ離れた予算執行になっているかも知れないという。そして役人はその誤りを絶対認めようとしないし、政局・選挙のことしか頭にない政治家は全くこうした現実に向き合おうとはしていないようだ。

こうした政治・役所の欺瞞を暴くことこそメディアの最大使命である。NHKの報道部門に拍手を送ると共に、中央官庁は間違った予算の使い道を一刻も早く正して欲しいものだ。

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人は誰でも「肯定的幻想」に捉われる

最近読んだ本に面白い心理学の実験の話が出ていた。

「あなたは部屋に一人でおり、見知らぬ男が入ってきて、テーブルの向こうに座るとやおら新聞紙を取り出し、明日の天気予報を読み上げる。内容はいたって普通。そして部屋を去る。あなたは彼の知能指数を予想せよと要求される」

何とも不思議な実験である。大抵の人がその要求の理不尽さやばからしさに呆れかえる。「誰なんだ、あれは。彼のことなんて何も知らないのに、彼のIQだって?分かるはずがないだろう」と。とはいえ実験だからと、あなたは当てずっぽうで答える。そのニセ天気予想士にも自分自身のIQを予想してもらう。どちらがより正確か?

答はなんと、あなたのほうだ。ドイツのビーレフェルト大学で実施されたこの実験の結果では、他人によるIQ予想は本人の予想より66%も正確なことが判明した。正確にいえばあなたの予想が正確なのではなく、彼の自己評価がより不正確なのだ。彼はいままでの自分の成績、入試のスコア、職務評価など数十年の自分に関するデータを持ち、一方あなたは全く何も知らされていないにも拘わらず、だ。

ここから分かることは、人の自己評価は当てにならないということだ。自分の恋愛の行方は全然予想できないのに、ルームメイトの恋愛がいつまでもつか、についてはかなり正確に予想できる。大半の人が自分は平均より自動車の運転がうまいと思っているという調査結果もある。94%以上の大学教授が、自分は平均以上の業績を上げていると信じている。この信念を「肯定的幻想」というそうだ。ご同輩、ご用心めされよ。

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日本にはグローバルビジネスの社長候補が少ない!?

NHKの番組「クローズアップ現代」の「社長がいない 求むグローバル時代の経営者」という番組を観た(いつものようにビデオ録画なので、いつの放送かは不明)。

番組全体としては、今後の多くの日本企業においてはグローバル経営ができる素養・経験を持った経営者が必要であるが、社内でそういう人材を育てるには意識して若い時から人材を育てるために場と機会を与える視点が必要だし、社外からも人材を導入する積極性が必要という、ごくあたり前の結論であった。それでも、その線に沿って社長候補を育てている資生堂やソフトバンクの事例が後半に紹介され、興味深いものであった。

しかしこの番組の中で最も小生の興味を引いたのは、前半にあったユーシンという自動車部品メーカーの社長公募の話である。メーカーとしてはそれほど小さくはなく、大手といっていい。実は小生もある人材紹介会社からこの公募の話を聞かされたのでよく覚えているが、後日談は聞いていなかった。その話が番組の中で紹介されたのだ。

募集当時の社長が今も社長に復帰していて、そのときの公募の動機などを話しており、さらにグローバル展開を一挙に進めたいと考えたなどの思いを語っていた。しかし番組の中で驚いたのは、結局採用されたのは元外務官僚だということだ。そしてその人物は同社の経営をできずに、何と1年ほどで辞職したということだ。

何が呆れかえるかというと、グローバルで展開している大手自動車部品メーカーの経営トップとしてビジネス経験のない人間を選んだということだ。きっと語学力や外人との交渉経験で選んでしまったのだろうが、何と愚かしい選択をしたものか。当人たる元外務官僚も身の程知らずだと思うが、きっと受験勉強もでき、優秀と云われてきたのだろうから無限大の自信があったのだろうから、同情の余地ありである。

まず呆れかえるのは、その前(というか現)社長および取締役たちの不見識である。このメーカーがそれなりの規模にまで伸びたのは、たまたま時代が押し上げてくれたに過ぎず、間違いなくこの人たちの手腕ではなかろう。どうしてビジネスの戦略策定や計画実行の経験もない人間がいきなり経営トップとしてグローバルの経営手腕を発揮できる、などという夢物語を描けるのか、神経を疑わざるを得ない。

もう一つ指摘しておきたいのは、このヘッドハンティングをサポートしたはずの人材紹介会社の不見識である。そんな語学能力だけでビジネスのトラックレコードのない人物を紹介し太鼓判を押すなんて、プロとして恥ずかしいと思わないのだろうか。日本のこの業界の人たちの不見識の話は時折耳にするが、ここまであからさまに酷いというのは少々哀し過ぎる。

この番組が示唆している「日本にはグローバルビジネスの社長候補が少ない」ということは根も葉もない嘘だと思う。小生の知っているだけでも候補者は結構いる。問題は、そうした人材を発掘し評価する眼力が、現経営者およびその支援者である人材紹介会社側に滅多にないのである(だから語学能力のように本質的でない部分が重視されるのだ)。それが日本の不幸だと思うのは小生だけだろうか。

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尖閣諸島問題は国際司法裁判所へ付託せよ

微妙な歴史的背景がある上に、特に領土問題が前面に出てくると、どこの国もまず国民・メディアがナショナリズムを刺激される。政治家が妥協しようとすると「弱腰」呼ばわりされるため、互いに振り上げた手の下ろしようがなくなってしまう。しかしこの論争が生じるために中国で反日デモや暴動が吹き荒れ、日中間の交流が後戻りする状況は決して前向きでないし、ヘタをすると戦前の繰り返しにならないとも限らない(ご存じだろうか、こうした反日暴動が通州事件を生んだことを。そしてそれが日中戦争の遠因になったことを)。

そこで提案がある。尖閣諸島の領土問題を日本から率先して国際司法裁判所 (ICJ) へ付託するのである(韓国との間の竹島問題で取り上げられたので、ご存じの方も結構いるだろう)。こう云うと、「尖閣諸島は歴史的にも日本の領土であり、日本が実効支配している。したがって領土問題が存在しないというのが日本の立場だ」という官僚的反論が返ってこよう。しかし尖閣諸島に関し「領土問題が存在しない」というのは欺瞞以外の何物でもない。現に日中間の最大の問題であり、大きな火種ではないか。

また、「日本が実効支配しているのだから論争の嵐が収まるのを待っているのが一番賢いやり方だ」という国際政治の専門家も多い。しかしそれも視野狭窄である。論争は収まるどころか何度となく激化するだろう。こんなふうに何度も上陸騒ぎが繰り返され、その度に非難合戦をするのが賢いやり方だろうか。ましてや中国の場合、実力行使による占拠という事態さえ将来は想定され、その先にあるのは紛争そして戦争という大きなリスクである。そうした最悪のシナリオは避けたいではないか。ICJへ付託されてしまえば、中国人民もへたに騒ぎを起こすことが自国に不利になることを恐れ、今のような挑発行為は急減するだろうし、何より中国政府が全力を上げて押さえ込むだろう。

韓国の場合と違って、日本がICJへ付託すれば中国および台湾はそれぞれ拒否することはないだろう。彼らは失うものはないのだから。当然、日本とするとせっかく実効支配している尖閣諸島を、ICJの判断によっては中国や台湾に奪われる可能性がゼロではない。そのリスクは確かにある。しかしながら歴史的経緯(日本人が暫く住んでいた)と中国側の尖閣諸島に関する記述(「魚釣島は琉球の云々」)という歴史的事実は圧倒的に有利である。日本は自信を持ってよい。また中国側は台湾との連携が難しく、有効な反論を揃えることも難しいだろう。

それに韓国との間の竹島問題、ロシアとの間の北方領土問題に関しては、いずれ日本からICJに付託することになろう。その際、韓国およびロシアに対し拒否しにくいプレッシャーを与えることができる。

併せて、国際社会に訴える日本の立場を考えてみよう。実効支配している尖閣諸島は知らん顔しておいて実効支配されている竹島と北方領土だけは不法占拠だと叫んでも、論争相手から「ダブルスタンダード」だと反論され、国際社会からも非難される恐れがある。それよりも、「日本は暴力には訴えないし屈しもしない。実効支配の有無にかかわらずいずれのケースも正々堂々と主張し、国際社会の公平な判断に委ねる」という公明正大なスタンスを主張するほうが圧倒的に有利である。そしてこの3つの領土問題が当事者同士の紛争から手離れし、ましてや解決に向かえば、3国との間の国民和解のチャンスは非常に大きくなる。

こうした諸々を考えれば、真っ先に尖閣諸島問題に関しICJに付託するというのが、日本にとっての期待利益が最大となる、最も戦略的なやり方だという主張に同意してくれる人たちも多いのではないか。

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「日本」ブランドを悪用する中国人という現実

丹羽大使の公用車の日本国旗が奪い取られるという暴挙もあり、尖閣諸島の件では上陸という脅しの応酬が続きそうである。次にもっと強硬な連中が上陸して暴れたら両政府はどうするつもりだろうか。日中どちらも振り上げた拳の下ろし所をなくしそうなぎりぎりのところまで行く「チキンレース」の様相を呈してきそうである。

今のところ中国政府は比較的冷静だが、大衆によるアジテーションぶりは相変わらずである。知り合いの中国通に云わせると、都市下層民に代表されるデモや暴動の主体の大半は、携帯のショートメッセージ等で呼び掛けられ、一種のレクリエーションとして参加するそうだ。(金がないために)ショッピングセンターへ行く代わりにデモに行き、「(役人や政治家の)○○のバカヤロー!」と叫ぶ代わりに「小日本鬼子」(バカヤロー日本人は人でなし)と叫ぶことでストレス解消をするのだそうだ。

だから大概のデモはすぐに終わってしまうが、今回のようにナショナリズムを刺激するような事柄が直前にあると暴走し、日本車や日本食レストランが標的になるのである。ネットでは「そのオーナーは中国人だから意味がない」という冷静な声も確かにあるが、実はそのことも暴動を実行している連中は知っている。いやむしろ、富裕層であることが嫉妬の対象になっており、日本絡みなので無茶をやっても政府から見逃してもらえると踏んで実施しているのだという。こうなると、中国人同士の諍いに「日本」ブランドが悪用されているのだと、非常に憤懣やる方ない気がする。

つまり多くの中国人は「日本叩き」を政府に対する反抗の隠れ蓑にしているのであり、実際には個人的には日本製品や日本ブランドを好んで(買える資力があれば)買っているということでもある。その見方を裏付けるのが、(震災で一時期急減した)日本への買い物ツアーの復活である。以前、NHKで放映していたのを観たが、最近は富裕層だけでなく、普通の一般市民が東京―箱根・富士山―京都・大阪という黄金のトライアングルを数日で廻るという格安ツアーが大人気だそうだ。

しかしこの格安ツアーは見掛けの料金はべらぼうに安いが、途中で半強制的に買い物タイムがオプションとして組み入れられている。そこに参加しない人はとんでもない場所で(例えば炎天下に木陰のない原っぱに)放り出され、ずっと待たされ続けるし、その後のガイドの態度が極端に悪くなるそうだ。

しかもその買い物タイムは、胡散臭い雑居ビルの1フロアで中国人ツアー客だけを相手に、無闇に割高な健康食品を売りつけるのである。何も買わない人はやはりガイドから叱責に近いプレッシャーを与えられるそうだ。結果として大概の中国人ツアー客が無駄で割高な買い物をして、最悪の印象を持って日本での旅程を終了する。「もう二度と日本になんか行くものか」と。当然、その印象の理由は、こうしたやり方は地元の日本人が仕切っているのだろうと思うためである。

ところが、番組スタッフが調査したところによると、ツアーの企画会社、買い物タイムのお店、ガイド(しかも無資格ばかり)とも全て中国人(オーナーの一部は韓国人)だそうだ。日本人は全く関与していない。しかし被害に遭った中国人ツアー客が漠然と恨むのは日本人である。「日本人はズルい」と。これもまた中国人同士の諍いに「日本」が利用されている、同様の構図なのだ。

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