少子化が進む東アジアでの防衛バランスの行方

今朝の朝日新聞の記事「アジア成長の限界」シリーズは興味深いものだった。1面の「防衛の前線、少子化の影」では、朝鮮半島を南北に分断する非武装地帯(DMZ)を、脱走した北朝鮮軍兵士が簡単に突破したエピソードを紹介する。北朝鮮への守りである全哨戒所のうち韓国軍兵士が詰めているのは7割に過ぎない。少子化が進み兵員が減り続けているため、体制維持が難しくなりつつあるのである。

2面の「兵役忌避、細る軍隊 韓国、軍備近代化で打開図る」は、より具体的に各国の問題を突っ込んでいる。
主に20代が兵役に就く軍には少子化の影響が真っ先かつ直接に現れるため、韓国国防省は05年、軍の近代化を進めつつ兵員を減らす計画を発表、06年当時68万人だった兵員は現在61万人、20年までに52万人にまで減らす。少子化(出生率:1.3)は1人っ子家庭を増やし、子供に兵役逃れをさせる親の思いが強まる悪循環も進んでいる(小生の母校・米テキサス大にも兵役逃れ目的の韓国人留学生が多かった)。兵役期間を短縮することを政治家も公約に挙げているが、北朝鮮の挑発が相次ぐ上に米国からの不安視する声が高まり、例えば陸軍の兵役期間は現在21ケ月で凍結中だとのこと。しかし少子高齢化がもたらす福祉関係予算の膨張で財政負担はかってないほど高まり(日本と同じ構図である)、軍の近代化予算を確保し続けられるのか不安視されている。

台湾でも背景事情は似ているが、対応策は異なる。中国の軍事的脅威に対抗するため長らく徴兵制を敷いてきた台湾は、15年に志願制への全面移行を目指す。12年の出生率は0.99。毎年の新生児数はたったの23万人。兵役期間はかっての2年が今や1年。これでは戦える軍隊として機能しないという判断が、志願制への全面移行を後押ししたという。現行定員27万人を21万5千人にまで「少数精鋭化」する計画だが、それでも人口の0.93%を占める(日本の自衛隊は0.18%)。実際のところ、肉体的につらい軍の仕事に対し若者の関心を引き寄せるのには苦労しているようだ。

一方、その軍事力増強の震源となっている中国では、兵力数は他を圧する230万人(韓国が61万人、北朝鮮が120万人、日本が22.8万人)。しかし少子化の原因になった「一人っ子政策」の弊害として、甘やかされた「小皇帝」世代の規律低下が酷いらしい。そして少子化の直接の影響として、ここでも軍への志願者の激減が明らかだという。「一人っ子」の親が入隊に反対するのはここでも同じなのである。

もちろん、少子化が真っ先に進む日本でも自衛隊の戦力維持は難題である。東日本大震災などでの活躍や「空飛ぶ広報室」のようなTV番組が自衛隊への一般人の信頼性と親近感を生んでおり、また長きにわたる不景気もあり、昔より自衛官の募集に苦労しなくなったとはいえ、大幅な財政赤字に悩む日本政府には装備近代化・維持のための財源は乏しい。そもそも組織員の誰も戦争を経験したことのない今の自衛隊が「闘う集団」として機能するのかは誰にも分からない。

皮肉なことに、兵士の人数と質を維持できるのは、軍備予算にだけは糸目をつけない北朝鮮だけかも知れない。しかし最も貧しい同国は国民を養い続けること自体に困難を見せており、軍備維持もいずれ破たんせざるを得ない。

結局、中国がこの地域最大の脅威であることはやはり変わらない。中国の国策として軍の近代化をさらに進めるとしても、その兵士の質がどんどん落ちることで戦闘能力に自信が持てなくなってくれば、今のような高圧的に周辺国に圧迫を加える態度を改めることになるかも知れない。この地域で急速に進む少子高齢化が地域の軍事衝突の可能性を減らすことにつながるのなら、「災い転じて福となす」である。
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赤字企業・パナソニックの前会長への巨額報酬に思う

パナソニックが昨年度、約15億円の役員報酬を松下正治・前名誉会長に支払ったことが報道された。松下氏は昨年6月に取締役を退任し、今7月に死去している。

この金額は、カシオ計算機名誉会長だった故・樫尾俊雄氏が11年度に得た13億3300万円を超えて実質トップであり、1億円以上の役員報酬の開示制度が始まった2010年以降で最高額となった模様だ。報道によると、パナソニックが昨年度、取締役4人に支払った退職慰労金計18億5500万円の4分の3程度が松下氏へのものだったようだ。世界的企業であるパナソニックとしても破格の扱いであることは間違いない。

ただ、報道が問題視しているのは、この情報が27日に公表した有価証券報告書に開示されていないこと。同社によると、06年度に退職慰労金制度を廃止し、すでに権利を得ていた額だけを退任時に支払うことにした。この費用は同年度に会計処理したため、「昨年度の支出ではなく、今回の開示の対象外」(広報)という。

しかしこの件に関する本質的な問題は情報開示ではない。大赤字を垂れ流し大リストラを強行している企業が、その第一の責任を問うことなく、巨額の役員報酬を「慰労金」として支払ったという点にある。

松下氏は創業者・松下幸之助氏の娘婿で、1947年から約65年にわたって取締役を務めた。いわゆる「中村革命」において旧体制の象徴視されながらも創業者一族ということで役員の座に留まることを認められたが、経営への貢献どころか抵抗勢力の中核であった時期が長い。元々社員から特別な尊敬を受けているわけでもない。

最近の同社の経営判断ミスに直接の関与をしているとは思えないが、その修正に貢献しているわけでもない。仮に同社のプラズマ薄型TVへの偏重の是正や松下電工や三洋電機との合併や組織再編で適切な指導的役割を果たしたという点があれば、こうした巨額報酬も多少は正当化されよう。しかしそんな前向きな情報は全くない(小生は前職の関係で多少なりともこの企業の情報が入ってくる)。

つまり松下氏には創業者の娘婿という以外、大した貢献を認めることはできない。さらに創業者一族で元社長・会長であったことから大株主の一人であり、役員報酬を除いて、その配当収入だけでも毎年家が建つほどであろうと推察できる。

一方で、ご存じのとおり、パナソニックは今、修羅場である。大規模な事業再編リストラを実施しつつあり、工場を畳み、市場撤退も大胆に進めている。それに伴い、異動はずっとましなほうで、多くの職場で早期退職や辞職勧告が進められており、貴重な戦力である技術者の放出もドラスティックに行われてきた(それを狙ってアイリスオーヤマが大阪で採用を展開し、開発センターを設けたことは周知の通り)。中には悪名高い「追い出し部屋」もそこかしこで実施されていた(小生の知人もその対象になっていた)。

こうした状況で、一人の「役得者」に対しバランスを欠く巨額の報酬を支払うことにパナソニックの現役員は平気で認めたのだろうか。多くの株主と消費者がパナソニックに対する基本的な信頼を失うことを懸念しなかったのだろうか。たとえあらかじめ決まっていた手続きに基づいて粛々と処理されると説明されたとしても、「この時期に認める訳にはいかない」と猛反対する役員はいなかったのだろうか。

もしそうなら、この企業の未来は暗い(グループ企業に所属したものとして残念極まりないが…)。

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体性幹細胞治療の抱える闇

6月24日(月)放送の「クローズアップ現代」はあまり馴染みのないテーマ、再生医療トラブルだった。題して「追跡 再生医療トラブル~体性幹細胞治療の闇~」。

「体性幹細胞治療」とは、病気やケガで故障した組織や臓器の機能回復のため、患者のお腹の脂肪から幹細胞を採取し、静脈に注射で戻すやり方。再生医療のジャンルの一つだ。大学病院などで臨床研究が行われている段階で、効果や副作用がはっきりしていない“未知の医療”である。iPS細胞やES細胞とは多分化能の部分で異なり、俗にいう(骨髄移植で使われる)造血幹細胞とも異なる。

法的な規制がないため、「自由診療」扱いだが、現実に全国の美容整形や難病治療を行うクリニックでかなり実施されており、現在100を超える日本のクリニックが実施中とのこと。経験も知見もない医師が安易な心構えで実施した結果、患者が死亡したり失明したりするケースも起きているようだ。正直、全然知らなかった。

驚いたのは、規制のない日本に海外の業者が患者を送り込み治療を行うケースも急増しているとのこと。以前に問題を起こした韓国のRNLバイオという会社を通じて韓国から8000人もの患者が福岡の「新宿クリニック博多院」で治療を受けに来ているとの情報もある。そもそもこの「新宿クリニック博多院」というのがどうも胡散臭いのである。
http://n-seikei.jp/2012/12/post-13188.html
http://shinjukunews.com/archives/51752910.html

海外から来る患者は新興国や欧州などの大金持ちなのだろうか。番組ではロシアのバイオベンチャーが取材を受け、日本人医師向けのパンフレットを示して、既に数人の医師と契約したことなど、このビジネスへの取り組みの抱負を語っていた。

こうした「実験市場化」の状況に再生医療学会は警鐘を鳴らしている。万一重大事故が起きれば国際的な問題にもなるし、国内的にも野放しにはできない状況だ。国(厚生労働省)はついに先月、幹細胞治療に規制をかけるための法案を提出したが、この治療法に唯一の望みを掛けている患者たちがいることも事実。規制当局も悩ましかろう。

しかし別情報によると、神経再生等の効果は「微妙なもの」らしい。それでも患者は藁をも掴む気持ちで希望を託す。そして彼らの蓄えた、なけなしのお金を吐き出させるのが実態だという。もしその通りならば、効果がないものに高いお金を払わせる、ある種の詐欺行為ではないのか。日本の医療に対する国際的信頼を失墜させかねない事態だ。

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「技あり」ニッポンの野菜洗浄機の競争力

6月24日(月)放送のワールドビジネスサテライト(テレビ東京系)の恒例「技あり!ニッポンの底力」で紹介されたのが、カット野菜洗浄機のトップメーカーである細田工業(大阪)。全国の野菜工場での稼働シェアでは7割という(別情報では国内シェア50%超)。

同社は1946年の創業で、様々な加工機械を製造。現在はゆで麺製造ラインとカット野菜洗浄機が売り上げの約半分を占め、モヤシ洗浄ライン、冷凍ブロック解凍ラインなども主力。12年前半から受注が好調で工場はフル稼働状態。2012年6月期の売上高は14億7000万円(前年比14%増)、経常利益率6.9%。13年度の増収増益もほぼ達成という好調ぶりだ。

同社の強みは「水を操る」技術のようだ。水槽内にあるスクリューで渦を作るのに加え、水槽上部のノズルからの水噴射を組み合わせることでらせん状の水流を作る。対象によって水流の具合は変えているようだ。レタスなどの葉物野菜の洗浄は(直線的な動きに比べ)水の中にいる時間がより長いために効率的に汚れを落とす上に野菜同士の接触がないために野菜を傷めにくい。

肉やエビなどの冷凍ブロックも約20分間水中で動かしながら解凍する(味の素冷凍食品と共同開発、特許取得済)。「食材から水分や栄養分がドリップとして失われたり、逆に水分を吸いすぎたりすることがほとんど無い」(細田社長)のだという。確かに凄技である。混入異物も水流で撹拌、分離し、水があふれ出るのを利用して排出する。「バッチ式解凍ラインで3時間かかるところ30分程度で連続処理できる」(同)ため加工効率にもメリットが大きい。

番組では紹介されなかったが、歩留まりの良さも同社の機械の特徴。麺の投入、ボイル、冷却、計量を一貫できるゆで麺製造ラインは、麺をまとめて茹でた後に計量する方式で、一玉ごとの計量精度を高めて無駄を減らしているそうだ。モヤシの根切り装置では独自の根切り機構と、モヤシが機械外にこぼれにくい構造で、根切り確率90%以上、歩留まり率98%以上を実現しているそうだ。

番組では韓国企業や台湾企業からの視察も相次いでいることを伝えていた。老婆心ながら韓国企業には気を付けたほうがよいと思った。機械導入を検討している食品メーカーの視察団の中に競合になる機械メーカーのメンバーが混じっていても不思議ではない(韓国企業は時折こういうことをやる)。同社も過去、かなりの試行錯誤を繰り返しているので、競合が追随してもすぐには模倣できないと考えているのだろうが、既に完成した先行製品をリバースエンジニアリングすることで(韓国企業はこれが得意)、意外と速く追いつくものである。

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日本企業に求められる「内向き同質組織」からの脱皮

全日本柔道連盟の不祥事の真因は内向きで同質の組織体質である。それは多くの日本企業の課題でもある。


指導者の暴力問題、助成金の不正受給など一連の不祥事で、全日本柔道連盟の会長辞任問題が取り沙汰されている。ガバナンス欠如などの指摘はその通りであろうが、その「懲りない」対応の底流にあるのは、同連盟が内向きの論理と「体育会系」体質一辺倒に染まっているからではないかと思わざるを得ない。身内同士でかばい合う意識が強く、思い切った自己革新をできないのである。日本相撲協会でも以前、同様の不祥事や指摘が相次いだことを思い出す人も多いのではないか。

しかしこうした問題点やその主要因をよくよく考えてみると、過去に表面化した有名問題企業(オリンパス、雪印、大王製紙など)での不祥事とその際に問題視された組織体質とよく似ていることに気づく。いわく、「おかしいと分かっていても指摘できない」「疑問を差し挟めない」という「場の空気」が不正の積み重ねを助長し、問題の深刻化に鈍感になっていったという。

実は我々が出入りする日本企業でも似たような雰囲気を感じることは少なくない。さすがに我々コンサルタントの面前で露骨に表面化することは滅多にないが、そうした状況を間接的に耳にするケースはよくある。つまり先に挙げた問題企業は極端であるかも知れないが、例外ではないのである。

以前どこかでバンダイ取締役の松永真理氏やベルリッツ名誉会長の内永ゆか子氏が指摘していたと記憶しているが、「優秀な女性を活かせない日本企業が多いのは、異質を排除したほうが幹部にとってコミュニケーションが楽で効率がよく、居心地がいいからだ」というようなことだった。これは真理をついていると思う。そして問題の本質は、そうした同質で固めた組織では「イケイケドンドン」の時には強い反面、現状に疑義を挟まないゆえに改革が遅れ、独創的なアイディアも出にくいことである。つまりイノベーションには向かない組織体質なのである。

小生は業務改革や組織改革の際によく、変革への「5つの壁」という話をする。元々小生のいたアーサー・D・リトルという戦略コンサルティング会社で開発した組織変革手法の一つなのだが、最初の壁は「認識の壁」である。そもそも問題があると思っていない段階では、人は変革・改革などという面倒くさそうな話には乗ってこない。「解決しよう」と持ち掛けても真剣に検討する気にならず、表面だけ付き合うふりをしながら適当にお茶を濁すといった行動を見せる。「内向き同質組織」ではとりわけ「認識の壁」が分厚く、そこを突破するのに多大なエネルギーを要する。

同質体質からの脱皮は、グローバル人材獲得競争に勝つためにも必須だ。同質体質の企業では文化背景の異なる現地の人たちを幹部に昇進させるルートが細くなりがちだ。既に進出した企業の先例のせいで、「日本企業では優秀な人間でも日本人男性でない限り昇進が難しい」という悪評が定着してしまっているケースも多い。創薬ベンチャー・アキュセラのCEOである窪田良氏が米国で起業した理由を問われて、日本より米国のほうが研究者の多様性に富んでいたから、と答えていた。そして「日本が真にイノベーティブな社会を目指すのであれば、人材の多様性を進め、異質なモノを許容する社会を作ることです」と強調していたのが印象に残る。

小生は日本人がイノベーティブでないとは全く思わない。しかし組織となると、多くの日本企業がその同質性ゆえにイノベーティブになりにくいことは認めざるを得ない。「チームワークのよさ」という強みを失わずに、異質な「個」を今後いかに育てて強めていくのか。まるでサッカーの日本代表チームみたいな話だが、柔道連の問題も多くの日本企業にとっては他山の石とすべきなのである。

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光触媒の製品化が大きな一歩を踏み出した

6月23日の夢の扉+は「ウイルス・細菌・カビを撃退!除菌率99.9%の“光の技術”」と題して、光触媒タイルの開発に成功した、北九州市の製鉄加工業・フジコー、山本厚生社長とその技術者たちを採り上げた。

太陽や蛍光灯などの光を当てるだけで、細菌や消臭を可能にする技術・光触媒。使われる材料は酸化チタン。この酸化チタンに光が当たると、空気中の酸素や水分と反応、活性酸素が生まれる。これが、細菌やウイルスなどを攻撃・分解する。素晴らしいことに、この効果は光があるだけで半永久的に持続する。小生は某プロジェクトが縁で、この日本発の夢の技術に注目してきた。

難題は、いかにタイルの表面を覆うかであった。酸化チタンを塗装するだけでは剥がれやすく、光触媒の構成比率が低く(5割ぐらい)、効果が十分でないのだ。山本社長たちは、接着剤を使わずに貼り付けようと、「溶射技術」で密着させることに成功したのである。

その技術開発の過程は大変だったようだ。溶射の熱で光触媒が溶けてしまうため、失敗が続き、研究費用だけがかさむ。会社は赤字になってしまい、役員たちから「研究をやめるべき」との批判が浴びせられた。しかし「10年かかる研究だから他が真似できないモノが生まれる」「新しい技術を生み続けることが、社員を守ることにつながる」との信念の下、山本社長は開発を続けさせた。彼には700人の社員をリストラした過去がある。

モノレール 平和通駅は、トイレの強烈な臭いという悩みを抱えていたが、この特殊なタイルを設置した途端、臭いがピタリとなくなったという。番組スタッフが周期測定器でチェックしてみると、公衆トイレの中と外の数値に変わりはない。

今や、院内感染を防ぐ対策の一つとして、山本氏たちの技術が、病院内に取り入れられることになった。宮崎大学病院?では、鳥インフルエンザや口蹄疫の予防に向け、施設の壁や床で実験的に使用されている。医師は「床材・壁材を張り替えることによって療養環境の感染対策が進んで、より安全に患者さんたちの入院生活が続けられるのではないかと期待している」と語った。

小倉倒津病院では、床に敷くタイルではなく、どこにでも移動可能な空気清浄機タイプの光触媒製品を設置。部屋中にばらまかれた細菌をどのレベルまで取り除くことができるのかの実験では、30分程度で対象の菌の99パーセント以上が除去できていた。これは期待できそうだ。是非、全国そして世界でこの日本発の技術が院内感染を防ぎ、そして食中毒や臭いを防ぐようになって欲しい。

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紛争仲裁請負人の活躍と中国の行く末

先週放送されたNHKスペシャルの録画を観た。「中国激動 怒れる民をどう収めるか ~密着 紛争仲裁請負人~」というタイトルである。経済発展の一方で貧富の格差が広がり、地方では政府と住民の対立が深刻化している。その典型的な一例を採り上げ、紛争仲裁請負人が地方政府と住民の間の仲裁をする姿を描いていた。

中国では年間20万件ものデモや暴動が各地で頻発している。背景にあるのは昔のような「重税にあえぐ農民」といった姿ではない。中国では建前上、土地所有権は共産党政府にあり、住民は使用権を与えられているに過ぎない。地方政府は開発対象地域の農民や住民を僅かばかりの補償金を握らせて強引に追い出し、土地開発業者に使用権を売るのである。地方政府にとって貴重な収入源であり、役人にとっては業績につながる。その後、開発業者が商業施設やマンションなどを建設して販売、莫大な利益を上げるという図式である。

一方、追い出された農民には農業以外にスキルがなく、無職の状態が続く。やがてなけなしの補償金も使い果たしてしまう。必然的に地方政府に対してさらに補償金を要求するが地方政府は拒否する。生活に困った元農民の訴えは無視されるか暴力で黙らされる。それでも抗議する人が集まりデモで訴える。開発を妨害する。地方政府は暴力で鎮圧しようとするが、やがて暴動にまで発展する。

この番組で取り上げたケースでは、住民との対立で開発がストップしてしまい困ってしまった地方政府(江蘇省灌雲県)が民間の紛争仲裁請負人(周鴻陵氏)に相談を持ち掛けた(異例のことである)。対象の陸壮村の住民350人の大半は既に立ち退いており、立ち退き料(約200万円)は底をつき掛けている。地元政府に窮状を訴えても取り合ってもらえない。ある意味もう失うものはない。地方政府に対しては不信感と恨みしかなく、開発を進める地方政府と業者に対し過激な妨害に走る。要求もエスカレートしがちだ。

一方、灌雲県の住民交渉担当者(孔慶幹氏)は典型的な地方役人で、住民を暴力で脅して言うことを聞かせるものだという思想の持ち主。開発の利益を住民にも与えるなどという発想はないが、何とか住民を大人しくさせる手段はないかと模索している。

この2者をまず同じテーブルに着かせ、意見を言い合わせるところから紛争仲裁請負人の仕事が始まるのだが、予想通り、両者は自らの言い分を主張し相手を非難するばかり。相手の話を聞いて妥協の余地を探る気持ちはない。周氏の次のステップは住民グループの取りまとめ役を決めるよう持ち掛けること。地元政府にも住民グループ代表と交渉するよう持ち掛けるが、住民交渉担当者の孔氏はそんな交渉をしたことがないし、住民からの搾取しか地方政府が業績を上げる手段はないと本音をいう。

やがて2月の旧正月を迎えた北京には、地方政府の横暴を直訴し中央政府に陳情するために上京する地方住民が集結する。そんな折、陸壮村の強硬派の一人、趙さんが上京し行方不明になる。中央政府に地元のトラブルを知られることを恐れた孔氏の差し金で趙さんを北京で掴まえ拘束したのである。ほとんど暴力団のやり口である。しかし趙さんは脱走。この機を捉え周氏は灌雲県の幹部を呼び出し、住民との妥協を交渉する。幹部は取引に応じ、住民側も妥協にまとまる。

しかしそのタイミングで工事の遅れに業を煮やした開発業者が強引に工事を再開しようとし、怒った住民と衝突。住民代表が開発業者を止められなかった地方政府に抗議するが、灌雲県の孔氏も一方的に住民側を非難する(この人物は全く学習しない)。せっかく妥協しようとした両者だが、一歩間違えれば決裂する手前まで来る。周氏はこの後も根気強く仲裁を続け、署名をまとめるよう住民代表に働き掛けるところで番組は終わる。それにしても、やはり交渉ごとは相手を見定めないと難しいことがよく分かる。

周氏が中央政府の幹部候補生の研修教材に書いた言葉、この国の実情を表す「帯血的GDP」(血に染まったGDP)は象徴的である。今の中国の発展は幾多の人々の犠牲の上に成り立っていることを意味する。周氏は中央政府に「住民と平和的に対話せよ。さもないと暴動がエスカレートし国は滅びる」と訴えたいのだ。この国の行方は険しい。

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限界に来た家電量販店のビジネスモデル

大手家電メーカーの製品開発力と高率リベートに依存して伸びてきた家電量販店は、そのビジネスモデルの限界が見えつつあり、その革新のための試行錯誤もまた注目される。


最近の家電量販店に関するニュースは冴えないものが多い。大手4社(ヤマダ電機、ビックカメラ、エディオン、ケーズHD)の直近の連結業績は軒並み大幅減益で、業界3位のエディオンは初の営業赤字、2位のビックカメラはコジマ買収前の経常利益水準にすら届かなかった。1位のヤマダ電機は全取締役降格という異例の人事が話題になった。

家電量販店は、パソコンや薄型テレビといった具合に、電機メーカーが次々に生み出す新製品で伸びてきた。ところが地デジ放送への切替時に先食いした「薄型テレビ需要」を継ぐ大型商品が途切れてしまっており、それが今の不振の主因だという説が有力らしい。

確かに、スマホやタブレット端末といった情報家電の新製品はその後も続々と登場したが、前者はケータイショップで買うのが主流だし、後者はノートPC需要を食いこそすれ、家電量販店で爆発的需要を生んでいるとは聞かない。次世代薄型テレビといわれた3Dテレビは観るべきコンテンツが供給されないまま、最近は話題にもならない(我が家でも3Dメガネは仕舞われたままだ…)。

そもそも日系大手家電メーカーが赤字に苦しみリストラ中なのだから、昔のようにどんどん新商品が開発される状況でもない(アイリスオーヤマは別だが)。家電量販店の大量仕入・大量販売という収益モデルの前提であるメーカーの販売リベート総額が縮小しつつある中、バイイング・パワーを少しでも維持したいがために業界再編劇を繰り返すという構造に陥っている。

何より問題なのは、品定めのために来店するが、実際の購入はネット通販で行う消費者の割合が急増していることだ。俗に云う「ショウルーム化」現象である。商品説明だけさせられる販売員はたまったものではないが、客が本当に買う気があるのかを見分ける手段は店側にはない。大型商品の不在より、こちらのほうが深刻な問題だろう。

あれやこれや考えると、家電量販店のビジネスモデル自体が限界に近づきつつあると言ってよかろう。それを象徴する動きが、旧三越新宿店跡の店舗をユニクロとコラボして「ビックロ」にした、ビックカメラの試みだったかも知れない。太陽光発電設備の販売やネットサービス契約窓口など新しい商材を扱うことにも各社は取り組んでいるが、従来の「商品仕入販売」または口利きビジネスの域を出ていない。今はいずれの社も試行錯誤の最中なのだろう。

一昨年から昨年にかけて、もう一つ重要な動きがあった。それがヤマダ電機による、中堅住宅メーカーのエス・バイ・エルと住設機器メーカーのハウステックHD(旧日立化成工業の住宅設備機器部門)という2つの住宅関連メーカーの買収である。つまり業界トップ企業が有力新規事業として住宅関連領域に注力することを目指したのである。実際、その後多くのヤマダ電機店舗にエス・バイ・エルの住宅販売コーナーが設けられており、「家電量販店でスマートハウスが買える」と話題にもなった(CMも流された)。

ただし家電量販店で家を買う消費者が急増するとも考えにくく、経営インパクトとしては大きくはないだろう。それより家電量販店のビジネスモデルを変革するほうが重要だ。そしてネット通販に効果的に対抗するには実店舗でしか体感できない仕掛けとサービスを組み上げるしかないが、その策は幾つかありそうだ。

多分近いうちに、(エス・バイ・エルの住宅だけでなく)ハウステック製を中心としたシステムキッチンやバスルームが、ヤマダ電機店舗内に設けられた住宅関連フロアで大々的に売られるのだろう。太陽光発電や省エネ設備といった光熱絡みだけでなく、水廻りと絡めて住宅リフォーム需要を取り込もうというのは、取り掛かりとしては十分現実的である。何といってもバスタブの広さ・深さやシステムキッチンの使い勝手は、現時点のネット通販では体感できないものである。

少なくとも、傷ついた家電メーカーの商品開発力と販売リベートだけに頼る「待ち」の姿勢より、こうした新しいビジネスモデルを試してみる「攻め」の姿勢のほうが頼もしいのは間違いない。

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ASEAN・インド市場を切り開く地道な努力

夜のワールドビジネスサテライト(WBS)は、2夜連続の「躍進!ASEANを拓く」と題してアジア新興国市場での日本企業、特にホンダの挑戦を追うもので(メインキャスターの小谷真生子さんが現地を取材)、興味深く観た。ホンダはタイで自動車も二輪車もトップの地位を占め、他社からターゲットにされているし、元々あまりオープンな企業ではないのに、今回はWBSの取材にかなり協力的に情報公開しており、驚いた。

最初は、タイ現地でいかに日本車に人気があるかという今さらの内容だったが、アジア専用車を(日本発の車をベースにはするが)タイの開発拠点(ホンダアジア太平洋技術研究所)で開発している様子が映された。CATIAでの3D設計現場や、デザイン部門でのベースとなる「ブリオ」(日本用ハッチバック)と「アメイズ」(ASEANとインド用セダン)変更部分も映された。小生は以前某メーカーのデザイン部門でコンサル仕事をした際の厳重な警戒ぶりを思い出した。

面白かったのは、タイの技術者がインドで聞いてきた地元ニーズのポイントは次の2つだという。まずトランクルームにはキャスター付きキャリーバッグ(ある程度大きいサイズだった)が4つ入ること。男性がターバンを頭に巻いた状態で後部座席に座れ(その高さがある)、しかも座席で足を組めるスペースがあること。ちょっと笑えるが、確かに(日本にいては分からない)現地のニーズである。

もう一つ面白かったのが、ミャンマーにおけるホンダの二輪車マーケティング部隊の動きだ。地元で圧倒的なシェアを持つ中国製コピー車は本物の3分の1程度の価格で売られているが、外観はそっくりだが中身は全然違う。例えばAT(automatic transmission)という表示がコピーされているが、マニュアル・ミッションだ。それにプラスチックカバーの透明度が数年で劣化し計器が読みにくくなることも現物で見せてくれた。いかにも「安物買いの銭失い」なのだが、初めて買う消費者には必ずしも知られていない。

本物のホンダの二輪車にずっと乗っているホンダ・ファンはそうしたことを分かっているので、「乗り心地がずっといい、故障が少なく修理代があまり掛からない」などと語っていた。ホンダはこうした品質の違いに加え、(タイから技術者を呼び寄せて研修し)メンテナンスサービス技術を上げることで、安い中国製コピー車との差別化を狙っていることがよく伝わってきた。地道な努力だが、車台や部品共通化などのコスト削減、そしてタイの従業員の力と合わせることで達成できることを期待したい。

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「ニッポン」を買う外国人を嫌がる、偏狭なナショナリズム

6月14日に放送された「たけしのニッポンのミカタ」は、「日本を買え!外国人が狙う不動産&水資源&人材」と題して、中国人をはじめとする外国人が買おうとするニッポンの資産の色々を紹介した。司会はビートたけしと国分太一、ゲストは黒鉄ヒロシ、北斗晶。

最初の登場人物は、中国でアパレルショップを経営している女性。中古マンションを投資目的で購入を検討している。次は北海道・ニセコ町で1万坪の土地をもちペンション経営をしている男性。自分の土地を見知らぬ男たちが調査していた。その数日後、土地を売って欲しいと業者と現れたのは中国人。その人物は水資源の豊富な場所を買おうとしていたのである。

日本の土地制度は世界中の誰もが買えることが特徴で、これはアジア太平洋14ヵ国の中でも日本だけだという。しかしこれは(意図的な?)間違い。マレーシアもまた外国人に土地購入を開放している(但し最近高騰しているが)。

海外から狙われているのは「土地」だけではなく、「人材」も狙われているとこの番組はいう。ヘッドハンティングの会社によると、最近、外国系企業からの依頼が増加。高額提示で人材を求めているという。特にホテルなどのサービス系やインフラ建設系で高スキル・経験豊富な人がターゲットという。

最後は日本の伝統の話。「盆栽」はいま外国人に大人気で、盆栽を堪能するために日本を訪れるツアーまであるし、外国で盆栽の専門誌が発行され、イタリアでは専門学校まで出来るほど。「盆栽」は世界共通のアートとして認識されつつあるという。番組は静岡県のある盆栽業者に取材。そこにはスペインと台湾からやってきた弟子がいる。5年で一人前といわれる盆栽職人。惜しみなく技術を教える師匠だが、この弟子たち、いずれ日本を離れ、母国で彼らは盆栽職人になるのだ。日本での伝統工芸の継承はどうなってしまうのか、心配になる。これは盆栽に興味のある若い日本人を見つけられないという問題である。

番組全体を通して感じたのは、外国人に対するいわれのない偏見である。

なぜ外国人が日本の不動産や会社、人材を買ってはいけないのか。むしろ日本に興味を持って、投資してくれるわけであるから、有難がるべきである。水資源の豊富な日本の土地を外国人に買われて、そこで汲み上げた水が海外に売られ、日本人があまり儲けに関与できなければ面白くないという感情は分かるが、それなら自分が投資すればいいだけのこと。また、日本人が海外で似た様な投資をしているケースも多い。

もし水資源を海外に売ること自体に反対するなら、逆に石油や天然ガスを輸入するしかない日本はのたれ死ぬことになってもよいことになる。日本人には自由にさせろ、外国人がするのはけしからんというのは矛盾している。

黒鉄ヒロシ氏の言い方も偏狭な攘夷派と感じた。新大久保辺りで「韓国人出ていけ!」と叫ぶヘイトスピーチのデモ、または先日物議をかもした維新の会での西村代議士の差別発言などと同様な、アジア系外国人に対する差別意識がベースにあるのではないか。こういう歪んだナショナリズムが公共の電波で平気で流されてしまうのはとんでもない。中国や韓国での放送の論調も似たようなものらしいが、それと同じ低いレベルになってしまってどうする。ニッポン人よ、品格を失うな。

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福島の農地をよみがえらせる「人工ゼオライト+磁性体」

6月9日放送の「夢の扉+」は「福島の農地をよみがえらせる!世界初の除染技術 “廃棄物+磁力”で放射性物質を除去する!」と題して、福島で“農地の除染”に関し画期的な技術開発に成功した、愛媛大学教授の逸見(へんみ)彰男氏を採り上げた。

逸見教授は土の研究一筋、40年。火山灰土壌で農作物が育ちにくいのはなぜか、という謎に挑んで10年。さらに10年をかけて、土壌改良材「人工ゼオライト」を“廃棄物”の石炭灰から生み出した。『自らの研究を世の中に役立てたい』という強い信念をもって、研究を続けた人物である。

福島での土壌の除染の中でも、最も難しいとされるのが“農地の除染”である。現在広く行なわれている、表面をはぎ取る除染方法や、深い部分の土と入れ替える方法では、肥よくな土を失ってしまう。そこで注目されるのが、放射性セシウムだけをピンポイントで狙って吸着できるゼオライト(火山灰が固まって生成された鉱物)。専門家である逸見教授の技術に一気に関心が高まった。

問題はその回収方法だった。土の中のゼオライトだけを回収する手段は?そこで知恵を貸してくれたのが「磁力のスペシャリスト」、同じ愛媛大学の工学部准教授、青野弘通氏だった。愛媛の研究所で特殊な合成技術によりゼオライトに磁性体をある割合で混ぜ、それを福島の田んぼで実証実験を繰り返すこと7回。

およそ1700ベクレルという高い水準の汚染土の田んぼが、最終的には121ベクレルまで下がった。ついに彼らは、肥よくな土を残したまま放射性セシウムだけを90%以上除去できるという、画期的な技術開発に成功したのである。

さらに逸見教授はタイに飛び、コメ生産の大手、トンファ・ライスカンパニーの社長と交渉し、捨てられていたもみ殻灰を人口ゼオライトの材料として使い、人口ゼオライトを大量生産してくれるように合意した。この技術が福島の農業を復活させることを願いたい。

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中国を「植民地主義」と非難したナイジェリア中銀総裁の冷静な見方

今月の1~3日の3日間、横浜で開催されたアフリカ開発会議では、一つには最後のフロンティアであるアフリカが持つポテンシャルの高さと現実の間のギャップ、もう一つには胎動を始めたアフリカ経済の開発に積極的に関わり先行する中国企業と慎重な日本企業のギャップの、両方が注目された。

後者については、資源獲得に目の色を変えている中国は政府主導で、しかも現地の政治体制に問題があろうと割り切って開発援助をするし、政府の後ろ盾を得た国営企業が積極的にインフラ整備を主導する。日本企業はというと、投資対象としては身近なアジアを優先する心理が強い上に、民主化の動きを見せない限り、そして安全が確保できない限り、二の足を踏む。差が開くのはある意味当然かも知れない。

閉会にあたって安倍首相は、日本の対アフリカ支援について「雇用をつくり、アフリカの人々を豊かにする」という視点を掲げた。中国の投資態度と違う、日本らしいアプローチを伝えるという意味で重要だと思う(少しオブラートに包んだ表現だったためにインパクトは不足気味だが)。

実は、今回のアフリカ開発会議に先立つ3月12日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)にナイジェリア中央銀行のサヌシ総裁が寄稿し、中国のアフリカ向けアプローチを「植民地主義」と批判したことで、同国の中でも国際的にも議論を呼んだ経緯があるので、余計に注目されていたのである。

サヌシ氏の主張のポイントは次の通りである。中国は石油や石炭などをアフリカ諸国で採掘しているが、中国本国の機材や労働力を使っているため、技術がアフリカ側に移転されない。中国はアフリカから一次産品を獲得し、工業製品を売る。「これは植民地主義のエッセンスだ」と痛烈に批判したのである。

事実はどうか。中国は昨年までの12年間で、アフリカ諸国との貿易額を20倍にまで増やした。その結果、確かにアフリカ経済は成長したが、アフリカのGDPに占める工業割合は低下を続けており、地元の産業は育っていない。

アフリカの多くの政府および経済界では中国の投資を歓迎する声が元々強く、地元ナイジェリアの新聞はサヌシ総裁の批判を逆批判している。「サヌシ総裁の言論は中国側の注目と反論を集め、両国関係を損なう可能性がある。このような中国に対する挑発的な視点はナイジェリア国内で反発を招くことになった」と。要は中国を怒らせるなということである。実際、中国政府は強烈に反発したようである。

しかしながら、サヌシ氏の指摘は鋭く、正しい。中国は国際政治における味方作り、資源獲得、中国企業にとってのビジネス機会という一石三鳥を狙っているからこそ、国を挙げてここまで積極的に投資をしているのである(欧州の旧宗主国以上である)。アフリカ諸国に同情や共感を寄せて投資をしている訳ではない。だからアフリカに進出した中国企業の行動は苛烈であり、地元に付加価値を残す発想はないし、地元経済を発展させようとか人材を育てようなどという気持ちは全くない。

それに対し「地元の役に立つ企業活動」に拘る日本企業の動きはどうか。実は、支援や資源・エネルギー権益獲得以外に、住友化学(蚊帳のBOPビジネス)の成功例に続こうという動きが出始めているようだ(エーザイや味の素、徳洲会など)。日本の大手企業は動き出すのは遅いが、一旦動き出せば継続を期待できる。あとはアフリカの人たちがどう評価し判断するかである。

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世界を変えた“下請け”ビジネスモデルのインパクト

アニメ×ドキュメンタリーという手法による番組「島耕作のアジア立志伝」の第2話は、“下請け”が世界を変えた~モリス・チャン」と題して、TSMC(台湾セミコンダクター製造社)の創業者をフィーチャーした。

TSMCは26年前、半導体チップの製造を代行する受託製造業(EMS)を世界に先駆けて始めた。今や世界600社と取引があり、シェア5割の圧倒的世界トップ企業にまで成長した。EMSは産業界を激変させた「ビジネスモデル革命」であり、その震源地がTSMCなのである。

日本メーカーが得意としてきた「垂直統合型」のビジネスモデルは、半導体産業の立上げ時には有効だった。今でも少量多品種の対応には優れているが、規模の経済が決め手となる段階での勝負では不利だ。モリス・チャン会長が番組の中で断言していたように、他社が1万個作るところをTSMCは1万1千個作る。それで競合より製造コストが下がり、「コスト削減できた」と考える。実にシンプルだ。

TSMCの本拠は台北の郊外、新竹サイエンス・パークにある(台湾のシリコンバレーと呼ばれる)。従業員37,000人中、17,000人が修士号か博士号を持つ。工場で特徴的なのは広大なオペレーション・ルーム。コントロール・チームは100人体制、交代しながら24時間リモート監視を行っている。工場の操業は完全自動で、欠陥のある半導体を早期発見することで歩留まり悪化を抑え、採算が飛躍的に向上するのである。

小生も別会社のものを見たことがあるが、TSMCの工場は完全無人かつ規模が桁違いで、半導体製造の最先端にあることがよく分かる。同社の強みは巨大な資本力。現在は新工場建設中で、建設費は1兆円、最新最大の機器は1台10億円。2012年の投資額は8,300億円。この投資規模に対抗できるのはサムソン、LG電子くらいではないか。

アップル社や、携帯・スマホ用CPUで世界一のクアルコム社はファブレス(自ら製造工場を持たない設計専門)企業であり、TSMCのようなEMSと対になる存在といえよう。TSMCとはオンラインでつながっており、TSMCの製造ラインと緊密な連絡をとっている。ちょうどTSMCのコントロール・チームのように、顧客が状況をモニタリングできるのである。製造棟は発注者別に分けてあり、担当者も発注者別。セキュリテイに万全を期し、技術の漏洩はない。クアルコムやアップルがTSMCに最新製品の製造を任せることができるのは、TSMCが秘密保持に関し絶大な信頼性を維持しているからであることが顧客の口からも語られた。

チャン氏は中国生まれ、香港育ち。1949年に18才で渡米、ハーバード大学入学。卒業後はテキサス・インストルメントに入社し、IBMの下請け仕事ばかりだったが半導体事業の知識・経験を蓄える。1985年、一念発起して独立。1987年にはTSMCを立ち上げ、EMSを始めるが、数年間収益は上がらなかったという。

製造だけの請負業は当初理解されず、成功しないと言われたが、やがてじりじりと市場で受け容れられ、今や産業の覇者である。一方、「垂直統合型」に拘った日本の電機・半導体メーカーは赤字に苦しむ。EMSというビジネスモデルの競争力とインパクトを物語る対照である。

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「ブラック企業」と呼ばれないために今できること

ある縁でその地のコンサルタント仲間に要請され、地方のある中堅企業を何度か訪ね、経営改革を議論したことがある。イシュー(論点)は色々と変わったが、小生が何度か蒸し返したのが、営業改革を通じての企業体質変革であった。それには理由がある。

その会社はその地方では有力な上場企業だが、今の経営トップが一代で築き上げた急成長企業である。典型的な叩き上げ型である経営トップの号令下、積極的な営業方針で伸びてきた。それでも今や子息の代になって組織の近代化を進めており、本社の管理手法などは東京の大企業と(少なくとも表面上は)同じようなものを取り入れている。

しかしながら営業のやり方、管理の仕方に関しては昔のままである。一匹オオカミ的な営業マンが個人の才覚で、狙った客に飛び込み訪問する「プッシュ型」である。営業所長もプレイングマネージャーとしてノルマを持つ。ここまでは実にありふれた典型的「ニッポンの営業組織」なのだが、この会社、営業マン個人に対する歩合の比率とその報酬額が実に高く、1件受注に成功するとXX間(微妙なので数字は伏せる)くらいは遊んでいても構わないほどである。

その結果、営業マン同士は、互いの案件を横取りすることはさすがにしないが、全く連携しない。上司も部下への指導よりは、自分の受注を上げるのが最優先である。それでどうなるかというと、地元人脈を押さえているベテランが高度に安定した成績を続けて稼ぐ一方で、若手はなかなか成績が上がらず、その多くが定着せずに辞めていく。結果として中堅層は少なく、極端に忙しい。すると若手へのOJT実施者が不足し、若手の離職率に拍車を掛けている。

こうした状況が望ましいとは当該企業も思ってはいないが、長期にわたった不況下、高い離職率でも新人獲得には苦労が少なかった。ましてやその地方では有数の高給会社である。多少仕事がきついという評判でも入社希望者は絶えなかったので、取り立てて特別な対策をしてこなかった(「無策」だったわけではないが、聞いてみると小手先の対策ばかりである)。その状況を小生が問題視し、チーム式営業を基本として推進体制とプロセスを変えるように持ち掛けた。

しかしながら窓口である経営企画部門の人たちの腰は重かった。最高権力者である経営トップがウンと言わないだろう、へたをすると怒鳴られかねないと懸念したのである。なぜならこうした「札束でビンタ」の「一匹オオカミ」営業方式でずっとのし上がってきた会社なので、それを否定することは経営トップには受け容れがたいと考えたようである。結局、その話はそれ以上進まず、未だにその会社は同じやり方を続け、若手の定着率は改善していない模様だ。

新人の採用・教育のコストはばかにならず、こうした定着率の低さはそれだけで勿体ない損失である。しかしそれ以上に、小生はこの会社の未来を心配している。今はまだ表面化していないが、いまどきの「ブラック企業」として非難される条件を十部に備えているからである。

若手から見るとその会社は、①(「注文を取ってくるまで帰ってくるな」などと言われ)拘束時間が長い、②(歩合は高いが受注しないと得られない。それに対し固定の)給料は安い、③営業所長からは(営業成績が上がらないことで)叱責はされるが有効な助言・指導はない、④結果として多くの若手が辞めていく、といった具合である。その企業の名誉のために付け加えておくが、同社は何ら違法行為を行っているわけではなく、本来の「ブラック企業」の定義には当てはまらない。しかし今や就職時期にある学生たちにいわせると、こうした若手が定着しづらい企業は押し並べて「ブラック企業」の資格を満たしているのである。

いずれそのうちに、辞めた元社員が2ちゃんねるや自分のブログ、もしくはfacebookなどにこの実態を書き込むだろう。それにコメントで拍車を掛ける者、知人に転送・シェアする者が出て、パンデミックのようにある時を境に急増殖する。そうなるとこの会社も今どきの「ブラック企業」リストに仲間入りしてしまう。すると途端に入社希望者が減り、今まで何とかつながっていた新陳代謝のサイクルも途切れる。いずれネットに疎いはずの顧客層にもその評判が伝わり、競合に商売を奪われてしまうだろう。

同社の経営企画部門の人たちには「苦い良薬」を経営トップに何とか飲んでいただくよう、勇気を振り絞って「猫に鈴をつけて」いただきたかったが(小生にやらせてもらえば説得する自信はあったが)、とりあえずは先送りとなった。さて今後はどうなるだろう。

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「不良社員」から「会社の宝」へ。「包装」に賭けた男の人生

6月3日に放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、「惚れた仕事は、愛し抜け」と題し、包装管理士・岡崎義和氏を採り上げた。包装の工程全般を取り仕切る専門職である。住宅設備機器メーカーのTOTOに勤務する岡崎氏は、包装の設計を30年間担当してきた。多くの企業が段ボールメーカーに包装の設計を委託する中、TOTOはあえて自前で設計を行い、最適な包装を岡崎氏に託している。

彼が包装の設計で常に念頭に置くのは、包装は客の手元に届いた途端に“ゴミ”になるということ。そのため、包装の設計に際しては極限まで無駄を省き、少ない材料で包装を作ることにこだわる。改良に次ぐ改良を加えた結果、10年あまりで17億円のコストダウンに成功した。その成果から、今や岡崎氏は「会社の宝」と呼ばれている。しかし若き日は文句ばかり言って手のつけられない不良社員だったという。当時の写真はいかにも「ヤンキー」である。

ある上司との出会いで仕事に前向きになり、28にして出会ったのが包装の設計という仕事だった。当時、包装の設計は軽んじられ、設計室も階段下の物置用のスペースがあてがわれていた。「包装」が置かれている立場を自らの境遇と重ね合わせたという岡崎氏は奮起し、がむしゃらに包装を学び、周りから評価されるまで成長した。だがその後、無理解な上司とぶつかり、畑違いの営業へ異動となり、包装の世界から離れた。

半年後、営業に走り回る岡崎に1本の電話が入った。社を代表する技術者、小林博志氏からである。温水洗浄便座の包装を改革してほしい、「お前に3年やる。好きにしろ」という(この話をする際、岡崎氏は涙を隠せなかった。この反骨の人にして、小林氏への恩に感極まったようだ)。岡崎氏は包装の道に戻り、「惚れた仕事は、愛し抜け」という思いを胸にさらなる飛躍を遂げ、今や「会社の宝」とまでなった。

定年を控えた岡崎氏は、集大成としての新しい包装の開発に挑んでいた。最低限のクッションで製品を守り、わずかな調整で形状の異なる製品を包むことができる、次世代の包装だ。実行部隊をとりまとめる部下の廣松隆明氏に引き継ぐべく、岡崎氏は持てる技術をすべて注いでいた。その指導は厳しく、仕事に誇りを持つ男の顔だった。

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日本の家電技術者の反撃を見たい

6月4日放送の「ガイアの夜明け」では「リストラに負けない! 家電戦士たちの逆襲」を観た。この数年、業績不振にあえいだ日本の大手家電メーカーが軒並み正社員の「リストラ」を実行してきたが、(技術者のうち一部ではあるが)反撃に移りつつある人たちの奮闘を番組は伝える。

今回の主な対象は2つ。旧松下電工を早期退職してアイリスオーヤマに中途入社した技術者と、パイオニアの退職者だけで立ち上げたオーディオ製品ベンチャー「スペック」である。

今年、アイリスオーヤマは白物家電事業に本格的に参入するため、元大手家電メーカーの人たちの中途採用を積極化した。シャープとパナソニックの退職者を狙って大阪で、説明会を開きR&Dセンターを開設した。この様子は幾つかの報道番組で既に目にしていた。

番組では、アイリスに途中入社した旧松下電工技術者に密着取材。3ケ月にわたる研修期間に仙台で単身赴任を続け、アイリスの開発スピードと一人で担当する範囲の広さに戸惑いながらも、頑張る姿に感情移入しながら観ていた。失敗もあったが何とか正式採用になり、大阪のR&Dセンターに配属された際に「ヤルゾー!」と叫んだ彼の、家電開発の仕事を続けられることの大きな喜びが伝わってきた。

それと同時に、パナソニックやシャープなどの経営陣の不甲斐なさや本社スタッフの多さが頭をよぎった。あの官僚組織が組織のあらゆるスピードを削ぎ、意思決定の中途半端さをもたらしたのだから、本来なら技術者をリストラすべきではないと感じた。

番組後半では、2010年元パイオニア技術者たち9人が退職金を元手に立ち上げた、オーディオメーカー「SPEC」を採り上げていた。平均年齢は55歳というおやじベンチャー企業だ。社長は元パイオニアの国内マーケティング担当の取締役だった石見周三さん(60歳)。パイオニア時代は自らリストラを指揮する立場にあったという。

SPECの主力製品はアンプ、しかも約120万円と高級品。買える人は少なく、地方の販売店回りや視聴会に奔走するが、売上は伸びない。しかし彼らは次の手を用意していた。

高品質でデザインがよく、安価な(20万円台)の商品を開発していたのだ。ヨーロッパ市場を主ターゲットにすべく、ドイツの展示会(High End)に期待の新製品を持ち込む。

これが大好評で、ブースにはバイヤーたちが押し掛ける。音の良さ、デザインの良さ、バイヤーたちの称賛が続く。その場でデモ用に現物を買うバイヤーすらいたという(間違いなく異例である)。帰国直後には内示と注文が相次ぐ様子が放映された。彼らの心意気が近い将来報われることを願って止まない。

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牛丼業界に見る価格戦争に戦略的見通しはあるか

牛丼並盛を対抗値下げした吉野家は売上増には成功した。今回さらに対抗値下げした効果に乏しいすき屋と松屋はもちろん、実は吉野家も業績回復は難しい。この局面での価格政策にはより高度な戦略性が求められる。


牛丼大手3社の決算が出揃った。4月18日から牛丼の「並盛」を100円下げて280円にした吉野家は、4月の既存店売上高は前年同月比11.1%増加し、客数も13.6%増と16カ月ぶりでプラスに転じたという。しかし280円から250円に対抗値下げしたすき家と松屋は効果が限定的で、既存店売上高は20カ月連続減(すき家)、13カ月連続減(松屋)と前年割れした。

これだけ見ると、しばらく値下げを我慢していた吉野家が「値下げのインパクト」を享受し、業績回復に成功したと判断する人も多いだろう。小生はそうは見ない。そもそもこの吉野家の4月の値下げは決して戦略的なものではなく、追い込まれての「苦し紛れの手」であると見ていた。そして多少の売上増にはなるが、利益はむしろ削られると見た。
http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-163.html

上記のプログを書いた際には、予測のために置いた前提として、牛丼の粗利率を50%、値下げの売上増効果を「仮に高めの20%Up」とした。それでも粗利が44%も減少するという結論だった。実際には売上増効果は現実的な11%強だったわけだから、粗利はさらに縮小することになる。

小生は牛丼の実際の粗利率は知らないし、もしかすると、とんでもない数値なのかも知れない。ここは同社に敬意を表して値下げ前は仮に75%だった、つまり元の価格380円に対し粗利が285円もあったとしよう(真実は多分、前のブログの前提と今回の試算の間にあるのだろう)。しかし価格を380円から280円に下げると、原価95円は変わらないので、粗利は一挙に185円に縮小する。売上は11.1%増だったのだから、粗利合計は(285円×100→185円×111.1となり)元の72%に縮小し、やはり利益は大きく棄損したことになる。

つまりこの値下げは元々、利益が減る可能性がかなり高いものだったことがわかる。では何故、吉野家の経営陣はそんな価格政策を採用したのか。一つには「追い込まれて」の手だと申し上げたように、来店客数がじりじりと落ちていたのかも知れない。だから起死回生策を打ちたくなったのだろう。

もう一つ、業界関係者が語るのを聞いた限りでは、2月に米国産牛肉の輸入規制が緩和されたことから、輸入牛肉価格が大幅に安くなると期待したようだ。だが実際には大幅円安により、その期待は裏切られている。しかも原料だけでなく、賃料や光熱費なども値上げの方向だ。

こうして見てくると、さらに対抗値下げしたすき屋と松屋はもちろん、今回の値下げで客数と売上を増やした吉野家も、利益を大幅に減らすことが見えている。世の中がデフレからインフレに切り替わる時には、単純な値下げは自らの首を絞める行為だということがよく分かる。だからといって単純に同じ商品を値上げすれば、商品特性と業界のチキンレース状況から見て、大幅な売上減を招くことも明らかである。

つまり客数を維持しながら実質値上げをどうやって実現するか、メニュー構成を根本的に見直すべきなのだ。この局面での知恵の見せ所だと思う。

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メタンハイドレートに賭ける男たち

5月30日に再放送された「夢の扉+」は「燃える氷を日本のエネルギーに!」と題して、メタンハイドレートの海洋産出に、世界で初めて成功した日本の開発チームの姿を伝えた。資源量調査の佐伯龍男、環境調査の中塚善博、そしてフィールド開発の山本晃司の3氏である。

メタンハイドレートは、天然ガスの主成分・メタンと水が結合して結晶化したもの。“燃える氷”とも呼ばれる天然資源で、深海の地層などに存在する。日本近海には「国内天然ガスの年間消費量100年分」のメタンハイドレートが眠るとの推計もあり、国産資源開発に期待が高まるが、実際の産出には幾多もの壁が立ちはだかる。

まずメタンハイドレートがまとまって存在する地層がどこにあるのかが分かっていなかった。資源量調査のリーダー・佐伯は、これまで油田開発に経験を重ねてきた。彼は愛知・三重沖の海底にある「お椀型の地層」に目をつけた。それは石油や天然ガスが集まる形状であり、事実、そこからメタンガスが大量に発生することが確認された。「濃集帯」発見の法則を確立したのである。

しかしその場所は優良な漁場。そのため中塚は、メタンハイドレートの産出が、生物や地層に与える影響を徹底的に調査。その結果、万一メタンガスが漏れたとしても深海の冷たい水と水圧で氷になると評価された。プロジェクトにはGOが掛った。

次は、土中に押し固められたメタンハイドレートを取り出す技術の確立だ。山本らによる2年におよぶカナダでの陸上実験。日本が世界に先駆けて、メタンガス産出技術「減圧法」が確立した。

ついに皆の想いを背負い、フィールド開発のスペシャリスト山本らが、掘削船「ちきゅう」に乗って大海原へ向かう。山本はビデオカメラで全てを記録した。2カ月にわたる船上生活。海面下1300メートル(海面から見るとスカイツリー2つ分掘ることになる!)の掘削。全てが過酷な挑戦である。

作業準備ができたところで強い嵐が来る。「ちきゅう」と掘削パイプの間はつながれており、悪くすれば折れてしまう。嵐の中での作業はまさに「天に祈る」ものだ。夜が明け、嵐が去る。何ともドラマチックである。午前5時40分、パイプの中の水が抜かれ、メタンガスが湧きあがるのを待つ。減圧開始から4時間、海底から取り出されたガスに火が着いた。

プロジェクト発足から12年、悲願達成のニュースに日本中が沸いた。5年後には商業化も目指せるという。国民みんなが期待を寄せる技術である。日本には地熱が最有力だという小生の持論は変わらないが、それだけで全て賄える訳ではない。メタンハイドレートの産出で日本の国産エネルギー資源が十分確保できるようになればこれに勝るものはない。

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外資ファンドと日本企業の新しい関係の芽生え

NHK BSの「ドキュメンタリーWAVE」で「“黒船”再来~急増する外資ファンド~」を観た。番組は、最近改めて注目されている、日本に投資する外資ファンドの動きに注目し、特に日本通の米国人が創設した、日本の公開株式市場専門のファンド、タイヨウ・ファンドの動きを追う。同時に、グローバル企業として生き残ろうと経営改善を図る、トプコンを代表とする日本企業の受け止め方と対応具合もクローズアップする。

この数カ月、日本への外資ファンドによる投資が急加速している。(本当は以前からあるが)新しい動きとして最近注目されているのが、友好的アプローチと投資先企業に対する支援を組み合わせた「ハンズオン型」のファンド。タイヨウはその先駆者の一つで、長期投資家である。

若い頃に日本に留学しそのまま日本でのコンサルタント会社で働いたヘイウッドCEOは日本通で、実に日本が好きである。彼は「“ハゲタカ”と呼ばれたような敵対的手法はもう通用しない。経営改善策を具体的に提示し、日本的な経営から効率的で儲かる経営へと友好的に導くことが高いリターンを生む」という。

トプコンはタイヨウが8年前に投資して以来の付き合い。内田社長は株主総会で「言われたことは達成したでしょ」と少し誇らしげ。「最初はむかっときたけどね」と冗談めかして言うが、本音だろう。その上で今後について「ここまでは(コスト削減やリストラだから)簡単だったが、これからは成長が課題なので難しい。これからもご協力を」と極めて前向きに捉えていることが分かる。

トプコンは、最初はタイヨウの助言を無視し、半導体関連事業と精密光学事業での赤字を続け(それでも、測量事業と医療事業で利益は伸びたが)、その後のリーマンショックおよび超円高で業績が急激に悪化し株価も急落したのち、ようやく構造改革に踏み込んだとのこと。その際にきっかけになったのが、タイヨウが提供した競合メーカーとのベンチマーク分析。当たっているし、第3者からの指摘ゆえに危機意識が芽生えたとのことである(本来は経営コンサルタントがやらなければいけない話だが…)。

内田社長らが今やタイヨウを実に信頼していることは幾つかの言動で分かる。例えば、研修の一環で株主視点を学ばせるために、米国にあるタイヨウに中堅幹部を4人数日間派遣して、タイヨウのスタッフと議論し課題とその解決策を考えさせる場面があった。また、リストラを終えたトプコンは農業分野でのIT活用に大きな事業機会を見出しているようだが、その事業の成長可能性や米国法人の組織作りにタイヨウはきちんと目を光らせようとしていた。また今後の成長に必要な手段としてM&A活用を薦めていたのも当然だ。そうしたタイヨウの視点に「自分たちにない、よいところをミックスしたい」とトプコン経営幹部は前向きだった。

西武HDとサーベラスが火花を散らしている最中なので、面白いタイミングであった。そうしたハゲタカっぽい多くの外資ファンドが日本市場を見放して撤退した中、ずっと投資を続けてきたタイヨウの覚悟は立派なものだ。それにしても番組の「黒船」という表現はかなりズレていると感じた。

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プロジェクト失注にあたり考えたこと

5月の間じゅう追い掛けていた営業業務改革案件で大手競合に敗退してしまった。最後まで競ったのだが、残念至極だ。

しかし敗退の理由を聞いて、愕然とした。当方が最初から申し上げていた「担当者レベルの業務を変えることは当然だが、本当の変革ターゲットは現場マネジメントですよ」という主張が、結局は十分に伝わっていなかったことが根本的な敗因であると認識している。

その上で、クライアント側から第一の理由に挙げられたのが、当方のメンバーに「社友という外部の人間がいること」で、小生のコントロールが難しくなるのではないかとの懸念だった。これは当方が小規模な会社であることへの懸念でもあることは分かった上で、そこに致命的な誤解があるのが悔しい。

今回はちょっと特殊な「現場張り付き」プロジェクトで、現場での振舞い方がかなり難しいのに各現場には単独で入ることになっているため、自分で臨機に動ける判断能力と相当な経験がなければ務まらない。実際、当方は関係会社のコンサルティングメンバーを使うこともできたが、それでは不安だったため、敢えて旧知の社外メンバーを含めベテラン揃いにしたのだ。プロジェクト提案書の中には、社外メンバーを「社友」と明記しておいた。

一方、選ばれたコンサルティング会社は大手、だから構成メンバーは全員社員だとのこと。しかしそれは、このクライアント企業がそう信じているだけかも知れない。業界外の人はあまり知らないだろうが、元々大手コンサルティング会社は下請けを結構使うのである。実際のところこの時期、コンサルティング業界は結構忙しいので、大手はどこもマネジャークラスのメンバーがひっ迫している。そうした事情から考えると、選ばれたコンサルティング会社のメンバーにも下請けメンバーが結構混じっていると考えるほうが理に適っている。

しかも大部分のヒアリングや分析をこなす社員メンバーはかなり若いはずで(それが大手コンサル会社のビジネスモデルである)、当方のメンバーのようにベテラン揃いとはいかないはずである。メンバー構成も、社員はたまたま空いている人間であり、下請けも「人集め業」の人がたまたま捉まえてきた中から選ぶしかないので、信頼できる人ばかりを揃えることはできない。つまりメンバーの質もチーム安定度も、当方は引けを取らないどころかむしろ上回るはずなのである。

こうした事情をあらかじめ説明しておくべきだったと今では思うが、何度も「当方の提案に懸念はないですか?」と尋ねたが、その度に「ない」と断言されたので、安心していたのだ。しかし最後の最後にその点が懸念点として浮上したのだとしたら…。この点に思いが至らなかったことが今回の敗因であり、一番大きな反省点である。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

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