ESの高さが驚異の顧客サービスを産む実例がここにある

7月25日のカンブリア宮殿「“幸せ”サービスで客の圧倒的支持 長野発タクシー革命!」は意外なほど充実した内容だった。そのタイトルと予告の動画からはむしろ「胡散臭い」香りだったが、何となく録画したのを観たところ、予想を超えた面白さだった。

主役は長野市ではダントツに有名な中央タクシー。長野市民から圧倒的な支持を得て、県内ナンバー1の売上実績を誇る。地方タクシー会社の9割が赤字といわれる昨今、2012年度の経常利益は過去最高を記録。この会社のすごさはまず、中央タクシーの客の9割が電話予約という事実。いわゆる「流し」はしないし、一旦入ったら2~3時間を覚悟しなければいけない駅前のプールには入らない。その必要がないのである。一度でも乗ればほとんどの客がリピーターになるので、「指名」だけで成り立っているのだ。

その秘密は徹底した真心サービス。中央タクシーのドライバーは皆、驚くほど親切である。高齢者にはさっと手を貸し、さりげなく買い物袋を運び、雨の日には傘も差す。そして、車内の会話を通して客の家族のことを気にかけ、300メートルという超近距離でも喜んで運行する。

「客の幸せが先、利益は後」そんな経営理念で、長野では知らぬ者はいない。そんな中央タクシーには、驚くようなサービスを目の当たりにした客からの感謝の手紙が絶えない。米百貨店、ノードストローム社にあるような逸話が中央タクシーにもごまんとある。しかし当人たちがいちいち自慢気に報告しないから経営者も客から知らされるばかりだという。当人たちは言われたからではなく、それが当たり前だと思ってやっているから、むしろそれを驚かれることに戸惑っているようだ。

中央タクシーに、接客マニュアルは存在しない。その質の高いサービスを支えているのは、驚くほど仲の良い社員たちの人間関係だ。会長の宇都宮恒久氏は言う。「社内の良い人間関係こそが、良いサービスを生み出す」と。離職率が20〜30%といわれる業界にあって、中央タクシーはわずか1. 5%という低い離職率である。

同社社員同士の幸せが客を幸せにするという好循環を生み出している。この〝言うは易く行なうは難し〟の理想的な経営スタイルはなぜ実現できたのか?その秘密の一つは、同社社員は皆、採用されたときには素人、未経験者ばかりなのである。しかし、だからこそ業界の変な癖や価値観に染まっておらず、同社の価値観に違和感なく溶け込めるのだ。


そうしたES(社員満足度)の高い社員のもたらすものが、高いモチベーションと「お客様がタクシーに求める事を実現したい」と考えるから生まれるヒット企画である。最近のヒットは、業界初の試み「家からの旅」通称イエタビ、つまり乗り合いタクシーを使った自宅からの日帰り旅行。県内観光地を巡るだけでなく「歌舞伎座ツアー」「咲いたら行くお花見ツアー」「孫と行く夏休みツアー」など顧客のニーズに合わせたテーマの、様々なプランを運転手たち自らが企画開発に関わることで、他にない気配りの行き届いたサービスをつくり上げている。

(京都のKMタクシーと並んで)業界の有名な異端児が新たな地平を切り拓くべく、今日も挑戦を続けている様子は、見ていて気持ちいいものだ。
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家電量販店のネット対抗努力にはあと少し工夫と戦略が必要

以前、コラム記事に「限界に来た家電量販店のビジネスモデル」というのを書いた。
“限界に来た家電量販店のビジネスモデル” http://www.insightnow.jp/article/7764
その後幾つかフィードバックをもらったが、この7月23日、WBSで家電量販店の取り組みを放送していたのを観て、いわば続編を書いてみたい。この業界の努力具合に対し、改めて敬意と共に、「ズレ」も感じたためである。

番組が採り上げた課題は、いかに店舗のショールーミング化(店舗では製品を触り説明だけ訊いて狙いを絞るだけで、実際の注文はネット通販で行うこと)を避けるか、ネット通販に如何に対抗するかが狙いであって、それ自体は正しい問題意識である。

そこで紹介された一つはコジマ・ダイレクト高松というリニューアル店舗での取り組みである。タブレット端末で、随時変わるWeb価格や商品情報を確認しながら買い物をする、今までにないアプローチである。これにより、後ほどネットで最安値をチェックして注文する必要がなく(店がショールーミング化されることなく)、その場でネット上の最安値に値引きすることが可能になる。しかもこの店舗はネット通販の倉庫も兼ねている。ヤマダ電機のLABI1 高崎でも同様に、店内で「価格.com」の情報を得られるようになっており、そこから商談が始まるという。

ちょっと不思議なのは、LABI1店のスタッフは「この最安値から交渉が始められます」と客に訴えていたことだ。本来、店で注文ができるということはネット注文の手間もないしすぐに製品が入手でき、配送料も要らない分だけ割安なはず。ネット上の最安値に合わせるだけで十分だろう。戦略的に言えば、「2番目の安値価格に合わせる」としたほうが(これでも十分価格競争力はある)、一部業者の思惑による一時的な値崩れに引っ張られることがない分だけ望ましい。そもそも最安値競争ばかりずっと続けていたら、アマゾンのような体力のある世界的ネット通販企業や、本社と倉庫をド田舎に構えて小数人で運営しているネット専業企業に勝てるわけがない。売上は上がっても利益を確保できないジレンマに陥る可能性は高いといわざるを得ない。

そのあと番組では「LABI 自由が丘」などの取り組みとして、量販店の店舗スタッフがネットで注文のあった品の配送をする様子を伝えていた。これは通販サイトに午後3時までに注文が入ったら、最寄りの店舗から社員が即日配達するというもの。これもまた不思議である。確かに店の在庫から届けるので好評とは思う。しかし届ける時間を予約するのに朝から電話を掛けまくってもなかなか電話がつながらず、ようやく数人につながって届けようとすると慣れないので客の自宅になかなか辿りつかない。これは本来なら配送会社に委託すべき仕事であって、量販店の店舗スタッフには全くノウハウがないので非効率なのだ。結局、毎日多くの店で一人分の配送コストが掛かっているわけだ。

最大の問題は、その日じゅうに沢山の家に届けるのに精一杯で、ようやく客の自宅を探し当てても、客に玄関先で品を渡してそれっきりになってしまうことである。せっかく客の自宅に店舗スタッフが行くのだから、上がらせてもらって使い方を見るべきだ。悪くとも実態を把握できるし、慣れてくればよりよい家電の使い方に関するアドバイスをできて感謝される。場合によっては新しい商品の提案もできよう。ネット通販会社には逆立ちしてもできないやり方である。

台頭してくるネット通販会社に対抗するために家電量販店が色々と工夫をしていることは分かったが、戦略検討に慣れていないのか、工夫の点で一捻りが足らないことや「2の矢、3の矢」が不足しているなど、難点がある。そう感じるのは経営コンサルタントの性だろうか。

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投票せずして何もいう権利なし

参議院選挙は予想通りの結果に終わった(小生自身が直前まで投票先に迷った実感から、なぜ「予想通り」になるのかが未だに不思議で仕方ないが…)。今回一番残念なのが、(政党間の勝敗・浮沈ではなく)投票率の低さである。まさに「事前予想通り」低かったのである。組織票を当てにできる一部政党からすれば「しめしめ」といった感覚だろう(実際、何回か前の国政選挙で当時の森首相が「(投票に行かずに自宅で)寝ていて欲しい」と発言したことがあった)。

そして幾つかのメディア紙面やサイト上で、投票しなかった連中のもっともらしいコメントが載っていた。いわく、「忙し過ぎて(投票に)行く暇がなかった」「自民が勝つことが分かっていた」「自分一人が投票したって結果は変わらない」「投票したい政党・候補者がいなかった」…等々(そもそもこんなコメントをいちいち採り上げるメディアの神経がおかしいと小生は思うが…)。

当人たちは政治家や世の中に対し抗議の意思を表明している気になっているようだ。でも客観的に言って、無投票もしくは白票を投じるというのは、よく言って多数派に委ねることであり、悪く言えば「煮て食おうが焼いて食おうがあんたの勝手にしていいよ」という「恭順かつ意思放棄」の表明である。身近な例でいえば、住んでいるマンションの住民総会での欠席であり、子供の学校でのPTA総会での欠席も同様である。特別関心のあるイシューがない場合にはそれでもいいが、気にはなっていながら参加・投票しないのは、「多数派に委ねます」という行為に他ならない。それを抗議票だと主張することがいささかでも正当化されるのは、自由選挙が許されていない発展途上国での場合だけである。

今の世の中、圧倒的に投票率の高い老人たちに有利な仕組みになっている。当然である。政治家は選挙で落ちれば只の人である(大概は手に職を持たないので、なおさら惨めである)。選挙で落ちたくなければ、投票する可能性が高い連中の意向に沿うのが政治家の行動として当たり前である。したがって投票率の低い若い世代が割を食っているのは理の当然、自業自得なのである(こうした状況がいいことだと言っている訳ではない、念のため)。

言い換えれば、「世の中の仕組みがおかしい」「もっと〇〇をXXすべきだ」と公言するならば(家族以外の人に職場以外に関する愚痴・不満をこぼすならば)、せめて投票してからにして欲しい。

20~30代の若い層の人たちが職や給与で割を食い、そして年金制度で掛け損になるのが目に見えていることに対しては同情するし、小生はそうしたことに関心の高そうな政党に投票する。しかし肝心の当時者である20~30代の人たちが投票場にすら行かないとしたら、何をか言わんやである。世の中の仕組みが悪いのを旧い世代のせいにするのは若い世代の特権である。そのことに声を上げ、投票で意思を表して、それでも変わらないのならデモでもそればよい。しかし、投票もせずに愚痴をいうのは、ぐーたらな自分に言い訳をして何も行動しないまま負け犬になるための近道でしかない。

ちなみに、今回棄権した連中の1~2割が特定の政党に集中投票していたら、各地の選挙結果は全く変わったかも知れないと、選挙結果を分析した専門家がコメントしていた。つまり彼らの投票は実は凄いインパクトを持っているのに、本人たちは気づいていないのである。

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地方自治体が破綻するとき

18日、米国のデトロイト市が連邦裁判所に対して破産手続きを申し立てたというニュースが世界を駆け巡った。負債総額は180億ドル(約1兆8千億円)以上とされ、米国の地方自治体の財政破綻として過去最大になる。

デトロイト市はGMが本社を置く、米自動車産業の象徴的な都市である。1950年には人口が180万人を超えていたという。その後の自動車産業の衰退や治安の悪化などによって人口流出が続き、現在は約70万人にまで減少している。報道によると、歳入不足に対し借金を重ね、都市インフラの維持費用や退職公務員への年金支払いなどがかさみ、財政難に陥っていた。

今後、デトロイト市がどんな運命を辿るのかを考えさせる番組がどんぴしゃのタイミングで流れた。7月20日(土)に放送されたドキュメンタリーWAVE「破産都市はよみがえるか~アメリカ・カリフォルニアからの報告~」だ。
採り上げられていたのは、この4月に破産宣告を受けたカリフォルニア州のストックトン市。人口30万の都市である。サンフランシスコのベッドタウンとして発展したが、サブプライムローン問題で3万件もの住宅が差し押さえになり、税収は激減、とうとう破産に至ったのである。

市は予算を以前の3分の1以下に縮小し、出直しを図ろうとしたが、最大の課題は治安。失業者の増大や学校閉鎖などを背景に、若年層に麻薬と暴力が蔓延。しかし膨大な債務を背負う中、市が踏み切ったのが警察官の大幅削減だった。他都市の半分に警官が減る中、ギャング(といっても日本のヤクザのように組織だったものというより、チンピラ集団である)の抗争や殺人、強盗、銃撃戦などの凶悪犯罪が急増し、犯罪発生率は全米ワースト8位にまでなった。

金も人もない中、どうやって治安を回復させるのか?市長は治安を重視したいのだが、議会が認めないのだ。にっちもさっちも行かない膠着状態が続く。息子を殺された母親などのコメントが続いた。アメリカの地方都市が抱える苦悩の凝縮である。

そんな中、市が立ち上げたのは「マーシャルプラン」と名付けた犯罪撲滅プロジェクト。警察だけでなく、教育や司法機関、さらには市民ボランティアが連携して、犯罪に立ち向かうものだ。要は、今まで市に対し「あれやって、これやって」と要求だけしていた市民が、市の財政破綻という事態に直面して、当事者意識を急速に持ち始め、自分達でも何かできないかという気になっていくのだ。

元警察官などが中心となり、ギャング達に更生を働き掛ける。普通の市民達も、寄付の募集や奉仕活動の手伝いなどをする。市の職員の手が足りないところを市民が補うのである。こういった場面は、同じく破綻した「先輩」である夕張市でも見られた(犯罪の問題がないだけマシかも知れないが)。番組の終盤には、腹を括った市長が「消費税アップによる警官増員」を提案し、市民の窮状の訴えに動かされた市議会が7対0で可決した。これで防犯対策も少しは進むかも知れない。

しかし財政再建の道筋はまだ全く見えない。小生は、多少は解決への道筋を知っている。要は市内の店や企業にお金を落とすように持っていくべきで、ナショナルショップといわれる大企業の店でなく地元の店を優先するよう、市民が率先して行動するのだ。この動きには市民から信頼されているリーダーが必要である。

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加賀屋の凄さは徹底度とマーケティング

7月18日に放送されたカンブリア宮殿は、“奇跡の集客”シリーズ第2弾として、「世界を掴む“加賀屋流おもてなし”の秘密 33年連続日本一の旅館…その裏側」と題し、加賀屋とその会長の小田禎彦(おだ・さだひこ)氏をフィーチャーしていた。

石川県和倉温泉にある加賀屋は、『プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選』(主催:旅行新聞新社)で33年連続の日本一に輝く。高級旅館として知られる加賀屋は、最上位クラスの部屋だと1泊2食付き5万円も当たり前という価格設定だが、それでも「一度は泊まってみたい」という客が年間を通して訪れ、利用者はグループで年間29万にものぼる。客室稼働率は全国の旅館の平均が48%という中、驚異の80%!

そんな加賀屋の人気を支えるのは、客に圧倒的な満足感を与える「おもてなし」だ。番組ではその接客具合に密着していた。宿泊客の情報を事前にしっかり押さえ、到着から出発まで同じ客室係が担当し、客室係が出迎えから見送りまでかゆい所に手が届くよう、心地の良い接客に気を配る。客室係が客へのサービスに専念できるよう、客室に料理を運ぶ手間をなくす全自動配膳システムまで導入している。「失敗から学ぶ」ことを徹底、年間2万5千通の客からのアンケートを元に、様々な改善活動を続けている。

加賀屋の創業は1906年(明治39年)。3代目の小田禎彦会長の祖父母が部屋数わずか12室の温泉旅館として始めた。それが今では増築を繰り返して客室数は232にもなり、売り上げは120億円という巨大旅館へと成長した。その加賀屋が日本一と呼ばれる礎を築いたのが、小田の両親である2代目の與之正、孝夫妻。女将・孝は、客の出迎えに寝坊するというひとつの失敗をきっかけに一念発起。現在の加賀屋流おもてなしと「失敗に学ぶ」という風土を作り上げたのである。

番組を見終わって思ったのは、加賀屋の差別化は接客における徹底度だということである。確かに設備は豪勢で凄い。しかし万人がこのような巨大旅館に好感を抱くわけではなく、むしろマイナスな場合もあり、もっとこじんまりした高級旅館のほうが好きだという人が多いのではないか。また、本当の高級旅館であればどこも接客がしっかりしているのは当たり前である。しかし人がやること、どこかに隙が生じる。加賀屋ではその隙がもたらした失敗を繰り返さないよう、アンケートなどのお客の声をしっかり拾っているのと、接客従業員に徹底している。その徹底の度合いが凄いからこそ、33年連続の日本一という偉業も可能なのだろう。

少し現実的なことを云えば、加賀屋の客の大半は高級旅館にしょっちゅう泊る富裕層ではない。精々数年に1回、大半は一生に一度、銀婚式か何かで泊りにくる庶民だ。彼らは他の高級旅館のサービスを知らず、彼らが比較するのは中級の旅館とホテルだろう。単純に高レベルの接客をされると感激してしまうのもよく分かる。つまり他の旅館は「高級旅館-富裕層、中級旅館-庶民」という組み合わせなのに、加賀屋だけが「高級旅館-庶民」という組み合わせなのである。こうした他所と違うターゲティングとポジショニングのうまさも、別格のブランド旅館になっている理由だろう。

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投票行動が示す日本国民の成熟度

参院選挙活動もたけなわである。自民が全国的に圧倒的優位を維持したままで、自公による過半数確保は間違いないそうである。一方、民主党は壊滅状態になる可能性が高い、との予想が多い。衆議院選挙であれば小選挙区制が基本なので、ある程度一方的な結果になるのは仕方ないが、参議院までが毎回極端な結果を示すとしたら何かおかしい。この国においては、まともな政策を推進できない政党の側だけでなく、きちんと政策意図を判断できずに風次第で極端から極端に走る国民の側にも問題が大きい。

そもそも今、安倍・自民が提示している政策パッケージのうち、国民の多くが支持しているらしい「アベノミクス」は、金持ちと大企業(しかも従業員にはおこぼれ程度)だけにしか恩恵が回らない割に、今の社会的弱者層と若年層にツケを回す、かなりリスクの高いものである。

「日銀による思い切った通貨供給増(ジャブジャブ・マネー)」と「財政(規律をとりあえず棚に上げた)カンフル刺激」という後先考えない博打だけが先行し、肝心の「成長戦略」に関してはほとんど中身のない、使い古された官僚の作文が並び立てられているだけのものである。せめて規制緩和で具体策があるか、原子力発電を縮小することで再生可能エネルギーへの転換を促すとかあれば、廃炉ビジネスの推進と新産業創造を促進することになるのに、それもない。

それどころか、財政規律の緩みようを誤魔化すために(金額的には全くスズメの涙程度の)生活保護予算の削減を進めるという、とんでもない弱い者いじめをしようとしている。本来すべきは年金支払と老人医療の適正化という、高齢者に対する苦い政策であろう。今進められているのは、労働者の非正規化とそれによる弱肉強食を進めた小泉・竹中政権よりタチが悪い、社会格差を意図して拡大しようとする政策とは言えまいか。円安が物価高を招くことも計算内であろう。その上に、改憲派が選挙に勝てば、憲法改正手続き条件を緩和するという筋の違うアプローチを持ち出してくる意図も満々である。

こうした「新・保守主義」に対しては、「小泉政治の負の側面」としてノーを示したのが、数年前の日本国民の判断ではなかったのか。いくら民主党がどうしようもないダメ集団だったことが判明したからといって、一旦ダメだったやり方に戻るというのは学習度ゼロではないのか。小生は民主党が政権を獲る際の参院~衆院選挙にかけては民主党の政策がどんどんバラマキになるのを見て、「反自民」ムードだけで民主党に投票しようとする国民の行動を嘆いた。今、同じく「民主への失望」と(目先の)「景気によさそう」だけで自民に振り子を戻す選挙行動には、賢明さも成熟さのかけらも感じられないではないか。

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日本式の結婚式はスタッフのこだわりの賜物

7月13日(土)に放送されたNHK「エキサイト・アジア」の第8回は、上海に進出した結婚式プランナーの女性社員、マレーシアで宅配便を指導する日本人ドライバー、中国農村部で農機具を売る元技術者の営業マンを採り上げていた。特に最初の「女ふたり 力あわせて」がよかった。

テイクアンドギブ・ニーズのスーパーバイザー・手塚真澄さんは間もなく駐在を終え、日本に帰国する。指導相手の現地社員プランナー7人を一人前に育てるのが彼女の目標だった。2日後に挙式する中国人女性と日本人男性の国際カップルの結婚式を通じて、手塚さんが新入社員のヴィヴィさんにどうやって自信をもたせるのかを番組はうまく映していた。

日本と中国では結婚式のやり方は随分違う(例えば中国人は式の途中でも食事が終わると帰ってしまう!)。この国際結婚のケースでは日本式でやりたいという花嫁の希望を受け、でも中国人の招待客に受け容れて楽しんでもらわなければならないので、ハードルは高い。準備事項は山積みで、前日の午後8時になっても花など色んなものが届いていない。ヴィヴィさんは頑張り屋で、あれもこれもと走り回るが空回り気味で、時々泣きそうな顔になる。それに対し、手塚さんが「大丈夫、落ち着いてね」と繰り返すのが印象的だった。

手塚さんには以前、目を掛けて育てていた中国人スタッフに辞められた苦い経験があり、いかに無用なプレッシャーを与えずに思い切ってやらせ、しかし自分で考えさせ、確実に成長させたいという気持ちに溢れている。アドバイスを出す際の笑顔、ちょっとした気づきを与える言い方など、素晴らしい現場指導力だ。性格・人格もいいし、語学力もある。こんなスーパーバイザーばかりなら会社は急成長するはずだ。

当日の様子も色々と伝えてくれた。式場スタッフがいい加減なタイミングで新郎新婦を入場させようとするのをきちんとできるように確認させること、キャンドルサービスなどの前に中国人客が帰らないよう司会者に案内させること、等々。日本式の結婚式は裏方スタッフが色々と気遣ってくれているのがよく分かった。さすがおもてなしの国のサービスである。

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電動バイクの普及の鍵を握るのは何か

一時期注目された電動バイクが下火になっている。2011年では20社あった電動バイク専業メーカーは現在2社だという。その普及の鍵は価格であり、価格を下げるには大量生産が必須なために台数が必要であり、しかし台数が捌けるためには思い切った低価格が必要という「鶏と卵」の関係である。結局、コスト低減のためのボトルネックである電池の製造コストをどう低減するか、普及のための大量適用領域をどこに見出すか、という2つの課題が大きいとみる。

7月15日(火)に放送されたWBSの特集でも電動バイクを採り上げていた。最初に登場した、電動バイク「もたぽんこ」はかわいいミニバイク。開発した埼玉県入間市オリエンタル青梅R&Dセンターの荻巣荒一朗社長は埼玉県松伏町のテコと、業務用の電動バイク「テコ」を共同開発した。しかし営業上は伸び悩んでおり、デモで持ち込んだ営業先の新聞販売店には価格の問題を指摘された(試乗の反応はよい)。

「e-Let’s」を発売しているスズキ本社の真柴岳彦氏は「バッテリーの価格の高さを乗り越えなければいけない」と話す。「EC-03」を発売しているヤマハは2015年までに原付バイクと同程度の価格の開発を進めるとするが、高いハードルだろう。ホンダは業務用の電動バイクの生産販売を中止した。

茅ヶ崎市で電動バイクを扱うデンドーモータースでは橋本幸一社長が登場。震災がきっかけで売上が伸びたが、品質のクレームに対応できなかった企業が撤退したことを指摘した。「簡単に参入し、撤退していたら普及しない。大切なのはアフターフォローの体制だ」と。

一方で、元気な電動バイク・メーカーがある。東京・渋谷区のベンチャー企業、テラモーターズである。2012年度には約3,600台を売り、シェアトップを独走している。事業開発グループの加藤真平氏は、販路だけでなく修理店などの開拓も並行で行ったことが効いているとした。

同社の「SEED48」は10万円を切る価格で、家電量販店で販売されている。同社によると、当初は目新しさがウケて都会で売れたが、今ではガソリンスタンドの減少した地方で需要が増えている(7割が地方らしい)。自宅で充電できるのが便利で(1回の充電で約30円)、遠方に行くのは不安だが、近所の田んぼに通う、といた使い方である。さらにテラモーターズは走行距離が伸びた「A4000i」を発表。徳重徹社長は、ニーズが拡大しつつある宅配業界で普及すると語る。テラモーターズをはじめとして幾つかの会社は、3輪タクシーの電動化を政府が後押しするフィリピンを中心として、アジア市場にいちはやく進出しつつある。

あとはやはりコスト低減の競争だ。4輪EVメーカーのテスラモーターズのように、(電動バイク専用品ではなく)汎用品の電池(またはその部品)を使って量産化によって電池コストを大幅に低減する、といった知恵の勝負になるのではないか。

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外食業界の本質的課題は何か

7月9日(火)に放送された「ガイアの夜明け」は「人を育てて勝つ!~外食業界...人材争奪戦の今~」。深刻な人手不足に悩む外食業界がどうやって人材を獲得し成長していこうとしているかがテーマだった。この背景にあるのは、外食産業が2009年から4年連続で「行きたくない業界ワースト1位」だという事実である。確かに、一種の3K職場なのだろう。

こうした状況の中、独自の方法で人材を獲得し業績を拡大している企業として、大手寿司チェーンの『すしざんまい』と居酒屋チェーン「サブライム」を番組は採り上げた。

全国に49店舗を構える寿司チェーンの「すしざんまい」。『寿司を年中無休で朝まで提供』という営業形態が好評で、繁華街の店舗では深夜でも客がごった返すことが珍しくないという。小生も何度か利用させてもらったことがある。同チェーンは今後も全国に店舗を拡大していきたいと考えているが、大きな課題があった。それは寿司職人の不足。技術のある職人を中途採用しようとしても、深夜営業を嫌ってなかなか確保できないのだ。「ウリ」が人材獲得の障害になるという、悩ましい状況だ。

そこで自ら職人を育てる学校「喜代村塾」を開校させた。3ヵ月間、寿司についての基礎技術をみっちり学ばせる一方、「すしざんまい」の店舗にとって必要な「英語の研修」や「接客術」も学ばせるという。番組では30歳近くまで海外で様々な職を転々としていた職人希望者にスポットを当て、彼が喜代村塾で修業して苦労しながら合格して同社の従業員になるまでを追った。合格したとき、「店長を目指したい」彼は目を輝かせていた。

もう一つの「サブライム」は、2005年11月に1号店をオープンさせてから、わずか7年で店舗数200を超え、売り上げ100億円規模に成長した居酒屋チェーン。店は活気にあふれ、客でごった返している。成長の原動力となっているのが、やる気のある人材の確保だ。その秘密は、獲得した人材を次々に店のオーナーとして独立させていくという独自の手法にあった。会社は、店舗選び、運営、メニュー開発など様々な面で独立したい社員をバックアップする。現在までに50人近くのオーナーを育て、将来的には1万人のオーナーを育てたい、という同社の若き社長。メニューや店の運営など、そんなに簡単に教えることができ、そんなに簡単に学ぶことができるのだろうか。番組ではそこまで突っ込んでくれなかったので、不思議なまま終わってしまった。

見終わって、素朴に思った。外食業界が人材獲得に苦しんでいるのは所詮、労働生産性が悪く、給与が安過ぎるからではないのか。その部分に思い切ってメスを入れない限り、独立をエサに人材を獲得し続けることは継続性がないように思う。

フランチャイズ方式、セントラルキッチン方式という2大イノベーションは確かに効果的だったが、それだけで大半の外食業態が何とかなるような甘い状況ではない(その方式が向かない業態もある)。ましてやアルバイト依存と社員でありながらダンピング的に安い給与水準と、「儲からないメニューの思いつき開発」という不毛な策ではない。

以前、丸亀製麺の「讃岐釜揚げうどんチェーン」に関してコラム記事を書いたことがあるが、その際に小生が関心したのは同社の合理的精神である(表面的な言葉尻を捉えた批判コメントが幾つかあったが、「いいね」を圧倒的多数いただいたことは、小生の指摘に共感してくれた方々が多かったことを示している)。あのチェーンが一つのヒントを示している。

外食産業における本質的な部分での新しいイノベーションは、導線や作業の科学的なプロセス分析と、手間を掛けた価値の高いスープ・だしという共通プラットフォーム開発、およびその上での新鮮な素材という共通部品の組み合わせによる新規メニュー開発手法といった工業手法の導入ではないか。つまり近代化である。いずれこうしたアプローチによる革新的なチェーンが続々と生まれてくる日を楽しみにしたい。

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スパリゾートハワイアンズ~「一山一家」が支えた奇跡

7月11日(木)に放送された「カンブリア宮殿」は「“奇跡の集客”シリーズ第1弾!リピーター続々、年間140万人が殺到 “驚異のリゾート”福島ハワイアンズの底力」。「フラガール」も感動的だったが、この「震災後の奇跡」の物語はもっと感動的である。

東京駅バス乗り場に続々と集まる老若男女…バス4台は満車。ウキウキ顔のみんなの行き先は、福島県いわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」。東日本大震災から2年が経過した今も、原発処理、風評被害など様々な逆境に苦しむ福島県の太平洋沿岸部。それなのに年間140万人という驚異の集客力を誇る。

東京ドーム6個分の敷地に約20の温水プールや温泉、約500室のホテルを併設した巨大温泉リゾートである。なんとリピート率9割!驚異としか言いようがない。客のリラックスした表情がよく伝わってきた。独自の集客の秘密は、「3世代の客を取り込む様々な施設づくり」「1万2千円ポッキリで大満足の格安感」「東京など首都圏からの往復無料バス」「館内全て水着・裸足OK」…などなど。大したものである。

2006年公開の映画「フラガール」がヒットし、震災前は年間130万人が訪れたが、震災の影響で半年間休業し、来場者も30万人に激減。しかしそこから1年で震災前の水準に戻すという奇跡の復活を果たす。その間、辞めた従業員ゼロ(半年間の休業の間、給与をきちんと払っていたこの会社は凄い!)。フラガール達は復活を信じてずっと練習を続けていたという。その団結力を表す魔法のキーワードが「一山一家」。

実はハワイアンズの前身は、本州最大の炭鉱として戦後日本のエネルギーを支えた『常磐炭鉱』。その後エネルギーが石油に替わって閉山に追い込まれる中、当時の副社長だった中村豊(故人)が思いついたのが、沸き出す温泉を利用したリゾート「常磐ハワイアンセンター」だった。当時としては何と斬新な発想だったろうか。「父がホテルマン、母が厨房で皿洗い、息子がコックで娘がフラガール」。そんな家族総出で作り上げた地元愛そのものである施設。そんな彼らを支えたのが「一山一家:ひとつの山はひとつの家族」という、全国一過酷な環境だった炭鉱ならではの企業風土。オープン後も、石油危機やバブル崩壊、リーマンショックそして大震災…。幾多の苦難を乗り越えてきた「一山一家」のDNAが今回も復活を支えたのである。感動的だった。

場面切り替わって、平日のオープン前から続々と集まって来るのが、「毎日、風呂に入りくる」という地元客。ハワイアンズが地元の為に発行するのが年間パスポート。13ヶ月で2万円だが、毎日来る地元客にとっては1回たったの約50円。「家の風呂より安い!」と会員数は3,000人超。地元を周遊する無料バスまである。

「全ては地元のため」。これが常磐興産の会長、斎藤 一彦(さいとう・かずひこ)氏の信条である。震災後から現在に至るまで、フラガールを無償で全国へ送り、福島県やいわき市のPRを行っている。いわき市の「観光協会」の会長でもある。「観光は街づくり。地元の活性化がハワイアンズの為になる」と。地元愛の塊なんだろう、この人は。

今回は村上龍氏の編集後記もよかった。いわく「炭鉱の衰退、閉山、そして凄惨な労働争議を目撃した九州出身者にとって、映画『フラガール』は、奇跡の物語であり、また謎でもあった。日本でほとんど唯一、常磐炭鉱は労使協調のもと再生を果たしたのだが、なぜそんなことが可能だったのだろうか。斎藤氏のお話を伺って、やっと謎が解けた。温泉が噴き出すために採掘は常に危険が伴い、労働者同士はもちろん、経営側も、常に危機感を持ち、助け合ってきた。サバイバルにもっとも必要なのは、助け合うこと、協力し合うことだと、(ここの)人々は歴史的に学んできたのだ。訪れる客は、温泉で癒され、リラックスすると同時に、『助け合う』という肯定的な価値観に包まれるのだと思う」と。

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プロフェッショナル組織の経営者に求められる最低限の資質

少々時間が経ったので、もう冷静になれると判断して(それでも慎重に警戒しながらだが)掲題につき書いてみたい。比較的最近、海外および地方勤務が長かったある友人と飲む機会があった。彼は元々その親会社でグローバルに活躍していたが、そろそろ定年もちらついてきたタイミングで、出向により子会社であるプロフェッショナル組織の経営者となったのだ。

彼の会社もコンサルティング部門を持ち(それなりに人数はいる)、少なくとも学歴的には立派な人たちが揃う組織である。小生は気楽にも、その組織にとっての幾つかのビジネス機会を指摘し、やり方によってはもっと成果を上げられると少々発破をかけていた。

友人としての気安さだろう、少し酔ったふうの彼が漏らした。「俺は、なんで経営コンサルティングビジネスって成り立つのかがさっぱり分からんのだ」と。どういうことか尋ねてみると、通常窓口になる経営企画部門の人たちからすれば、経営コンサルタントに依頼するのは自分たちの無能さを公言しているようなものじゃないかというのだ。未だにこうした考えのビジネスパーソンがいるのか、よりによって自分の友人で、しかもコンサルティング部門のトップでもある身で、と驚きかつ呆れた。確認すると、言い間違いではなく正直な感想のようだ。

経営企画部門の人たちから依頼されて経営コンサルタントがサービス提供するパターンとして、特定の業界知識以外に他の業界での類似経験や知識・対応ノウハウなどで付加価値を提供できること、業種にとらわれないファシリテーション・スキルなどで議論や分析を深めることができることなど、小生から色々と話してみたが、どうも会話がかみ合わない。

そもそも彼には想像が及ばないようだ。彼には依頼側として経営コンサルタントと対峙した経験がない。かといって経営コンサルティング・サービスの提供側のトップとして、クライアントとコンサルタントの丁々発止の場面に立ち会ったこともない。だから全て想像するしかないのだが、本当にピンと来ないのだ。

そもそも前提として、経営コンサルティングとは一体どういうサービスで、どういう場面で、どういうスタイルで提供するものかを勉強していないのは明らかだ。これは明らかに経営者としての怠慢なのだが、そんなことを指摘しても始まらない。

友人が自分の状況を客観視できるかも知れないと考えて、小生は自分の昔の社長の話を始めた。その社長も親会社から「天下り」してきたのだが、「経営コンサルティングを頼む経営者は自分が無能だと公言しているようなものだ」と、友人と同じような感想を持っていたのだ。小生はその社長(無能ではないが、頑固で周囲の異論を受け付けない「裸の王様」だった)に色々な話をしたが、結局平行線で終わった。

その社長の感覚と目の前の友人の感覚はほぼ同じだ。自らがそのサービスに対して持つ個人的感想を主軸に判断するのである。異なる事情を持つ他の経営者がどう悩み、どう考えるかには想像が及ばない。これは自分たちが提供しているサービスのポテンシャルを判断する際に、致命的な「素人判断」をしようとしているのに他ならない。

そもそも優秀な経営者であれば、その業界知識が不足していても色々な質疑を繰り返すうちに本質的なイシュー(課題)を絞り込み、解決仮説案を幾つか提示することができるものだ。同じように、我々のような経営コンサルタントは自分の得意分野という特定領域においてそんなことを繰り返しているのだから、少々業界が違っても応用が利くようになる。そんなふうにアナロジーも使ったが、それでもピンとこない様子だった。

もしそれが「あり得ない」と否定するのであれば、業種を移って別会社の経営者になった貴君たちは自分が役に立たないと白旗を上げているに等しいではないか。そんなことを思いながら、当時そしてつい先日、目の前の「自称、経営者」に暗澹たる気分になっていたのだった。

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規制と闘い続ける男

7月4日(木)にBS NHKで放送された島耕作のアジア立志伝は、「第3話 規制緩和の革命児~トニー・フェルナンデス」。エアアジアグループCEOであり、航空業界の規制や権益に真っ向勝負を仕掛けてきた経営者である。エアアジアの機体にペイントされたキャッチフレーズは”Now Everyone Can Fly”。マレーシアでエアアジアを設立し、12年の間に年間乗客数4400万人を数える航空会社に成長させた。しかし彼がエアアジアとともに歩んだ道程は規制との格闘、苦労の連続だった。

(ライセンス許可を依頼したら、マハティール首相にサジェストされたので)破綻した航空会社を買い取って航空業界に参入したのが、2001年9月8日。その3日後、9.11テロ事件が発生。航空業界は大打撃を受けた。人々は飛行機での移動に恐怖を感じ、利用者は激減。閉鎖される空港まで現れた。パートナーが電話でこう言った。「こんな時にどうやって航空会社を始めるんだ!」トニーは返した。「なぜ軌道修正しなければならないんだ。我々はアメリカに飛行機を飛ばすわけではない。人々がブルネイやコタキナバルまで飛行機で行きたいことに変わりはないじゃないか。我々は続けるんだ」。パートナー達は彼を信じた。

その後、多くの航空会社は赤字を抱え、各社のスタッフは次々と解雇された。だがトニーにとっては「人材の宝庫」が解放されたことを意味した。引き抜きの苦労もせず、多くの優秀な人材を雇うことができた。次々と路線を増設。徹底したコストカットによって実現した低価格な運賃が受けて急成長。1年後、買い取った航空会社が抱えていた11億円もの借金はゼロになっていた。

エアアジアでは低価格運賃を実現するため、コストカットを徹底している。それは本家の米サウスウェスト航空と同様だ。チケット予約はネットで行い、チケットは乗客が自らプリントアウト。乗客が飛行機に乗り込む際には搭乗橋はなく、飛行場を歩く。空港での駐機時間を25分に短縮して空港使用料を削減すると同時に、航空機の回転率を上げる。また、機内ではコーヒーも毛布も有料(一般的な航空会社ではその料金がチケット代に含まれている)。「簡素化はしているがサービス自体の質が低いわけじゃない。ローコストというのは低品質なのではなく、効率のよいサービスを提供するということ、乗客にサービスを受ける選択肢を与えるということなんだ」(トニー)。

トニーの前に立ちふさがった規制の壁の象徴がシンガポールへの乗り入れだ。シンガポールの空港は、東南アジアのハブ空港として中心的な存在だが、いくら陳情をしても、クアラルンプール(マレーシア)からシンガポールへの直行便の許可が降りない。(シンガポールで合弁会社を作る申請は)シンガポール政府に3度も却下された。次の手は、クアラルンプールからシンガポール国境に近いセナイ空港まで国内便を飛ばし、乗客にはシャトルバスに乗り換えてもらい、国境は陸路で通過するという苦肉の策。これも却下されたが、トニーは強行突破することにした。2004年、実際に乗客をバスに乗せて国境を越えようとしたが、シンガポール陸運局に止められ、乗客は全員降ろされた。そしてバスは没収された。凄まじい闘いである。

ついにトニーは公然とシンガポール政府を批判することに決め、シンガポールの新聞に広告を載せた。「チューインガムは禁止。横断歩道以外の道の横断は禁止。エアアジアのシャトルバスの乗り入れは禁止。でも低価格で飛行機に乗るのは合法です」と。厳しい法律が多いシンガポール政府がチューインガムの国内への持ち込みすら禁止していることにかけた辛口の広告だ。この新聞広告はシンガポールの人々から喝采を浴びた。2007年、エアアジアはついにシンガポール就航を果たした。低価格にこだわり続けたエアアジアは、現在では21の国と地域、85都市に193もの路線を持つに至り、世界中の人々に利用されている。

トニーは、新たな「規制」を打ち破る挑戦を始めている。低価格により「誰でも利用できる」保険や教育を始めようとしている。彼は言う。「人生は困難なものだ。近道なんてない。自身の運命は自分の力でコントロールするんだ。…政府は我々のために何かをしてくれるわけじゃない。運命は自分で切り拓いていくものなんだ」。痛快な男の人生である。

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ニッポン再生にITを活用するために必要な視点

7月7日(日)に放送されたWBS25周年特別番組「ニッポン再生!緊急会議」。メルマガ(Pathfinders News)でも案内していた番組。ITをどう活用すれば産業競争力を高め、日本経済再生につながるのかを徹底的に議論するという趣旨。「IT社会の先端を行く経済人」として、坂根正弘(コマツ 相談役)、南場智子(DeNAファウンダー)、森川亮(LINE社長)、松尾豊(東京大学准教授)、井口尊仁(テレパシー社長)という人たちがスタジオで活発な議論をしてくれた。

実は番組前には疑問があった。なぜITだけを採り上げるのか?素材技術やバイオ技術なども同様に、日本経済再生に必須なのではないかと感じた。でも日本のIT競争力が21番目だとかいう情報も提示され、確かに日本経済の問題が凝縮されているのがITであり、IT活用が最大の「のり代」であることも間違いないと納得した。

IT活用のレベルが高い例として採り上げられたのがコマツ。番組ではコムトラックスの画面も表示され、世界に点在するコマツの建機がどこでどう稼働しているのか、問題がないのか、一目了然である。「24時間無料点検を受けているようなもの」という誰かのコメントの通りである。次のIT活用は自動化タイプの建機。作業図面データ通りに動くため素人でも運転できて人件費は安く済む(技術的には遠隔操作で無人運転も可能)。番組では紹介されなかったが、この自動化技術は測量機器のトプコンとの共同開発のたまもの。工事これらは導入する建設・土木会社にとってはメリットが大きいので、多少製品価格が高かろうが、中国製などに負けないのである。

(開発そのもののきっかけはATM強盗の頻発だったが)このGPS機能を標準装備する決断をしたのが坂根氏。確かにコストは割高になるので社内からは大反対されたのだが、ユーザーの稼働状況も分かるから、営業攻勢を掛ける根拠を得られると考えたようである。だから説得のセリフは「ユーザーのためじゃない、俺達自身のためだ」というものだったと聞いた。

問題は、普通の民間会社の凡人経営者にはコマツの坂根氏のような大胆な決断ができないこと。コメンテーターの高橋進氏(日本総研理事長)が指摘したように、業務効率化にITを使う発想は(ベンダーから提案されているはずなので)あっても、営業やマーケティングに使う発想は(ベンダーも思いつかないので)持っていない。日本の民間オフィスでIT化が進んでいないのは、ベンダーとユーザーの知恵と工夫の不足なのである。

ここで番組はIT化のメリットが大きい分野として医療を採り上げる。遠隔医療はメリットが大きいが、日本での普及には幾つかの障害があるという。医師の反対も強いが、もう一つ、診療報酬の問題。「対面の原則」(医師法では直接の対面診察が原則)というのがあり、遠隔医療だと医師の報酬が抑制されてインセンティブが低くなる。ちょっと話が飛ぶような印象はあったが、高橋氏が医療分野でのIT化による成功例として挙げたのが、呉市(広島県)でのレセプト(明細書)の電子化。ジェネリック薬との差額を通知するようにしたところ、医療費が3.5億円ほど節約できたという。

ここで森川氏が持ち出した「日本人の心の規制が重要」という議論が「掻きまわし」の効果をもたらした。日本人は変えたくない人が多いしそうした人は声が大きいから、そこが問題だという。そこで坂根氏が「規制をぶち壊すリーダーの執念が重要だ」と指摘。「規制の岩盤が強固であればあるほど、それをぶち破った者の創業者利益は大きい」というのは至言である。いくら規制が邪魔をしようと、民間トップの強い思い(執念)とリーダーシップがあれば突破は可能になる、との言葉は実に重い。

番組後半では、井口氏が開発した「テレパシー・ワン」というウェアラブル・ビュワー製品が主に採り上げられ、遠隔で同じものを観る(共有視する)ことができるその製品と、それを開発した井口氏のような起業家精神が議論の中心になった。実際、井口氏のいう「ウェアラブル・コミュニケータ」製品はコンセプトだけでなくそのデザインもよく、世界でヒットするかも知れない。それ以上に、井口氏のキャラクターが大うけだった。

こうした「空気を読まずに理想を追求する」異能者を量産することは難しいとは思うが、勝手に生まれる異能者を殺さない教育を教育界で、彼らに場を与える人材育成・投資を日本企業で、それぞれ思い切りやって欲しいと思った。やはり「角を矯めて牛を殺すな」である。

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オフショアBPOに潜む罠 (2)

オフショアBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のもう一つの代表業務がコールセンターである。しかし本当にオフショアBPO向きなのだろうか。


中国や東南アジアに日本の顧客向けコールセンターが開設されるケースがこの5~6年の間に急増している。最近でも日本人の比較的若い人向けに中国やフィリピンなどで「コールセンターのお仕事をしませんか」という募集が時折あるが、詳しい知人の話では、現地在住の日本人や日本語を学んだ現地の人の応募よりも、日本に住んでいる日本人が現地に移住する割合のほうが多いそうである。当然ながら給料は現地水準であるが、物価も日本に比べれば安いので人並みの生活はできるということだ。

日本での雇用崩壊の一端ではあるが、先進国から途上国への出稼ぎという妙な構造であることは否めない。しかし日中間の関係悪化に加え、今や日本の景気が底打ちしようとしており(逆に中国景気は悪化に向かう可能性が高い)、友人や親兄弟そして住み慣れた環境を捨てる「逆出稼ぎ」基調がずっと続くとも考えにくい。するとコールセンターのオフショアBPOの働き手は、日本語を学んだ現地の非日本人がいずれ主流になっていくのだろうか。

最近よく売れている「10年後に食える仕事 食えない仕事」という本の中で、「重力の世界」(IT化で瞬時に海外移転する職業)の代表例にコールセンターのオペレータが挙げられていたが、実態を踏まえた内容なのか、素朴な疑問を感じる。世界言語である英語を話せる人が途上国にも豊富におり、コールセンターのオフショアBPOが世界中に拡がっていることから、英米のビジネス記事にはこうした論調がよく見られる。しかしローカル言語である日本語が鍵となる業務に関する限り、単純な敷衍(ふえん)は危険である。

コールセンター業務というのは求められる技能や知識レベルが高いことが多い。日本のお客さんの問い合わせは曖昧なもの言いが多く、それを正確かつてきぱきと理解した上で適切な方向に誘導するというのは誰にでもできるものではない。日本人でも平均以上のコミュニケーション能力がないとうまくできないのに、日本語ネイティブでないのにちゃんとできる人はどれくらいいるだろう。第一外国語として日本語を学ぶ大学生は、比較的日本好きな東南アジアでもあまり多くないのが実態である。

しかも苦情処理の機能が求められる場合、精神的にきつい。したがってスタッフの定着率が悪く、どの国内コールセンター業者も採用に日々苦労している(こんな「焼畑農業」を続けていること自体が本質的におかしいのだが)。それを日本でなく海外で、日本語コミュニケーションに堪能な人材を常に獲得し続ける必要があるのだから、中期的に考えれば随分チャレンジングな話だと思う。

一方で、コールセンターの対応が顧客満足に直接響く重要要素となっているケースは少なくない。コールセンターでの顧客対応の丁寧さや適切さのお陰で受注が増えている、顧客離反率の高い業界でありながら最低水準を維持できている、などという経営者の自慢を聞くことも時にある。こうした場合、安易にコスト削減だけを求めて自社の強みを放棄するような愚を犯すことがあってはならない。

あれこれと幅広の考慮をした上で、それでもなおオフショアBPOだという結論が出るなら思い切って実施すればよい。しかし最初から選択肢を歪めて狭くするべきではない。大手メーカーの工場撤退が近年続出したことなどを考えると、そろそろ日本の地方都市に再度目を向けてもいい頃だと小生は思う。そしてその際には、問い合わせ客の気持ちに寄り添いながらも従業員満足が上がるよう、ビジネスプロセスを思い切って見直すことを、是非併せて考えて欲しいものだ。

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ジャパネットたかたに見る、代替わりの難しさ

7月4日(木)にBSジャパンで再放送されたガイアの夜明けは「生き残りを賭けた…新通販戦争」というタイトル。主に採り上げられたのは、ジャパネットたかた、オークローンマーケティング(ショップジャパンの運営企業)、ニッセン。いずれも急拡大するネット通販に押され、その危機感は大きい。

ジャパネットたかたの方式は、その日の販売商品を絞り込み詳しく紹介する提案型のテレビ通販。毎日の生放送のための直前打ち合わせ時に、当日の天候などを考慮して商品ラインナップの手直しを行なうこともある。撮影スタジオやコールセンターなども自営し、細かなケアが出来るのも魅力の一つ。

高田社長が今最も力を入れているのはタブレット端末。デジタル家電を敬遠しがちな高齢者に対し、スタッフを自宅に派遣してすぐ使えるよう設定を行ない、さらに無料レッスンまでつけるサービスを展開。好評である。ユーザーの一人は「(家電量販店より)沢山の選択肢よりも1つしかないといわれたほうが私達の世代にはいい」とジャパネットの良さを語った。

こうしたシニア層の支持を受けて同社は成長してきたが、ここ2年連続で減収減益。昨年にはテレビ通販の草分けである日本直販が破綻。原因はインターネット通販の急成長。

巻き返しを図る高田社長は、昨年六本木に巨大なスタジオをもつ東京オフィスを作り、東京進出は長男の旭人氏に任されていた。番組ではその父子対決の様子として、同じジューサーをどう売るのかの視点の違いを捉えていた。佐世保からは高田社長がジュースの美味しさを強調する戦略で、2時間後の東京では(作戦会議の結果)栄養価の高さや健康効果を強調した。結果は息子・旭人氏の完敗。さすが高田社長のセンスは凄い。

その後、旭人氏は父を見返すため、とっておきのアイディアとして、これまで単体で販売していた赤外線調理器の「ザイグル」を、高級食材とセットにして販売する新しい試みをスタート。試食でもスタッフ皆から好評だった三元豚ベーコンとのセットで販売が行なわれたが、注文は思いのほか伸びず、販売目標の2割程度。東京オフィスに高田社長が訪れ、社長はすぐにスタジオに。今年過去最高益を出さなければ社長を退くと宣言している高田社長は、ザイグルについて「あの注文数の2倍くらいを1回で出せる制作力と司会力を…」と息子や社員達にハッパをかけた。つまり商品パッケージのアイディアはよいが、演出力が足らないと言っている訳だ。

このエピソードが表しているのは代替わりの難しさだろう。旭人氏は頭脳優秀で能力が高い感じだ。しかし何が、どう伝えたら売れるかは理屈だけじゃない。センスと表現力という厄介な代物が大きなファクターを占める。これが高田社長には突出してあるからこそ、他社でできない同社独特のビジネスモデルが成立しているのである。この能力を旭人氏が身につけることができるのか、それとも同社の(高田社長に依存した)ビジネスモデルを今後大きく変える必要があるのか。

正解は後者であると思うが、これだけ大きくなった企業がその成功要因である唯一絶対のビジネスモデルをスムーズに変えられた例を、小生は寡聞にして聞かない。前者なのか、後者なのか、いずれを選ぶとしても、1年程度で達成できるとはとても思えない。仮に高田社長が今年社長を引退するとしても、会長に留まり、スタジオでの指揮を続けなければ立ち行かないのではないか。

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木材が次の新素材になる!? 『流動成形』技術の不思議

7月4日(木)にBS-TBSで放送された「夢の扉+」は「素材革命!木材が金属やプラスチックに変わる!?~革新的加工法で、堅い木材を自在に変形できる“エコ技術”~」という内容で、なんとも驚きの回であった。

主役のドリームメーカーは産業技術総合研究所の金山公三さんという技術開発研究者。もともと、金属加工の研究者だった。「金属の次の素材を研究しないか」との上司の相談をきっかけに“木材”に目をつけた。しかし通常、木材はどんなに強い力で圧縮加工しても、元の形に戻ってしまう。それが木材のよさでもあり、工業用素材としての弱点でもある。

金山氏がまず試みたのは、木材を粉末にして固める事だった。ところが粉末をプレスしただけでは工業製品に求められる強度にはほど遠い。彼は条件を変え実験を繰り返した。するとある日、いつもと違う結果が起きた。成形した表面がスベスベになってきたのである。今までにはない堅い塊ができていた。彼はあらゆる観点から分析し、ついに木材のメカニズムを突き止めた。

ポイントは木の細胞の間にあるリグニンという成分。ある薬剤を染み込ませ熱を加えてプレスするとこのリグニンが柔らかくなる。すると一つ一つの細胞が分離し、滑り動く(映像で見せられて、その不思議さに見入ってしまう)。さらに熱を加えると、木はその形のまま固める事が出来る。金山氏は偶然発見したこの現象を見事、技術として確立した。

この『流動成形』技術を使えば、幾つかの木片からも美しいお猪口ができる。種類の違う木も一つに成形できる。衝撃に強く、難燃性も断熱性もある製品が生まれるかも知れない。特に驚きだったのは、木片からステレオスピーカのコーンのような薄い製品ができてしまうことだ!

金山氏が実用化に向けた共同実験(協力に応じたのはサッシの三協立山)に臨む様子が放映された。窓枠のサッシに使われているアルミを、木材に代えるというもの。細く、長く、強く。条件は厳しいが、まるで金属のような固い棒が成形された。見事、実験は成功。

この技術により大量生産ができるため、木が(資源に制約される)金属やプラスチックに代わる原料として期待されている。さらに持続的に木材を活用できるため、衰退したニッポン林業の再生・活性化にもつながる。是非、成功して欲しいものだ。

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「育休3年」はピント外れの政策

以前このブログでも安倍政権の成長戦略について批判を書いたことがあるが、その多くは目標やスローガンばかりで実行する政策の中身が具体的でないということだった。ところが「働く女性の環境整備」テーマには具体策に問題が含まれている。それは「3年間の育児休暇取得の実現」である。これは実際には狙いの逆になってしまうピンボケ政策である可能性が高い。

この政策については巷でも批判されているようだ。いわく「3年も職場を離れていたら復帰しづらい」「3年間も女性にだけ育児を押しつけるのか」など、女性側からの批判が強い。

この政策の狙いは、既に働いている女性が子供を産みたいと思ったときに遠慮なく育休を取得できるようにしようという、善良なる意図に基づくものだろう。しかしこの政策が実現した暁には、雇用者側はどう反応するだろう。

きっと若い女性を「(ある程度教育コストを掛けたところで)3年も休職する可能性がかなり高い人材」とみなすのではないか。雇用者にとって「割高な人材」と判断されてしまうことになろう。同じような大学を出て、同じようなバックグラウンドを経て同じような入社成績を収めた男女がいたら、男性を選ぶインセンティブが働くことになる。これでは若い女性の就職難を強めるばかりではないか。

「子供を産みたい女性が遠慮せずに産める」社会の実現には、「育休3年」なんかよりもずっと有効な策がある。それは「時短の推進」である。まずは幼子を持つ母親はもちろん父親にも、遅出・早退を柔軟に認めるのである。もちろん、その分だけ周りの人に多少のしわ寄せが行くだろうが、いずれ自分または自分の子供たちがその番に回ってくることを考えて、皆でその分を埋めることに大して異存はないはずだ。これこそ「社会が子供を育てる」を地で行くやり方だろう。政策というより企業単位で取り組み可能な方式だ。

それに小生は次のように考える。元々ブラック企業でない会社では、オフィスにおける日本人の生産性は低く、ダラダラと長時間働くケースが少なくない。もっと密度濃く短時間に業務を片づけることは、多くの企業にとって実は難しくないと思う。この「時短for育児」を各社で検討・推進することをきっかけに、オフィスでの生産性大幅向上と早帰りの習慣が多くの会社で実現することを願う。

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「生物に学ぶイノベーション」は奥深い世界

7月1日(月)に放送された「クローズアップ現代」のテーマは「生物に学ぶイノベーション ~生物模倣技術の挑戦~」というものだった。以前にも似たようなものを同じNHKのサイエンスZEROで観たことがあるが、少しバラエティ色が薄くなって報道カラーが強く出ており、日本社会にとっての期待と課題が浮かび上がる。

生物が進化させてきた機能を模倣する「バイオミメティクス(生物模倣技術)」。実際、革新的な技術が次々と生まれようとしている。その背景としては、電子顕微鏡やナノテクノロジーの進化により、生物の「神秘のメカニズム」を分子レベルで解明、再現できるようになってきたことがある。

番組中で最初に紹介されたのは、山形県鶴岡市にある、慶應大学発のベンチャー企業。クモの糸の構造をまねて、人工的に作り出した新素材が注目されている。実験では、ナイロンより高い伸縮性を実現。強度は鋼鉄製の糸の2倍にも達する。この糸をシート状に編んで自動車のボディーなどに使えば、今よりはるかに軽くて丈夫な車を造ることも可能という。

クモの糸の中でもぶら下がるときに使う糸は、特に強さと伸縮性を兼ね備えている。主な成分はフィブロインと呼ばれるたんぱく質で、硬い部分と軟らかい部分が並んだ構造をしている。これが集まって糸になると、硬い部分はくっつき合って頑丈に、軟らかい部分は絡まり合って、伸縮性を発揮する。この独特の分子構造が、クモの糸の驚異的な強じんさを生み出している。しかしクモはすぐに共食いしてしまうため、絹糸を作るカイコのように大量に飼うことはできない。

このベンチャー企業では、最新のバイオテクノロジーを使って、クモの糸の遺伝子を持った微生物(バクテリア)を培養している。バクテリアは遺伝子の命令に従って、たんぱく質フィブロインを作り出す。温度や栄養などを調整して、このバクテリアを大量に培養。培養液を精製すると、フィブロインだけを回収できる。それを溶液に溶かし、細く圧縮して押し出すことで、糸状に成形する。量産に向けた計画も動き出しており、年内には試験プラントが稼働する予定だという。

他にも幾つかの例を番組では紹介した。例えば超小型の飛行ロボットの開発。重さは僅か数グラム。ハチドリという小さな鳥の複雑な羽の動きをハイスピードカメラで撮影し、スーパーコンピューターで解析し、ロボットに応用しようとしている。

もう一つの例は今年実用化されたヤモリテープ。壁や天井を自由に歩き回る、ヤモリの足の接着方法を研究したもの。ヤモリの足の裏には、吸盤や粘着物質はない。しかし電子顕微鏡で観察すると、数億本に枝分かれした微細な毛が生えていて、物質と引き合う特殊な力が働いていることが分かった。ヤモリテープでは、カーボンナノチューブによってヤモリの足の裏の構造を再現している。

3つ目はアワビに注目して新素材の研究を行っている、東京大学の研究室。アワビの貝殻は炭酸カルシウムで、セラミックスの一種。しかしセラミックスとは違って、非常に割れにくい性質を持っているとのこと。その秘密は、貝殻は厚さ1ミリにつき、薄い板が千枚以上も積み重なり、板の間にも軟らかい接着層が挟まる複雑な構造をしていること。貝殻に力が加わると、薄い板が1枚ずつ壊れて、進行を食い止める。板の間の接着層もクッションとなって、衝撃を吸収するため、簡単には割れない。

何より研究者たちを驚かせたのは、貝殻の作られ方だという。アワビはほとんどエネルギーや資源を使わず、海水中の炭酸カルシウムを取り込んで、貝殻を成長させる。人間のように、高温で焼き固めたり高い圧力をかけたりすることなく、ありふれた物質だけを使って強じんな貝殻を作っていたということだ。この仕組みを真似することができれば、エネルギー消費が極めて少なく、しかも環境に優しい製造技術が確立できるということになる。少なくとも大きなヒントにはなるのではないか。ものづくりニッポンの復活のために期待したい。

日本はこの分野で、世界のトップランナーになれる可能性を秘めているというのが番組のメッセージの一つ。なぜなら南北に長い国土には9万種もの多様な生物がおり、ばく大な資源となりうるから。一方、日本では昆虫学や動物学の研究者と工学系の技術者との連携が弱く、製品化の動きは欧米に大きく遅れを取っているのが現状だとのこと。この領域ごとの「蛸壺世界」の壁を超える試みも紹介されていた。頑張って欲しい。

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「ありがとうって言われる仕事」の魅力

6月29日(土)にBSジャパンで放送された「ありがとうって言われる仕事~ソーシャルビジネス2013~」は興味深いものだった。「第1回日経ソーシャルイニシアチブ大賞」を受賞した団体の4つの活動を紹介するものだ。

(1)大賞:フローレンス
子供が病気になると一般の保育所は預かってくれない。そんな悩める働くママの強い見方、病児保育のシステムを確立した。訪問型で固定の施設を持たず、共済型にすることで低価格での利用を実現。また1人親家庭には更に格安のプランを提供。
(2)国内部門賞:ケアプロ
血液検査を始めとする健康診断を1項目500円から提供。自分の体調を知り、いち早く医師を受診する機会を提供することで増え続ける国の医療費の削減に貢献。
(3)国際部門賞:テーブル・フォー・ツー・インターナショナル
飢餓に苦しむ発展途上国の子供と肥満に悩む先進国。その真逆の問題を一挙に改善する。
(4)東北復興支援部門:オンザロード
被災地の石巻を中心に、地元の生産者の悩みを解消する仕組みを作り出した。

特に(2)の「ケアプロ」の「ワンコイン検診」は名前は聞いたことがあっても、内容はよく知らなかったが、この番組を観て理解できた。

その特徴は4つ。1.安い(1項目500円から)、2.早い(結果はその場で伝える)、3.自己採血(血液検査は指先から自己採血。看護師がサポート)、4.ケータイカルテ(パソコン・スマートフォン・携帯で、いつでも、どこでも、検査結果を確認できる)。なるほど確かに「ファースト健診」、今まで健診を受けなかった人たちも気軽に受けるようになるということが分かった。

面白いのは法人向けに「出張イベント」というのを実施していること。自社社員向けとはかぎらない。むしろ自社施設やイベントを盛り上げるために全国どこでも出張するという趣旨。駅ナカ、店ナカ(番組ではパチンコ店の例が採り上げられていた)、街ナカ(お祭りなど)、等々、年1000回の実績ありとのこと。これは凄い。パワフルな情熱を感じる。

ケアプロに限らず、ソーシャルビジネスはいずれも、やっている人たちが輝いていて魅力的である。だからこそ応援する人たちが増えるのだろう。我々のような経営コンサルティングも「ありがとうって言われる仕事」ではあるが、価格が高いためにソーシャルビジネス扱いされることはない。でもこうしたソーシャルビジネスを生み出す、または拡げる手伝いをしたいという思いは常にある。

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オフショアBPOに潜む罠 (1)

海外でシステム開発や業務処理を請け負うオフショアBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が大流行りである。しかしシステム開発の世界では、納期に間に合わない、結局高くついた、などの失敗事例が意外と多いようだ。


日本企業からシステム開発を受託する中堅・中小企業の経営者から、オフショア開発先を中国からベトナム辺りに移したいという話を立て続けに聞いた。「中国の人件費が高騰して儲からないから」と彼らの意見は共通している。しかし少し立ち入った事情を聞いてみると、問題の本質は違うように思える。

一つの典型的パターンは、日本の顧客企業のシステム要件がどんどん変化することに対応しきれずに、進捗の遅れを取り戻すために開発者数を追加投入せざるを得なくなってしまう。もう一つのパターンは、要件通りに作ったのに、いざシステムを動かしてみると「使いづらい」と散々な不評を買ってしまい、作り直しを余儀なくされる。いずれの場合も言葉の壁のせいで随分手間取ってしまうというものだ。

結果として日本で開発していたときと大して変わらないか、却ってコスト増になってしまう。ところが海外での開発をウリにしているものだから、随分安い金額で受注しており、大きな赤字を出す事態が続出するのである。

要は、日本で開発していたときの課題(顧客の要求定義を早めに固められないことなど)が全く解決されないままオフショア開発にシフトしたため、日本側の営業SEと中国側の開発プログラマとの間のコミュニケーション・ギャップが致命症になってしまうのである。

この課題解決ができないまま、より人件費の安いところを求めて中国から東南アジアなどにシフトしても、問題は解決しないどころか、やり直すことのロスや新たに抱えるリスクのほうが却って大きくなるのではないか。一応断っておくが、弊社は東南アジアへの進出の支援サービスも提供しており、東南アジアへのシフトに単にケチをつけたいわけではない。

英米豪がインドなどにオフショア開発させて大幅にコストダウンに成功したのは、同じ英語圏という要素がかなり効いている。それを我が同胞たちは、中国のブリッジSE(日本側との橋渡し役の現地人SE)やプログラマ諸君が日本語学校を出たというだけでビジネスモデルを模倣できると考えたようだ。そして今またベトナムで同じ失敗を繰り返そうとしている。

確かに日本に比べれば中国の、中国に比べればベトナムのSE人件費は相対的に安い(急上昇中だが)。しかしコストだけとっても、オフショア開発拠点の管理・維持に掛かるコスト全般、ブリッジSEの人件費、伝言ゲーム的打合せに掛かる追加工数などの要素をトータルで考えて、それらの拠点選択肢を比較検討しているだろうか。日本語に堪能なブリッジSEを継続的に確保できる算段はあるのだろうか。怪しいものだ。ましてや先に挙げたような要求定義や開発に難儀する場合のリスクについてはほとんど考慮していないのではないか。「人件費が安い」「周りがみんな進出しているから」という情報に洗脳されて「オフショアありき」で考えるせいだろう。

是非、国内での開発も含めた幅広の選択肢の中でバランスのとれた総合的な比較評価をして欲しいものだ。併せてシステム開発会社の経営者の方々には今一度、自らのビジネスプロセスのあり方を考え直して欲しい。アジャイル開発などの新しいやり方を取り入れて仕様をもっと早めに固められないか、または柔軟に手直しできるやり方はないかなど、業界として本質的な課題解決に向き合うべき局面にあると考えるから。

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ジャンル : ビジネス

メガソーラー事業への取り組み姿勢を知る

6月30日(日)に放送された「熱線ビジネス!太陽光 メガソーラーを足元から徹底解剖」という番組をたまたま録画しておいた。“太陽光発電”システムに関し、「家電量販店、機器メーカー、売電事業、メガソーラー施工の舞台裏、被災自治体での取り組み…等々。これまでとは違った視点で、その最前線を追った!」という触れ込みに惹かれたのだが、施工の舞台裏はなるほど興味深いものだった。

小売のエディオン、メーカーのシャープでの取材内容は従来のものと大して違わず、期待外れ気味。示されていた価格についても「どのメーカーでも同じくらい」といっていたが、家庭用で標準的な4kWで機器と施工を含めて180万円と標準価格を示していたので、随分高い。補助金(国からの8万円~東京都港区などの手厚いところで68万円)を勘定に入れても10年かけて元が取れるかどうか怪しいという水準である。また、消費者の電気価格に撥ね返る度合いが大きいため固定買い取り制度に「疑問視する声も出ている」というコメントもあった。

この2~3年で住宅用がかなり伸びたのは事実だが、2012年度に急伸したのは非住宅用と発電事業用。後者はいわゆるメガソーラー事業である。2011年度がほぼゼロに近い国内出荷実績だったのが、一挙にそれぞれ全体の1/3、1/4程度の規模にまでなっている。
http://太陽光発電・ソーラーパネル比較.com/blog/?p=604

メガソーラーとして最初に紹介されたのは中部国際空港。旅客ターミナルビルのセンターピア屋上に、太陽光発電パネルを1,440枚(計約1,900m2、出力約240kW)設置した。発電した電気は、駐機中の航空機に電力を供給する固定式GPU(地上動力装置)の一部で使用している。さらに来場者用駐車場の壁面で太陽光発電システムの実証実験を3月より開始した。傾斜設置型太陽光発電システム(出力23.7kW)をP1駐車場A棟東側壁面に設置。設置枚数は132枚、設置面積は約200平方メートル。太陽光パネルは化合物系、多結晶系、薄膜系の3種類、設置角度は45度、65度、90度の3パターンを採用し、太陽光パネルの仕様や設置角度の違いなどによる発電効率を検証している。さすがトヨタの御膝元。合理的実証態度だ。
http://www.kankyo-business.jp/news/004417.php

番組ではその後、メガソーラー事業者や施工業者の話が幾つか紹介される。1点は電力会社が承認するかどうかがポイントだということ。近くに電力会社の送電線がなければメガソーラー事業者自ら送電線を引かなければいけない。もう1点は耐久性。「しっかりとした施工や管理がされないと、20年単位のビジネスなので、問題が起きかねませんよ」ということ。風で飛ばされたりしないように、地震などで崩れないように。またパネルの角度も「日本では30度」とよく言われるが、パネルに影ができたり敷地に対してパネル面積を広く取れなかったり、色々検討する必要がある。

架台製造者の奥地建産(株)での話が意外と面白かった。架台の素材の耐久性試験としては色々なものを実際に屋外にさらして実証比較している。わざと傷つけたり、ボルトで施工した状態でみたりしている。また場所も三重だけでなく東京や沖縄などでも実施しているという。また、同社では架台だけではなく総合的なサービスもやっているので11社のパネルを自社で導入して、気象条件に応じて発電状況がどう変わるのか、細かいデータを取得している。こうした実証的な態度は素晴らしい。こうやって真面目に知見を貯めているベンダーと契約したいものだ。

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