「疲労」を解明した脳科学研究者は過労死を激減させるか

9月1日放送の「夢の扉+」は「世界初!疲労のメカニズムを解明し、“疲れ”を数値化!疲労大国ニッポンを救いたい!~新常識をつくった医学博士」。ドリームメーカーは大阪市立大学の特任教授、渡辺恭良氏。

番組冒頭で紹介される質問、「疲労の原因は何だと思いますか?」。多くの人は「乳酸」と答える。それは「都市伝説だ」と断定するのが渡辺教授である。身体の異常を知らせる 「痛み」、「発熱」、「疲労」は“三大生体アラーム”と呼ばれ、重大な疾患が潜む可能性もあるが、これまで客観的な診断法、初期治療法(プライマリー・ケア)は確立されていなかった。この“医学の忘れ物”に真正面から挑み、「疲労」のメカニズムを分子・神経レベルで解明したのが、大阪市立大学の渡辺氏。どれだけ疲れているかを客観的に測る検査法を確立、疲労の数値化に成功したのである。

挑戦のきっかけ、それは自身の過労だった。脳科学を専門としていた渡辺氏は、40代半ばで、研究費13億円という脳科学研究の国家プロジェクトのリーダーを任された。しかし疲労困憊の日々が1年間続き、遂に激しい腹痛に倒れた。『自分が体験したような“疲労”をなくしたい!』。渡辺氏は、生涯のテーマを決意した。そのパートナーは大阪市立大学医学部付属病院の疲労クリニカルセンター、倉恒弘彦医師。

1999年、疲労研究は国家プロジェクトとしてスタート。これまでに国や企業から30億円という莫大な費用が投じられた。他の研究者の中には「疲労を研究する意味などあるのか」などと、心ない批判も繰り返されたそうだ。

しかし渡辺教授を中心とする研究チームは成果を出す。まず、疲労の主な原因物質とされてきた「乳酸」にはむしろ壊れた筋肉を修復し疲労を回復する役割があり、別の物質が疲労の原因であることを証明した。それが活性酸素。体内の細菌を退治する役割を持つ活性酸素が、オーバーワーク状態では大量に増え、正常な細胞まで傷つけてしまう。この傷つけられた細胞が修復されないうちに蓄積されている状態が「疲労」だということを突き止めたのである。このメカニズムを発表すると世界は驚き、今や渡辺氏をノーベル賞候補に推す声もあるという。

さらに、渡辺氏は30億円という豊富な資金をフル活用し、「疲労回復物質の比較」というアプローチを採用し、疲労回復に絶大な効果を発揮する “イミダペプチド”にたどりつく。これはマグロの尾ひれや渡り鳥に豊富に含まれ、一日200㎎接種し続ければ疲労回復に効果が大きいそうだ。

そして今、渡辺氏が新たに目指すのは、手軽にかつ高い精度で、疲労を数値化すること。色々なアプローチを試したが、そのほとんどは個人差があるため使えない。そして天啓が閃いた。測るのは「自律神経」のバランスと機能年齢。交感神経と副交感神経のバランスが崩れていると疲労が溜まっている可能性が高い。さらに多くの人のデータから、「自律神経」の機能年齢も割り出した。これを手軽に測れる疲労度計をメーカーに製作してもらった。

不名誉なことだが世界共通語になってしまった“Ka-ro-shi(過労死)”を防ごうと突き進む、ニッポンが誇る科学者の魂を見た思いがした。
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「自家培養技術」による再生医療は着実な成果を生んでいる

8月25日放送の「夢の扉+」は「再生医療のトップランナー!皮膚もひざ軟骨もよみがえる!“自分の細胞を培養”する再生医療製品で新たな医療の道を拓く」。ドリームメーカーは愛知県蒲郡市にある再生医療製品のベンチャー・メーカー、J-TEC(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)の事業開発室長・畠(はた)賢一郎氏。

番組冒頭で紹介される手術。全身の9割以上にヤケドを負った5歳の男の子。生存率わずか3%。その命を救ったのは、男の子自身の皮膚を培養するという「再生医療」の技術。畠氏たちが作った「自家培養表皮」は、日本で初めて「再生医療製品」として国から承認を受けた。そして現在、日本で唯一、製造販売を行なう。

J-TECの畠氏のもとには、日本中から患者の細胞が送られてくる。この時点ではまだ保険適用されておらず、そのままでは患者の両親に全額請求される。そして畠氏の判断で、J-TECがその手術費用1200万円を負担した。設立以来赤字続きの会社(患者が途中で死んでしまうと費用は全額会社負担になるそうだ。そんなのアリ?)にとって小さくはない金額だ。

患者自身の細胞・組織を人工的に培養する「自家培養技術」。その実用化において、日本は世界に大きく遅れをとる。製品として承認されるまでに長い年月を要するからだ。“再生医療の技術を、健康保険適用の製品として、広く多くの患者に届けるためには、一体どうしたらいいのか―”。『誰かがやらなくては―。再生医療で一人でも多くの患者さんを救いたい』。その心意気で、畠氏は、口腔外科医の職を辞して、この会社に参画した。そして途方もない関係省庁との交渉をこなしてきたのである。難題は次から次へと降りかかる。

そんな彼らの思いが詰まった新たな製品が、今年4月、保険適用までこぎつけた。それは、ひざ痛から患者を救う「自家培養軟骨」。10年を超える“承認の壁”を乗り越えて実現した、第一症例の手術がこの5月に実施された。患者は元バレーボール選手の女性。そして傷ついたひざ軟骨は見事によみがえった。

その成果は海外の注目も浴び、番組の最後ではタイからの視察があったことも紹介された。山中教授の御膝元、日本の再生医療が世界からそうそう遅れるわけにはいかない。関係者の意地と矜持、心意気が伝わってきた。

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『人工光合成』のもたらす夢と元気とエネルギー

8月11日の「夢の扉+」は「CO2を地球のエネルギーに!世界トップ!CO2からエネルギーをつくる奇跡の技術 『人工光合成』で燃料を生み出し、地球と人類を救う!」(…これも長い)。ドリームメーカーはパナソニック先端技術研究所の工学博士、山田由佳氏だ。『少しでも可能性があるならば、トライする価値がある』。これが山田氏のモットー。

山田氏は1987年に東京大学工学部を卒業後、松下電器産業に入社、2000年にパナソニック先端技術研究所に転属。転機となったのは13年前、人類が250年足らずでCO2を出し続けて地球を燃やし始めていることが描かれた会社のポスターを見、自分にできることを考えた。当時の所長だった安立正明さんからは、「これからの電機メーカーの使命である環境エネルギーに取り組んでほしい」と言われた。

地球温暖化の“元凶”とされる二酸化炭素=CO2。そのCO2を光と水を使ってエネルギー、燃料や化学原料に変えるテクノロジー、「人工光合成」の研究で世界をリードするのが、山田氏が率いる研究チーム。独自のアプローチで開発を進め、2012年、世界最高のエネルギー変換効率を実現した。

世界中の研究者が人工光合成の実用化に向けてしのぎを削る世界。いかにCO2の反応を高めるかがカギとなる。山田たちは、幾度も実験を繰り返し、電機メーカーならではの発想で“ある材料”にたどりついた。それがLED照明に使われる半導体、窒化ガリウムだった。

ところが、光触媒から電気を運ぶ電極の前にロスが生じていた。ある研究員が電極を水につける方法を提案した。山田さんは「可能性が少しでもあるなら」と試すことを決断し、人工の光でCO2からエネルギーの源を作ることに成功した。その後実験を繰り返し、昨年には変換効率が本物の植物に追いつくまでに至った。これは世界トップの位置にいることを意味する。

番組で山田たちが挑むのは、太陽光の下でCO2からメタンガスを作る実験。レンズが太陽光を追尾し光を集め、水槽を見ると反応が始まっていたが、晴れたり曇ったりを繰り返した。3時間半が経過したのち、結果を確かめると…はたしてメタンガスは検出され、実用化への大きな一歩を踏み出したのである。

特筆すべきは、山田氏の類まれなリーダーシップ。明るい性格で、皆の力を束ねながら変えていく、統率力とチャレンジスピリット。街の人の声の通り、この技術が日本発信なのがうれしい。全体としてはぱっとしないパナソニックだが、元気のある部署は幾つもあることが世の中に伝わって嬉しい限りである。

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『スーパーレントゲン』は画像診断に新しい境地を開く

小生のお気に入りの番組の一つ、「夢の扉+」。時間がなくて録画しっ放しのものをまとめて観た。8月4日の放送は「乳がんを一目で突き止める『スーパーレントゲン』100年続く技術に革命!見えない病気を早期発見、早期診断!」(…長い)。ドリームメーカーは東北大学の多元的物質科学研究所、百生敦教授だ。

日本人女性の14人に1人がかかり、年間1万2千人以上が亡くなる乳がん。早期発見できれば生存率は9割を超える。しかし現在検診に使われている「マンモグラフィ」というレントゲン撮影の画像では、乳腺とがんとの見分けが難しく診断が困難な場合が少なくない。こうした「やわらかい組織が写せない」という、100年続くレントゲン技術の弱点を打ち破り、乳がんを一目で発見できる『スーパーレントゲン』を開発したのが、東北大学の百生敦教授。その解像度は、最新のMRIのなんと約100倍だという。

百生氏が東京大学に合格した直後、入院していた父が亡くなり、大学から大学院にかけての学費と生活費を支えたのは、惣菜売り場で働く母親の月3万円の仕送りだった。人の役に立つことを自分の使命と思い定め、百生氏の挑戦が始まった。『先入観を捨て、誰もやっていないようなことをやる』。レントゲンでやわらかい組織の病巣を鮮明に写し出せたら、医学が飛躍的に進化するはず、と。休日も研究に没頭する日々。だが、結果は何年も出なかった。

しかし彼は、誰も目を向けなかったX線の“ある性質”に着目し、画期的な技術を生み出した。柔らかいものであっても、X線は透過する際にわずかに(角度は何と1/10000)屈折する。これを検出できれば、柔らかなものでも画像ができる、と百生氏は考えた。持てる時間の全てを注ぎ込み3年が過ぎた頃、遂にレントゲンの常識を超える画像が得られた。通常のレントゲンでは映らない、うさぎの肝臓がんの映像がくっきりと得られたのである。1996年のnature medicineに発表された彼の論文は世界に衝撃を与え、注目の的となった。

しかしまだ実用化までにはハードルがあり、彼の実験装置は日本武道館とほぼ同じ巨大な施設が必要だった。病院で使うためには大幅に小型化する必要がある。考え抜いて3年。規則的な模様をずらして重ねることで生じるモアレにより、目に見えないわずかな変化を強調する方法を応用した。X線のわずかな屈折を元の画像と重ねることでくっきりと強調できる。MRIよりダントツの鮮明さ。天才的な着想の勝利だ。

今、百瀬氏が目指すのは「関節リウマチ」の早期診断。軟骨が破壊され激痛を伴う病気だ。早期に発見できれば、薬で症状の悪化を防げる。『スーパーレントゲン』の画像は軟骨の微細な変化を的確に捉えた。経験の深い医者が皆驚く、鮮やかさだ。これまでにない画像診断が可能になる、本当に世の中に役立つ技術である。

最後に百瀬氏を励ました彼の母親の素朴な言葉「からだを大切にして、お父さんの分まで頑張って」が心に沁みた。

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JR北海道が抱える宿唖

このところ事故と不祥事が連続して発生しているJR北海道。厳しい経営状況がもたらしたコスト削減への脅迫観念が、経営陣の正気と社員の士気を蝕んでいないか。


9月と8月にそれぞれ貨物列車の脱線事故。7月には特急のエンジンからの発煙トラブル。毎月の事故ばかりでなく、7月には運転士が覚醒剤を使用、9月には別の運転士がミスを隠そうと自動列車停止装置(ATS)を破壊、と信じられない不祥事が続く。今回の脱線事故の原因も、保安部署がレール異常を放置していたことにあるという。

一昨年の大事故以来、同社は事故と改善宣言を繰り返してきた。それでも一向に事態が改善に向かわないどころか、明らかに士気低下が原因とみられる不祥事や異常放置が相次いでいるのだ。しかも今回の脱線事故に関する記者会見での同社幹部のコメントは、評論家のそれかと間違うような、当事者意識の欠けたものであった。何か「組織のタガ」が外れてしまっているような印象を受けたのは小生だけではないだろう。

同社は民営化以来、一度も営業黒字を出したことがない。厳しい経営環境など、確かに同情すべき点はある。多分、民営化後ずっとコスト削減ばかり叫ばれてきて、保安にすら十分な手を掛けられない状況が続いたのではないか。
http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-272.html

しかし同社で深刻なのは、事態の背景に保安士や運転士の士気低下が大いに感じられることだ。「安全意識の低下」といった生易しいレベルではないのではないか。国鉄時代には自慢の職業だったのだろうが、今や給与も近所で肩身が狭いレベルになっているのではないか。地道な仕事なので、公共の安全を背負っているという使命感や誇りを失くしては立ち行かない。

小生は以前、業績が長年低迷したためリストラを繰り返した過去を持つ元・名門会社・Aのコンサルティングをしたことがある。JR北海道はそこと何となく似ているのだ。A社の施設は老朽化し、清掃・点検はおざなりだった。古参社員の多くは過去の名声にすがりプライドばかり高く、しかし自ら変えてやろうという意欲はない。業績低迷時代に入社した少数派の若手層は、「僕達なんて」と常に無力感を口にして、(さすがに不祥事は起こさなかったが)後ろ向きの発想しかできなかった。当初は実に厄介だった。彼らが変わるのに必要だったのは、小さな成功体験の積み重ねだった。

振り返って、JR北海道で、もし長年のコスト削減がもたらした士気低下によって一連の不祥事(異常放置、ミス隠し、覚醒剤)が引き起こされているとしたら、その組織体質が変わるのにはやはり成功体験の積み重ねが必要だと思う。それは、乗客と地域に感謝され、利用客が少しずつでも増えることでしか実現されないだろう。

できないことではない。実際、JR九州や他の地方の私鉄など、地域の経済環境は必ずしもよくなくとも、色々な工夫により業績を改善するのに成功しているところはある。まず経営者が今までの「縮み志向」の経営を猛省し、社員の元気とやる気を呼び覚ますため、人々の声を聞き知恵を絞ることから始めるしかない。

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公共データのオープン化は低コストでの住民サービスを実現する

政府や自治体などが保有する公共データを、誰でも簡単にインターネットから入手できる「オープンデータ」化が各国で進んでおり、そのビジネス活用に注目が集まっている。目的の1つが「経済活性化」。限られた財源下、政府や自治体が保有する公共データをインターネット上に公開し、企業などが二次利用することで新たな住民サービスを創出するという狙いである。9月22日(日)のBiz+サンデーの特集は「公共データに商機あり」。アメリカの先進例を見るとともに、日本での現状や課題を探った。

アメリカではオープンデータを活用した新ビジネスが次々誕生。その姿勢は、「とにかく政府が保有するデータは公開してしまおう。どう役に立つかは民間が考えればいい」というシンプルなもの。今や当初の1万倍の40万件のデータベースが公開されているそうだ。利用例として紹介されたのが「家庭の省エネ診断システム」のベンチャー企業・OPOWER。電力会社から各世帯の電力消費量データを受け取り、アンケート調査結果や住民票データなどと掛け合わせ、その地域での同規模世帯のグループ内での相対的な省エネ水準としての順位を示すサービスである。これでその家庭の省エネ行動が動機づけられるというわけ。

国内でのオープンデータの活用事例としては中津川にあるベンカー企業・カーリルが紹介された。全国6400の図書館の貸出図書を検索できるサービスを提供している。図書館が公開しているデータとアマゾンの書誌・書影データを組み合わせるだけだが、便利なので人気らしい。カーリルはこの利用状況の情報(どの図書館でどの本がどれほど貸し出されているか)を、例えば学術系出版社に販売しようとしている。従来、出版社は取次からの「出荷-返本」データか、大手書店の売れ行き状況しか把握できなかったので、これはマーケティング的に意味があるはずだ。

眼鏡の産地で有名な鯖江市のオープンデータの取組みも紹介された。現在、鯖江市では国に先駆け、行政が所有する様々な情報をインターネット上にオープンデータとして公開し、民間が二次利用することで新たな公共サービスを創出する試みをしている。現在、避難所やAED、市の施設、市営駐車場、コミュ二ティバス、文化財、消火栓などの26データを公開。それを受け、まち歩き情報や見どころ案内、避難所の位置とルート、AED設置位置、駐車場など約40のアプリが民間IT企業や市民の手によって誕生しているという。

課題も指摘されていた。鯖江市の担当者は「道路工事による道路規制状況」のデータも公開したい考えだが、1)情報量が多く、公開のための人手がこれまで以上に掛かる、2)工事進捗に合わせて情報を随時更新するのがさらに大変、といったところだ。道路工事業者が入力・更新をしてくれればいいのだろうが、容易ではない。米国の事例では周辺住民が自主的に水道故障・工事の情報を更新するような動機づけを行っていたが、そうした工夫が求められる。

番組の中で東京大学の坂村健教授が解説していた。発展途上国ではなく先進諸国において、限られた予算の中で、これからどう成長を引き出すかが課題。その解決策として、低コストでイノベーションが期待できる可能性の最も高いのがオープンデータであると指摘していた。つまりデータをオープン化することで、全部(高コストの)政府がやるんじゃなくて、みんなでやろうということになれば、低コストで済むということ。しかも思いもつかないことを引き出すことができる。どうなるのかというのはわからない、それがイノベーションだとも。とにかく前進するんだ、ということが、オープンデータ化を押し上げるんだとも指摘されていた。全くその通りだ。

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JR北海道は組織的に壊れていないか

JR北海道で事故と不祥事が連続して発生している。9月19日には貨物列車の脱線事故。8月17日にも貨物列車が脱線事故。7月22日には特急「スーパーとかち」のエンジン付近から潤滑油漏れにより白煙が上がったらしい。

事故以外の不祥事も重ねている。7月には、30歳の運転士が乗務中に覚醒剤を使用して逮捕された。実はこの9月7日にも別の30代の運転士が、ミスを隠すため、自動列車停止装置(ATS)を故意にハンマーでたたき壊すという不祥事が発生していたことが、今回の事故取材の過程で表面化した。

同社は2011年5月に発生した脱線火災で79人が負傷する大事故を起こし、その4カ月後、当時の社長が社員に安全性の向上を求める遺書を残して自殺した。同社はこの事故のせいで事業改善命令を受けており、全社的に信頼回復を誓ったはずだった。昨年11月には安全基本計画をまとめている。

にもかかわらず今年に入り、特急のエンジンからの出火や発煙トラブルが7件も続いている。発火場所とみられるエンジン部品は紛失し、事故原因は今も不明のままだとのこと。そのため、最高速度を落とし運行本数を減らす「減速減便」を打ち出したばかりだった。

今回の脱線事故のため、21日に記者会見した工務部長は9カ所でレール幅の異常を放置したことを発表し、「重大なミスだ」と認める一方で、「なぜ放置したかは分からない」と言った。翌22日に記者会見した野島誠社長はレール異常が全道で97カ所にも及ぶことを明らかにした。この会見では、レール異常が長期間にわたって放置され続けてきた理由に質問が集中したが、同席した幹部は「失念していた」「他の作業を優先した」などとあきれかえるような釈明に終始した。

幾人かの鉄道専門家がコメントしている。「問題は人員不足にある」と。国鉄末期に採用を抑制し、人員整理も進めた。民営化後もそれを継続し、人手不足が深刻で、現場をとりまとめる中間管理職がほとんどいない。50代以上の幹部と40代以下の若手に二極化し、鉄道マンの技術・常識が受け継がれていない、といった事情だ。

本州とは違う北海道ならではの事情もある。人口密度が低い地域を走るため、大半が赤字路線になっている。厳しい自然環境に対応するためのレールの保守管理も欠かせないが、長年の赤字体質のために人員を増やせない、といったことだ。

確かに北海道の自然の厳しさは全国一だろう。その分、機械設備の痛みは激しく、老朽化が進みやすいのは分かる。本来ならもっと早く稼働率を落として保守整備を進めるべきだったのを、赤字体質と人手不足ゆえに、相対的に少ない車両をフル稼働させざるを得ないと判断していたのだろうと(好意的に見ると)推察できる。

しかしだからといって、こんなに連続して事故やトラブルを頻発させてしまったら、利用者がますます減り(実際、ニュースでは北海道の人たちの多くが「JRは怖くて乗れない」とコメントしていた)、元も子もないではないか。それくらいの常識が経営陣には働かなかったのだろうか。この組織は、上も下もおかしくなっているのではないか。

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日本の科学者たちが追い詰める、再発・転移の元凶「がん幹細胞」

小生が結構好きなテレビ番組はNHKの「サイエンスZERO」。ナビゲーター役の女優・南沢奈央も気に入っている。ここ2回連続(こういうのは珍しい)は「シリーズ がん幹細胞」で、(1)「がん再発の謎が解けた!新発見『がん幹細胞』」(9月8日放送)、(2)「がん根絶も夢じゃない! がん幹細胞 最新攻略法」(9月15日放送)だった。

治ったはずのがんが再発・転移するのはなぜか?長年の謎がついに解明された。隠れた元凶、「がん幹細胞」の存在がごく最近発見されたのだ。このがん幹細胞、厄介なことに抗がん剤も放射線も効かない。シリーズ第1回ではまず、“血液のがん”=白血病を例に、がん幹細胞の驚くべき「生存戦略」を徹底解剖した。

がん幹細胞自体はあまり頻繁に細胞分裂をせずに(白血病の場合)骨の際にじっと潜み、数カ月に一度程度、がん幹細胞とがん細胞に分裂する。一方、がん幹細胞から分裂した普通のがん細胞は、骨髄のど真ん中で、どんどん細胞分裂し増殖する(ただし老化しやすく、細胞分裂の回数には限界がある)。そのため従来はがん細胞ばかり注目され、その退治に科学者たちは躍起になってきた。しかし、一旦がん細胞が死滅したあとでも、がん幹細胞はしぶとく生き残る。やがてがん細胞を分裂し、それがどんどん増殖する。これが再発・転移のメカニズムだ。

抗がん剤は活発に細胞分裂するがん細胞の性質を利用し、いわば回転しようとする歯車に強引に輪留めをしてしまうことで、がん細胞にストレスを生じさせて殺す方式である。ところががん幹細胞は普段は眠っているような状態なので、強引に輪留めをしてもがん幹細胞はストレスを感じない。まさに細胞分裂をしようというタイミングでないと効かないのである。そのタイミングが分からないまま、ずっと抗がん剤を投与することは、副作用のマイナスが大きく現実的でない。

九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授たちは、「がん幹細胞を覚醒させることがタンパク質化合物の働きで可能であり、覚醒のタイミングに合わせて抗がん剤を投与することによってがん幹細胞を死滅させることができる」という仮説を証明した。さらに理化学研究所の総合ゲノミクス研究グループ(石川文彦リーダー)は、正常な造血幹細胞と、そっくりな白血病のがん幹細胞を仔細に比較し、その遺伝子レベルでの違いを調べ上げたところ、25種類のたんぱく質が後者に特有なことが判明した。その中でもキナーゼと呼ばれる、HCKというたんぱく質はがん幹細胞の生存に必須であり、この働きを止めることができれば、がん幹細胞を死滅させることができることが分かった。そしてそのための化合物、RK-20449が突きとめられたのである。

白血病以外にも胃がんや乳がん、大腸がんなどからもがん幹細胞が発見されつつあり、正常な幹細胞との違いを見極めることで、がん幹細胞だけを死滅させる化合物を発見するというアプローチが有効と期待されている。シリーズ第2回でも、がん幹細胞の特徴と弱点を追求する日本人科学者の執念を追った。

がん幹細胞は表面に特殊なたんぱく質を持っていることが分かっている。がんの種類を特定できる目印ゆえ、「がん幹細胞マーカー」と呼ばれている。代表的なものがCD44である。このたんぱく質の働きは最近まで分からなかったが、がん細胞をも老化させる「毒」である活性酸素を除去するメカニズムに貢献していることが、遺伝子技術でようやく判明したのである。見つけたのは慶応義塾大学先端医科学研究所の佐谷秀行教授。シスチンを取り込むポンプ「xCT」を安定化させる役目をCD44が果たしており、取り込まれたシスチンは抗酸化物質・グルタチオンに変わり、活性酸素を壊してくれる、というメカニズムである。つまりがん幹細胞の老化を防いで長生きさせているのである。

CD44には数種類あり、長いものがポンプ「xCT」を安定化する元凶であり、抗がん剤が効かず、しかも転移しやすいという最悪の性格を持つ。そこでポンプである「xCT」を止めることはできないか、となる。それが既存の薬、スルファサラジンで可能だということを、やはり佐谷秀行教授たちが世界の論文を洗い出して見つけたのである。CD44を持つがん、具体的には胃がん、大腸がん、乳がんに対しては特効薬が見つかったのである。朗報だ。

次、「がん幹細胞の機能が分かっていない場合でも、がん幹細胞をやっつけることはできないのか?」に対する答がある。例えば脳腫瘍のがん幹細胞が厄介なのだが、ヘルペスウイルスを適用し、根こそぎやっつけるというアプローチである。この開発者は東京大学医科学研究所の藤堂具紀教授である。

ヘルペスウイルスを遺伝子操作し、正常細胞では一切増えず、がん細胞だけで増える「がん治療用のウイルス」というものを作るのだ。3つのたんぱく質をヘルペスウイルスから奪うことで、正常細胞で悪さをしないよう、そしてがん幹細胞が攻撃されるようにしている。一つ目は、ウイルスに感染したときに働く自滅スイッチをオフにしてしまう「ガンマ34.5」。二つ目は、ヘルペスウイルスの餌「ICP6」。三つ目は、「がん幹細胞マーカー」を隠す役目の「アルファ47」。

悪者を使って悪玉を殺す、「毒には毒を」というのは、実に画期的な発想である。がん幹細胞の存在を突き止め、その特徴を調べ上げ、弱点を見つけ出す。ターゲットが決まると強い、日本の科学者たちのあくなき追求の手によってがんを退治する日も近いのではないか。近しい友人を3人も失っている小生としては、是非仇を討って欲しい。

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「一挙に消費税8%へ」と「公共事業の大盤振舞い」の大間違い

来年4月に消費税率を8%に引き上げることを安倍首相が決断したと報じられた。首相は、10月1日に発表される9月の日銀短観や8月の有効求人倍率などを分析して最終判断し消費税率引き上げを発表する方針だが、18日、麻生財務相に法人税減税の具体策検討を指示したことから、既に腹を固めたと見られる。

もともと4~6月期の国内総生産(GDP)改定値が重要な判断材料になると注目されていた。9日発表された改定値は、名目が年率換算3.7%増、物価の影響を除いた実質が3.8%増を確保し、消費税増税法の付則で目安とされる名目3%、実質2%の成長率を上回った。これで増税の条件は整ったとされたのだろう。

問題は2つある。多分、一挙に3%アップとなってしまうことと、そのショックを和らげるという名目でおかど違いの公共事業の大判振る舞いに向かうことである。

一つめの問題は、一挙に3%もの大幅な増税率となることからくる経済変動、具体的には駆け込み需要とその反動としての買い控え行動という需要の山と谷のせいで、本来なら潤うはずの企業の多くが、超過需要に対応するための出費で需要期にも大して儲からず、しかもそれに続く需要落ち込みで大きく収益を落とすことである。

過去、3%から5%に上がった際でも強烈な需要変化が起きた。今回はそれ以上、ちょうど消費税導入時のような大きな需要変動がもたらされるだろう。買い控えが2年も続けば多くの中小企業は倒産してしまう。こうした事態を警戒して、中小企業とその従業員は短期的に多少カネが入っても、人件費増や出費を控えるだろう。景気腰折れの可能性が高まる。

だからこそ一部の識者は毎年1%の増税により10年掛けて10%に持っていくべきなどといった対処案を出していた。小生もこの案に賛成だった。これなら駆け込みも買い控えも起こりようがない。誰もが淡々とその年に必要なものを買うだろう。需要は平準化され、着実に景気回復がもたらされただろう。

しかし大企業を中心とする経済団体やエコノミスト達はほとんど一顧だにしなかった。彼らは、面倒だ、コストに撥ね返る、という。ある程度は当然である。しかしその反対意見は、前回および前々回の増税時に大騒ぎした、会計・請求等のプログラムとPOSのROM書き換えを毎年繰り返すと想像しているからに過ぎない。

毎年税率が変わると分かっていれば対処の仕方は変わってくる。会計・請求等のプログラムは膨大にある「5%」という部分をひとつ一つ毎年埋め込み直す代わりに、最初に「消費税○%」という部分を参照するように書き換えるだろう。あとは年度毎にその一か所を書き換えるだけで済む。POSレジもPCやタブレットをベースとするものが一挙に普及し、通信によって「消費税○%」という部分を書き換えるようになるだろう。したがって大騒ぎするほどの手間・コストではなくなる。

これらを勘案すると、毎年1%アップする案が費用対効果でいうと最も望ましいはずである。しかし官僚や政治家がこうした技術的な対処について理解できているとは思えないので、結局は一挙に8%へアップする策が採用されることだろう。残念だが。

もう一つの問題はもっと本質的なことである。それは上記の需要変動がもたらす景気の落ち込みを支えるためという名目で、5兆円ともいわれる大規模な経済対策(その大半は公共事業投資と企業減税)が予定されることである。

この大部分の原資は増税分3%のうち2%だといわれる。つまり日本政府の財政を立ち直らせるため、そして長期的には年々増える社会保障費を賄うために行われるはずの増税の多くが、公共事業に向かうのである。しかも法人を復興増税の対象からも外すことを前倒しに実行するとのことだ。いわば低所得者を含む一般家庭から、土建屋と儲かっている大企業およびその株主に、大幅な所得移転が行われようとしているのである。完全に所期の目的を見失い、本末転倒になり始めている。

首相とその周辺は、大企業および土木建築関連企業の業績全般および税環境が改善し、外資企業の日本での事業が儲かるとなれば、いずれ雇用が改善し賃金が上昇し、世の中のカネ回りがよくなる、という「染み出し」または「おこぼれ」理論を信奉しているのだろう。しかしこれは小泉構造改革路線が大失敗したときに、有効でないことを既に確かめたではないか。企業や富裕層が儲かっても大半は内部保留され、世の中へ出回るカネの流れは太くならない。乗数効果は小さいのである。それより低所得者を中心に所得補てんをしたほうがずっと乗数効果は大きい。彼らは懐に入った傍から使わないと生活が成り立たないからである。

この「消費税を8%にする代わりに企業向けに経済対策」というニュースを最初に聞いたとき、小生が感じたのは「ああやっぱり」であった。このブログでも時折感想を漏らしているが、自民党の政治というのは、結局は土建屋政治であり、米国の共和党のような富裕層が得をするための政治だということである。ここにきて選挙というハードルがなくなった分だけ、自民党がその本性を露骨に現しつつあると感じるのは小生だけではなかろう。

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「無印良品」らしさへのこだわりが生む年間6500万の購入者

9月19日(木)放送のカンブリア宮殿が採り上げたのは良品計画。松井忠三(まつい・ただみつ)会長を招いての題は「『経営にまぐれなし!成果を出す仕組みのつくり方』~赤字38億円からの経営改革の全貌!~」。

「無印良品」。生活雑貨から衣料品、家具、食料品(これは知らなかった)まで、7500アイテムを販売。暮らしに関わる商品なら何でも揃うお店として、右肩上がりで成長を続け、年商1880億円。今や24の国と地域で、610店舗を展開している。

1980年創業。「わけあって、安い」をコンセプトに、西友のプライベートブランドとして誕生。90年代には“ムジラー”なる熱烈なファンを獲得していった。しかし2001年には38億円の赤字に陥り、創業初の危機に立たされた。原因はユニクロ、ニトリといった低価格店の台頭に慌てた商品戦略の混乱。そしてそれまでの成長にあぐらをかいていた企業体質にあったという。

この赤字会社の再建を託されたのが、傍流にいた現会長の松井忠三氏。彼は社内の膿を出すべく、苦渋の決断として在庫廃棄を皆の目前で行う(一種のショック療法だ)を経て、「無印らしさ」を取り戻す“仕組み”を作り上げ、みごとV字回復を成し遂げた。

38億円の赤字解消の為に松井が作り上げたのが、全13冊、2000ページにも及ぶマニュアル『ムジグラム』。そこにあった、一般的なマニュアルにはない膨大な“仕組みつくり”のノウハウとは、全ての項目に対し、「なぜ、誰が、いつ、どうやって」を必ず明記することである。ちょっと前にこのブログで採り上げたしまむらのマニュアル永遠改良主義とはまた違う、マニュアルによる理念の浸透方法と感じた。

特に「なぜ」が丁寧に書かれているのが印象的だった。一昔前であれば有無を言わさず「やれと言ったらやれ」的なものがどの日本企業にもあった。しかし今の若者にそれは通じない。代わりに、何かをする理由に納得できたら、日本の若者も海外の若者もきちんと行うことができる。番組では、『ムジグラム』で中国人スタッフを教育する無印良品の取り組みを追っていた。

次に番組が追ったのが、商品開発である。年間6500万人が購入する“無印良品”の魅力とは?シンプルなデザインと機能性に優れた商品である。環境に配慮した素材や加工方法を考案するスタッフや、お客の要望に応えて改良される商品、さらにお客のニーズを掘り起こす取り組み等々。

その典型例として番組が採り上げたのが、年間900万足のメガヒットとなった直角靴下。実はチェコで見つけてきた「おばあさんの手編み靴下」を無印良品に落とし込んだものだ。そこには、『ゼロから新しい物を生み出すのではなく、昔から長く使われてきた「良品」を見つけ出し、現代の生活に合わせ仕立て直す』という無印良品の原点ともいえる思いが込められていた。それを商品開発のスタッフが淀みなく答えることができたところに、この会社が理念を共有していることの証左を感じた。

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テレビと裏話が教えてくれる特殊な業界事情

今夜は久し振りに大学の自動車部のOB会に参加した。小生は全体OB会の幹事メンバーだが、今夜の催しは同世代の卒業生のみが集まる、気の置けないものだ。そのため話題はかなり気楽かつストレートなもの言いが飛び交う。

今夜のメインの話題は今人気のドラマ、「半沢直樹」。舞台は三菱UFJ銀とも、三井住友銀とも、みずほとも世間的には云われている。実は原作作家・池井戸潤は旧三菱銀行の出身で、その時の経験がかなり反映されているらしい。というのも、三菱UFJ銀の広報部門に勤めている小生の先輩が、当時の池井戸氏の先輩でもあったそうで、作家となってからも取材などで相談されたり助言したり、逆に実態と違うなどとクレームを付けたり、色々あったと解説してくれた(この先輩、どこまで本当なのか、分からないところはあるが…)。

その話によると、国税のマルサをやっていた人間が金融庁の職員になることも実態としてあるし(小生は門外漢なので、ドラマを観たときには戸惑った)、資料を「疎開」させることもよくあるそうな。他の金融機関の人も「うちでもよくある」といっていた。一体、金融庁の監査って何だろう?また、金融庁の監査官がドラマのように書類をまき散らしたり担当銀行員にぶつけたりするのかという質問に対しては、何と「あの程度じゃない。分厚いバインダーごと放り投げるので、うまく避けないと怪我をする」と軽く答えてくれた。何とも特殊な世界だ。

もう一つの話題は、司会で有名なMM氏の話。次男が窃盗未遂で逮捕された事件でMM氏がマスコミや週刊誌で叩かれていて、近々自身が司会している番組から降板するのではないかと囁かれている件である。30過ぎた子供のことで親が責任を取るという話になるのは変だが、そもそもMM氏本人にはかなり不祥事があるようで、暴力団関係者との付き合いなど、前から噂があったらしい。小生がコラム記事を書いているInsight Now!にも、彼のセクハラ事件があたかも事実として書かれているのには面食らった。それに「MM氏と次男が銀座で豪遊」といった記事が見出しになっていたりするのは小生も知っていた(本質的でない覗き趣味かつ嫉妬心を煽るゴシップ記事ばかりだから、こうした週刊誌は読む気にもならないのだが)。

しかもギャラが何と年間5億円とのこと。テレビ局も切りたいと考えていたのでいい潮時と判断しているというのが、編集業の長い先輩の解説であった。その親の七光により入社した次男はかなり札付きの不良社員だったそうだ。こうした連中をのさばらせておくところなど、テレビ局ってやはり無駄に儲け過ぎとしかいいようがない。金融も特殊な世界だが、テレビ局はもっと異様だ。

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中古住宅のリノベーションは時代の要求

9月17日(火)の「ガイアの夜明け」、採り上げたのは中古住宅のリノベーション。題して「"中古"で実現!自分好みのマイホーム」。

景気回復と消費増税前の駆け込み需要。2つの要因から好調が続くマンション販売。"中古"マンションも同様で、首都圏の成約件数は12カ月連続で前年を上回っているそうだ。いま、中古に興味を持つ人々は30代を中心とした若い世代である。新築には興味はあるが、「価格が高い」「住みたい場所によい物件がない」「欲しい間取りがない」。それならば、はるかに安い中古物件を買い、自分好みに変えてしまおうという動きが増えている。それがリノベーションである。

新築時の状態に回復させる"リフォーム"ではなく、間取りをはじめ、住まいの雰囲気まで一変させることを"リノベーション"という。中古マンションを専門に扱うベンチャー企業「リノべる」のウリは、個人が行うと手間がかかるリノベーションを、ワンストップサービスで提供する事。一件の客につき一人のスタッフが最後まで担当する事。手頃な中古物件の情報の提供から、客が希望する間取り、好みのインテリアの実現までを、平均約8百万円(70平米)で請け負う。

番組では30代の夫婦からの依頼案件を取材した。物件は東京・世田谷区にある築40年のマンション。リノベーションの予算は750万円。夫婦からは、「砂漠のような質感の壁」、「なめらかな曲線を使った間取り」など、こだわりの注文が出る。最初の提案は大幅な予算オーバーであえなく撃沈。こだわりの部分は守りつつ、新築用浴室の採用など、コストダウンできる部分の提案などを行い、何とか当初予算に近い範囲で出来るメドが付いた。工事開始から2か月、部屋は要望通りの出来に仕上がっていた。出産間近い夫婦は「自分好みで身の丈に合った家が作れた」と満足の様子だった。

もう1件は、中古一戸建てのリノベーションの話。中古マンションを一棟ごとリノベーションする事業で急成長してきた企業、「リビタ」は、今年から新事業として中古一戸建てのリノベーションに取り組む。日本では一般的に木造の戸建て住宅は20年もすると、建物価値はほぼゼロになり、そのほとんどが取り壊されてきた。この中古一戸建てをリノベーションして再び売るところに大きな商機を見い出したのだ。リノベーションなら、柱やコンクリートの基礎など、いいものは残して建てられ、価格も建物を壊して新築するより安くなるというメリットがある。

番組では東京・世田谷区で始まった築27年の物件の工事を追う。柱や梁が見える(スケルトン)状態まで解体したところ、特に水廻りなど予想以上に痛んでいる事が分かった。しかし、ヒノキの柱など、よい資材を使っていた上、雰囲気のある出窓や階段など、残せる部分も数多く見つかった。ベテラン大工が一つひとつの柱の歪みを直し、現在の耐震基準に合うよう補強した。工事から3か月、古くて新しい家が出来上がった。建物だけで比べると、更地にして新築を建てるより約4割も安くできたという。内覧会はごった返していた。この事業、急速に伸びそうだ。

リフォームが高齢世帯に人気だそうだが、リノベーションのほうが費用対効果が高い。環境にもよい。この分野に限ってはReduce、Reuse、Recycleのキーワードに加えてもいいくらいである。

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温水洗浄便座と和包丁はニッポンの魅力的商品

9月16日(月)の未来世紀ジパングは「ニッポン再発見!お土産に商機あり!」と題し、日本人が気づいていない日本製品の魅力に迫る、面白いものだった。

今年上半期に日本を訪れた外国人は約500万人。円安の影響もあって、過去最高となる勢いだ。「Youは何しにニッポンへ?」という番組が人気なように、今回の未来世紀ジパングは、外国人が買うお土産に注目した。2020年の東京オリンピック開催に向け、日本に対する海外からの関心は高まる。日本が持っている様々な技術や商品が、海外へ伝わりやすくなるチャンスでもあるのだ。そうした観点で、どんな商品が外国人にウケるのかを探った。

そのトップバッターは、温水洗浄便座。今では日本の70パーセント以上の世帯にあるという。1980年の発売以来、30年の間に様々な進化を遂げた温水洗浄便座だが、外国では未だめずらしい。欧米では高級ホテルと日本びいきの金持ちくらい。最近は中国やタイの富裕層に人気である。今回の番組では、驚くことに成田空港や秋葉原で温水洗浄便座をお土産として買って帰る中国人や東南アジアの人達が登場した。

温水洗浄便座の先駆け、TOTOがいま英国に販売拠点を構え、欧州市場の攻略を始めようとしている(今頃の感があるが)。しかし日本で常識となった商品でも、外国での市場開拓は並大抵ではない。「トイレ」「お尻」の事なので、欧州では外で口にすること自体がエチケット違反の扱いなのである(イスラムの国々に対し「因襲的」だとか言っている自分たちこそ…)。普通の宣伝が難しいため、日本人責任者が考えた戦略は、ホテルや日本料理店に温水洗浄便座を置いてもらい、「口コミ」を狙うことだ。一度使ってもらえば、その良さをわかってもらえるし、使った事のある人が口コミで宣伝してくれることを期待しているのだ。まぁ気が長いといえば長い。

特に笑えたのは、日本料理店に設置された温水洗浄便座の使い心地を聞いたそばから興味を持って、試そうとする英国人客に番組スタッフが撮影用カメラを渡し、温水洗浄使用中の自分の表情を映させたこと。放送史上でも前代未聞の画像であった。

2つめは和包丁。調理器具の街、東京の合羽橋にある包丁の専門店では、実に多くの外国人を見かける。スペイン、フランス、カナダなど色々な国の人達がいる。和包丁を買って帰る外国人が増えているのだ。700年以上もの歴史がある、熊本県のある小さな包丁製造直売所、いまや注文の3分の1は外国からだという。

洋包丁に比べて、切れ味鋭い和包丁に魅せられ、ついには自分の国で和包丁の専門店を開いてしまったカナダ人の男性が登場した。日本食ブームも伴って、カナダでもサーモンなどを生で食べる人が増えているのだが、洋包丁では身がグズグズに。それが和包丁だと、実にキレイに魚が切れる(当たり前だが)。和包丁の魅力を拡げようとする店主の奮闘が微笑ましかった。

番組を観ている小生の傍らでカミさんがつぶやいた。「でも定期的に研ぐなどの手入れをちゃんとしないと、いくら和包丁だって切れ味はどんどん落ちるわよ。大丈夫かしら、この人たち。ちゃんと理解しているのかしら」と。うん、さすがにうちのカミさん、鋭いところを突きますね。

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五輪向け整備と震災復興の両立には規制緩和が必須

東京五輪招致の成功の日、日本列島は喜びに沸き、久々に一体感があった。政府関係者にも「五輪をアベノミクスの『第4の矢』に位置付けよう」という声が出ているそうだ。ちょっと待って欲しい。このままでは被災地の復興は後回しにされ、将来の国民は国の負債に押しつぶされる。


今、政府が真っ先にすべきことは、『第3の矢=成長戦略』の要である規制緩和を思い切って進めることだ。さもないと建設ラッシュにより、五輪のためのインフラ再整備事業はコストがはね上がり、東北の震災復興事業がますます進まなくなる。『第2の矢=公共投資』に投入される膨大な予算は資材費・人件費増に吸収されてしまい、後に残るのは増発された国債=借金の山、という羽目に陥りかねない。

何を懸念しているのか、説明させていただきたい。実は東北の震災復興事業の進捗がよくない。その理由は複合的だ。

当初はそもそも復興計画を策定する自治体における人手やノウハウの不足があったと聞いている。その後遅ればせながらも当該自治体の復興が着手され始めた段階では、土木・建設に関わる地元業者のキャパ(能力)を圧倒的に超えていたため、全国から人手や車両・設備・資材をかき集めようとしていた。しかし他地域でも復興予算の流用などで一時的需要が湧き上がったため、そして電力・原燃料が高騰したため、必ずしも被災地に十分な量を集められないまま人件費や資材費が高騰したのである。その結果、当初計画していた金額では入札できないケースが続出した。当然、入札のやり直しや計画の練り直しも相次いだ。
https://www.evernote.com/shard/s47/sh/6bbb7c70-e688-45ef-abb5-21682f2fef8e/cc651539f0bb06cafd822f8bd6eec139

もたついているうちに、今度はアベノミクス効果で景気回復が見えてきた。しかも円安も進み、世界的には原油高だ。すると原燃料費と資材費がさらに高騰する中、全国各地で土木・建設需要が盛り上がることになり、ますます被災地に人もモノも集まらないという悪循環に陥りつつある。

このような状況下、五輪のために首都圏のインフラ整備が本格的に着手され、さらに来年の消費税導入に伴う景気落ち込みを補うためという名目で公共投資の大幅追加が推進されると、この悪循環がさらに加速されることは火を見るより明らかだ。そうなれば冒頭に述べた懸念が現実化してしまう。

ではどうすればいいのか。消費税導入対策をどうするかの政策的判断は置くとして、少なくとも人的リソースの面でのひっ迫を緩和する方法はある。自動化の推進と、外国人労働者の活用である。そして、いずれにも思い切った規制緩和が必須である。

まず自動化技術が切り札の一つになり得る。コマツなどが既に技術的に完成させているのが、ICT建機である。GPSと車体制御技術により、ブルドーザーや油圧ショベルが自動で図面通りに作業を進めることができ、作業の進捗状況もリアルタイムで把握できる。実は今、多くの土木工事現場でのボトルネックは熟練運転者である。彼らがいなくとも建機による作業ができるとなれば、大幅な工事進捗とコスト削減が同時に可能となる。事前の測量も不要で、いいことづくめである。

しかし日本の公共事業の場合(欧米と違って)、ICT建機の作業実績データを検収に使えない。施行業者が当局に提出すべきデータの種類は各種マニュアルで細かく指示されており、そのガイドラインではICT建機は想定されていないため、適用できない。これでは導入効果が半減しかねない。早急な対処を願う。

もう一つの自動化は建設現場での作業ロボットだ。土木・建設現場では天候の影響をまともに受ける屋外での力仕事が多く、体力的にきつい。また、高所や足場が悪い場所での作業など危険を伴うことも多い。そのため恒常的に人手不足なのだ。資材搬送など比較的単純な用途では、既に作業ロボットの実用化が始まっている。こちらは特に規制が邪魔しているわけではなく、大手企業中心に、性能とコストの見合いで導入は進んでいくだろう。

しかしながら土木・建設業界の大半は中小企業であり、彼らにこの数年の特需のために作業ロボットを導入せよと説いても難色を示すだろう。そこで現実的な人手不足解消策は、外国人労働者の活用である。

日本でもバブル経済の頃には多くの外国人労働者が工事現場で働いていた。しかしその後の長期不況に伴い多くの人は帰国したか、他業種に転職した。しかし一部は不法滞在したため、後々社会問題化した。そのせいか、日本は外国人の就労に関してはいまだに非常に保守的である。

現在、日本は単純労働者の就労を認めていない。しかし、今後数年間にわたり大量の土木・建設作業員が必要になることが明確であり、それを日本人労働者だけでカバーできないなら、せめて滞在期間を限定した方式での外国人単純労働者の就労を認めるという規制緩和が望まれる。彼らに「出稼ぎ」の機会を提供することで、日本のインフラ整備の効率的な実現に協力してもらえばいい。これは割り切りの問題だ。

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ブラック企業に立ち向かうには

9月12日(木)のハートネットTV(NHK)は「若者を潰す“ブラック企業”―巧妙な手口・対策はあるのか」と題し、ブラック企業にどう立ち向かうのかを論じていた。

「ブラック企業」とは、長時間労働や残業代の未払いなどの劣悪な労働を強い、従業員を使い捨てにする企業のこと。国が発表する労災認定でも過労自死や鬱(うつ)などが過去最多を記録中である。中でも20代・30代が半数近くに及ぶなど、若い世代が「使い捨て」のターゲットになっている。企業が利益を最優先に考え、人件費を圧縮させるためサービス残業や長時間労働を強いる、違法すれすれの労務管理が新興企業を中心に広がっているのである。

小生のように旧い世代の人間だと、「そんなに酷い労働環境なら辞めてしまえばいいじゃないか」と不思議がるはずだ。しかし今の若者たちには同情すべき点が多い。

初めて就職した会社がブラック企業だった場合、若者はその環境が異常だという発想にはなかなか至らず、むしろ自分を責めてしまう。たとえブラック企業だと気づいたとしても、就職氷河期で苦労した体験から、「この不況下で次の就職先が見つかるだろうか」という不安が大きく、体を壊すまで我慢する。いずれ転職することを考えたとしても、すぐに辞めてしまうことで「我慢のできない奴だ」とみなされかねない、と我慢する。

そのため過労自死や鬱という悲惨な結果にまで至ることになるのだ。ブラック企業側はそれを見越して、絞り取れるだけ絞り取るのである。まるで現代の「蟹工船」「女工哀史」である。この国は先進国になったのではなかったのか。

この劣悪な労働環境を何とかしたいと、若者たちが運営するNPO(番組ではPOSSEという団体の代表が積極的に主張していた)、弁護士や労働組合が声を上げるようになっている。そして、ついに国も動き出した。8月には国が初めて「ブラック企業」への対策を発表。9月には電話相談や、「ブラック企業」と疑われる約4千社へ労働基準監督署による集中的な監督指導を行うことが決まっている。

今回番組では、企業を取り締まる労働基準監督署に長期密着。見えてきたのは、その取り締まりの難しさである。多くのブラック企業が、若者を使い捨てにすることで自らの利益を増やそうとして、「みなし労働」制などを実に巧妙に利用している。違法すれすれの確信犯揃いなのである。だから証拠なしにはのらりくらりと言い逃れされてしまう。

個人がどう立ち向かえばいいのか。自分一人で抱え込まずに、まずは誰かに相談すること。ブラック企業には労働組合がないケースが多いため、先に挙げたNPO(業種を超えた労組も含む)や弁護士事務所に駆け込むのが実際的だ(いきなり労基に行ってもあまり役立たない)。その際に証拠を提出するため、普段から勤務実態や上司の言動をメモに取るなど、普段からの証拠残しを心掛けるのが重要だというのが、番組からのアドバイスであった。

しかし全く腹立たしい。こうした利己的で短期的視野しかない企業のために貴重な若者の意欲と時間が浪費されてしまい、時には人生さえ奪われてしまうなんて、何とも理不尽である。せめて酷い目にあった若者は、母校の就職課に報告し後輩の災いを取り除くべきだし、厚労省も悪質な企業の名前は公表し、「遣り得」にさせないことが重要だ。

【みなし労働】
ある一定時間を働いたとみなして、給与を払うという仕組み。みなし労働の中には大まかに「1 固定残業代」(労務管理の手法として広く居酒屋の店員など広がっている)、「2 事業場外みなし労働」「3 専門業務型裁量労働」、「4企画業務型裁量労働」という種類がある。2、3、4に関しては労働基準法に定められたやり方で、職種や働き方などに定めがある上、それぞれ労働基準監督署に労使協定などの届け出が必要。

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「皇族の政治利用」といった戯言(たわごと)は無視せよ

7日のIOC総会での高円宮妃久子さまのスピーチは見事だった。胸に日本列島のバッジ、凛とした佇まいに終始笑顔で、全身から「品の良さ」がオーラのように溢れ、切れのよい発音でありながら優しいトーン。「日本は皇族のいる民族なのだ」ということを誇らしく感じる場面だった。

東京のプレゼンテーションの第一走者としての(建前上は招致スピーチとは別だったが)、フランス語と英語で約4分半のスピーチは、東日本大震災の復興支援に謝意を示すものだった。感謝に始まり、感謝で終わり、いかにも日本人らしいもの。そしてあの落ち着き様。プレゼンテーションチーム全体がスムーズに場に溶け込み、集中して自分たちの気持ちをぶつける雰囲気を作って下さったのではないか。

久子さまをめぐっては、皇族の五輪招致活動への関与に慎重だった宮内庁が政府からの要請を受け、出発直前に「苦渋の決断」(風岡典之長官)で総会出席を決めるという異例の経緯をたどった。しかも招致に成功した後でも宮内庁は皇族方の活動にあり方について整理する、としている。どうやら「皇族の政治利用だ」という「いちゃもん」がつくことを警戒していたようだ。

しかし今回のような日本人の夢を実現するのに皇族の方が協力するのに、誰が何の文句を言うというのか。宮内庁はあまりに神経質過ぎる。もしそうした「いちゃもん」を本当につける連中がいるとしたら、あまりに無定見ではないか。

平和・ニッポンを実現するというのが長年の日本の国是である。それを実現した姿を世界の人に見てもらい、より多くの人に日本を訪れてもらうことで、「おもてなし」を体験してもらい、日本を好きになってもらう。なかなか国外に出掛けられない多くの人に、世界各国から来る人と仲良くなる機会をもたらす。それがオリンピック・パラリンピックである。

それを実現すること、協力することは、党派や政治信条を超えた国民的納得が得られることである。だからこそ招致に成功した瞬間、あれほど国民が沸いたのである。つまり「特定の政治のための皇族利用」などでは決してない。

確かに五輪開催は非常にお金が掛かることだから、それより福祉充実やインフラ再整備を重視すべきという意見はある。しかしその大半は実は、「招致活動したって先進国・日本で既に1回やっている東京は所詮勝てない。それなら招致のための活動費用はもっと有効利用しようよ」という「半分諦め」論だったと思う。そう思っていた人たちでさえ、招致成功には小躍りしたはずだ。

2020年の五輪開催という目標が出来たことで、人々の気分がさらに前向きになれば、国内でカネを使う度合が増える。そうなれば景気は明らかによくなり、福祉やインフラ再整備に掛ける費用も捻出できるというものだ。皇族が協力し、スポーツ選手やキャスター・ビジネスマン・政治家・官僚達が本当に(珍しく)一致団結して掴んだこの僥倖を活かせば、ニッポン復活は決して夢物語ではなくなる。

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「白斑」化粧品問題は「姑息な申請」と「いい加減な審議」に源流がある

小生が常日頃声を大にして訴えている通り、プロセスは大切である。この事件では関係者が一つひとつのプロセスを大切にしなかったことが重大な事態を引き起こしたと感じる。

カネボウ化粧品は11日、同社の美白化粧品で約1万人に「白斑」被害が出ている問題について、外部弁護士による第三者調査報告書を公表した。報告書によると、同社に顧客から白斑の被害が最初に寄せられたのは11年10月。12年2月には販売部門の販売社員3人にも白斑が発症した。12年9月には大阪府内の大学病院から「化粧品が引き金となった可能性がある」と指摘を受けたが、病気が原因として処理した。今年5月、被害者を診察した医師から症例報告を受け、社内調査を開始。美白化粧品に配合した「ロドデノール」という物質が白斑の原因と判断し、商品の自主回収を決めた。

報告書は昨9月の時点で対策を講じる必要があったこと、同社が今年5月に問題を把握してから今年7月に自主回収に踏み切るまで2カ月を要したこと、カネボウの担当者は化粧品とは関係ない病気だと思い込み、適切な対応をとらなかったことなどを指摘・批判した。調査を担当した弁護士が記者会見で「商品ありきで、消費者は後回しだった」と指摘した通り、鈍感かつとんでもない怠慢である。報告書はカネボウによる意図的な隠蔽は否定したものの、「都合が悪いことは無視しようとする態度」と同社の体質を批判した。

これは大企業によくある「事なかれ主義」の露呈だが、直接ひとの肌に塗る化粧品という微妙な品物を扱っているという自覚に欠けると言わざるを得ない。しかも「美白」のために高価な化粧品を購入しながら被害に遭った人たちの人生を暗転させてしまった責任の重さを、本当にカネボウの社員たちは今、十分自覚しているのだろうか。なぜ会社として持っている問題報告のプロセスにおいて自分の頭で考えなかったのだろうかと、非常に残念だ。

小生は以前にこの件についてブログに書いたことがある。
http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-258.html
そこでも、同社が美白化粧品のシリーズを2種類、3種類と重ね塗りさせるよう顧客に薦める戦略を執っており、それが被害を深刻化させた可能性をNHKの報道班が指摘していることを述べた。それなのに同社は2種類の重ね塗りの副作用リスクの検証しかせず、3種類以上重ね塗りした場合の副作用については「我関せず」のままだったのである。第三者調査報告書にはその言及はないようだが、同社の無責任体質をまざまざと表している。

もう一つ、先のブログを書いた際には判明していなかった事実が分かった。医薬部外品として厚生省から承認を受けるプロセスに関わる疑惑である。白斑の原因とみられる美白成分「ロドデノール」の原料物質「ラズベリーケトン」による同様の被害が約20年前に確認され、厚生労働省の審議会でも平成19年に議題に上っていた。それに先立つ10年、山口大の福田吉治教授(地域医療学)が論文で、国内の化学薬品メーカーでラズベリーケトンの製造作業をしていた男性従業員3人に4年ごろ白斑の症例があったこと、うち2人の症状は2年たっても完全には回復しなかったことを報告している。

ここがミソなのだが、カネボウの担当者は、自社開発した新成分ロドデノールを19年に厚生労働省に承認申請する際にこの論文内容も引用しているが、論文自体は添付していない。ロドデノールは同省の薬事・食品衛生審議会の部会での議論を経て、20年に承認されている。つまりカネボウは、論文を添付したら「この成分はヤバイんじゃないか」と指摘されるので、都合のいい部分だけを引用して、「白斑の症例はあったが問題なく収まった」という印象を与えるのに成功したのである。審議会のメンバーが引用された論文に当たってみてチェックすることなどあり得ない、と見切っていたのである。

薬事・食品衛生審議会としては何とも舐められたものであるが、事実カネボウ担当者の思惑通りになったわけである。このあたりの審議プロセスは現在、取材が進むにつれて、そのいい加減さが露呈しつつある。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013091202000133.html
「審議プロセスが甘かったのではないか」と追求されている審議会は「問題となったラズベリーケトンと審議対象のロドデノールは構造が違うので別の成分である。審議は問題なかった」と開き直っているそうである。嗚呼、「付ける薬がない」とはこのことか。

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「運命に和する」モンゴル石炭王の静かなる闘志

9月5日(木)に放送された「島耕作のアジア立志伝」は、第5話「運命に和せよ 大国のはざまで」と題し、モンゴルの石炭王、ジャンバルジャムツ・オドジャルガル氏を採り上げた。MCSグループの総帥である。

モンゴルは、北の熊・ロシア、南の竜・中国の2国に完全に囲まれている。歴史的にもこの2大国に翻弄されてきたのがモンゴルである。古くは中国に「夷狄」扱いされて征伐の対象にされるか征服されてきたし、近くは長くロシアの影響下にあり、ソ連成立後はその属国的衛星国家の一つだった。そのせいでモンゴルのインフラは旧ソ連製の旧式のものが多かったと聞く。

その後、ベルリンの壁が崩壊しモンゴルでも社会主義政権が倒れ、資本主義経済に転換したが、技術的に劣り土壌も肥沃でないモンゴルでは、石油をロシアに、農産物を中国に頼る構造が続いてきた(さすがに肉は国産の羊で自給できるが)。海路で世界から安い資源や食糧を買い付けることができた日本とは国の基礎構造が全く違う。

ジャンバルジャムツ・オドジャルガル氏のMCSは、最初は調査会社として産声を上げ、やがてコーラを輸入するビジネスで発展したという。これは彼が子供の頃、憧れの「西洋の品」だった。その後、モンゴル国内に石炭資源が多く発見され、中国国境に比較的近いその一つを安く買う。当時はまだ中国が石炭輸出国であったが、彼は北京五輪を経て上海万博を控える中国が近く輸入国に転じると確信していたという。大した眼力である。

モンゴルの国営企業が単に石炭を掘って輸送するだけだったのを、自社工場でコークス生産用に焼き固めて、つまり付加価値を高めてから輸出するようにビジネスモデルを変えた。さらに、かつては石炭を国際価格の1/5から1/10といった安い値段で買っていた中国企業に対し、10倍以上の価格交渉にも成功した。その際には「モンゴル炭は中国にしか売れないではないか」という相手に対し、「中国にしか『売らない』のです」と安定供給力を訴えたのが効いたのである。

さらに中国経済が停滞を見せようとすると、第3隣国(日本、韓国など)へ石炭を輸出する戦略を打ち出す。そのために自国政府と交渉し、鉄道ルートを検討させる。日本や韓国の政府および企業視察団を誘致し交渉する。モンゴル政府はロシアに遠慮してなかなか決められないが、オドジャルガル氏の腹は短い「中国ルート」に決している。強引には進めないが、じわじわと交渉を進めていく様はしたたかな国際ビジネスマンらしい。

一方、石油輸入で依存するロシアに対しては、石炭を液化する技術を韓国企業と合弁することで手に入れ、石油輸入の必要を減らそうとしている。これに成功すれば、両国の関係をも変えてしまう。少なくともロシアの石油・ガスの価格に対する交渉力が一挙にアップしよう。いわばモンゴルの国益を背負っているのだ。

オドジャルガル氏の語る「運命に和せよ」というモンゴルのことわざが浮かぶ。地理的な条件は変えられなくとも、大国とわたりあう術はある。大国の隣国にあり貿易には圧倒的に不利な地理的条件という「運命」を強みに変えた。社会主義から資本主義へ切り替わるモンゴルに生まれた「運命」も自分のものにした。新しい時代のモンゴルの英雄である。

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なぜ今?韓国が日本の8県の水産物を輸入禁止

本日6日、韓国政府は、日本の水産物に対する不安が高まっているとして、福島県をはじめ8つの県の水産物をすべて輸入禁止にすると発表した。福島第一原発の汚染水の問題で、「韓国国民の憂慮が非常に強く、日本政府から今まで提供された資料だけでは今後の状況を正確に予測することが難しいと判断した」という説明である。

要は「日本政府のいうことは信用できないから、その周辺の県も併せて禁輸措置を執る」ということである。海で福島と隣接している茨城・宮城・岩手・青森、千葉までは分かるが、栃木と群馬まで含んでいることからは冷静な措置とはとても思えない。

これ以外にも、日本全域の畜産物や水産物について、放射性物質が僅かでも検出されれば、検査証明書の提出を新たに求めるということである。この「僅かでも」というのがミソで、自然界には放射性物質はゼロではないので、日本全国どこからのものでも大騒ぎになる可能性がある。

韓国政府は、東日本大震災の直後から、日本の水産物から放射性物質が一定の基準を超えて検出された場合に限って輸入を禁止する措置をとってきた(これは科学的根拠に基づく当然の措置であり、韓国だけでなく多くの国が同様の措置を執っている)。しかし、福島第一原発の汚染水問題が明らかになってから韓国国内では、日本の水産物だけでなく、韓国の水産物まで買い控える傾向が強まっていたようだ。その結果、政府に対して、禁輸措置を強めるべきだとする声が広がっていたとのことである。

菅官房長官は会見で「水産物を含む食品については、国際的な基準を踏まえて厳格な安全管理を行っている。放射性物質の検査結果が基準値を上回った場合は、出荷制限をしており、市場に流通することはない。汚染水の流出の海への影響は、福島第一原発の港湾内にとどまっているうえ、そこでも基準値を大幅に下回っており、全く影響はない」「汚染水の流出に関連する情報は韓国政府に提供しており、科学的根拠に基づいて対応して欲しいと、引き続き求めたい」と述べている。

しかしこの訴えは全く届かないだろう。なぜならそもそもこうした問題を大きくしている韓国政府の政治的意図の可能性は2つあるが、そのいずれであっても菅氏の訴えは見当違いだからである。

風評被害に神経質になっている韓国内の水産業者からの訴えに地元の有力政治家および韓国世論が突き動かされている場合、「科学的根拠に基づいて対応して欲しい」というのはたわ言にしか聞こえない。「とにかく禁輸しろ。市場に出回るのは『安全な韓国産』だけという状態にしないと収まらない」という感情的かつ(この際敵を妨害しようという火事場泥棒的で)利己的な訴えに端を発しているのだから、日本からの輸入ルートが大きな痛手を被るまで手を緩めることはない。日本が汚染水問題に断固たる、そして適切な対処をしない限り、韓国政府も振り上げた拳の下ろしようがないのである。この場合、問題は長引く。

もう一つ、これが風評被害であることをよく理解しながら、国家戦略である「日本叩き」に沿ってこの騒ぎを利用しようと韓国政府が考えている場合、これは非常に有効なオリンピックの「東京誘致潰し策」である。国内で騒ぎ、国際ニュースに取り上げさせ、IOC委員の目に触れさせるよう最大限の努力をするはずだ。しかし東京がオリンピック誘致に失敗した途端、この問題は急速に下火になるだろう(仮に成功したらしたで、妨害作戦失敗としてすぐに終息させるだろう)。

韓国政府がこの問題にどういう姿勢で臨んでいるかは、この日曜にオリンピック誘致の結果が出てから数週で判明するだろう。

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「革命ビジネス」に目をつけられた!?親日国・トルコ

9月2日に放送された「未来世紀ジパング」は、「五輪のライバル"トルコに異変"暴動の裏側に潜む「革命ビジネス」とは!?」という、ちょっと訳の分からないタイトルだった。でも録画を観て納得し、併せて驚いた。

2020年のオリンピック開催都市が、いよいよ日本時間の9月8日(日)に決定する。名乗りを上げている3都市の中でも有力視されているのがトルコ・イスタンブールだ。この10年間で国民所得が倍になり、1台1000万円の高級車、1億円を超えるプール付きの高級住宅も飛ぶように売れている、急成長国・トルコ。経済苦境に苦しむマドリードとは対照的で、既に一度開催済みでしかも原発事故後の汚染水処理を制御できない日本・東京に対し、「アジアとヨーロッパの架け橋」を自負する国、「イスラム圏初のオリンピック」と、半年ほど前にはダントツで招待戦をリードしていた。

番組冒頭ではイスタンブールにおける24時間体制の「スパルタ式大清掃」の様子を映す。政府の職員の厳しい指示下、町中にはゴミ一つなくなっている。市内を走るトラムや海峡フェリー、高層ビルまでがオリンピック招致の広告で溢れ、町はオリンピック一色だ。

ところが今年5月の「トルコ暴動」で始まり、招致活動がクライマックスを迎える中、街中では今も反政府デモが続いている。破壊活動まで起きた「トルコ暴動」は世界に衝撃を与え、隣国シリア情勢と並んで、同国が長年誇ってきた「安心・安全」に疑問符をつけられる事態になってきた(「これで東京が有利になってきた」とほくそ笑む招致関係者は恥を知るべきだ)。これに対し、トルコ政府は「デモを裏から煽ってビジネスにしている人間がいる」「外国勢力の存在がある」と断言。どういうことか。

番組取材班はトルコ国営放送の元日本特派員に密着。あの「アラブの春」(チュニジア、エジプトなど)、ウクライナ、ベネズエラなど、世界各国のデモや暴動、革命の場で使われていた「謎の拳マーク」という共通点から、「革命をビジネスとして輸出している企業」オトポールに辿り着く。取材班は組織の中心人物に会うべく、今でも紛争の傷跡が残るセルビアへ飛んだ。かつてセルビアの独裁政権を倒した英雄で「エジプトの政変に関わった」と自ら話す人物・ポポビッチ氏にインタビューする。この番組としては異例の展開である。

この取材で判明したのは、セルビアの反政府運動を指揮したグループが母体になったオトポールは、いわば「革命指導コンサルティング会社」だということ。自らが現地に乗り込む代わりに、各地の運動指導者に有償で革命ノウハウを教え、セルビアで訓練を施す。イスラム圏のアルカーイダや旧ソ連が自らの兵士を鍛え上げて派遣していたのとは全く違うモデルであり、しかも革命精神に共感してではなく純粋なビジネスとして行っているようだ。ポポビッチ氏は母国で政治家になる代わりに、自らの才気と仲間の力を国際ビジネスとして活かす別の道を見つけたようだ。

トルコの暴動との関わりは言下に否定したポポビッチ氏だったが、トルコ国営放送の特派員は強い疑いを抱いたと語る。保守的なイスラム教徒で強引な性格のエルドアン首相が播いた紛争の種とはいえ、親日国・トルコは大変な連中に目を付けられたのかも知れない。

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カネボウ『美白』問題の真相は犯罪と無責任の「重ね塗り」

NHKのクローズアップ現代で9月2日に放送された「最新報告 カネボウ『美白』問題」は、当社のメルマガでも紹介していた「注目番組」。予想以上の衝撃的内容で、一種の犯罪行為が行われたことも明確であり、それに加えて会社としてもファンを裏切った罪は重い。

本件、白斑症状を訴える被害者数が遂に1万人を突破したという。国谷裕子キャスターは「カネボウが美白化粧品の自主回収を始めてから、間もなく2か月になります。時間の経過とともに新たな事実も浮かび上がってきました。美白化粧品を数種類重ね塗りしている人に症状が多く出ている傾向が分かりました」と番組冒頭で紹介した。化粧品が肌に合わないことによる白斑症状は通常、使用を中止すれば多くの人は治るとされている。しかしこのケースの場合、2年以上経っても消えない人もいる。なぜか。

番組が注目したのはカネボウが独自に開発した美白成分のロドデノールだ。色素細胞が作り出すメラニンの量を抑えることで肌を白く保つ成分だとカネボウは謳っていた。しかし、ロドデノールによって色素細胞そのものが破壊されるケースがあることが分かってきた。しかも20年前、ロドデノールを生産していた工場で従業員が白斑を発症していた。こうした事実を関係者が無視したこと、これがまずは重大なミスだ。

国谷「美白化粧品の有害性について、早い段階から医師やユーザーによって情報が寄せられていたといいます。それなのに、自主回収まで時間がかかったのはなぜでしょう」
中村「当初、カネボウの担当者は連絡があっても化粧品による“かぶれ”だろうという認識で、事態の深刻さを理解していなかったようです」
この「事の重大さを担当者が認識せず、上司・上層部に報告せずに握り潰す」というのは大企業では時折ある(雪印、三菱自動車など)。化粧品会社としては致命的なミスだが、そうした意識を持たせなかった会社としての不出来である。これがために大会社といえども潰れかねない。ましてやカネボウは事業再生で身売りした会社であるのに、危機意識が既に消えうせたのだとしたら情けない。

あきれ返るのは、番組が指摘する「美白化粧品を数種類重ね塗り」というのが他社製品ではなく、カネボウの美白化粧品シリーズの重ね塗りなのである。カネボウの販売員が店頭でお薦めし、それを信用した消費者がカネボウ製品を重ね塗りした結果、被害が深刻化したということである。しかも3種類以上の重ね塗りを販売戦略としてお薦めしておきながら、副作用が起きないかという検証は2種類までしか行っていないという。

とんでもなく不誠実・無責任な体質の化粧品会社である。その結果、多くの大切な自社製品ファンを裏切り、その人生を台無しにしたのである(この化粧のせいで就職や仕事の継続、結婚が妨害された人たちがどれほどいるのか、想像すべきだ)。こんな会社はもう一度、今度は完全に潰れていい(小生は前回のカネボウの身売りに関しては同情的だったが、今回は全く違う)。

ロドデノールは過去に白斑を発症させるという出来事があったにもかかわらず、なぜ医薬部外品として認可されたのか。これに対し番組は衝撃の事実を突き止めた。
中村「医薬部外品として認可するかどうかは、最初に医薬品医療機器総合機構で審査されます。この時、カネボウが提出した報告書が問題でした。山口大学医学部の福田吉治教授の論文を引用し、白斑は完治するという報告書を提出しました。しかし、オリジナルの福田教授の論文には完治しないと書かれていました」
これについて福田教授は「自分はロドデノールによって白斑を発症した3人の女性と面談しました。このうち2人の方は完治しませんでした。それは論文にも明記しています。それがいつの間にか完治したと変わっていた。驚きました」と語った。

つまり福田教授の論文を、カネボウの関係者が改ざんしたのではないか。当然、意図的であることに疑いはない。そもそも認可されるべき商品ではなかったということである。この改ざんによって白斑症被害が多数生まれたことは間違いなく、これは完全な犯罪行為である。その改ざんを行った人間を刑事事件で立件すべきだ。全くとんでもない話である。

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しまむらのマニュアルが進化し続ける意味

株式会社しまむら。「ファッションセンターしまむら」の運営会社として、今や有名企業である。しかし意外とその実像は捉えにくい。BPM(継続的業務改善)のエバンジェリストとしては、同社はとても興味深い研究対象である。「オペレーショナル・エクセレンシー」の代表企業としての同社の象徴である「マニュアル」をキーワードに、その「凄さの秘密」を探ってみた。


しまむらのオペレーションは徹底的にマニュアル化されている。「商品仕入」から「店舗運営」「システム開発」「社員研修」等々、何から何までマニュアル化しているといってよい。その総ページ数は1000ページを超えるという。

以前、そのページ数を耳にした際には正直、「一体誰がそんな分厚いマニュアルを読むのか」「新人が1週間ほど掛けて読み終わる頃には最初の部分は忘れてしまうぞ」という感想が浮かんだ。しかし先日、「BSニュース 日経プラス10」での放送録画を観て、思い直した。商品を出した後、ダンボールを潰すやり方までマニュアルに書いてあるのだ。「こういう手順でやると、手に怪我をする恐れがありません」といった狙いと共に。思わず「なるほど」と唸ってしまった。

マクドナルドでの「併せてポテトはいかがですか」のお薦めのように、機械的なマニュアル教条主義に対する一般の印象はあまり良くはない。実際、そうした会社で働いている人が「何も考えなくなってしまう」という弊害が多く指摘されている。それに対し、しまむらでのマニュアルの位置づけは全く異なるようだ。

しまむらのウェブサイトでマニュアルについて訴えているページがある。 http://www.shimamura.gr.jp/company/business/15/
◆マニュアル: しまむらはローコストオペレーションを徹底し効率的な運営をしていますが、それを支えているのがマニュアルです。日本では個人的な技術を重視する風潮に加え、マニュアルに対する誤解と軽視が見られます。私たちしまむらでは最も優れたベテラン社員のやり方をマニュアルと考え、新入社員でも一定レベルの業務ができるようにするため、全ての部署でこれを重視し、標準化と合理性を追求しています。
◆改善提案: マニュアルをいつの時代も生きたものとするために欠かせない仕組みが改善提案制度です。業務の最適化を実現するには、マニュアルをブラッシュアップし続けることが最も大切です。しまむらでは、全社員から毎年5万件以上の改善提案が寄せられ、これを一つ一つ検討・実験し、その結果は再び新しいマニュアルとして毎月更新され続けています。

実際、同社のマニュアルは3年も経つとガラリと変わるという。こうしたことから考えると、しまむらにとってマニュアルとは、現場をよりよくするための「永遠の叩き台」であり、属人化しがちなノウハウを形式知に変換するための「組織学習のための記憶装置」であることが分かる。

しまむらにおいてマニュアルが「不磨の大典」扱いされずに進化し続けられる要因は複数ありそうだ。

何よりもまず、マニュアルの目的が従業員の負担軽減と効率化にあることだ。同社では「仕事を楽に」を合言葉として、働きやすい職場づくりのためにマニュアルを改訂している。(少なからぬ会社で現れたように)効率化が人減らしと労働強化につながる恐れありと従業員が考えた途端、業務改善を提案する動きは止まってしまうはずだ。しまむら・野中社長の言によると、「早く仕事を切り上げて家族団らんができる」ようにするためなのである。

だから万一、マニュアルを改訂することやそれを覚えること自体が過大な負担になるとしたら本末転倒である、と普通は思う(実際、辞めた人の中には、同社のマニュアルへの執着度とその負荷に付いていけなかったと語る人もいる)。しかし同社では少し捉え方が違うようだ。これを理解するには同社内でのロジックをもう少し考察してみる必要がある。

もう一つの主要因は、「仕事=改善されるもの」「マニュアル=改訂されるもの」という仕事観が社内に浸透していることだろう。「仕事=決められた作業をこなすこと」と考えるような職場ではマニュアルは進化しない。しかしそのベースにあるのは、マニュアルを改訂すること、そしてそのために業務改善を提案するという行為そのものが、最重要な仕事の一つと捉えられているということである。この点が先のマニュアルへの執着度の理由を解き明かしてくれる。

以前、インテルが絶好調だったときに有名になったのが "Only the paranoid survive"(極度の心配性のみが生き残る)という言葉だった。それをなぞれば、同社には「マニュアルを改善し続けることができる会社だけが生き残る」といった感覚が広く共有されているのではないか。その意味で同社は「マニュアル改善パラノイア」といえるレベルにあるかも知れない。

マニュアルは、うまく使えば「組織学習」の風土を創り上げるための効果的なツールともなるし、組織が大切にする価値の象徴ともなるということを、しまむらのケースは教えてくれる。

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「自動運転」車は「夢」ではなくなりつつある

Biz+サンデーで採り上げていたのが、ハンドルやアクセルを操作しなくても自動で走行できる「自動運転車」。実用化が進めば、交通事故の減少や渋滞の緩和につながると期待されている。自動運転技術の開発にはGMやダイムラー、BMW、アウディなど世界の主要な自動車メーカーが軒並み参入し、まずは高速道路などでの実用化を目指して実験走行を行っているところである。

日産自動車が先月27日、自動運転車の試作車をメディア向けに公開した(その日は各局で同じ画像を繰り返し報道していた)。ルームミラーなどに設置した5つのカメラやセンサーが、ドライバーの目の代りとなる。道路標識や車線、周囲の車や人などの情報を瞬時に識別し、レーザーや超音波で距離を測る。人がハンドルやアクセルを操作しなくても、試作車は速度を調節しながらカーブを曲がり、停車中の車や突然飛び出してきた人を避けながら自動で走行する。日産は以前からこうした技術開発を進めており、部分的には公開していたが、この日一挙にお披露目したのだ。同社は2020年までに自動運転車を一般向けに発売する計画という。

カリフォルニアではGoogleとSelf Driving Car(自動走行車)と車体にかかれた車が公道を走っている。みずからが収集した膨大な地図(Google Map)データを基に、カメラやセンサーを活用しながら一般道でも自動で走行できるシステムの開発を進めている。公道での実験も繰り返していて、こちらは2017年までの実用化を目指している。

一方、トヨタ自動車は日産やグーグルが目指すような、運転を完全に機械に委ねてしまうものとは異なる。国土交通省と同じで、あくまで自動運転技術は人の運転を“支援する”位置づけだ。アメリカのミシガン州で自動運転車の実験走行を行っているが、今のところ製品化の予定は示していない。いかにもトヨタらしい慎重さである。

自動運転の実現に向けては、新たな課題もある。例えば事故を起こした場合の責任問題だ。現在は、主にドライバーの責任が問われるが、完全な自動運転時に事故が起きた場合、ドライバーと機械のどちら側が責任を負うのか、議論はこれからだ。また、豪雨や吹雪の中でも自動運転車が周囲の状況を正しく把握して走行できるのかなど、技術的な課題が多く残されている。

さらに日本では、自動運転車の実用化に向けて欠かせない、公道での走行実験ができないという根本的かつ制度的問題がある。日本メーカーは、実験は海外で繰り返して技術開発を進めるが、日本への市場投入は遅れるという、薬の開発と同じような展開になるかも知れない。少々情けない。

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