日本アニメが世界で戦えるようにするには

10月29日(火)に放送されたBS11のINsideOUTのテーマは「クール・ジャパン 日本アニメは強いのか弱いのか?」。ゲストは「アニメ!アニメ!」というウェブサイトの編集長、数土直志氏だった。

最初に紹介されたのは10月22日から24日に東京都内で開催された、映画・テレビ番組などの国際見本市TIFFCOMの様子。この見本市は日本のさまざまな映画やテレビ番組などを海外市場に販売する大きなチャンスで、300を超える企業が出展した。

日本の作品で人気が高いのは何といってもアニメだ。海外でも根強いファンを持ち、世界市場を席巻しているかのように思う人が多いが、実態はかなり違う。圧倒的に市場規模が大きくしかもどんどん成長しているキッズアニメは巨人・ディズニーが君臨しており、日本もポケモンやセーラームーンなどの人気キャラクターがあるが、中韓などアジアの新興国に追い上げられているのが実態である。他のオタク向けや大人向け作品では圧倒的に日本が強い(日本にしかまとまった市場がないため)が、一つひとつの規模が極端に小さく、まとめてもキッズアニメより段違いに小さいらしい。

少子高齢化と人口縮小が続く日本市場に依存していては未来がないことは明確。海外市場に打って出る戦略を業界として描かねばいけないはずだが、アニメ制作会社や出版社、いやテレビ会社だって世界規模からすれば中小企業レベルである。単独ではどうしようもないのに、「一国一城の主」の気分をいつまでも引きずっているようだ。版元主導で、作品ごとに流通方法を現地企業と個別に交渉する、そんなゲリラ戦では主戦場のキッズアニメではディズニーに対抗することは百年掛ってもできない。

(番組では全く具体的なことに言及していなかったが)やるべきことは明確だ。まずはDNPか凸版辺りの主導でアニメ制作・出版会社の資本を増強すること、アニメ制作工程にIT投資をして高収益に変えること、それで優秀な人材を確保すること、その上で、(やはりDNPか凸版辺りが音頭を取って)共同でアジアでの流通配給網を整備することが必要だろう。
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知恵があれば何もない地方にも「体験好きな外国人」を呼べる!

10月28日(月)の未来世紀ジパングは「再発見・・・日本人が知らないニッポン!」。日本人が忘れてしまったり、気づかなかったりする日本のいい所を、外国人が教えてくれると言う現象を追った「ニッポン再発見シリーズ」の第2弾。外国人が興味を抱き、日本人がその良さを知らない「日本の観光名所」をお届けするというのが今回のテーマ。

今年来日人数が急増しているのがタイ。7月、日本に来るのに今まで必要だったビザがいらなくなり、気軽に旅行できるようになったからだ。元々タイ人にとって、日本は根強い人気の観光地だったが、実際に来日できる人は富裕層かビジネスに限られていた(小生の友人などはこの典型)。それが今や中間層が膨らみ、円安もあって、観光客がどっと押し寄せるようになっている。タイでの観光番組や観光雑誌も人気だ。

そんな日本ブームに一役買っているのが、毎週日本だけを取り上げる人気旅番組「Majide(マジで)Japan」だという(これは知らなかった)。若者向けの放送局BNGチャネルで週4日も放送されている、この超人気番組は、東京や大阪などの都会には行かない。なるべく他の観光番組が採り上げない、地方の変わったところを紹介している。これまで採り上げたのは千葉、熊本、山口など地方ばかり。そして、今回は滋賀県。大きな湖なんてタイにはないし、一般のタイ人には想像しにくいので興味を掻き立てるからだ。

関西空港に降り立った旅番組のクルーは、6日間で1時間番組を6本撮影すべく取材を完了させる。移動の仮定もカメラを撮影しながら細かくリポート。観光客の目線である。滋賀県に着いて一番に訪れたのは比叡山延暦寺。さすが熱心な仏教国。タイと日本の違いを中心に細かく取材するのだが、座禅を体験するなど日本の中途半端な観光番組よりよほど真剣かつ体験的。琵琶湖では台風の接近により、お目当てのウォーターボールは体験できなかったそうで可哀そうだが、代わりにカヤックを風雨の中で体験・リポートし、その様子を撮影。タイでは体験できないものが、とにかくウケるのだ。

続いては英語のガイドブックとしては、世界一の発行部数を誇る「ロンリープラネット」。実に細かい情報がびっしりと書き連ねてある。写真は一切ない。日本を担当する専属ライターであるアンドリューさんが来日し、今回は福岡県を久し振りに取材。以前に取材し掲載されている旅館や釣り堀兼和食レストランのサービスが変わっていないかを確かめ、他に新しい面白い情報がないか探す。日本語がペラペラな彼だが、ホテルや旅館では身分を隠して覆面調査をすることもある。「ロンリープラネット」の読者目線で、快適に楽しく過ごせるかどうかを確かめているのだ。彼の視点は、「体験ありき」で、ストーリーがあることが大事だという。柳川名物の川下りなど、日本における暮らしを「体験」出来る場所を数多く、本に載せたいと熱心な取材である。

スタジオの話で面白かったのは、外国人観光客に人気(だが日本人にはさっぱり分からない)なのは「新幹線の『新富士駅』で最高速度270kmで通過するのぞみを見ることだという話。それと小生も知っているJAPANGUIDE.COM(訪日外国人向け観光情報サイト)だ。これは実に詳しい、しかも旬な情報が載っている。

最後に紹介されたタイ人向け北海道・歌登の4泊6日の体験ツアーがとても興味を引いた。千歳空港からバスで移動した一行が向かったのは、まず登別温泉、小樽という典型的な観光ルートだが、これはあくまで前哨戦。本命は道北の田舎にある歌登。日本人でさえ聞いたことのない町にある「うたのぼりグリーンパークホテル」に到着した一行は、浴衣姿に着替え、夕食時の和太鼓の後はなんと「夏祭り体験」。本当に夜店が色々とあり、射的や金魚すくい等々。ユニークな宴会が終了後、一行はバスで夜間の蝦夷鹿を見に行く。さらに翌朝はオホーツク海から上る朝日を見に行く。客は大満足だ。

この仕掛け人はホテルの支配人。グリーンパークホテルは隣接するゴルフ場が閑古鳥が鳴く状態になり、一時は経営不振に。そこで再建策として東南アジアの客をターゲットに絞ったのだ。タイの人たちが体験したい日本の風物を盛りだくさんにしたところ大好評。年々客が増えているとのこと。「観光資源はないけど、なければ作ればいいと考えました」という支配人の発想に拍手。無いものねだりで国や自治体に頼ろうとする地方企業が多い中、こうした知恵が地方を立ち直らせるのだ。

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高齢化による住居の住み替えニーズには商機あり

10月27日(日)のBiz+ サンデーは「住居の”悩み”に商機」と題して、首都圏でも少子高齢化や人口減少が続く中、住まいを巡る新ビジネスを採り上げていた。

東急電鉄は、駅から遠い一戸建てに住むシニア向けが、駅近マンションへ「住み替え」てもらうことを軸としたビジネスを開始。空いた戸建てには若い世代に入居してもらい、街を活性化する狙いだ。その際、古い住宅そのままでは見向きもされないから、リノベーションする需要がある。

リノベーションは最近注目され、幾つかの番組でも採り上げられていた。それだけ住宅の住み替え循環をスムーズに進めることに社会的需要があるということだ。マンションのリノベーションが先行していたが、一戸建ても最近進んでいるようだ。
http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-268.html

一方、マンションの空き駐車場に商機を見出す企業も採り上げていた。住民が高齢化するに伴い自動車を手放す人が増え、当初のマンション経営計画における収入が減り出している。一方古くなるにつれてメンテナンスのための支出はむしろ増加気味だ。危機感を持つ管理組合が多い事態に対し、そうした駐車場空き情報をネット上に公開して需要者とマッチさせる業態だ。しかし肝心なのはそうした情報を仕入、迷っているマンション管理組合と交渉する「リアルの営業活動」だ。番組ではそうしたベンチャー企業の営業&コンサルティング部隊の奮闘振りも映し出してくれた。

変化のあるところニーズあり。ニーズのあるところ工夫あり。工夫のあるところ創造あり。

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『知の巨人』が贈る青少年への真実の言葉

朝日新聞の天声人語。ほぼ毎日読むが、この日曜のは格別だった。

冒頭に「『知の巨人』と形容させていただくことにする」とある。精神科医で神戸大名誉教授の中井久夫さん(79)についての文である。その凄い業績や文筆家としての活動、「恐るべき」子供だった様子に触れた後、全く筆先を変えて、中井さんが少年少女に向けて書いた異色の読書案内を紹介している。

いわく、教室で輝きすぎるな、一番になんかなるな。児童生徒の間にもやっかみはある。〈あなたは今花咲く必要はない〉。そして一目置く同級生を宝とせよ、と。

何とも適切で、なかなか普通の大人には言えない言葉だ。でも真実である。大人になると忘れてしまうが、無理して人間関係の背伸びをしたがる子供の心理に優しく添っている言葉だ。是非、子供たちに伝えたいものだ。

そしてもう一つ。思春期の男女への最高の読書に関する贈り言葉がある。〈読書は、秘密結社員みたいにこっそりするものだ〉。

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バーティカル炉による廃棄物の完全燃焼技術は世界が欲しがる

10月26日(土)にBSジャパンで放映された『理想を燃やせ! ~日本の廃棄物燃焼技術、世界へ~』は非常に興味の持てる内容だった。フィーチャーされたのは㈱プランテックとそのバーティカル炉である。同社ではそれをSLA燃焼方式竪型ストーカ炉と呼んでいる。

「廃棄物処理」のための最先端の焼却炉技術として注目されているバーティカル炉。医療廃棄物の焼却処理を目標に開発された経緯から、あらゆる廃棄物を完全燃焼できる仕組みまでが紹介されていた。国内での実績も増えているそうだが、サウジアラビアやアラブ首長国連邦ドバイにも輸出されるなど、海外でも高く評価されているという。

普通は薄く横に広げる発想が多いが、落ち葉を重ね焼きするように、縦に重ねることで完全燃焼できるようにするというのはユニークな発想である。

完全燃焼によりダイオキシンもほとんど発生しない高品質な炉であること。廃棄物そのものが燃料となるために燃料を追加投入しなくてもよいこと。燃焼温度が非常に高くなるので電力発生(コージェネ)などに使えること。縦型なので設置面積が小さく、コンパクトな廃棄物処理場ができることなど、幾つかの利点が指摘されていた。

こうした諸点を考えると、都市型の廃棄物処理場を実現するのに向いていそうだ。海外市場にも積極展開している同社の動きは素晴らしいもので、ニッポンの中小企業が開発した優れた技術として期待が大きい。

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自動運転技術の進化と重い課題

10月23日(水)のクローズアップ現代は「ここまできた自動運転 社会はどう変わるのか」。人がハンドルやアクセルを操作しなくてもクルマが自動で運転する「自動運転車」についてどこまで来ているのかを解説してくれた。解説者は電気通信大学の新誠一教授。ちょっと前にもBIZ+サンデーで特集していた内容(これは下記のURL参照)とダブる部分が結構あったが、全体としてはすっきりとまとめてくれていた。
http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-257.html

「自動運転」は不注意による事故の減少や渋滞の緩和につながると期待されている。今月14日から東京で始まったITS(高度道路交通システム)世界会議では、最先端の技術が一同に発表されている。その内容がこの番組には反映しているようだ。トヨタは運転支援システム、ホンダは自動駐車システムなどを発表。日産は、カメラが信号を認識して停車したり、無人で空きスペースを探して駐車したりするなどの技術を搭載したクルマを、いち早く2020年には販売する見通しだ。

さらに、各メーカーが研究開発に力をいれているのが、その核となる「人工知能」である。この研究が進めば、運転者は手放しでも目的地に着くことができる。IT技術でリードするグーグルを中心に先行するアメリカ勢、官民挙げて巻き返しを図るドイツ勢など、次世代の覇権を賭けた国家間競争が熾烈さを増している。

最も注目されているのは、事故防止と渋滞解消である。事故の93%は人間の判断遅れ・ミスなので、人間が運転するよりAIに運転させたほうが圧倒的に事故を減らすことができる。人間と人工知能の判断が食い違う場合、後者を優先するほうが事故を回避するのには正しい判断になるという。瞬時の認知能力と判断の精緻さにおいて、人間は太刀打ちできないだろう。また、渋滞解消に関しては車間距離を一定以上に保つことが有効だが、それには自動運転が有効なのは間違いない。人間は単調な運転では注意力が激減するし、速度認識も正確ではないからだ。

Googleは既に試作車を作って公道実験で50万キロ以上を走らせているので、実用化に一番近い(4年以内という)。完全な自動運転システムが実用化されれば、子供でもお年寄りでも、飲酒した人でも運転できるという大胆な発想を担当者がコメントしていた。

各自動車メーカーも負けずと人口知能による自動運転の実現を目指し、開発に力を入れている。特にフォルクスワーゲンは逸早くシリコンバレーに拠点を構えて、人口知能に強いタンフォード大と共同研究を進め、プロドライバーの運転パターンを取り込もうとしている。そしてBOSCHなどドイツの自動車部品メーカーと綿密に協力して進めているようだ。

トヨタも運転支援のみならず自動運転機能を実現するため技術開発を進めているようだが、なにせ公道実験を重ねる必要がある。この点、米国と違い日本での公道実験は許されておらず、隔靴掻痒の趣がある。これは日本メーカーにとっての課題だ(だから多くは米国で進めているようだ)。

もう一つ、やはり一番恐ろしいのは人口知能であるコンピュータが悪意ある存在(ウィルスなど)に乗っ取られて、正しくない判断をしてしまう可能性である。それを極小化するために、どういったセキュリティを確立できるか、ということだろう。

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コンパクトシティ化は住民自らが考えるしかない

10月21日(月)のクローズアップ現代は「わが町を身の丈に ~人口減少時代の都市再編~」と題し、コンパクトシティ事業の現状を伝えてくれた。

急速な高齢化が進むニッポンの地方都市は、空き家の増加や税収減少下で、施設維持コストなどに苦しんでいる。こうした事態に対して国は9年前から、郊外に広がった施設や住宅を中心部に集約する「コンパクトシティ」事業を推進してきた。

2012年9月には「エコまち法」を制定し、初めて都市機能の集約を明記。2014年には減税や補助金を厚くする予定だ。例えば、郊外から中心部へ病院や商業施設を移転させた場合、郊外の土地売却益の減税を検討。中心部に介護施設や学校などを建設する際には最大8割(!)を補助する制度も導入する方針だという。拡大し過ぎた都市の機能を、住民の「身の丈」に合わせて中心部に集約しようという狙いである。

しかし行政やディベロッパー主導による試みは殆ど頓挫してきた。「町の集約化」で先行する自治体を見ると、思うように進んでいないのが実情だ。例えば全国に先駆けてコンパクトシティを進めてきた青森市では、およそ10年前から中心部に商業施設や高層マンションを建設し、郊外から人を呼び込もうとしてきた。ところが、市が出資した中核施設は店舗が次々と閉鎖。思ったほど客が集まらなかったからだ。マンション以外では空き家が目立ち、郊外からの移住はほとんど進んでいない。

市の構想では、高齢者に住宅を売却してもらい、その資金でマンションを購入してもらおうと考えていたが、まず住宅の売却ができないのだ。「将来放棄される」地区の物件に買い手が付くはずがなく、元手ができない。しかも住民たちは、自分たちの希望を伝える機会もほとんどないまま町の再編が進んでいることに、不満を抱いているという。なんとちぐはぐな計画か。きっと東京の大手の○○総研あたりが机上で作った計画で動いたのだろう。

それに対し、埼玉県鶴ヶ島市などが、住民自身によるエリア内の設備のスクラップ&ビルドに取り組み始め、注目を集めているという。行政から示された施設整備の予算枠を元に、例えば地域拠点施設の中身そのものを検討したり、新規建設を縮小したり、あるいは空き住居を地域拠点施設に転用したりといった住民自身による町の「仕立て直し」が成果をあげているのだ。住民こそ必要・不必要を決める主体であるべきという実証ではないか。

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TV報道は大真面目にズレていて面白い

10月26日(土)の「マネーの羅針盤」の特集は物流。早速、録画して観た。しかし「Amazonや楽天といったネット通販が、自前の物流センターを持ち始める中、物流業界はどう立ち向かうのか?」という番組説明からは、例によって何か番組報道側が勘違いしている臭いがプンプンした(そもそもAmazonは前から、そして世界中で自前の物流センターを持っているのをどんどん大型化・高機能化している)。

途中で取材側から「ネット通販が自前の物流センターを持つということは、物流会社の機能を奪い返そうとしているか、少なくともけん制になるので価格交渉が厳しくなっているのでは?」といった類の質問があったのだろう。自社の戦略や計画を自信ありげに語っていたヤマト運輸の木川社長は、塩田アナウンサーに対し「我々は弱っていませんよ」と何度もコメントしていたという。

当然である。ヤマトは競合他社に常に一歩先んじて投資することで、B2Cの市場での圧倒的優位性を固めようとしており、Amazonや楽天といったネット通販側も自分たちの物流センターを大型化するなどの工夫をすることで、宅配に渡す前に自分たちができる効率向上をしようとしているのである。その上で、より効率的で品質の高いサービスを提供できる相手をパートナーにするべく物流企業を選び直している。

その結果、宅配便事業はどんどんヤマトへの集中が進んでいるのが実情である。既に日通・日本郵便の連合は宅配便市場からは脱落しつつあり、2強のもう一方・佐川急便はB2Bへの集中特化を進めている。つまりB2Cの宅配便市場はヤマトが制覇しつつあるのだ。

番組の中で、流通経済大学の矢野教授がヤマトの狙いを「ロジ一括受注による顧客企業の囲い込み」だと喝破した。単純な配送の低コストとスピードだけの競争じゃないよ、在庫管理など丸受けすることでロジ全体のコスト低減に貢献しているんだよ、と説明していた。しかしそれに対し、蟹瀬キャスターは「企業にとっては在庫を抱えるのはコストアップ。それをヤマト側が持ってくれることになればメリットになる」と、とんちんかんなコメントをしていた。矢野教授も蟹瀬キャスターが何を言わんとしているのか分からなかったのだろう、「そうですね」といっていた。でもヤマトは顧客企業から在庫を買うわけではないので「在庫を持ってくれる」というのは間違いですよ~。

さて、ヤマトの羽田クロドゲートについて24時間365日稼働には驚かないが、総工費1400億円、東京ドーム4個分の広さというのはさすがに凄い。よくそんな場所が確保できたものだと感心する。中も最新機器によるオートメーションが充実しており(映像では確かに速かった。しかし噂の「自動梱包ロボット」は映されなかった)、何と1時間に48,000個の荷物を処理できるという。ここまでくると桁が違うので、実感が沸かない。これによりネット通販(小生のクライアントを含む)などの当日配送のニーズ、そしてアジア諸国への翌日配送(!)のニーズに対応できるという。恐るべし、ヤマトの実力。

蟹瀬キャスターは最初からこれを言いたくて用意していたのだろう。「流通は『最後の暗黒大陸』だと経営の神様、ピーター・ドラッカーが言っています。その暗黒大陸の部分に今、光が差しかかってここに未来の可能性が相当あると言って間違いないと思います」と高らかに宣言していた。うーむ、この人、物流と流通の違いを認識しているだろうか。ドラッカーが言ったのは「物流」のほうで、「流通」といったら卸→小売といった商流を普通は指すけど…。

この知ったかぶりの蟹瀬キャスターに対し、テレビ東京の塩田真弓アナウンサーは自然体である。実際に羽田にあるヤマトの新物流センターを訪問し、幾つか感想をホームページに載せていて、なかなか興味深い。 1つ目は、雰囲気。一般的に無機質なはずの物流センターが美術館のように洒落たデザインで、おしゃれなカフェや保育園、体育館を併設しているとの女性らしい指摘。2つ目は、センターの構造の複雑さ。建物はとっても大きいのに、中は「広〜い!大きい〜!」という感じがしないという。「企業秘密を保持するために複雑にしたのかも?」というのは、うがち過ぎ。きっと顧客企業毎にエリアを区切っているので狭く感じるのだろう。

3つ目は意外に人の手に頼っていること。高速ベルトコンベアが行き交うところは別だが、企業の商品を預かっている在庫管理スペースは、人手でピッキングして箱詰めしていると指摘。矢野教授によると、震災でオートメーションシステムが完全に停止してしまった経験から人手回帰の流れになっているということだが、単に自動化がペイしない、まだそこまでは自動化は難しい(送付対象の商品形状が多岐にわたるため、しかも顧客企業の製品設計がどんどん変わる中、汎用対応できる自動ピッキングのロボットはまだ実用化されていないゆえ)というだけと思うが…。というのも、停電になってしまえば、宛先別に分けるベルトコンベアが止まるゆえ、ピッキングだけ手動で動いても仕方ない。この先人手不足がどんどん顕在化するのに、片方だけ自動化し片方はわざと手動のままにする積極的な理由はないと思うが…。

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曲がりくねり廻る!?内視鏡手術用鉗子が不可能を可能にする

10月13日に放送された「夢の扉+」は「"不可能を可能にする"手術器具を創る!」と題してのドリームメーカーたちによるコラボ企画。8ヶ月間におよぶ完全ドキュメントである。過去に登場した、主人公2人(金平永二氏×二九良三氏)がタッグを組んだ。目指すのは、“傷あとが残らない体にやさしい手術”を可能にする、“最強の”医療器具の開発である。

“平成のブラックジャック”こと、内視鏡外科医の金平永二氏。“患者が喜ぶことが本当の医療”という信念を貫くため、日本初のフリーランス外科医となった、世界でもトップクラスのスーパードクターである。もう一人は金属精密加工業社長、二九良三氏。軽くて強くて錆びないうえに自由自在に曲がるβチタンパイプを世界で唯一作る技術をもつ。

町工場と外科医、まったく異業種の2人が“世界のどこにもないものづくり”に乗り出した。開発するのは、内視鏡外科手術用の鉗子(かんし)。まっすぐ棒状という常識を覆す、“ヘビのように曲がりくねった”手術鉗子だ。しかも金平が求めるのは、3ヵ所で曲がり、先端がグルグル回転する器具。これができれば、腹を切らずに、おへその孔から器具を挿入して行う「単孔式内視鏡手術」に革命が起こせる。体内での2つの器具に大きな角度をつけられ、操作性が格段に向上するのだ。

しかしハードルは無暗に高い。試作を重ねても先端の動きはぎこちなく、操作はなかなかうまくいかない。開発は行き詰っていた。しかし金平が二九らに手術現場を見せ、その意義を改めて説いた日を境に、二九の開発チームのモチベーションが格段に上がり、開発は目覚ましい進捗を遂げる。そして試作を重ね、新開発の鉗子は遂に実用レベルに到達した。

ドイツに集まった世界各国の外科医たちが賞賛する。「ずっとこんな手術器具が欲しかったんだ!」と。『世界中の人が、安全に、安心して、体にやさしい手術を受けられるように』を目指した「医工連携」の姿を見せてもらった。

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海外からの起業家を呼ぶには日本・東京はあまりに準備不足

安倍政権は海外からの投資拡大を成長戦略の主な柱に掲げているが、外国人が日本で事業を始めるには大変な苦労がある。10月16日のワールドビジネスサテライトは、そんなニッポンの壁を採り上げていた。

日本で医療機器輸入を手がけるロシア人のニコライ氏。しかしオフィスを立ち上げるにも住居を確保するにも保証人がいる。ビジネスについても印鑑など日本独特の慣習・制度が壁になり日本法人立ち上げに苦労した結果、去年ようやく、日本貿易振興機構(ジェトロ)が提供する外国人起業家向けオフィスを利用して事業を立ち上げた。これからビジネスを展開する日本の悪口は言いたくないのだろうが、少々呆れかえった様子だ。

例えば会社設立には、日本(114位)では23日掛るが(小生も何度か体験した)、ルワンダ(8位)では15分の手続き、3日でできるという。何という差か。そして日本の官僚が進歩しないこと、情けない。森記念財団の都市戦略研究所が16日発表した「世界の都市総合力ランキング」では、東京は6年連続で4位。1位はロンドン、2位はニューヨーク、3位はパリというのが定位置になりつつある。

東京はアジアではトップだが、シンガポールやソウルが東京との差を急速に詰めている。はっきりいって、覚悟が違うので、逆転されるのは時間の問題である。彼らは単なるオフィス提供や英語での案内といったレベルはとっくに卒業している。先輩企業家からのアドバイスを受ける体制や、生活全般の相談にも政府がワンストップで応じる体制など、仕組みやプロセスごと変えている。ソウルでは海外起業家の家族の離婚相談コーナー(!)まで用意している。

この話とは別に、「起業しやすい都市」トップ20というのが発表されている。1位はシリコンヴァレーで、20位までに東京の名はない。Startup Genome社とTelefonica Digital社の協力編集によるこのレポートは、世界中の50,000人を超える起業家の協力を得て作成されたもの。

重視された指標とは、人口規模との比較による地域内の起業家の活動レベル、リスクキャピタルの積極性、起業家が持つ先見性のレベル、新しい技術やプロセスの導入スピード、支援ネットワークの質、および市場に存在する人材だ。これは間違いなくシリコンヴァレーがトップになるはずだ。これらのことを考えると、実質的な内容について日本そして東京は何も改善されていないに等しい。まだまだ海外からの投資を切望していないのが丸分かりである。

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ベンチャー企業・ユーグレナの可能性とフォーカス喪失の懸念

小生が今注目しているベンチャー企業の一つは(株)ユーグレナである。ミドリムシ食品やミドリムシ燃料の開発企業である。ユーグレナは脅威の生命体「ミドリムシ」を量産する技術を確立したことで、世界の食糧問題や、エネルギー問題を解決するかもしれないという、夢と技術のある会社である。ベンチャーとはいえ、東証マザーズに上場しているのだから、既にある程度のレベルにまで来ているともいえる。
http://www.euglena.jp/

少し前の日経ビジネスでも紹介されていたが、旧ライブドアの堀江貴文氏が出資しバックアップしていたことで、最初は注目され、その後はバッシングを受け、ようやく最近普通の、しかも大手企業(JX日鉱日石エネルギー、日立プラントテクノロジーなど)との提携により軌道に乗りつつあるようだ。
http://midorimushi-kenko.com/archives/205

10/16(水)放送のNHK「探検バクモン」では「魔法の道具をつくり出せ!」と題して、東京大学本郷キャンパス内にあるアントレプレナープラザを案内してくれた。東大発のベンチャー企業を支援する施設である。訪ねた企業の中の一つがユーグレナだった(他にはプロメテック・ソフトウェア(株)=水や油などの流体シミュレーション、フェアリーデバイセズ(株)=人間の演奏をコピーするバイオリン、人と会話する即時応答システムなどの開発、の2社で、これらも面白かった)。

ミドリムシ(学名=ユーグレナ)には人間が必要とする栄養素のほぼ全てである59種類もの栄養素が含まれており、あとカロリーさえあれば、人は生きて行けるとまで言われている。「夢の食品」であり、注目度も急上昇している。特に資源に恵まれない発展途上国の食糧不足問題を解決する手段となることが期待されている。

日本では既にサプリメントとして多くの商品が販売されており、その効果は主に次の3つ。
1.便秘や冷え症の解消、2.ダイエット・デトックス、3.アレルギー症状の緩和と体質改善

さらにバイオエネルギーにも転用可能とされ、ますます注目度を浴びている。ただ、個人的にはあまり手を拡げて欲しくない。確かにJX日鉱日石エネルギー、日立プラントテクノロジーとの資本提携はまさにエネルギー分野が主だろうから、抜き差しならないところまで進んでしまっているのかも知れない。しかし新エネルギーとしてミドリムシが本命の一つになる可能性は高くないと思える。それならば既に世界の食糧問題解決の決定打となる有力な候補なのだから、是非その分野にフォーカスしてもらいたいと思う。なんといっても所詮はベンチャー企業であり、研究者などの内部資源に大いに限りがあるのが現実なのだから。

世界トップクラスの大学と日本の有名大学の格差がどんどん開いていく状況(最近の日経ビジネスでも採り上げられていた)を考えれば、日本の大学発のベンチャー企業が世界の抱える深刻な問題を解決するというのは非常に痛快かつ素晴らしいことだ。是非ともあれこれと経営・技術資源を分散させることなく、食糧問題解決にまい進して欲しいものだ。

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仮説の「検証」とはどんなもの?(実例を少々)

仮説の「検証」。よく使われる言葉でありながら、体験している人と未体験の人とで、認識しているイメージが随分違うのではないか。また体験数の多寡によってもイメージの幅が大いに違うだろう。「こんなのもありますよ」という意味で、幾つか実例を示したい。


前の記事で検証をせずにいきなり実施することの無謀・軽率さを説いたところ、「検証って具体的にどんなことをすればいいのか」という質問を幾つかいただいた。やはり仮説の「検証」というのは多くの人にとってイメージしにくいようだ。一般的な意味合いとしては、自分が「前提」として「想定」している「仮説」が本当に確からしいのか、当てにしていいのか、他の人にも理解・納得できるように「考証」「論証」「物証」を挙げることである。

しかし現実問題として、どんな背景でどんな仮説を立てたのかによって、検証すべき事柄およびそのやり方は千差万別である。だから「検証とは」という一般的な説明だけでは、あまり役に立たないかも知れない。そこで小生が携わった、ちょっと極端な実例を示すことで、「へー、そんなのも『検証』なのか」といった具合に広めのイメージを持っていただくほうがよいのではないかと考え、2回に分けて幾つか挙げてみたい。

一つ目は日本のネットサービスの例。それまでに世の中にない、消費者と企業をつなぐB2B2Cサービスだった。そのために本当に消費者を満足させることができ、利用者と加盟企業が両方増えるシナリオ(仮説)が成り立つのか、どこにも確たる証拠はないため、経営者としては踏み切っていいものか判断できないという状況だった。ただしビジネスモデルとしては誰もが称賛するような、よくできたものだった。関係者が欲しかったのは、背中を押してくれる論拠だった。

そこで小生のチームが行ったのは、ビジネスが成功するというロジック(仮説)の構成要素ごとの仮説検証と、その組み合わせによる結論づけだった。詳細は省くが、「このサービスは消費者から本当に求められているのか?」「その提供方法はこれで大丈夫か?」といった幾つかの問いに対しては、想定ユーザーに近い消費者を集めたグルインを重ねて個々にヒアリングした。「XXX万以上の消費者に対し自社商品をこれこれの方法でアピールできるなら、宣伝予算の一部を振り分けるか」などを取引候補企業に対しヒアリングで検証した。

その一方で、「(その提供方法において想定される)ボトルネック解消はこれで可能か?」「(消費者の望む)サービスレベルは24h365日、維持できるか?」など、多岐にわたるチェック項目をクリアできることを、準備スタッフらと詰めた。短期間だったのでちょっと力技の要る作業ではあったが、新規事業に関わる「仮説検証」としてはオーソドックスなものだった。

二つ目はある外資系自動車部品メーカー(仮にYと呼ぶ)によるM&Aの例。1)グローバルに分散する主な自動車製造拠点をカバーすること、2)日本の自動車メーカーへの食い込みを強化すること、そして3)互いの製品・技術がうまく補完関係を形成できることを期待し、ある金融機関が仲介した日本の同業者(仮にZと呼ぶ)を買収する案件の打診に応じ、デューデリジェンス(DD=精査)の作業に入った。

最初の2つが成立することは明らかであったが、最後の仮説は互いの技術を持ち寄ることではじめて可能になるものだった。その具体策は、Yで開発された技術と製品をZの製品と組み合わせたら可能になるはずの、新発想の複合パーツ群だった。それが日本の自動車メーカーに評価されて売れるようになるのか、が問題だった。

まだDDの段階なので、資本提携が成立するかは誰にも確証がない。そのためZの社員が自動車メーカーに対し「こういう製品を出したいと考えています」と説明するわけにもいかず、小生とDDチームの一員(Yの技術者)が協力して資料作成し、自動車メーカーの技術者チームに対し市場調査と称して出向いた。そして新製品のコンセプトと併せて、既にその技術を適用してできた類似製品の機能と性能向上について説明し、その市場性に関するヒアリングをした。これも仮説検証の一つの形である。

三つ目はあるメーカー系販売会社での営業改革における例。販売店に対する指導・支援のやり方はルート営業マンの個人裁量任せでずっとやってきた会社だったが、その限界も明らかだった。そこでコンサルに入った我々が課題を分析した上で提案したのは、それまでの個人商店的な営業手法からチーム営業への思い切った転換だった。創業者の一族である社長は「理屈的には全く賛成なのだが、何せ創業者のやり方を変えることにもなるし、ベテラン達もおいそれとは納得しない」と及び腰だった。

そこでこのシナリオ仮説の実効性を検証するために行ったのが、新しく創設されたチームによる「限定地域での試行」だった。ポテンシャルがあるはずなのに、あまり優秀なルート営業マンがアサインされておらず成績もぱっとしない2地域を選び、そこの販売店に対する指導・支援を、若手中心で急造の新営業チームで行うことにしたのである。

途中ちょっとしたいざこざや失敗もあったし、最初の3ケ月ほどは小生を中心にコンサルタントがかなり張り付いて支援したが、この若き急造チームは、販売店に対し熱意をもって支援・フォローすることで、半年程度で着実に成果を上げるまでになった。元々格別な知識やノウハウがない彼らでも、チームで動くことで習得・改善が格段に早くなること、そしてそれまで伸び悩んでいた販売店にとってもチームだと(「個人的な相性」や「惰性」といった障害要素が小さくなって)効果的な指導を受けられることが「検証」されたのである。

四つ目は、ある精密メーカーのリエンジニアリングの例である。経緯は色々あるのだが、要はそれまでのオーソドックスな「工場→販売会社倉庫→販売代理店→顧客」の順に供給するサプライチェーンを止め、半製品を主要地に新設するロジセンター(LC)に在庫し、注文に応じてそこで完成品に組み立ててから顧客に直送する方式に変革することで、流通在庫を激減させることができるという仮説だった。

検証として、受注してからLCで在庫している半製品を完成品に組み立て、そこから顧客に配送するというシミュレーションを幾つものパターンで繰り返し、顧客がどの地域にいても約束した期間内に配達できることを確認した(実際には代理店にも若干の完成品在庫を持つので、そこまで切羽詰まった状況になることは滅多にないはずではあったが)。併せて、在庫に関するシミュレーションも繰り返し、一時的にだけでなく中期的にも流通在庫量を大幅に抑制できることを立証できた。しかし何せ従来と全く異なる供給方法になるため、取引先である販売代理店が本当に容認してくれるのか、このメーカーの経営陣は不安を隠せなかった。

そこで「うるさ型」と目される販売代理店を手分けして行脚し、改革のコンセプトや期待効果などを説明し、何か懸念点が残るのかをヒアリングした。結果からいうと「案ずるより産むが易し」で、どの代理店も死在庫を大量に抱えて困った過去の悩ましい経験から解放されることに歓迎の意を表してくれ、検証作業は無事終了した。

いかがだろう。それぞれ全くタイプの違うイシューと仮説、その検証の例を挙げてみたが、「検証」のイメージを描いていただくのに少しはお役に立っただろうか。「言われてみると、あれも『検証』だったのか」と思えるような、似たようなことを仕事で経験した方も意外と多いのではないだろうか。ただし何となく確かめるのではなく、「どういう仮説の、どういう点を検証しようとしているのか」を意識して計画・実行することが大切である。さもないと、ピントがズレた検証になりかねないからだ。

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「検証 田中角栄『政治の遺産』」は期待外れ

10月15日から2夜にわたってBS11で「検証 田中角栄『政治の遺産』」が放送された。ロッキード裁判の1審判決から30年経った記念番組だというので期待して観たのだが、結論からいえば期待外れだった。肝心のロッキード事件とその裁判がまともな内容だったかを全く検証していないものだったからだ。

スタジオにはBS11解説委員の二木啓孝氏、毎日新聞の児玉平生氏、ゲストに元朝日新聞の総理番記者、早野透氏が集まり、当時の田中角栄周辺の人や検察関係者などの色々なコメントを聞きながら解説をしていた。ベースとなっていたのが、早野氏の著作「田中角栄 ~戦後日本の悲しき自画像~」であるため、どちらかというと日本政治史における田中角栄という政治家の位置づけおよび首相逮捕という衝撃的事件の影響などを中心に語っていた。

しかし結局、自分たちマスコミが検察などのシナリオに踊らされてしまったといった反省は全くなく、「首相の犯罪」を一方的に裁いた判決が正当だったことを前提に、「なぜ田中角栄ほどの大物が現役首相時代にそんな馬鹿げた収賄罪を犯したのか」とか「なぜ早々に罪を認めて引退しなかったのか」など、ピント外れの議論が多かった。

ロッキード事件の裁判で立証されたといわれる大半が状況証拠と伝聞であり、確たる物証はほとんどない。それどころか、「ありえないだろう」と思える点が幾つもある。一番極端なのは、1回目の金銭授受の場面である。いつ人に覘かれるか分からない公道上(イギリス大使館裏)に停めた車の中で、丸紅の伊藤専務が田中角栄の榎本秘書へ直接渡したとされる。収賄のカネをこんな形で授受するような犯罪があり得るだろうか。馬鹿げている。カネはロッカーにでも預け、どちらかの事務所でキーを渡せばよいではないか。3回目もわざわざ知人に会う可能性の高いホテルホークラで行われたことになっていた。

他にも不合理な説明が幾つもあるのだが(もう大半は忘れてしまったが)、こうした疑問を世の中に問うのが本来はマスコミの仕事ではないだろうか(田原総一郎氏が幾つかやっているが)。

いくら当時は世論が一方的に田中を断罪していたとはいえ、そんな風になびいてしまってはジャーナリストの名折れだろう。なんといっても一国の首相、しかも歴代の中でも抜群の判断力と統率力を持つ実力政治家の再起の芽をついえさせてしまった(他にも佐藤孝行氏や橋本登美三郎氏という2名の政治家が道連れとなった)ほどのインパクトの大きい事件だったのだから。しかもそれは検察・特捜部という「もう一つの権力」が、自己存在を世間にアピールするために数々の証拠と証言をでっちあげた可能性が高いものだったのだから。

最近の厚生省の村木氏逮捕と証拠ねつ造のプロセスでは特捜部のミスや内部リークなどがあり、その「でっちあげ体質」が非難の的となったが、それ以前にも鈴木宗男氏、KSD疑惑での村上正邦元労相、リクルート事件(藤波官房長官などが犠牲になった)など幾つも特捜部による冤罪事件はある周期で発生している(特捜部の危機意識が高まると組織防衛のために強引になるのだろう)。それらはこのロッキード事件当時の体制(吉永‐堀田ライン)と成功体験が源流となっているのではないだろうか

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米国債がデフォルトする可能性はどれほどのものか

米国連邦政府閉鎖という異常事態が続いている中、連邦債務上限の引き上げ期限が17日に迫ってきた。米国債がデフォルトするまで、あと2日しかない。仮にそうなったらリーマン・ショックを超える衝撃が世界経済にもたらされるかも知れないと、市場関係者はやきもきしている。いくらなんでも米国議会が(いくら対立していても)こんなチキンレースで米国の国際的信用を失墜させ、世界不況の原因を作る元凶になりたくない、と理性を働かせて妥協するはずだと、理性は語る。特に共和党が世論の非難に負けて腰砕けになるはずだ。でも一抹の不安が拭えない、といったところだろう。

しかし米国議会の対立構造は、単純に共和党対民主党といった、そんなにシンプルなものではない。なんといっても下院の多数派である共和党は一枚岩ではない。元々は保守を旗印に、”free country”を追求するビリオネアや地方の名士、それと代々政治家であるような党人派といったestablishmentが主流派だ。それに対し、草の根的なティーパーティをベースとする相対的に若い世代、新保守派を中心とする新自由主義の理論家など、共和党員の中から色々な違う種が育ってきている。わけてもティーパーティをベースとする若い世代の共和党政治家には過激な「連邦政府嫌い」が少なくない(正確にはそうしたポーズをアピールする戦術を執っている)。

問題は彼らの多くが、具体的な政策ではなく「保守」「小さな政府」という理念を至上のものと考えがちなこと、そして共和党のベイナー下院議長がリーダーとして信奉されていないことだ(このことは日本のニュースではほとんど言及されないが、米国の政治番組ではたまに指摘される)。要は肝心の下院において、民主党と共和党のトップ同士が全権委任されて交渉する、という構図になりにくいということだ。なぜなら民主党か共和党かどちらが提案した案にせよ、ベイナー氏が共和党の下院メンバーの過激な主張を抑えて、妥協案で説き伏せることができないということだ。

悪いことに共和党では一部のベテラン(マケイン議員など)を除いて、「我こそは保守の牙城である」といったポーズを選挙区でとることで勝ち上がってきた政治家が多い。要は、弱腰を見せると途端に支持者に非難され、次の選挙に落ちるかも知れないという恐怖感が強いため、最後まで強硬姿勢を貫くパターンに陥り易いのである。その結果、妥協しようとするリーダーを突き上げる様子を自らの選挙区に向けてアピールする、といった個人プレイに走り易いのだ(テキサスもそうだが、内陸部にはこうした共和党の票田が多い)。

これはリーマン・ショックの際にも表面化した共和党の致命的欠陥ではあるが、あのときには民主党も判断ミスして、決裂しても大したことはないと、両者が突っ張ってしまった。今回も似た様な展開が最終局面で巡ってこないとも限らない。そんな懸念が拭えないのである。杞憂に終わることを願うのは当然だが。

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ロボットらしくないからこそ低コストになる

未来シアター(日テレ)は面白い放送があるときに録画して観る。様々な分野で世の批判や失敗を恐れず、イノベーションを起こしている人々を革新者(かくしんもの)と呼び、彼らの生き様を番組が選んだ主題歌と共に紹介していく、というのがコンセプトらしい。

10月11日(金)の放送は焼き肉の有名店とロボット開発ベンチャーの2人の「革新者」。小生が真剣に観たのは後者のマッスル株式会社社長、玉井博文氏。コンピューターを小さくし、ロボット用のモーターに内蔵するまでしたのが成功のポイント。軽くて自分で塀を登れるロボットを開発することに成功して注目を浴び、中小企業の星と呼ばれる(安倍首相も視察に訪れた、とある)までになった。

「人の役に立とうとチャンスを20何年か伺ってきた」。ようやく色々な依頼が来るようになり、一番要請が多かった介護ロボットの開発に取り組んだのだ。これは介護の現場から悲鳴に近いリクエストがあるのを小生も知っている。特に寝返りを打たせたりするのは重労働で、お風呂に入れるために抱きかかえるのは時としてギックリ腰を誘発する。過酷な労働環境なのだ。

ロボット開発が要望されていながら難しかったのは、一つには、いかにもロボットや機械といった冷たい感じのデザインでは要介護者(介護される側)に拒否感情が芽生えてしまうことだという。「介護される側に安心とぬくもりを与える」という難しい課題があるのだ。

そしてもう一つ大きな課題はコスト。今までの介護ロボットは軒並み高過ぎたために普及しなかったという。如何に低コストでできるか。安心・温かい・低コストを成立させないといけないのは、かなりのハードルだ。それでも玉井氏のチームはやり遂げた。それが「ロボヘルパー・サスケ」だ。

見た目はロボットらしくなく、威圧感もなく、あたかも機械体操器具みたいだ。人間が要介護者の首下とひざ裏に腕を通して抱きかかえるのを、人の下に敷いたシートごと、このロボットというかアシスト器が行う。これだと万一にも落とされる不安はない。自動ではなく、完全な手動である。なるほどシンプルな構造で低コストでできる、発想の転換である。こうしたアプローチであれば、他にも応用が利くのではないか。

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カレー文化は綿密な製品戦略と継続的改善の成果

10月10日(木)に放送されたテレビ東京「カンブリア宮殿」が取り上げるのはハウス食品。題して「日本のカレー文化を創った100年企業  家庭で愛される強さの秘密」。

幕末時代に伝えられたカレーは今や日本人の国民食。カレールーの国内シェアはハウス食品が58.6%、エスビー食品が26%、江崎グリコが12.6%と、順位が1つ違うと半分になる。つまりハウスがガリバー的存在なのである。で、なぜハウスが人気なのか。売上1位のバーモントカレーは定番中の定番だが、なんと10種類もある。ほかに特長の異なる、こくまろ、ジャワカレー、ザ・カリー等々と網羅的な品揃えだ。

家庭ごとに微妙に異なる好みに対応した「母の味」をそれぞれ実現し、それが代々受け継がれていく構図だ。しかも子供の成長に合わせて辛さのステージを上げていくという細やかな戦略がベースにある。具体的には小さな子供がいる時にはバーモント、子供が大きくなるとこくまろ、子供が独立したらジャワへと移っていく。そのそれぞれで甘口→中辛→辛口と選べる。大したものである。

しかも時代に合わせて少しずつ味やコク、色を変えているという。味覚の設計図というのが、それぞれのカレールーで作られている。同じバーモントでも甘口、中辛、辛口ごとに異なり、縦軸に「風味の強さ」、横軸に時間(口に入れてから感じる味の順番!)と、綿密に個性を設計しているのだ。こくまろカレーはよりコクを出すため、なんと新たに粉末味噌が加えられているという。

パッケージも考えられている。容器包装開発部というのがあり、容器を日々設計し3Dプリンターでサンプルを作る。例えば少子化に合わせてパックが半分の大きさで独立している。しかも手を汚さずにカレールーのパックのふたが開けやすくなっている。ルーを半分使ったあとも外箱を捨てないでいるように、外箱を折りたたんで保管するように考えてある。たいていの食品の袋は開けにくく、うっかりすると周りに飛び散ってしまう。ここまで考えているメーカーは珍しいし、素晴らしい。

ハウス食品の社長・浦上博史氏は創業者一族。2009年に43歳の若さで社長に就任。美味しさの最大公約数は難しいのでは?という村上龍氏の質問に対し、浦上社長は「カレーはバラエティに富んでいて、ニーズによって広がりがある。風味やスパイス、煮込んだカレーが好きといった嗜好に合わせて複数のカレーでカバーしている。さらに顧客の嗜好も変化するのでカレーの改良を続けていて、ユーザーの方に現行品と試作品を食べ比べるなどして貰っている」という。これこそ継続的改善の成果だと思う(この部分は小生の専門でもあるので、強調しておきたい)。

1965年に制定された「ハウスの意(こころ)」(社是)。一番めの「自分自身を知ろう」で始まる。特に村上氏も感心していたのが2番目の「謙虚な自信と誇りを持とう」である。短く、本当によく考えられた文章である。3番目は「創意ある仕事こそ尊い」。さすが食品メーカー、どれも「味わい」のある文である。

馴染みのある会社で何となく分かっていると思っていたが、「意外とやるな、この会社」(失敬!)といったところだ。

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アジア駐在員の奮闘は今日も続く

一旦放送終了になっていたNHKの「エキサイト・アジア 」が再開した。アジア各地で奮闘する日本人駐在員の日々をドキュメントしてくれる番組で、小生は結構気に入っていた。再開第1回の放送は10月 7日(月)、「中国の食卓にカレーを」とカレールーを売り込む上海駐在員と、信用金庫初のタイ駐在員をフィーチャーした。

中国ではもともとカレーライスを食べる文化はなかったが、食品メーカー・上海ハウス食品の総経理・羽子田氏は、家庭の食卓にカレーライスを出してもらおうと日々、上海のスーパーや遊園地を廻る。普及の決め手は子ども。母子の料理教室を開いたりして、子どもたちにカレーのおいしさを知ってもらう様子が紹介された。まだ珍しいカレーに興味を示す子供たち、おっかなびっくりで試食して気に入って買う主婦たち、孫に食べさせようと買ってくれるおじいさんが、そこにはいた。日本人と同じように家族思いの中国人の素顔である。

面白かったのは現地の代理店のやり手女社長とのやり取り。いかにも女傑という感じの社長が熱っぽく、「この人たちのために目標を達成するぞ!」と語り、気合を入れるのに合わせて乾杯を繰り返す羽子田氏。気合ではちょっと押され気味だが、柔道で鍛えた体格とほんわかとした笑顔で周りを取り込んでいるようだ。単身赴任の自宅で、家族について語る言葉は心に染みるものだった。なるほどと思ったのは、「日本では営業は体育会系だが、中国では演劇部じゃないと通じない」という言葉。中国人は欲しいと思わないと試食もしない、というコメントも興味深かった。

後半は瀬戸信用金庫のバンコク駐在員事務所・稲垣所長。信金初の海外駐在員だという。まだ事務所を開設したばかりなので、オフィスは新しく、事務員も少ない。融資先の企業がどんどんアジアに進出している中、信金自身も海外に拠点を持っていなければ、相談にも来てくれないということで思い切って進出したとのこと。現地に既に進出している日本企業との人脈を懸命に拡げている様子が紹介された。

既に進出していても中小企業だと、メガバンクの駐在より信金の駐在のほうが気楽に相談できるようだ。弁護士事務所や会計事務所(およびコンサル会社も同様のはず)に相談すると、ちょっとしたことでも金が掛ると考える一方、金融機関ならタダで済むと思われているようだ。実際には誤解もありそうだし、情報量も乏しいとは思うが、敷居が低いというのは有利である。こうしたところが窓口になって、それを役に立つ専門家に振る、という構造であれば意味があるだろう。

現地に進出しているある日系中小メーカーに訪問した際の様子が放映されていたが、現地駐在している幹部に色々と質問し、何かの際には互いに協力できるよう顔をつないでいた。地道だが、こうしたこまめさが日本企業同士の信頼と情報力につながるのである。応援したい気分になった。

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竹中教授が説く、消費増税への対処政策

日経ビジネスの9/16版の最後のほうに載った「直言極限」はあの竹中平蔵教授(実はこの人、小生の大学およびゼミの先輩!)。しかし、ホントに珍しく小生と意見がかなり一致しているので、ちょっとびっくりした(かといってこの人の小泉政権時代の「売国奴」的政策については尊敬できないが…)。

竹中氏はまず、今回の消費税増税反対という自らの立場を明らかにしている。それは「社会保障制度の歳出部分の抑制がない限り、増税を進めても中期的な財政再建ができない」からであると断言している。その通りである。

その上で、氏は「一度方針を決めて内外に発信した以上、予定通り増税を実施すべき」と説く。「悪法も法なり」の立場である。この部分は同意できないが、増税を止めるためには新たな法律を通さねばならないが、そんな政治的苦労をするくらいなら現状維持ではなく、事態改善のために歳出全体を抑制する枠組みを実現し、若い世代の社会保障充実を図るべきと説く(この部分には全く同意する)。

3%の増税が経済に対しかなりのダメージを与える(氏は約1.5%と読む)こと、消費増税を行ってもなお約1%のプラス成長を見込むという政府見通しは甘すぎるということ、大規模な経済対策・補正予算の実施があれば財政赤字がさらに悪化し、何のための増税なのか、趣旨が分からなくなること、等々は全く同意だ。だからこそ小生は一挙3%の増税に反対し、毎年1%の増税を次善の策と考えるのだが、氏や安倍首相は毎年政局になることを恐れているようだ。

そこで氏が提案するのは、この「大規模な経済対策・補正予算」の原資を、インフラ運営権を民間に売却するコンセッション方式で生み出せ、と説くのだ。財政収入として約40兆円あるという。本当だろうか。まるで政権に就いたときの民主党の言い分のようで俄かに信じがたいが、もしこれが可能ならば、是非そのコンセッション方式を実施すべきだ。それは増税のための経済対策の原資としてよりも、まずは財政再建の一部として使い、それで増税を回避して欲しいものだ。

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「検証」を欠いた「いきなり実施」は無謀・軽率と呼ばれる

「なぜ、ろくに検証せずにいきなり始めてしまったのか」。支援することになったクライアント企業の事業や過去のプロジェクトに関し、素朴な疑問を抱くことが少なくない。「検証を軽視する傾向」は世の中に意外と蔓延しているようだ。完璧に近い情報を求めて判断を先送りするのも愚かだが、まともな「検証」なしに実施するのは無謀・軽率のそしりを逃れない。


あるサービス企業は、日本で大成功した飲食業向けサービスをアジアに展開しようと考え、その第一弾としてアジアのもう一つの先進国・シンガポールで開始すべく、強力な提携先を見つけた。現地の飲食業に売り込む力が非常に強い営業系の会社である。しかしその新サービスは結局、シンガポールの消費者ならびに飲食店からは全く支持されず、見事にコケた。前提となる消費者の予約・支払いに関する習慣が全く違ったためである。事前に現地でちょっと調べればすぐに気づくはずのことだった…。

あるファンド会社は、大手素材企業から子会社を買収した。親会社から素材の供給を受けて部材に加工する事業である。財務上、材料コストが利益を圧迫していることは明らかだったが、買収後の元・親会社との交渉で直材費を値下げさせることで、一挙に利益改善ができると踏んだのだ。しかし実際には親会社からの供給価格は割高ではなかったことが、買収後に他社からも見積を取った際に判明した…。

あるコングロマリット企業は、海外事業でのサプライチェーンを大きく見直すために倉庫を切り替える計画を立て、そのために関連する情報システムも開発してきた。全社レベルの重要なプロジェクトである。しかし情報システムをほぼ作り終えたある週、移転先の倉庫内部を精査して収容能力を改めて計算してみると、当初構想に全く届かないほど小さいことが判明した。お陰で計画全体を見直すことになってしまった…。

冗談だと思われるかも知れないが、全部実話である(差し支えないよう、内容はぼかしてある)。しかもこれらは小生が知る「氷山の一角」に過ぎない。どうしてこんな「思惑外れ」が起きるのだろう。端的に言って、戦略や構想を描いただけで、きちんとした検証をしなかったからである。ひと手間を惜しんだか、必要性を思いつかなかったのである。

不思議なことに、日本の事業会社の多くが「戦略策定」や「構想策定」は熱心にやるのに、その過程で仮説の検証をしないでいきなり実施に入ることが少なくないようだ。そもそも「検証」とはどんなことをするのか、イメージが沸かない人が多数派ではないか(コンサル現場と、日工大のMOTコースの小生の授業での実感)。コンサルティングの場面で「きちんと検証しましょう」と言うと、まるで戦略や実行計画の出来具合に自信がないと誤解されかねない。クライアントの経営トップが「すぐに実行したい」と気がはやった際に、歯止めを掛ける人が周囲にいないことも多いのではないか。

小生自身、その渦に巻き込まれたこともある。迷走していた新事業のFSを途中から支援して立ち直らせたまではよかった。次のステップとしては企画会社を作って、事業構想に含まれる前提としての諸仮説を検証することを推奨したのだが、関係者(数社)がすっかりその気になって、合弁による事業会社をいきなり設立したのだ(しかも事業参画まで要請され、抵抗した小生も結局は責任を感じて参画したのだが…)。多分、「事業は勢いだ!」といった心意気だったのかも知れない。

この「検証を軽視する傾向」は事業会社ばかりではない。小生が勤めた大手コンサル会社では、クライアント企業に提案する構想策定の進め方の中で(情報システムのテストを除くと)「検証」ステップを埋め込む人間は少数派だった。昨今、「スピードが最重要」などとアジャイルなやり方がもてはやされたせいもあるかも知れない。しかしアジャイル経営だからといって検証を軽視していいということでは決してない。むしろ次の段階に進むために必要な検証をクイックに行うことで、全体として速く進めばいいのだ。

検証されない仮説は、どれほど見事に見えても生煮えの仮説のままである。新規事業でも既存事業の改革でも、新しいことを実際に始めようとすれば、想定外の事態が次々と起きるものなのである。だからこそ戦略や構想の策定をしたら必ず、できる範囲でいいので、検証をすべきなのだ。それで仮説の精度は着実に上がる。頭で考えているだけでは気づかないことも、「実現性」などと幾つかの切り口を設定して検証してみると、ボロや抜けが見えてくることがよくある。それで仮説は修正され進化するのである。

魅力的な事業仮説が生まれたら、内部で検討するだけでなく、できる限り速めに市場関係者や需要家などにぶつけて検証する。業務改革構想の前提となる諸条件は、まずは机上で、次には可能な限り実地で確かめてみる。それらが「検証」と呼ばれる作業だ。信頼すべき専門家に条件を示して案を評価してもらうことで十分な場合もある。実際の店舗や倉庫を借り切って実地シミュレーションを必要とする場合もある。ある地域限定で試販することもある。必要な「検証」はテーマによって、そして段階によって異なる。

もう一方で重要なことは、仮説はどれほど検証されようと、本格的に実行されるまではどこまで行っても仮説のままだ、ということである。完璧な仮説検証などというものはない。したがってどこかで「見切る」必要がある。それは事業なりプロジェクトなりの最終責任者がすべき判断なのである。

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中国の今、そして反日デモの真実はどこに

10月7日(月)に放送された「未来世紀ジパング」は「緊迫中国シリーズ第1弾 なぜ反日デモは起きなかった?日本企業、反転攻勢へ」。そう、中国であの反日暴動が吹き荒れた日から一周年だ。特に9.18は柳条湖事件の日。ひょっとしてまた、と中国でそして日本で緊張が高まっていた。しかし、結果的には何も起きなかった。1件のデモも起きなかったという。

去年のあの怒号、あの騒乱は一体何だったのか。「こん棒を持った中国人が目の前に立ちはだかった」などと反日デモの生々しい記憶を語る、日本人専用マンションに住む駐在員妻たち。子ども達も、敷地内にある日本人学校やスーパーに出かけるだけの「かごの鳥」の生活を余儀なくされていたという。当時、中国に出張で出掛けた日本人は外では日本語で話さないように神経を使っていたと話してくれた記憶がある。とにかくぴりぴりしていたし、身の危険を感じていた人は多かったのだ。

それが一年後には、なぜぴたりと止んだのか?番組では中国の街頭で80人に直撃インタビューし、中国人の本音に迫った。「他に関心が移った」の中には「中国人は忘れっぽいから」という笑える回答もあったが、やはり「政府の思惑」(≒今回は奨励しなかった)というのがホントのところだろう。

「今年は反日デモは起きない」。そう確信していたのは旅行会社H.I.S.中国グループ統括の中田祐司氏である。 デモから一年間、中国行き日本人ツアー客は8割減など、会社は大打撃を受けた(よく撤退せずに留まったものだと思う)。反日の空気が和らぎ「反転攻勢の時は今」と感じた彼は、同じく窮地に立たされていた日系の老舗ホテル、オークラガーデンホテル上海とタッグを組み、豪華格安ツアーを仕掛ける。通常一泊2万円の格式高いホテルオークラ、旬の上海ガニ付き、飛行機は全日空・燃油サーチャージ込みで三泊49,800円という驚きの内容。失敗は許されない。そんな緊張の中、販売初日を迎える。結果は、3日間で目標50名の倍、100名を達成。反転攻勢の第二弾、日本人駐在員家族ツアーも盛況だった。

もう1社、反日デモ直前に販売開始し、「富士山の水」の在庫の山を抱えてしまったTOKAIホールディングス。使い回しボトルによる偽造品問題などを抱える中国の水事情は変わらない。そこで入れ直しの効かないワンウェイボトルや新型ウォーターサーバーの開発に着手。安心・安全を売りにしたところ、「日本品質を待っていた」セレブ母たちに口コミで拡がり、好調だという。確かに潮目は変わったのだろう。

昨年の反日デモに参加した人物のコメントを、幾つも聞いたり読んだりした。イデオロギーに基づく行動でもなく、歴史を研究しているわけでもない。単に中国政府の反日教育に染められて「日本は悪いことをした」「日本人はうそつきだ」といった固定概念が染みついている。そうしたごく普通の若者が、普段の生活や仕事で面白くないことがあったりストレスを抱えていたりすると、(金がないので)レジャーに行く代わりに反日デモに参加して気勢を上げることで、ストレス発散をしようと出掛けたのである(あくまで中国政府がダメと云わないという条件の下で)。それが性質の悪い連中の扇動に乗ってしまい、日本企業の製品や店を破壊する行動にエスカレートしたのである。

今年は中国政府がメールで「デモには行くな」と送り、主な街の広場には警官を配備し、反日デモを完全に防止したのだ。それが正義だからではなく、習近平体制が固まっていないで日本政府と睨みあっているこのタイミングで非難の口実を与えたくないからであり、再び反日デモが暴走した場合に止められないことを恐れたからであり、万一中央政府の独裁に矛先が向かうのを恐れたからである。つまり、中国政府がリスクを犯しても「日本を懲らしめよう」と考えたら、再び反日デモ・暴動は起きるのだ。

1年でトルコ1国のGDP分の成長を続けている中国のサービス市場はまだ伸びる。そこに食い込む努力はもっと続けていくことで、日本サービスをきっかけに日本を好きになる中国人が増えることを望む。しかし世界の工場としての中国の役割は既に終わりつつある。だから中国での製造拠点を実質的に撤退するメーカーはまだまだ続出するのではないか。これは小生が以前にブログで書いた通りである。

中国からの「撤退ブーム」が教えるもの
http://www.insightnow.jp/article/7684

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米国が狙う無人兵器の進化は「自律型殺戮ロボット」に向かう

9月26日(木)に放送された「クローズアップ現代」は「ロボット兵器が戦争を変える」。将来の姿を考えると、背筋がぞっとなる衝撃があった。

兵士の命を危険にさらさず、遠隔操作で戦場の任務を遂行する無人機。これまでアメリカやイスラエルが積極的に開発を進めてきたが、最近は中国も無人機を開発。今月には尖閣諸島付近の上空に現れるなど、無人機の運用が世界的に広がっている。戦争を仕掛ける側にとっては、「自国の若者を戦地に送るな」という戦争反対論へ絶好の反論ができる。

無人機が本格的に戦場に登場したのは、アメリカのテロとの戦いがきっかけだった。テロリストが潜伏しているとされる地域の上空を飛行し、ミサイルで攻撃する。地上部隊を送り込むことが困難な地域でも、無人機なら攻撃ができる。

戦場からはるか1万キロ以上離れた米国本土の基地で操作が行われ、衛星通信で無人機に対し指示を出す。「兵士」たちは、モニター画面越しに遠隔操作するだけだ。確かに彼らの命が危険にさらされることはない。元アメリカ空軍中将、デビッド・デブトゥラ氏は、無人機なしの作戦は今や考えられないという。「無人機ならば標的を何時間もかけて偵察でき、攻撃の直前まで監視できます。無人機を使えばさまざまな場面で大きな利点が得られるのです」と。

アメリカ空軍で無人機を操縦していた、ブランドン・ブライアント氏。2006年から5年間、アメリカ本土で生活しながら基地に出勤し、アフガニスタンなどでの攻撃に従事していたという。「奇妙な生活でした。12時間、いわば戦場にいて、そのあと街に出て、ハンバーガーを食べたり恋人に会ったり、パーティーに行ったりするんですから」と。

しかし一方で、パキスタンなどではアメリカの無人機による攻撃で市民の犠牲が相次いでいる。国連の調査では、パキスタンだけで2004年以降、少なくとも400人以上の一般民間人が犠牲になったとしている。パキスタンでは怒りの声が高まっている。アメリカ軍人を1人危険にさらさないために他国人を数百人間違って殺しても構わないと考えるなら、米国のおごり以外の何物でもない。

無人機の操縦に携わっていたブライアント氏には、今も脳裏から離れない任務があるという。ある日、3人の標的が建物に入ったのを確認してミサイルを発射。直後、建物に向かって走る小さな人影が見えた。「上官からは犬だと言われました。胸がむかむかして、気分が悪くなりました。(中略)犬だなんて、嘘だったんです」。その後、軍を除隊したブライアント氏は、上官から「5年間の任務で殺した人の数は1,600人を超えた」と告げられた。

ブランドン・ブライアント氏のコメントがある。「無人機の操縦者はすべてを目撃しますが、爆発音を聞くこともなく、興奮することもありません。聞こえるのはコンピューターの音と、同僚の息遣いだけです。無人機での攻撃を繰り返すうち、私は無感覚になっていました」。はるか上空のエノラ・ゲイ(B29)からヒロシマにリトルボーイを落下させた搭乗員たちに未曾有の戦争犯罪を行っている意識はなかった。それは自分のやった殺戮の場面をその目で見ることがなかったからだ。無人兵器は同じことを世界規模で行えるようになることを意味する。

各国の軍事関係者は今、人による遠隔操作を必要としない「自律型」のロボット兵器開発に力を入れている。近い将来、攻撃の判断すら自動化された「殺人ロボット」が誕生し、殺戮のハードルが一層低くなることで、人命が無秩序に奪われるという懸念が高まっている。

こうした動きが進むのは、米国のような先進国かつ兵器大国が、途上国でのゲリラ戦やテロ軍団に対し長年、決定的な手段を持たなかった鬱憤を晴らすことができると確信しているからだ。ロボット兵器は戦争の姿を恐ろしい方向に確実に変えようとしている。

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東南アジア市場は経済動向より覚悟が重要

「アジア経済危機」の再来を危惧する声がある。それゆえ進出に二の足を踏む企業がいる。しかし経済動向よりも大きなリスクを覚悟することのほうが、この魅力的市場への進出には重要だ。


5月に米FRBのバーナンキ議長が量的緩和縮小の可能性を示唆して以来、国際的資金の流れが一変し、それまで米国から新興国に溢れるように流れていたマネーが逆流している。これに最も影響を受けているのがブラジル、インド、インドネシアだと言われる。その影響に加え、中国経済が失速気味なこともあり、東南アジア経済は大丈夫かと聞かれる頻度が最近増えてきた。

皆さん、「アジア経済危機」の再来を危惧しているようである。確かに環境条件は似ていなくもない。そうした質問をされる中には、東南アジア市場への進出を計画していながら、踏ん切りがつかないまま1年以上経過してしまった中堅企業の幹部の方が何割か含まれている。ますます迷ってしまっているのである。

弊社はあくまで東南アジアの一部の市場への進出を支援するだけであって、東南アジア経済の将来予測をする立場にはない。また、東南アジア経済全体がよくても、ご自分達が進出する国・地域経済、当該産業の景気動向は異なるかも知れない。それに弊社は、インドネシアは対象市場としてカバーしていない。だから一概に「大丈夫です」とか「注意が必要ですね」などと気軽には答えられない。

しかし何といっても最も気になるのは、現地の景気さえよければ進出が成功するかのように錯覚されているのではと思えることである。なぜなら、進出するならどういうビジネスモデルと事業戦略をもって現地市場を開拓するのかを突っ込んで尋ねても、明快な答えが返ってこないからである。「技術には自信がある」というだけでは明らかに足らない。こうした覚悟や準備のない企業が何となく進出して勝ち残れるような生易しい市場ではないのだ。

以前から弊社が主張していることだが、東南アジアでのビジネスは「業界秩序のない闘い」である。日本でよくあるように、大手は大手同士で、下請けはその傘下でそれぞれ競争する場合、競合が誰でどんな動きをしようとしているのか、大体は見当がつく。しかし少なくとも小生が知る東南アジア新興国の代表的市場では(日系企業同士の取引を例外として)、新興企業が大手企業の牙城に挑むのは当たり前で、いつ見知らぬ競合が出現するか、安心できない。さらに勝ち組企業が取れるものはかっさらっていくし、一旦決まったはずの取引が後出しジャンケンの競合に奪われるのも日常茶飯事である。しかも競合の動きが素早く、ベンチャー感覚でないとついていけない。まさに「生き馬の目を抜く」世界である。

そんな市場に、日本での従来ビジネスが伸びないからというだけで、しかも真剣に考えた戦略も準備もなしに進出しようというのは危険きわまりないということは理解していただけるだろうか。むしろ日本でのビジネスを工夫して再成長を目指すほうが近道であることも多いはずだ。

逆にいえば、もしそうした覚悟と明快な戦略を持っているのであれば、東南アジアはマクロ的には伸びる余地がまだまだ多いので、とても魅力的な市場である。それにさすがに主要国では経済基盤が強化され地域協力体制もできたので、「アジア経済危機」の再来はないというのがもっぱらの評である。たとえ短期的には「景気不順」期間を予想外に長く経るとしても、それは中途半端な競合を振り落としてくれる作用を果たすので、勝ち残った企業が儲かるようになる期間を却って縮めてくれるかも知れない。そんなふうに考えてはいかがだろう。

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医療のムダをビッグデータがあぶり出すための課題は小さくない

10月2日(水)の「クローズアップ現代」は「ムダの“見える化”で 医療の質を上げろ」。ビックデータが医療現場をどう変えようとしているのか、最前線の現場から効果と課題を教えてくれた。

患者のカルテや診療報酬のレセプトなど、膨大なデータを分析することで、どういった治療をすれば最適な効果が上がるかという「費用対効果」が可視化され、これまでブラックボックスだった『医療のムダ』があぶり出されつつある。

いち早くデータ統合に踏み切った岐阜大学病院。まず再手術に注目。前の終日で予定時間を大幅にオーバーしていることが分かり、それをさらに精査すると、事前の検討・準備がずさんなことで最初の手術がうまくいかず、再手術が必要となったケースが多いことが分かった。

こうした治療の質を上げることで、再手術は30%減ったという。次は抗生物質などの投与を中途半端に止めてしまうことで却って入院期間が延びるケースがかなりあることなどが、薬剤師がデータを見ることで判明。これらを改善し投薬量が減ることなどで、数億円余の医療費の削減に結びつけている。そして患者の入院日数を平均6日間、減らすことに成功。回転がよくなることで病院の年間収入は1.8倍に増えたという。

東京医科歯科大学教授の川渕孝一さんが「データサイエンティストは引く手あまただが、医療業界にはほとんどいない」と指摘していた。

医療ビッグデータの先進国・スウェーデンでは、高齢社会に備えて社会保障情報も統合しているという。例えばリウマチでは「高い治療薬を選択しても、患者が早期に社会復帰できれば安く済む」。国がこれまでと方針を変えたのだ。10倍高い新薬でも、それだけ入院期間が短縮するなら、社会復帰が早まることで患者の負担は減り、ひいては納税ができるので国にとっても望ましい、と。今ではリウマチや脳梗塞など169の治療項目をビッグデータで解析して、改革が進められている。特に脳梗塞は全体の治療費が約1/10に減るとのこと。実に大きい数字だ。

さて翻って日本ではどうか。川渕教授が指摘していた。「今、日本ではがん患者の数すら分からず、お寒い状況。国の医療費は、過去最高の38兆円。グローバルベンチマークという指標を使って『他流試合』を病院ができるようになれば変わってくる。まずは診療報酬制度を変えることで動かすのが早い。費用対効果を見える化すべき」、と。全くその通りだが、日本の病院の多くはむしろ、その「見える化」によって自分達の儲け分を吸い上げられてしまうと尻込みするのではないか。まずは病院に真の経営者(ただのコストカッターではない)をねじ込む必要があろう。

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小さな着想でもいい、早く実際に始めることが「大逆転」を生む

10月4日(金)の「特報首都圏」、特集は「わが町の大逆転~成功の秘策 ココにあり~」。農業や観光業などの分野で、思い切った戦略や大胆な方針転換を行い、成功を収める地域や企業の実例を紹介してくれた。

鹿害に悩んでいた長野県富士見町では、それまで“聞いたこともなかった海外野菜「ルバーブ」の栽培を始め、いまや地域の一大産業に成長させた。年収1000万円の農家さえ現れているそうだ。きっかけは町に住む料理研究家と地域振興コンサルタントの夫婦。気候にも合っていたそうだが、高級野菜として利益率は高いはずだ。馴染みのない野菜栽培に当初はしり込みするところが多かったようだが、最初の成功を見て栽培農家は急増したそうだ。むしろ、この番組を観て、競合する地域が現れるだろうと危惧したくらいだ。

長野県渋温泉は、観光客が年々減少する中、ゲーム会社とタイアップした企画が大ヒット、若者が押し寄せるスポットに生まれ変わった。人気ゲーム「モンスターハンター」の世界観が忠実に再現されていると好評で、若いリピータが増えており、彼らが家族・友人を連れてきてくれている。この例の功労者は地元旅館組合の副組合長。ゲーム会社からの呼び掛けに対し伝統に拘って渋る地元旅館をひとつ一つ説得して実現にこぎつけたのだ。今や地元からは感謝の対象だろう。

栃木県茂木町では、廃校「木幡小学校」を改装した宿泊施設が紹介された。第一のポイントは低コストの改装。キャンプ場を経営していた男性経営者ならではの器用さで、手造りで内装を作り、廃業したホテルからベッドなどを引き取って使っている。お陰で通常1億円程度掛る改装費を3千万円ほどで実現したという。また元々小学校だった構造(中庭や運動場がある!)やレトロ感(給食の再現!)も活かして、若い世代や同窓会団体に人気の宿泊になっているという。

「逆境に負けず、知恵と工夫で元気になった現場を見ながら、閉塞感を打ち破るヒントを考える」というのがこの番組の狙いだったが、結論からいえば「わが町の大逆転の成功の秘策なんてない。単によそと違うことを早く思いつき、実際にやってみたからだ」となるのではないか。

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「印刷業界の駆け込み寺」はデザイン力という付加価値が「選ばれる理由」

10月3日放送のカンブリア宮殿は「脱・下請けで大躍進!世界が駆け込む印刷所!」と題し、グラフ社長、北川一成(きたがわ・いっせい)氏をフィーチャーした。

兵庫県加西市に本社を置く、従業員40人の印刷会社「グラフ」。DNPと凸版が市場の4分の一を占める中、地方の印刷会社と言えば、その多くは大手印刷会社の下請けであり、少し前まではグラフも99%を下請け仕事に頼る、倒産寸前の印刷会社だった。

だが、グラフは下請けの仕事を、今ほとんどしていない。それどころか他の印刷会社で断わられた「特殊な印刷」の仕事が次々に舞い込む。社長の北川一成氏がたった一人で、世界を舞台に活躍するオンリーワンの印刷所に生まれ変わらせたという。

家業の印刷所に入社後、北川氏は営業マンとして大市場・東京を攻めた。飛び込みで企業のポストカード印刷の仕事を請けたのだ。当時、相場で15~16万円したのに1件1万円で受注し、多いときには新規で3000件/月を開拓したという。どうしてそんなことができたのか。実はコストの大半は版下。通常、版下に同じデザインを16枚分刻むところ、北川氏は1つの版下に16社の異なるデザインを描き、刷ったのだ。発想の勝利だった。

次に北川氏が取り組んだのは、色とデザインだ。客が要求するどんな色でも出すように、色の組み合わせを片っ端から開発した。そのレシピをきちんと管理し、職人がきちんと出せるようにした。同時に、大学でデザインを学んだ北川氏自身のデザイン力をフルに使った。地元・加西市の造り酒屋「富久錦」から依頼されたロゴのデザインに取り組み(この「3回も断りに行った」エピソードが面白かった)、その斬新なデザインが有名デザイナーの登竜門といわれる日本グラフィックデザイナー協会の新人賞を受賞した。そこから色々な注文が舞い込んだ。

2000年に社長に就任した北川が、真っ先に取り組んだことは“脱・下請け”だった。当時のグラフは、下請けの仕事でフル稼働しており、デザインから印刷までを請負う“利益率の高い仕事”を受けられない状況に陥っていた。これを打破しようと北川が断行した「脱・下請け改革」の一つが“バカ社長のフリ”だった。取引先の目の前で“バカ社長”を演じて、「この会社に仕事を任せたら危ない」と思い込ませ、相手から断らせる作戦だ。これによりグラフは着実に下請けの仕事を減らしていき、3年間でゼロにまで至った。

顧客は世界の高級ブランドなど、質の高いものを作る会社を探して訪ねてくる企業が多く、普通の印刷会社が敬遠する複雑な印刷物を多く取り扱っており「印刷業界の駆け込み寺」と言われている。印刷技術とデザインで1千件以上の仕事を得ている。しかも今やグラフがデザイン・印刷した包装紙は「神通力」を生んでいる。

神戸市にある和菓子屋には行列が出来ており、「かりんとまんじゅう」が大人気。ロゴが気に入っておみやげで買っていく人もいる。また、篠山市にある蕎麦屋「ろあん松田」には昼食でも6300円という高級コースが用意されており、これも人気。やはり、ロゴが独特。金箔のツルツルした所とザラザラした所で色だけでなく体で感じられる印刷物はミュージシャン「LIVE IN PARIS」のジャケットで利用された。

バームクーヘンの老舗・ユーハイムの専務が依頼した新デザインが完成し、高島屋玉川店でお披露目された。赤・白・黒のコントラストはユーハイムの創業当時からのもので、パッケージに創業者の写真を入れたのも北川一成のアイディア。ユニフォームも新しくデザインした。来店客に人気だ。この人のデザインは嫌味がないのにエッジが効いている。

北川氏の原点は、幼いころの思い出にある。毎年、父や職人が大晦日の夜中まで「正月用の折り込みチラシ」の印刷作業にあたるのに、苦労して作ったチラシも年が明けるとゴミとして捨てられる。この体験を通して北川氏の中に生まれたものこそ“捨てられない印刷物”を目指すという思いだ。それがデザインという付加価値を加えることだったのだ。「付加価値」の意味を教えてくれる教科書のような話だと思った。

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グローバル化したマネーに世界経済は翻弄され続ける

9月29日放送のNHKスペシャル「マネー氾濫~世界経済に異変~」は適時かつインパクトのある内容だった。

リーマンショックから5年、世界は今“新たな危機”に直面しようとしている。震源地の一つは米国。この5月にバーナンキFRB議長がアメリカの量的緩和の縮小の可能性を示唆しただけで、世界の資金が新興国から雪崩を打ってアメリカに回帰してしまったのである。過剰反応ではあるが、グローバル化した世界経済が何度も繰り返したパターンだ。これを契機に、再び世界経済が変調をきたすのではないかと懸念されている。

アメリカは3億ドルに上る資金をばらまいてきたが(不良債権を担保に紙幣を大量に印刷したことを意味する)、その極端な緩和を止める可能性があると言っただけで、あぶく銭を前提にしていた金融機関のディーラーがパニックに陥ったのである。「これはまずい。アメリカの投資マネーだけで支えられている新興国経済は失速し通貨安になる。大損になる前に回収しないと」と、ブラジルなどから急いで資金を引き揚げたのである。1997年のアジア貨幣危機を思い出させるパターンである。

ブラジル・レアルは瞬く間に売られ、20%も値下がりした。おかげでアメリカのマネーを当てにして借金して事業を拡大したブラジルの農業関連会社(サトウキビ加工など)やエネルギー関連会社は首が回らなくなった。輸入物価は20%程跳ね上がり、たちまち生活が困窮した市民のデモが、サンパウロなど主要な都市で連日のように行われている。「物価を下げろ。バーナンキをやっつけろ」と。

インド・ルピーも22%値下がりし、インド経済も同様に急ブレーキがかかっている。インドは日本と同様に原油をほぼ100%輸入しており、ガソリン代の高騰が生活を直撃した。あれほど好調だった自動車販売に急ブレーキがかかり、さらに海外からの投資資金が全く集まらなくなっている。

中国もリーマンの打撃から抜け出すため、巨額の金融緩和策や景気刺激策を実施した。莫大なマネーが景気を一時浮揚させた一方で、過剰な投資を招き(中国人は何でもやることが中庸でなく大体が過剰といえる)、工業製品の過剰生産や不動産の高騰など様々な副作用や歪みを生み出した。

景気過熱を懸念した中央政府がわずか1年で引き締め政策に転換する中、大きな歪みが潜行していた。需要が足らないにも関わらず、成績を上げたい地方政府が相変わらず過剰な開発政策を進めたのである。その資金を補うために「シャドーバンキング」が活用されたのである(この構図はリーマンショック前のサブプライム問題と同じだ)。老後の資金を「理財商品」に投資し紙屑となった市民の嘆きの声が伝えられたが、何度となく繰り返された光景である。取材でシャドーバンクを訪れた番組スタッフが見たのは何と地方政府の庁舎にいる地方役人。つまり実態として両者は一体なのである。地方経済の破たんが続けば、中国全体としても大きな傷を負うだろう。

問題は中国国内に留まらない。中国が資源確保のために食指を伸ばしていたアフリカ各国の経済も変調をきたしている。番組はザンビアの鉱山会社の窮状を映し出していた。中国に依存する経営の不安を訴える経営者と労働組合幹部の言葉を伝えていたが、もう遅いだろう。アフリカの多くの国にも経済危機が広まろうとしている。

9月18日のFRB経済政策の発表は量的緩和の継続であり、それは市場関係者の予想を覆すものだった。結果として新興国通貨に再び買いを入れながら、一方で投資銀行やファンドマネージャーが批判していた。「いずれ量的緩和は縮小せざるをえない、早ければ早いほうが問題は小さく済むのに、先送りすれば問題は大きくならざるを得ない」と。あんたらのせいで世界経済のブレが増幅されるのに、と思ったが、指摘自体は正しい。

日本経済は景気回復が見え、米国経済も富裕層が再びの不動産投資ブームに沸く。しかしグローバルにみれば、歪みはさらに拡大していく。

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「農協」に依存しなければニッポンの農業は“攻め”に向かう

9月 29日(日)のBiz+ サンデーの特集は「“攻めの農業”最前線」。国が成長戦略の1つに掲げる「攻めの農業」とは新たなビジネスモデルの構築に取り組む生産者を支援することで、「所得倍増」「輸出額1兆円」を目指している。本当に農業の構造改革は進むのか?番組では収益拡大に挑戦する各地の生産者たちの姿を追った。

冒頭にみずほ銀行の試算が掲げられた。農業の生産性を50%向上させることができたら、GDPに対する影響は、農業直接で2.3兆円、「農業+関連産業」でなんと4.1兆円のプラス。雇用への影響はそれぞれ30万人、52万人というのだ。

何とも凄い数字だが、そもそも50%の生産性向上なんてビジネスの世界では通常あり得ない(全くビジネスモデルが変わる場合には実はあり得るが)。しかし、解説に招かれたみずほ銀行の産業調査部の山岡所長は「同じ緯度にあるイタリアの生産性は3倍。50%の生産性向上も、所得倍増も可能だ」と断言した。

番組は“攻めの農業”のキーワードを3つ挙げた。それが①顧客ニーズの(徹底的)把握、②企業との(踏み込んだ)連携強化、③海外進出だ。それぞれの事例が紹介された。

①の実例はトップリバーという農業法人。嶋崎社長は農業に営業がいないことに驚き、会社設立と同時に営業部門を立ち上げた(といっても1人のようだが)。その営業担当は定期的にお得意様企業(例:ぎょーざチェーンやファミレス)を訪問し、例えば「(収穫の時に外していた)外葉を1枚残して欲しい」とか「より柔らかいレタスが欲しい」などの要望を受け、それを生産部門に伝えるのだ。これによって業績は着実に伸びているという。全く普通の企業活動だ。こうした基本的なことをやっている農業法人すらほとんどなかったということだ。

「農業は成長産業なのか?」というキャスターの疑問に対し、山岡氏は①(世界での)人口増大、②肉食の増加に伴う穀物需要の増加、③耕地面積がほとんど増えていない、の3つの理由を挙げた。要はグローバルでみて需要の増大に供給が追い付かないということだ。

②の実例は宮崎の養鶏農家。外食産業との連携で宮崎のブランド地鶏「みやざき地頭鶏(じとっこ)」を全国ブランドに成長させることに成功させた。美味しいのに当初は知名度がなく全く売れていなかったそうだ。それを東京の居酒屋チェーン「エー・ピーカンパニー」が見つけ、生産者から直接仕入れることで、割安な価格で郷土料理の炭火焼に仕立て上げ、ヒットにもっていったのだ。これはチェーン拡大の原動力にもなったという。宮崎地鶏の生産量は3倍に延び、さらに加工所も設け、笑いが止まらないようだった。「エー・ピーカンパニー」は他にも魅力的な農産物を全国で発掘しようとしている(先週にはこの企業は上場した)。その1つ、しいたけ農家は「現場を見てもらって、作り手の話を十分に聞いて、理解してもらって」と手ごたえを語っていた。

③の事例は、ベトナムでコメを生産しシンガポールやタイ、さらには将来米国などへ輸出することを目指している農業法人だった。ここまで踏み込んでいる例は少ないと思うが、普通の工業・サービス業はとっくにやっていることでもある。農業も普通の産業になりつつあり、それが“攻め”であり、成長産業への道なのだ。

従来の日本農業の低い生産性は、「サラリーマンの息子が主たる稼ぎ頭で、その両親と嫁が片手間でやっている」、いわゆる三チャン農家が大半だったからなのだ。しかも市場への供給機能は果たすが、やる気のない彼らを活かさず殺さず、収益を吸い取る仕組みとして機能していた「農協」に依存していたからなのだ。やる気のある農家ならば自ら商品企画で工夫し、自ら営業して需要家に売り込むことで、そして海外を視野に入れることで、ビジネスを倍以上に拡大することができるはずだ。

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神戸“復興“における、知られざる陰と闇

9月21日(土)に放映されたNHKのETV特集、「“復興“はしたけれど~神戸 新長田再開発・19年目の現実~」は実に考えさせられる内容だった。1995年の阪神・淡路大震災で深刻な被害を受けた街、神戸市西部の新長田地区の再開発の失敗の教訓を改めて追ったルポだった。

小生は相当昔だが、神戸でプロジェクトをしていた時期があり、その当時から「神戸株式会社」と揶揄されていた特殊な地域だった。阪神・淡路大震災で大打撃を受けた当地域のことを忘れたことはなかった。しかし自分が何かできる仕事は見つけられなかったまま20年近くが過ぎ、東北のモデルになるほどの復興ぶりを聞かされてきて安心し、誇りに思ってきたものだ。それが、一部地域とはいえ全くの欺瞞だったことを教えられ、とてつもないショックを受けている。

震災後、神戸市はこの街を復興させようと、総事業費2,700億円の巨大開発計画、新長田駅南再開発事業を打ち出した。被災地を商業ビルや高層マンションなど44棟が建ち並ぶ「神戸の西の副都心」として再生しようという、震災前から神戸市が温めていた再開発計画をここぞとばかりに実行したのだ。震災で焼け出された商店主たちは、新しい街づくりに再起の希望を託した。

19年目後、再開発で生まれ変わったはずの街に異変が起きていた。真新しい商業ビルの中にはシャッターを閉じたままの場所が目立つ。店舗スペースが大量に売れ残り、商店街を訪れる客の数は震災前より激減した(ある商店主に云わせると、三分の一)。大きな借金を背負って再開発事業に参加した商店主の多くが深刻な経営悪化に苦しんでいるのである。

震災前から新長田で商売をしてきた老舗の商店主のコメントが彼らの窮状を表している。「店を売りたくても買い手がない。貸したくっても借り手がない。10年かそこらで資産価値が3分の1に落ちてしまう街なんて他にあると思う?・・・ちょっと酷すぎるわ」と。彼らの一人が言っていたのが、「税金と借金で年300万円。でも実際には30万が精一杯。いつ差し押さえられるかという恐怖と皆が闘っている」という現実。再開発事業は今やむしろ別の厄災をもたらしている。

駅に近いところだけ再開発されて、奥は後回し(これは実は再開発の一つのパターン)、土地を売り、再入居なりしたものの、商業ビルは閑古鳥のありさま(1Fでさえ息絶え絶えで、2Fや地下はゴーストタウン状態だ)。売るに売れない現実と、迫りくる世代交代(年齢)の問題・・・。

最後は、再開発における「管理会社」の問題で衝突する小口区分所有者たちと、大口区分所有者・神戸市の対立と話し合いが描かれていた。特に「新長田まちづくり株式会社」という管理会社の不透明な実態(領収書だけでは、買い手と売り手がどちらもまちづくり株式会社だという摩訶不思議な処理がなされていることになり何も分からない)と、驚くべきことに神戸市の指示にさえ従わない(住民との話し合いに出席拒否など)という実態・・・。

一体何が起こっているのか、外部からだけでは伺い知れない闇が拡がっている。これは住民の告発により、刑事事件か、せめて民事訴訟を起こすしかないのではないか。小生は訴訟を推奨する立場ではないが、本件に関しては「白黒つける」必要があると考える。

何といっても多くの再開発事業参加者は、息子・娘への資産・借金の引き継ぎを諦め、場合によっては自己破産さえ視野に入れている。しかし毎日働き続けてながら、絶望の中での抵抗を続けているのだ。神戸市とまちづくり株式会社は、この人たちにまっすぐ向かい合うことができるのか。

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