日本人らしい技術・品質・きめ細かさで新興国市場を切り開く

12月27日(金)に放送されたガイアの夜明けスペシャルは「新興国を切り拓く!独自の手法」と題した年末特別版。

大きな経済成長が望める、東南アジアやアフリカなどの新興国市場を狙って、世界の様々な企業が進出している。一方、日本企業は一部の東南アジア以外ではかなり出遅れている。単に拠点を作り、人員を派遣するだけでは、なかなかライバルに追いつけない。そこで、これまでにない独自のやり方で新興国市場を開拓し始めた企業がある。番組では、ホンダ、双日、パナソニックの挑戦を採り上げていた。以下ではホンダとパナソニックの話題をフォローする。

本田技研工業はバイクメーカーとして東南アジアを中心に高いシェアを誇り、世界シェア28%とトップ。しかしアフリカでは大きく出遅れており、シェアは1%足らず。工場も販売網もないケニアでは0%。ホンダは10年でアフリカのバイク市場が倍になると予想していたが、新たに本格的な工場を建設するとなると、投資も巨額になり数年はかかってしまう。そこでホンダは、KDP(かんたん・どこでも・パック)と名付けた戦略で攻める事にした。

ホンダモーターサイクルケニアの今里康弘社長が案内したのは、ナイロビ市内にある工業団地。KDPとは、少ない費用で短期間に「町工場」を作る戦略だった。7月になると日本の工場からエキスパートたちがやってきて、工場立ち上げサポートを行い、数日後には製造ラインが完成した。本格的な製造ラインであるアストラ・ホンダ インドネシア第3工場で、は8,000人がバイクを作り続け、7秒に1台が生産される。一方、KDP方式では、投資額は全て合わせても5千万円弱だ。

現地法人の今里社長は数ヶ月にわたって市場調査を行なっていた。バイクタクシーの運転手に話を聞いてみると、インド・バジャージ社のボクサーというバイクが人気だった。日本円で約12万円。中国製よりも若干高めだが品質もよく、人気となっていることが分かった。

その頃、工場では秋からの稼働に向けて、現地スタッフの教育がスタート。最初のスタッフは7人、全員が未経験者だった。組み立て担当には2人の女性が抜擢された。フェイスさんは工業系の学校を卒業した人で、もう一人のマセキさんも元々エンジニア。この2人を指導するのが、日本から来た来年定年を迎える鶴田博光さん。自動化されていないため、手作りが基本となり、その分しっかりと作業工程を覚えるのが重要だった。

鶴田さんは約25年に亘り海外の工場を指導し、約20か国で工場の立ち上げに携わってきた。しかしKDPは今回が初めてで、これまでとは勝手が違っていた。1か月の指導で2人のケニア人女性も作業に慣れてはきたが、課題はハンドル操作に直結する前輪の取り付け。職人ならば肌で感じる感覚を伝えるのに苦労していた。鶴田さんは作業の手順をイラスト化し、気をつける点を細かく記した製作マニュアルを作り、現地スタッフに手渡していた。彼らが自ら考え技術を向上させるようにとの意図だ。

午前7時、リーダー候補のフェイスさんが提示よりも時間早く工場に出勤し、相棒のマセキさんも早朝出勤していた。2人は自主的にその時間から組み立てを特訓し、困った時はマニュアルを確認していた。苦労していた前輪の取り付けにも慣れ、2人だけで1台のバイクを組み立てる事が出来るようになっていた。

工場立ち上げから4か月後の11月。町にはホンダの大きな看板が登場。工場にもホンダの看板が掲げられていた。鶴田さんも工場の最終確認に訪れていたが、そこではフェイスさんをリーダーに、次々とバイクが作られていた。今は1日20台の生産ペースだが、将来的には1日100台を目指しているという。

ナイロビの工場では11月12日にセレモニーが行なわれ、工場立ち上げから4か月でバイクのお披露目が行なわれた。売り出されるのはバイクタクシー用の新モデル。客がゆったり座れるシートと足を乗せられるステップを標準装備していた。

ケニアの中でもバイクタクシーが多く集まるキタレという町。今里社長が、オープンを翌日に控えた販売店を訪れた。オープン前にもかかわらず店には多くのバイククシーの運転手が集まり、試乗用のバイクに興味津々、好評価だった。シェアゼロからのホンダの逆襲がここから始まると期待しよう。

もう1社はパナソニックの奮闘。2年前から民主化へと急速に舵を切りはじめたミャンマー。経済は急速に発展し、2012年の実質経済成長率は6.5%。

ヤンゴンにある人気のショッピングセンターの家電売り場ではパナソニックをはじめ、サムスンやフィリップスなど様々な国のメーカーの製品が並ぶ。パナソニックのミャンマー支店長の前田恒和さんが訪れたのは、サックイン村だった。約1000人が居住する小さな村だが、電気が通っていない。国際エネルギー機関の調査によればミャンマーの無電化率は51%で、半数以上の人が電気のない生活を送っている。

しかしそんな村々にも携帯電話は普及しており、電話を充電するためわざわざ近くの村まで出かけているという。日が暮れると真っ暗闇の中、ロウソクの灯りに頼る生活。村人は今一番、明かりを求めていた。この切実な訴えにどう応えられるのか…。

パナソニックには秘策があった。買収される前の三洋電機がソーラーランタンを開発していたのだ。しかしそのままでは、子供たちが勉強するには明るさが不十分だった。そこでパナソニックでは、ソーラーランタンを改良し、大々的に無電化地域に売り込むことが決まった。

後日、前田さんのもとに、新たに開発されたソーラーランタンが届けられた。以前のものよりも随分コンパクトになり、最大で従来の3倍の明るさで、6時間の充電で最長90時間の使用が可能、とかなりの進歩だ。パナソニックは2014年1月からこのソーラーランタンをミャンマーで発売する。販売価格は約5000円で10年は使える商品だ。

前田さんはパティンという地方都市で売込みを行なった。電気店には中国製の1000円以下のソーラーランタンが並べられていたが、お店の人によれば4~5ヶ月くらいか使えないという…(さすが中国製)。そのお店にはパナソニックのソーラーランタンを置いてもらえることとなった。

翌日前田さんはソーラーランタンを手に、再び無電化地域のサックイン村を訪れた。真っ先に以前伺ったフェラーリさんの家を訪れ、ソーラーランタンを手渡した。この商品には携帯電話の充電が出来る機能もあり、これでわざわざ携帯の充電のため隣の町まで行く必要もなくなることにフェラーリさんらは感激していた。ランタンが吊るされた家の中は灯りで照らされ、顔を見て会話をする事が出来る。ロウソクの光で4時間も勉強していた、弟のイェ・ウィンくんの元にもランタンを届けると、彼の顔が輝いた。

翌日、再びサックイン村にソーラーランタンを持ってきた前田さん。村人達総出の民族舞踊で出迎えてくれた。前田さんは完成したばかりのソーラーランタンを15個、村に寄贈。電気がない地域にもこの商品を届ける事でパナソニックのファンになってもらい、将来電気が通った時にパナソニック製品を買ってもらうことにつながるという。パナソニック本社には色々と問題がありそうだが、現場で奮闘する社員たちは一途である。

夜に地元の学校を訪れると、そこでは寄贈されたランタンが灯され、灯りのもとで高校生達が勉強していた。彼らは明かりに集まる虫を気にかける事無く、勉強に集中。本当に嬉しそうだった。届けた商品が人々を豊かにしていく…そんなビジネスの原点が新興国にはある。とても素敵な光景だった。
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日本の国際支援・貢献は「情けは人のためならず」を実践している

12月23日の「未来世紀ジパング」は「池上彰の年末SP 知られざるニッポンの"貢献力"」と題し、世界を舞台にした日本の国際支援・貢献に焦点を当てた。

番組ではこれまで2年にわたって、世界の沸騰現場で活躍する日本人や日本企業を取材してきた。その中で、何度も聞こえたのが、日本の支援・貢献を評価、感謝する現地の人たちの声。苦しい時期も含めて日本が脈々と培ってきた"貢献力"とは、日本だからこそできる貢献とは何なのか?改めて考える機会を与えてくれた。

今回、ナビゲーターの池上彰が番組MCのシェリーとともに、向かったのはバングラデシュ。バングラデシュは「アジアの最貧国」の一方で、「ソーシャルビジネスの中心地」ともなり、いま世界から注目されている。

ベンガル人の国、バングラデシュの人口は1億5千万人。アジアの最貧国。国旗がよく似ており(緑地に赤丸)、「好きな外国第1位」に日本、「重要な国第1位」も日本と、極めて親日的な国なのである。その理由は、日本の“貢献”の歴史だった。1971年のパキスタンからの独立宣言後(独立戦争では300万人が死亡!)、最初に同国を独立国と承認したのが日本だった(このことを同国では学校で教えている)。独立後も苦難の道を歩む同国を、官民あげて日本からの支援(資金、技術)が繰り広げられたのである(例えば500もの橋を建設している)。そしてそれは(中国とは大いに違って)同国ではきちんと広報され(援助で完成した施設に表示されている)、人々に認識され、感謝されている。

番組でもユニクロで売られていた、バングラデシュ人デザイナーがデザインしたTシャツが紹介された。JAPANの5文字を頭文字にJoy, Agony, Pain, Aspiration, Nothing is impossibleと表され、日本のGDPのグラフが表示されている。つまり「日本だって色々と苦労したが、ここまで凄い経済大国になったんだ。おれたちも目指そう!」という趣旨だという。なんと深い意味を持つTシャツだろう。

バングラデシュの有名人といえば、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏。貧しい人向け融資システムの「グラミン銀行」(ロゴは家のマーク)の創設者である。今やバングラデシュは「社会貢献ビジネス」を志す人や企業が集中する“中心地”となっている。ダノンなどのグローバル企業がグラミンと組んで、商品を開発し販売している。

ユニクロも「グラミン・ユニクロ」ブランドで、バングラデシュの人々に向けた格安カジュアル衣料を開発し、店舗展開しているのは以前このブログで採り上げた通り(この様子も番組冒頭で映していたが、番組の取材は開店初日のようで、随分繁盛していたが、実際にはこのあと大変苦労している)。今、「グラミン・ユニクロ」は店舗だけではなく、グラミン・レディーの手で拡販されている。

雪国まいたけもまた、グラミン銀行の支援を受けて緑豆(もやしの種)栽培をバングラデシュで拡げようとしている。当初は協力農家を集めるのに随分苦労していたらしいが、今では8000世帯ほどの農家に増えて収入増にも貢献しているそうだ。その緑豆からできたもやしは中国産と変わらない品質で割安だという。

場所は変わって、フィリピン。今年同国を襲った大型台風30号。これまでの死者数は5,700人。いまだ1,800人の行方がわかっていない。その被災地では、日本の支援活動“トモダチ作戦”が展開されていた。最前基地への取材である。タクロバンからヘリで向かった先は、自衛隊の護衛艦「いせ」。洋上の拠点を置き、フィリピンの要請に応じて部隊を次々と派遣していた。実は、自衛隊の海外派遣は過去最大、派遣数は約1,200人にも及ぶ。日本の新たな支援、貢献のモデルを目指しているという。発生以来1ケ月経って衛星状態が危惧される瓦礫に対し、消毒活動をする日本の自衛隊員に感謝の意を表する住民たち。これも東日本大震災の恩返しだという。そして災害大国・日本の自衛隊にとって災害支援は「得意技」なのである。

フィリピンの被災地にかけつけた日本赤十字の医療チーム。その中に一人で地域を回り、子供たちに声をかけて回る日本人、臨床心理士の森光玲雄さん。東日本大震災の際には南三陸で「こころのケア」に従事した。フィリピンでも親を亡くしPTSDに苦しむ子供たちが続出しており、森光さんは日本での経験を生かし、子供たちのこころの声に耳を傾ける。とても素敵な支援である。

どれも同じ日本人として誇らしい国際貢献である。軍事力に頼れない、頼らない日本の安全保障は、経済力以上に、支援の積み重ねによる他国からの感謝・信頼であろう。経済力だけに頼っていては、それを失ったとたんに石持て追われかねない。領土的野心丸出しの中国、僻み根性の韓国がどんな嫌がらせをしてきても、それ以外の国から「日本はいい国だ。あなた達こそがおかしい」と声を上げてもらうことが、日本を滅ぼそうとする邪悪な意図を挫いてくれるはずだ。

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命を脅かす模造品がはびこる現代、その責任は誰に?

11月13日(水)に再放送(最初の放送は7月9日)された「BS世界のドキュメンタリー」、シリーズ 値段の真実「模倣品社会~命を脅かすコピー商品~」(原題はCOUNTERFEIT CULTURE)。製作はTell Tale Productions(カナダ 2013年)。とても深刻な真実が含まれていた。

かつてコピー商品と言えば高級ブランド品のバッグや時計が主流だったが、今や食品、医薬品、電化製品、マイクロチップなど、あらゆる物のコピー商品が作られている。そしてその中には、人命に関わるものが数多くあるというのがこの番組のテーマである。北米、アジア、ヨーロッパ各地を巡り、違法コピーの取締りに奮闘するエージェントや製造・販売の現場を取材。かつてない規模で取り引きされるコピー商品がはらむ危険性を検証した番組である。

過去25年間で急成長を遂げた模倣品ビジネス。現在その規模は7千億ドル、世界貿易の1割を占めるという(世界のコピー商品の3/4は中国産だという)。模倣品氾濫の影には、強制的な労働、低賃金、労働者の健康への被害といった問題が潜んでいる。そして、私たちの命を脅かしかねない粗悪なコピー商品(模造品といったほうが適切か)もある。

たとえば、中国では偽造医薬品によって毎年何万もの命が失われているという。また、2000年に100名以上の死者を出したコンコルドの墜落事故は、別の飛行機のコピー部品が外れて滑走路に落ちていたことが原因だった。米国の航空産業特有の事情もあるが、定期的なメンテの際、耐久期限が切れた商品を交換する際に紛れ込んだりするのだ。なんと大統領が使うヘリコプターにも、軍用機にもコピー商品が入っていたという。

以前、NHKのドラマ「七つの会議」で、電機メーカーの子会社である部品メーカーのエリート担当者が、悪質な取引先と組んで規格より強度を下げたネジを納入させてコストを下げた結果、そのネジが航空機に使われており、大事故につながりかねないことが判明するが、会社ぐるみで隠蔽しようとする話があった。それを思い出した。

そのほか、事故の危険性が高まる自動車のブレーキパッドや有害物質を含むおもちゃなど、模倣品の危険は私たちの日常に入り込んでいることが指摘されていた。例えば薬は、効かないだけでなく毒物が混ざっているものなどもあり、それが原因で毎年多数の死者が出ている。番組で紹介されていた統計によると、パナマで300人、インドで100人、中国では何と毎年30万人がこういう薬で命を落としているという。こういう薬はネット通販で簡単に入手できるため、中国製「やせ薬」などが日本でも流通しやすくなっている。

違法コピーの取締りを行うエージェントは奮闘しているし、実績は上がっているが、所詮はいたちごっこ。違法コピー商品の製造者は加速度的に増えているという。なぜなら着実に儲かるビジネスだからである。仮に摘発され没収されようと、元々の原価は高が知れている。それに対し売れた時の利益率は笑いが止まらない位、いいはずだ。しかも中国をはじめとする途上国では、犯罪として摘発され刑務所送りになる可能性も低く、製造会社に対する罰金も懲罰的でなく、痛くもかゆくもない。

一方、上記で見るように、その粗悪コピー品がもたらす被害の範囲や深刻度はどんどん加速している。コピー製造で儲けている連中はその被害の実態を考えようともしない。所詮は犯罪者集団なのだから、詐欺犯が被害者のことを気に掛けないのと同じである。彼らは自分達が儲かればいいのであるから、その良心を期待することはできない。

値段ばかり追求する風潮とコスト削減至上主義が模倣品をはびこらせているのは間違いない。番組の中では「需要がある限り模倣品はなくならない」というコメントをジャーナリストが言っていたが、その通り。一番の対策は「模倣品は買わないこと」だ。

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取材があぶり出す途上国での搾取の現実とジャーナリストの迫力

年末なので仕事はひと段落。過去に録画した報道番組やドキュメンタリー番組などを「拾い観」している。特にNHKの「BS世界のドキュメンタリー」はしっかりした中身と日本国内ではなかなか気づかない視点を与えてくれるので貴重だ。

11月14日(木)に再放送(最初の放送は7月10日)されたのが、「ラベルの裏側~グローバル企業の生産現場~」(原題はUnderhand Tactics: Toxic Lable)。製作はフランスのPrémieres Lignes Télévision (2012年)。

過去10年間で、フランスでは洋服の値段は13%も下がったという。その代償を支払っているのは誰なのか―?これが番組の問題認識だ。仮説は「製造に関わる発展途上国の労働者が搾取されているのではないか?」というものであろう。そしてその仮説はどうやら当たっていた。アパレル産業が輸出の8割を占め、今や中国を抜いて「世界の縫製工場」と呼ばれるバングラデシュを取材した取材班は、工場でさまざまな“搾取”が行われている現実を目の当たりにする。

バイヤーを装って有名ブランドの商品を請負う工場を訪れた(発注先を探すアパレルメーカーを装っていた)取材班は、低年齢の未成年が多数働いている様子を目の当たりにする。その後、労働者が住むスラム街に潜入し、12歳の少女から週に60時間、労働しているという証言を得る。1人ではなく、どうやら多くの少女が同じように働いているようだ。

しかし取材班が聞き込みをしていると、工場でも様子を監視していた男が近くに来て、様子を探ろうとする。工場のスパイであり、取材班を追跡していたのであろう。少女やその他の従業員たちに不利益になりかねないので、取材班は早々にそこを引き揚げざるを得なかった。こうして証拠をなかなか掴ませないよう、現地の工場経営者たちは悪知恵を働かせて警戒していることが示唆される。

健康に被害を及ぼすため先進諸国では禁止されている加工方法も平気で行われている。働く職人は、健康被害を食い止めるためにも、ただちに仕事を辞めるよう医者に勧められるが、家族を養うためには、それはできないという。しかし元も子も失くしてしまいかねない、危うい先送りの判断である。

さらに取材班は、ブランドを多数展開する欧州大手企業の取引先工場に関する文書を入手。それらの企業もまた、現地工場の労働環境が劣悪だと知りながら取引を続けていたことが発覚する。「知らぬは発注元のアパレルメーカーばかり」という構図ではなく、彼らもまた実態を知っていながら目をつぶっていたのである。自国民でなければ構わないとでもいうのだろうか。

取材班は発注元である別の大手の仏アパレルメーカーの責任者に直撃インタビューを試み、そこで調査結果をぶつけ、現地の実態把握を実施すること、そしてもし状況を改善する手段を取引先工場が速やかに執らない場合、発注先を変えるという明言を引き出す。

このあたり、とても緊迫感もあり、事実を基に社会正義を実現させるというジャーナリストとしての覚悟が伝わってくる場面だった。日本の大手新聞社やTV局のサラリーマン取材者や芸能レポータ等とは全く違う、プロとしての迫力がにじみ出ていた。アパレルメーカーの責任者としても決して軽視できない圧力を感じたろう。もし軽くあしらう態度を見せれば、明日からそのブランドは不買運動に遭いかねない。それが欧州の消費者の力なのである。そしてそれを引き出すための、取材動画の威力もまた、この番組は示していた。

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客を楽しませることで従業員が楽しめるスーパー

12月19日放送のカンブリア宮殿は、福岡の食品スーパー、ハローデイ社長の加治 敬通(かじ・のりゆき)氏を採り上げた。題して「ユニーク店舗に客が殺到!デフレに勝つ“楽しいスーパー”」。

山口・下関市にあるハローデイでは店内に魚の装飾が施されていて、天井には巨大なクジラの模型が泳ぐ。志免町のハローデイではロボット、北九州市の店では学校の図書館をそれぞれイメージした装飾となっている。いずれも所狭しと、手作りのぬいぐるみや絵が飾られている。ハローデイの店舗は、店ごとにディスプレイや品ぞろえが違うのである。パート従業員らが店の装飾についてアイデアを出し、各店舗が費用を出して実行しているのだ。パートの一人「自分のアトリエみたいに楽しい」。

またハローデイ横代店で販売されている「ケーキずし」もパート従業員の発案によるもの。装飾もさる事ながら、お客さんが高級志向のものでも買ってくれるよう、商品の工夫された陳列も行っていて、お客が見て楽しむことを目指している。

11月下旬、ハローデイでは近隣の店同士が惣菜メニューや店内の装飾、陳列などを競い合う「ハロリンピック」が開催された。加治敬通社長が従業員の説明を聞きつつ店内を巡り、お客さんからの反応も上々だった。

ハローデイでは全国のカレールーや醤油など圧倒的な品揃えで、さらにお客さんが要望した商品は必ず仕入れている。他にも惣菜400種類のうち9割を手作りしているなど手間暇をかけていて、1匹のサワラは12種類の惣菜に加工して販売されている。

「ハローデイ」は40店舗を展開。業界が売り上げの減少に苦しむ中、20年近く増収増益を続けてきた。価格競争とは一線を画し、安売りには頼らない。効率よりも客を楽しませること。しかもそのために手間を掛け、工夫をする。それを自分たちがまず楽しんでしまう。その背景には「従業員が楽しく働くことで良い店をつくる」というハローデイ独自の考え方があった。

ハローデイは自分たちの店をスーパーとは呼ばず“アミューズメントフードホール”と自称する。それほど、楽しい見せ方に徹底してこだわっているということだ。ほとんどディズニーランドの飾り付けの気分である。店内のデコレーションだけでなく、野菜や果物を巨大ティーカップに入れるなど、商品の見せ方にも独自の工夫を凝らす。

しかし重要なのは見た目だけではない。たとえば、果物コーナーの横には高級ジュースを陳列。すると、売り上げが大きく伸びたという。肉や魚も店内で様々な形に加工し、付加価値を高める。独自の手法で商品の魅力をアピールし、客を買う気にさせる。どうやると客がその気になるのかを、パートを中心とする現場の人たちが自ら楽しんで工夫しているのである。ほとんど「サークルのノリ」である。

江藤佐智子さんらパート従業員が、お年寄りのために簡単に作れる総裁レシピを配布している。お客からも好評で、毎日来る常連さんに至っては(レシピをもらいつつ)江藤さんとの会話が楽しみだという。仕事後に江藤さんは自宅で新メニューのレシピを考案していて、家族が味見を担当している。

パート従業員がなぜ、そこまでやる気になるのか。そこには、加治氏の苦い経験が反映されている。父親が経営していたハローデイに加治が入社したころ、会社は赤字で巨額の借入金を抱えていた。加治氏は現場で改革を断行。経営は上向いたが、社員の心は離れ、次々と辞めていく。自分のやり方に悩んだ加治氏は先輩経営者の言葉に刺激され、考えを改める。そして「規模の大きな会社でなく、日本一働きたい会社」を目指すようになったという。店舗裏にはお客さんから寄せられた褒め言葉を張り出してあり、パート従業員のやる気を引き出している。

村上龍氏が指摘するように、ここでは現場の従業員が企画・アイデアを考え、協力しあって実行し、達成感や充実感を得て、お客を楽しませることにいそしんでいるのだ。

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人命救助のためなら技術者は困難に立ち向かえる

12月23日の「ガイアの夜明け」は「救える命を救いたい... ~執念の技術者が生んだ画期的な装置~」と題し、東日本大震災を目の当たりにした技術者たちが、「もっと救える命があったのではないか?」と自問自答をし、「自らの手で人命救助に役立つ画期的な装置を生み出そう」と動き始めた2つのケースを密着取材した。以下はその前半のケースを紹介。

今年、日本各地で大雨や台風による水害が多発した。しかし水の流れが強いと普通のボートでは救助に行けない。ましてや瓦礫が散乱し水面近くにあるようなところでは、水中にプロペラがある普通のボートでは、プロペラが破損して立ち往生してしまう。そこで、こうした水害から人命を救おうと、画期的なボートを開発した男がいる。宮城県登米市松島町出身の佐々木甲さんという技術者である。生業は内装業。

東日本大震災では、津波・濁流に飲みこまれ大切な命を失った人たちや、家の屋根・電信柱につかまり長い時間、救助を待った人たちが多くいた。水上のプロペラで推進する「エアボート」は、アメリカではレジャー用・救助用として一般的だが、日本にはほとんどない。

そこで佐々木さんは自ら「世界初の救助機能を備えたエアボート」の製作に挑み、なんと欧米の製品情報を勉強し、独学で設計図を描きあげたという。まずはエンジン用に、最新小型飛行機用エンジン・メーカーのHKS(富士宮市)を訪れるが、最初は飛行機用だからと難色を示される。しかし災害救助だからと掛け合い、その熱意に押されてメーカーも最新製品の開発者を派遣するなど、その気になる。日本小型船舶検査機構による検査も順調にパスする。

この独自エアボート、浅瀬の河原でも進むことができ、しかも「水面から人をすくい上げる装置」(巨大な金魚すくいである)を備えるスグレもの。そこまでの開発は比較的順調だった。しかし佐々木さん、その意欲は生半可ではない。「転覆しても自動的に復元する装置」という世界初の画期的な装置も備えようというのだ。

最初の実験では、復元浮上のためのバルーンが途中で引っ掛かり破れ、見事に失敗。転覆復元装置はかなりの難題である。破れたバルーンを抱えてシートメーカーを再び訪れた佐々木さんは、強度4倍だけど加工が難しいシートを提案され、夜まで5時間掛けて縫製・加工作業をしてもらう。それを使っての再実験は見事に成功。歓声と涙、抱擁だった。観ているこちらも胸が熱くなった。

一人の技術者が水害による被災者を救う為に制作した救助専用エアボート。日本にまだ無いそのボート作りは、彼に賛同した多くの町工場仲間の協力により完成した。多くの協力者は皆、「災害救助に貢献できる機会は今までなかった。是非協力したい」と申し出てくれた人たちだという。日本人の多くはこうした善性を持つのだと実感する。

震災後初の、消防防災の関連商品が集まる展示会で注目を集め、引き合いを受ける事になる。これから各地の消防署など災害救助活動に携わる機関で使われる可能性が拡がっており、佐々木さんは災害救助専門ボート製作の会社を立ち上げるという。是非、全国そして海外にも広めて欲しい。

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対照的な「対等合併」ケースにみる経営戦略(後編)

大手工作機械メーカー、森精機がギルデマイスター(ドイツ)と経営統合することを今年4月に発表した(実は3月の時点では森精機は「合併の計画はない」と公言していた)。年間売上高で42百億円の世界最大手の誕生である。8月には互いの株式の追加取得を進め、10月には森精機は「DMG森精機」に、ギルデマイスターは「DMG MORISEIKI」に、それぞれ社名を変更した(英語表記はほぼ同じ)。ブランド名も統一する。そして両社の経営統合は2020年の合併で仕上がりを迎える。随分遠大な経営統合劇である。

国際的な経営統合をしようと発表したケースでは、株主や組合、母体国の監督官庁に対し「この経営統合にはこれこれの大きなメリットがある」と説明し、合併に伴うコストやリスクを大きく上回ることを納得させる必要がある。実際、先に解説した東京エレクトロン-アプライドマテリアルズのケースと同様の利点の多くを、この森精機-ギルデマイスターの経営統合も内包している。では、そんなにメリットがあるのなら、なぜ急いで実現しないのか?

その理由はズバリ、「国際合併に伴うリスクの最小化」である。日本企業同士でさえ、文化の異なる企業の経営統合には軋轢が絶えない。2010年のキリンとサントリーの、最近では川崎重工業と三井造船の経営統合構想の破談は記憶に新しい。事実、森精機自身も2002年に日立精機を買収して、苦労を重ねてきたそうである。ましてや大企業同士の国際合併では、近年のダイムラー・クライスラーのように強烈な失敗事例の記憶が生々しい。言葉の壁があり、それはコミュニケーションによる互いの理解促進を阻害しやすい。この懸念を克服し、互いの理解を深めるためのアプローチが、これから6~7年を掛ける経営統合プロセスという答である。

実は両社の資本・業務提携は2009年の3月に始まっている。その提携発表後、両社はまず互いの株式を数%ずつ取得し、タイやインドネシアなどで販売・サービスの共同化を始めた。そして両社の社長が互いの経営陣に入った。翌2010年には豪州・米国・インドなどで共同販売・サービスを展開。2011年にはアフリカとメキシコ、そしてギルデのお膝元、ドイツでも開始。2012年には欧州全域での共同販売・サービスに拡大した。そして今年4月、とうとう合併を決めたのである。両社は、今年9月のドイツでの見本市では共通部品を使った旋盤などを展示しており、既に共同調達という果実の取り入れが相当程度進んでいることを示唆している。

さらにこの9月に森精機のギルデ株保有比率が24.9%を超えることになったので、欧州の独占禁止法で両社は競争関係にあるとみなされなくなり、経営などに関する情報共有の制限が取り除かれた。これで共同開発や製品ラインの統合が本格的に進むだろう。さらに、ほぼ毎月開かれる共同経営協議会という場で、役員間で情報共有を行う方針だという。

いわば婚約、同棲と進んできた両社は、このあと事実婚を6~7年ほど続けてから籍を入れると宣言したようなものなのだ。つまり段々深い付き合いをしてみて大きな違和感がないことを確かめながら、抜き差しならない関係になることを互いに納得できるよう、実に慎重にプロセスを重ねているのである。この6~7年の「事実婚」の間によほど深刻な「性格の不一致」が見つからない限り、この長期にわたる統合プロセスが破たんする可能性は低いだろう。

半年で結論を出して統合プロセスを急ぐ東京エレクトロン-アプライドマテリアルズのケースに比べ、この森精機-ギルデマイスターの場合、経営統合の判断だけでなく統合プロセス自体に極端に長い時間を掛けることには賛否両論があろう。しかしこれはどちらが正しいとか間違っているとかいう話ではない。それぞれの経営者が個別事情を踏まえて熟慮し判断していることは、色々な情報から察することができる。周りはこの2組のカップルを温かく祝福してあげたいものだ。

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最新技術を駆使してのMAN HUNT劇が示すもの

12月3日(火)放送の「BS世界のドキュメンタリー」は、シリーズ「終わらないテロの脅威」の最終回で「マン ハント~追跡 ボストン爆破テロ犯~」。今年4月、ボストン・マラソンで3名の死亡者と数百名の負傷者を出した爆破テロ犯がいかに特定され、追いつめられていったかが描かれ、テロの脅威と共に、現代の情報力を駆使した捜査能力の高さと「監視の目を逃れにくい現代」を印象づけるものだった。

このテロは、年に一度のお祭りムードに包まれた街を悲しみと恐怖に陥れた。しかし、その犯人はわずか5日後に逮捕された(正確には、容疑者の1名は死亡、もう1名は拘束。最後は警官との銃撃戦になり、犯人逮捕の報にそれまで戦々恐々としていた住民が拍手と歓声を上げる光景が印象的だった)。

混乱を極めた爆破現場を、警察はどのように分析し、証拠を見いだしたのか。爆発物の世界的権威、ニューメキシコ工科大学のヴァン・ロメロ教授の爆発物研究チームの分析により、爆発物は圧力鍋によるものとすぐに推測・検証された。現場で発見された破片から、圧力鍋のメーカーとタイプ、釘やボールベアリング等が特定された。そうした大きさの鍋と付属物を入れることができるバッグを現場で持っていた人物を特定するため、現場の監視カメラの映像が集められた。

ボストンのケースでは一つひとつの監視カメラ映像が集められ分析されるという途方もない作業だったが、ニューヨーク市では全ての監視カメラがネットワークされ、どこで何が起きつつあるかを瞬時に検索・モニタリング・分析できるという。さすがブルームバーグ市長のお膝元。

ボストンのケースに戻る。市内に設置されている延べ数百時間におよぶ監視カメラと、自主的に提供された観客が撮影した事件現場の映像から、捜査班が容疑者を割り出した。しかしこのケースでは撮影された画像はあまりに不鮮明で、顔認識システムを使えなかった(今の顔認識システムでは人物が正面を向いていないといけない、ある程度の鮮明さが必要などの制約がある)。

容疑者の逃亡を促す懸念からFBIは当初、容疑者の画像を公開しなかったが、インターネット上では当日バッグを持っていた人たちを中心に、無実の人たちが「魔女狩り」に遭っていた。そこでFBIは方針を転換し、防犯カメラに映った容疑者の画像(非常に不鮮明なもの)を事件発生後3日後に公開し、市民に協力を呼びかけた。

科学捜査班は、非常に不鮮明な画像を補整し鮮明な画像に変換するソフトウェアを駆使し、「犯人像」を類推するが、その公開前に事件は急速に展開する。

写真が公開されたことで焦った犯人は街からの逃亡を企て、車を強奪。被害者は途中で逃げることができたが、自分の携帯電話を社内に残したままだった。しかし電源が入っていたので、GPS情報により警察はその車の位置をかなり正確に特定でき、犯人を追いつめることができた。その結果、警察とのカーチェイスになり(この映像も当時評判になった)、犯人の一人(兄だったと思う)はもう一人にひき逃げされた。それでも逃げおおせたもう一人は姿を隠す。

残る犯人が潜伏している場所は当初は全く不明で、ボストン市内は一種の「戒厳令」状態だったが、州警察は赤外線カメラをヘリに搭載し、市民から寄せられる情報に基づき市内上空をずっと旋回させ続けた。しかし容疑者がビル内に潜んでいたり市外に脱出していたら大ハズレだ。しかしやがて市民の通報があった。ヘリが現場を映すと、ボートに潜んでいる容疑者の赤外線画像が鮮やかに浮かんでいた…。犯人逮捕後、市警はツイッターに書き込んだ。”CAPTURED!! The hunt is over. The search is done. The terror is over. And justice has won. Suspect in custody.”

事件の検証と並行して、街中に設置された監視カメラの情報を集中管理することで市内の監視システムを強化するニューヨークの実態や、顔認識ソフトの開発の最前線など、911同時多発テロ事件以来、テロ対策を強化してきたアメリカの実情もよく伝わった。今の米国の最大の敵がテロであることを示唆するものだった。

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アジア的価値観の意義を証明する印僑企業の躍進

11月27日(水)の「島耕作のアジア立志伝」はタイ・バンコクに本拠を置く印僑系企業、インドラマ・ベンチャーズのアローク・ロヒア氏を採り上げた。題して「“現地化”がグローバル企業を強くする」。

印僑のアローク・ロヒアCEO(55)率いるインドラマ・ベンチャーズは、タイを拠点にアメリカ、ヨーロッパへ進出、ペットボトルの原料PETで世界トップシェアとなったグローバル企業。利益の上がらない工場を買収し蘇らせることを繰り返し成功している不思議な企業グループ。日本でいえば日本電産のような存在だが、あのような極端なモーレツ主義でもなさそう(もしそうならタイ人はついてこない)。

ロヒア氏はタイで初めてPET事業を手掛けるインドラマ・ポリマーズを1995年に立ち上げ、2005年に株式公開。2010年2月に同社を上場廃止し、代わりにその親会社のIVLをタイ証券取引所(SET)に上場させた。IVLはSET50社の1つとなっている。デリー大学卒業後、30歳でタイに移住した。奥さんはIVLのパッケージング部門を率いるそうだ。

IVLはタイの他にインドネシアや欧米など15ケ国に42の工場を持ち、売上高は年6,800百億円。ロヒア一族はラージャスターン州の出であり(ロヒア氏自身はコルカタ出身)、この州は多くの印僑の出身地として知られる。現代、全世界の印僑は25百万人いるといわれる。ロヒア氏の父も印僑の大物だ。事務所にはガネーシャ神の置物もあり、いかにもヒンドゥー教徒らしい。

経営戦略は「現地化」。印僑事業家の父の教えを胸にタイで起業。現地の文化や習慣を徹底して学び、権限委譲することで従業員の自主性を高め、生産性を向上させるという。理屈は分かるし、日本企業も日本ではできているが、東南アジアで実践できているところは多くない。

IVLのオランダ工場の前身は米企業。トップダウン方式で、一方的に本社から命令を下していた、この経営の上手くいかない米企業をIVLは買収、まもなく業績を回復させる。グローバル企業による買収後には従業員のリストラや賃金カットとなりがちだが、IVLではそれらをしなかった。それが現地人のやる気を引き出すことになった。人を減らすよりも、どうやって仕事を増やすのかを考えたとのことだ。

氏のせりふは「情熱、勤勉さ、忠誠心は会社の命」「短期的でなく長期的戦略で利益を得る」など、我々にとって馴染み深いもの。父親からは「一番重要なのは、人から信頼されること」と教わったという。ロヒア氏の人間的魅力と、こうした長期的視野に基づくアジア的な価値観への共感による一体感が、結局はこの企業の躍進の決め手なのかも知れない。

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出稼ぎ農民工が「自分の手で運命を変える」火鍋チェーン

12月4日(水)に放送された「島耕作のアジア立志伝」は、出稼ぎ農民集団による火鍋チェーン、海底捞(カイテイロウ)を採り上げた。題して「“究極のサービス”が客を呼ぶ」。

いま、中国で大人気の火鍋レストランを率いる張勇会長(43)。客を楽しませる斬新なサービスは、農村出身の出稼ぎ従業員が考え出したものだ。張氏は、教育や医療など公共サービスから排除された出稼ぎ従業員を独自の福利厚生と人事政策でバックアップ。「自分の手で運命を変える」というエネルギーを引き出すことで“究極のサービス”を次々に生み出してきたのである。

火鍋とはいわゆる鍋料理のことで、味をつけたスープに野菜や肉などを入れて食べるスタイルだ。海底捞は約50の直営店を持ち、1万人の職員が働いているという。張氏が22歳のときに四川省で始めたこの店は、今や中国でも有数のチェーン店である。

この店は「サービスの面白い店」として有名であり、待ち時間にちょっとしたネイルアートをやってくれる。営業時間には伝統舞踊やら従業員のダンスやら、色んなエンターテインメントがあるらしい。

しかし、海底捞の本質はこうした変わった出しものでなく、従業員の「顧客満足度の追求」の姿勢にある。まるで日本の高級レストランのように、客の荷物にスープなどが飛び散らないようにカバーをさりげなく掛けたり、お年寄りがまごつかないように世話したりと、心配りするのだ。

味そのものでは他店と大きな差がつきにくい火鍋。この店の差別化点は、要は「従業員の感じがいい」ことだ。例えば横浜中華街で食事をして、どんなに味がよくても従業員の態度が悪いために、折角の食事が台なしになったという経験がある人は意外と多いだろう。中国人には、顧客に対するサービスという概念が薄い。むしろ「自らのプライドを売り渡す」行為だと思っている人が未だに多い。

そんな文化背景の国で、いかに従業員に「おもてなし」を体現させるのか。海底捞では、「従業員が気持ちよく働いていれば、気持ちいい店になる」という考えに沿って、具体的な工夫や施策を凝らしている。

その第一は、店員の生活をよくすること。飲食店の従業員の多くは「農民工」と呼ばれる、農村からの出稼ぎ者である。多くの場合、劣悪な環境の中で働いている農民工に対し、海底捞では彼らの住環境を整え、制服を流行りのデザインにし、「店員の気持ちをよくすること」に大変な注意を払っている。飲食業の労働はキツイが、従業員の気分も前向きになり、結果的に顧客への対応もよくすることができる。

一般的に中国の農村では家族の結びつきが強いので、従業員の家族への目配りも重要だ。たとえば、従業員の父母に直接、家族手当を払う。昇進時に幹部が家庭訪問をして従業員を褒める。そのような施策が従業員の忠誠心を上げ、仕事への熱意を保たせている。

2つ目は、店員にできる限り多くの権限を与えること。たとえば、値引きやお客へのサービスなどをいちいち上層部に相談しなくても店員の判断で決めることができる。経営者にとって、大変勇気のいる話である。不正の温床にもなりかねないし、店のコストが跳ね上がるかも知れない。しかし、こうした権限を与えられることで店員は自分が会社から信頼されていることを実感する。

海底捞では、「部下を信頼する」ということが大きなキーワードになっている。たとえば、社長の張勇はほとんど自分では決裁せず、多くの権限を各地区の管理者に任せている。任された側が一生懸命に仕事をする環境を作ることで、この会社は成長を続けているのだ。しかし、このように多くの権限を与えるとなると、その相手も慎重に選ばなければならない。人材がポイントなのだ。

海底捞では学歴、資格、それまでのキャリアは全く参考にしない。事実、経営幹部の多くが、元は店の掃除係やドアボーイなどの現場出身の叩き上げである。しかし、認められる働きをすれば必ず信頼され、権限が与えられる。「自分の手で運命を変える」ことができることを実感することで、店員は生き生きと責任感を持って働くことができるのである。

これは国籍を問わない真実であり、それを実践できているこの企業では、人の善性を信じる張氏の信念が浸透しているということだろう。正直言って、中国企業が“究極のサービス”を名乗るのは無理があると思っていた。しかし番組を見終わって、さすが広大な中国、こんな本物の経営者もいるのだと感心した。

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対照的な「対等合併」ケースにみる経営戦略(前編)

今年は日本企業が絡む、注目すべき2つの国際的合併ケースが発表された。東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズ、森精機と独ギルデマイスターだ。そのアプローチは対照的だが、どちらも「対等合併」を目指し、関係者が熟慮したことが窺われる。前者の組み合わせにおいては、特にその戦略性に注目したい。


半導体製造装置メーカー、第3位の東京エレクトロン(TEL)が第1位のアプライドマテリアルズ(AMAT。米国)と経営統合することを9月に発表した。売上は単純合計で約140億ドルになり、その市場シェアは一挙に25%超となる。第2位のオランダ・ASMLの約2倍である。ダントツの巨人が業界にいきなり出現することになるわけで、こんな例は過去にもあまりない。古くは1907年に蘭ロイヤル・ダッチ石油と英シェル石油が合併してロイヤル・ダッチ・シェルが生まれた時、近くは2006年に蘭ミッタル・スチールがルクセンブルクのアルセロールを買収・合併した時ぐらいの衝撃的なケースではないか。

TELの東会長兼社長のインタビューによると、合併を持ち掛けてきたのはAMATで、昨年の12月だという。その後3ケ月ほど内部検討し、それから両社の交渉に入ったというから、約半年で合意、発表と進んだわけだ。こうした同規模大企業同士の経営統合では失敗例が多いだけに、意外なほど短期間で合意に至ったと思える。

W本社制、株式交換比率や新会社での役員比率などでTEL側の主張する「対等合併」を演出できるようにハードな交渉が進められたことは疑いないが、資本論理的に見れば、トップシェアのAMATが時価総額で劣るTELを呑み込む格好である。

ではなぜTEL側の経営者は「一国一城の主」の立場を捨てて、より大きな「グローバル超大企業」の一部となることを選んだのだろう。経営的に苦しい立場にあるわけでは決してない。むしろ業界内で圧倒的なパワーを持つ存在になることを戦略的に選択したのだと思う。経営ガバナンス改革などで日本企業の先陣を切ることを繰り返した同社ならではの判断であろう(この戦略性を気に入り、拙著「フォーカス喪失の罠」でも同社を採り上げたことが懐かしい)。

この合併の狙いの第一は、規模拡大による対サプライヤーへの交渉力増大であろう。両社は製品ラインのオーバーラップが少なく、合併による製品ラインの再整理が少なくて済む。つまり部品共通化などを進めれば調達規模を一挙に大きくすることが容易であるため、収益向上につながりやすい。

第二は対顧客、営業・サービス網の充実である。両社とも世界的なネットワークを持ってはいたが、得意先に偏りがあり、地域的にばらつきがあったのも事実。それが経営統合により、互いの得意先に製品を売り込む機会、サービス拠点が一挙に増える。当然、これからは伸びるアジアに重点的にサービス網を整備することになろうが、他社よりきめ細かい拠点配置を行い人数も充実させることで、「競争優位性」と「サービスで稼ぐ戦略」が両立する。

第三は、少々専門的だが、顧客の製造プロセスへの「ワンストップ・ショッピング」的食い込みができるようになる点だ。元々、半導体製造装置というものは各社固有の得意領域があり、その部分に絞った製造プロセスの改善を提案するのが普通だった。しかし広い範囲のプロセスを統合したりすることでより大きな改善ができるのも事実である。今回のような製品ラインのオーバーラップが少ない大合併が意味するのは、製造工程の大部分にわたる統合的な提案をできるベンダーが出現するということである。本格的なプロセス統合製品の開発・提供は1~2年程度でできることではないのかも知れないが、確実に4~5年以内には業界構造が激変しているだろう。

第四は、次世代チップの製造装置の開発投資負担に耐えられる体力である。スマホの普及で半導体製造装置への要求度はますます高くなり、精密度と歩留まりの高いツールが要求されている。そのための次世代技術(例えば「極紫外線」による焼き付け)の開発には巨額の費用が掛り、小さなメーカーから順に脱落していくと言われている。ちょうど環境技術投資の巨額さが一時、自動車メーカーの合併や資本提携のブームを後押ししたように、これが今回の経営統合の一つの重要要因になった可能性は高い。

以上のように主要因だけ挙げても、業界内においてこの合併のインパクトが大きく戦略的に重要な意味を持っていることが明らかだ。それだけで成功するといえるほど単純な話ではないが、この経営統合が考え抜かれたものであることは間違いない。

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日本基準の「食の安全」を世界に広めよう

12月16日(月)の未来世紀ジパングは「危険!?中国食品問題の実態に迫る!」。

中国国内のみならず日本でも不安視されているのが、中国産の食材の安全性。番組では、中国食品の生産現場から流通、そして市民の食卓までを徹底取材した。すると農村では依然、大量の農薬が平気で使用されている実態が分かった。都市部に流通する生鮮野菜は販売が禁止されている猛毒が含まれ、着色した果物まで売られていた。

残留農薬が心配される野菜。では都市の市民はどう自己防衛しているのか。安全を気にしている人は、市場では入念に野菜を選び、自宅で料理をするまでにも念入りに洗う。上海などの家庭で今、売れに売れているヒット商品が野菜洗浄機。「一家に一台」という必需品だと言う。15分ほどで農薬の80%を洗い流せるというが、それも中国製。どこまで信用できるやら。

危険な食品を排除しようという動きも始まっている。民間調査員「食品Gメン」なる人物が動き出していた。彼らは市場やスーパーなどを回り、自分の目と鼻で、危険な食材を販売する業者の摘発を行っているのだ。取材班は大手スーパーでの抜き打ち調査に密着。そこで発見した怪しい食材を公的機関に持ち込んだところ、驚きの劇薬が発見された。それにしても「洗えば農薬は落ちる」といってなかなか検査しようとしない上に、「大手スーパーだから大丈夫」という検査員には驚いた。さすが中国の役人。カネになりそうにない仕事はなるべくしない。

昨今、中国で新聞紙上を賑わせる危険な食材がある。湯葉である。名産地として知られる町では、連日の報道にも関わらず市民たちは日常的に食べていた。生産現場に行ってみると、食品のすぐ脇に牛や豚が飼われ、非常に不衛生な状態。しかしそれ以上の問題は、食品の製造過程で混入される食品添加剤が加えられていることだった。摘発された経営者が「入れないと売れない」と話す添加剤とは、中国政府でさえ禁止している毒性の強いものだった。閉鎖を指示された元工場経営者は、「添加しないと食感が悪くて売れない」と開き直っていた。食の安全より利益優先ということだし、消費者がそういうものだと思い込まされているということだ。

中国国内でも消費者の安全への意識は年々高まっており、中国の食品メーカーも変わりつつある。残留農薬や重金属などを検出する分析機器で、中国でもトップシェア(4割)を誇るのが日本の島津製作所。日本の検査機器が中国の製造現場に欠かせないものになろうとしている。中国人でも自らの提供する食の安全に誇りを持ちたい人たちがいるのだと安心した。

更に生産現場では、日本のノウハウの導入も始まっている。天津市郊外で生鮮野菜を作る巨大なビニールハウスの農場。中国企業とタッグを組むのが、日本の有機野菜生産と宅配を手掛ける「大地を守る会」。目指すのは生産者の顔の見える野菜作り。これまで、中国では「当たり前」の農薬大量散布で栽培していた農家たちには「目からウロコ」の話が多い。そんな中、ハウスで使っていないはずの残留農薬が見つかった。使用を禁止していたはずが、なぜ…。結局、以前にその土地で使って蓄積されていた残留農薬が出てきたのだろうと推測された。

未来予測は「日本基準が世界基準に!」。中国国内の危険な食品を日本に持ち込ませない。日本の水際対策と食の安全への基準に、検査技術や有機無農薬農法などが世界に広まり、世界基準になっていくと言う。すでに日本の食の安全を守る技術は世界各国から高く評価され、アジアをはじめ南米やアフリカからも研修員を受け入れ、検査技術やシステム構築の指導をしている。着実に世界に広まりつつあるのだ。事実、日本の水際対策たる輸入時の検疫検査システムは世界一厳しい。その中で中国の違反率は急速に下がって平均(0.6%)よりずっと低く(0.25%)、今や米国(0.81%)のほうがずっと悪い。

現在アメリカが主導して交渉が行われているTPPでも、関税や輸入量だけでなく、食の安全基準を巡って水面下で駆け引きが行われている。ここで日本基準が採用されれば、世界の食の安全性も高まり、日本にとっても大きなチャンスとなるだろうと番組では予測した。中国が加盟していない今のうちに高い基準を定めてしまえば、世界の趨勢を決めることになろう。利益のために他国民の食の安全を揺るがす米国流の押し付けだけは受け入れてはいけない。

それにしても日本の検疫検査システムが世界一厳しいことを訊いて、安心かつ誇らしい気分になった。

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障害者の腕の代わりになる夢のロボットアームができた

12月8日(木)放送の「夢の扉+」は「“夢のハイテクアーム”で願いを叶える!~世界初の技術が生んだ生活支援ロボットアーム~」。ドリームメーカーは産業技術総合研究所/ライフロボティクス/ユン・ウグン(尹祐根)さんという在日4世の方。

今年11月の国際ロボット展で絶賛された世界初の技術。それがライフロボティクスの技術責任者、ユンさんが開発した最先端のロボットアームだ。つかむ、持ち上げる、ひねる、といった、人の腕、ひじ、手首の複雑な動きを再現する、福祉用のロボットアーム「ラピューダ」。腕や手が不自由な人が、「水が飲みたい」といった日常の動作を、介護の手を借りずに、自分のペースでできるよう支援しようと、実用化を目指している。

言葉にすると既にありそうな気がするが、人間の腕のような複雑な動きをできるロボットは今までなかった。例えば工場で使われる溶接ロボットなど、そういった機能に近いものは随分デカく、腕部分も太く、重い。障害者が自らの腕として抱えていけるような存在ではなかったのだ。

もともとユンさんは、宇宙や原子力発電所で活用するロボット工学の研究者。産総研で福祉用ロボットアームの研究を担当することになったとき、首から下をほとんど動かすことができない、高見和幸さんに出会った。手が使えない不自由さを目の当たりにしたユンさん。「グラスを傾けながら、コチンと乾杯したい」という、高見さんの”ささやかな願い”を叶えることを約束する。目指したのは、コンパクトで、車椅子など、どこにも取付られる、複雑な動きのできるロボットアームだ。

しかし、実はこれが簡単でなく、幾度となく壁が立ちはだかった。試行錯誤の末に思いついたのが、舞台の昇降に使うジップチェーンリフター。2本のチェーンがジッパーのようにかみ合い、まるで一本の棒のようになり重いものを押し上げる構造だ。その発想を基に、伸縮自在のアームを構想した。そして自らベンチャー企業を立ち上げたが、10社回っても協力してくれるモーター製造企業が見つからない。心が折れそうになったが、障害者たちのことを思い、これで最後、そう思って訪ねた11社めの会社、「オリエンタルモーター」が協力してくれることになった。協力者も出てきた。

オリエンタルモーターの技術者も、意地でも困難を乗り越えようと、工夫を凝らす。国際ロボット展を前に腕の伸縮トラブルも出てハラハラさせるが、何とか間に合わせることに成功。冒頭の通り、福祉関係やロボット研究者など、来場者から驚きと称賛の声が挙がる。開発成功の報を知らせるため、ロボットアームの実物を携えて、ユンさんは高見さんのもとへ行き、「乾杯」をしてもらう。今、ユンさんはこのロボットアームを世界じゅうで使ってもらおうと奮闘中だという。

ユンさんは言う。『障がいがある人の“我慢”を少しでも減らし、ロボットアームを使って、「あれをしたい、次はこれをしたい」と、夢を描いてもらいたい』『壁を乗り越えられないのはベストを尽くしてないから』と。自らを奮い立たせるユンさんの開発魂を観た。

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浜松ホトニクスは光技術を極め愉快に仕事をする

12月12日(木)放送の「カンブリア宮殿」は「“ノーベル賞”御用達!光の技術を極める超絶企業」と題して、浜松ホトニクスを採り上げた。

ヒッグス粒子の発見を成し遂げたハイテクセンサーや、ニュートリノ観測の決め手となった光電子増倍管を作る浜松ホトニクス。「ノーベル賞学者御用達企業」と呼ばれるゆえんだ。光の粒子・フォトンの可能性にいち早く気づき、世界で何処も真似を出来ない高い技術力を武器に、売上げ1,000億円を稼ぐ、知られざるスーパー企業である。

ヒッグス粒子の発見を陰で支え、その発見に貢献した日本企業「浜松ホトニクス」とはどんな企業なのか?車の自動ブレーキ、血液分析、CTスキャンなどの心臓部には浜松ホトニクスの製品が使われており、そのシェアは圧倒的。つまりこの企業がなければ生まれない製品が幾つもあるということだ。身の回りのあらゆる所で活躍する浜松ホトニクスの「光の技術」とその部品群、その独自技術の数々。同社の技術展には世界じゅうから視察者が相次ぐ。映像で「光電子増倍管」の製造場面を初めて見たが、その作り方は完全に職人技なのには驚いた。

浜松ホトニクスを世界的な地位へと押し上げた晝馬輝夫会長が提唱する企業理念は「人類未知未踏」。 つまり人類がまだ誰も挑んだことのない領域への挑戦だ。ノーベル級の研究にとんでもないコストのかかる試作品をわずかの実験費だけで提供することもよくある。そんな夢の技術への挑戦をする一方、きちんと収益もあげている浜松ホトニクス。国を動かしてナショナルプロジェクトにすることで最後には収益をもたらすパターンだ。例えば、アメリカが国家プロジェクトとして取り組んでいる未来の光技術、「レーザー核融合」に一企業として挑戦しており、毎年10億円の資金を投じて研究開発を行っている。

次の日本を引っ張る「光産業の創出」が浜松ホトニクスの目標だという。そのため、光技術に特化した大学「光産業創成大学院大学」を設立し、そこで研究したシーズを基に、次々に光に関するベンチャー企業を生み出す。現在、40以上のベンチャー企業があり、同社はその集合体のような独特の会社組織形態を持つ。


「幸運の女神に先回りしろ」というのが創業者で前会長・輝夫氏の言葉だという。ひと真似をせず、知的好奇心と探求心を常に維持しながら取り組むという社風が生まれた所以だ。息子の晝馬明(ひるま・あきら)現社長は、父親もよく口にしていた『愉快に仕事をする』を教訓にしているという。浜松ホトニクスは夢の技術への挑戦をする一方、収益も上げており、「財布」と「夢」を両立させているが、その極意は、絶対にひと真似せず、しかも『愉快に仕事をする』ことにあるのだろう。

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ニッポンのコメ農家は、JAに吸い取られる代わりに脱皮せよ

12月10日(火)放送の「ガイアの夜明け」は「どうすればいいのか?ニッポンの農業」と題して、JAグループを中心に、新たな動きを始めた様々な農家や農業法人、企業の動きを追った。

TPP交渉が進んでいる中、コメの減反政策の廃止が決定した。コメや砂糖などの重要5品目の関税撤廃に反対するJAグループ。日本全国にある地域のJA農協。そして中央組織の「全中」「全農」「農林中金」。「全中」は政治的な活動、「全農」は農産物の流通、「農林中金」は農家への資金の貸し出しなどを担う中央組織である。こうしたJAグループは果たして本当に日本の農業のためになっているのか?

番組の中で2つの農家がJAバンクの預金通帳の中身を教えてくれる。収入の大半が農協に吸い取られ、農業では儲かっていない実態が示される。元農林水産省幹部で現在経済産業研究所上席研究員の山下一仁氏は、「JAが関税撤廃に反対する理由は、組合員である農家の数を減らしたくないからだ」と指摘する。彼は、JAに農協だけでなく金融・保険業まで許してしまったことが間違いだと断言。「農業が衰退する一方、JAだけが成長する、という構図が続いてきた」と批判する。

改革勢力も現れつつある。福井県にある地域の農協「越前たけふ農協」は、このままの農協では駄目だと、変革の必要性を訴えている。他の農協では全部のコメをブレンドして売るのだが、「たけふ農協」では手間を掛けて育てた優良米は高く売る。また通常、地域農協は上部組織である「全農」から肥料などを買い、農産物を収めている。しかし「たけふ農協」では、民間の業者から肥料を買い、農協の流通機構を通さずにコメの販売を始めている。その結果、地域の農家の収入と利益は着実にアップした。その取り組みは全国の地域農協から注目され視察も相次ぐが、中央に遠慮し、追随する地域農協は現れない。「全中」の代表者・萬歳会長は苦々しい表情で「703あるJAのうち2~3の話だ」と切って捨てた。

今、農協を通さずに、農産物を流通させる農家、農業法人が増えている。「できるだけ安く」という消費者や外食チェーンのニーズに応えるためだ。日本全国で耕作放棄地を借り受け、農地を復活させつつあるのが、大規模農園を展開するイオングループの「イオンアグリ創造」。今や全国12ケ所、約200ヘクタールの栽培面積になっているという。イオンの流通組織を使い、直営農場と100異常の契約農家から直接仕入、販売することで、新鮮な農産物を安く届けることができるのだ。

こうした外部環境の変化に危機感を感じ、中央組織である「全中」「全農」でも、変革を目指す動きが出始めた。茨城県つくば市にあるJA全農飼料畜産中央研究所が新型ハイコープ豚を開発。この豚は子豚を3割も多く産める特性を持っていた。アミノ酸を豊富に含み、ブランド豚にも負けない味わいだ。香港の中心部の高層ビルの中にある、JA全農がオープンさせたレストランでもハイコープ豚の売込みをしようとしている。全農はこのようなレストランを世界各地に展開しようと計画している。

宮崎市の畜産農家・尾崎宗春さんは、TPPを恐れずにチャンスにすべきと主張している。尾崎さんは約1000頭の牛を肥育し、農協を通さずに直接レストランや消費者に牛肉を販売し約3億円を売り上げている。牛肉は「尾崎牛」と名づけられ、料理王国などの雑誌にも取り上げられている。海外の消費者にも極上和牛として認知され、香港のレストランでも使われている。

尾崎さんは「自由化前は1人あたりの消費量が4kgだったのが、自由化によって12kgまで拡大し底辺が拡大した。その頂点にいることで、美味しい牛肉を食べたい人の需要をまかなえる」ことを語った。事実、農水省の調査では、肥育農家戸数は7割減少しているが、国内の牛肉生産数量は1割しか減っていない。これは尾崎さんのように、美味しい牛肉を作り上げ、大規模化にも成功した農家が登場したためだ。

尾崎さんは、多くの米農家の人たちは「TPPでダメになる」という事しか頭に無いが、やり方次第で夢やマーケットが広がる、と指摘した。まさにその通り。ニッポンの農業を変革するのは政治でも農協でもなく、やる気のある農家だと感じた。

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「看板に偽りあり」はなぜ繰り返されるのか?(まとめ編)

偽装問題は上からの命令や手続き・罰則の強化では根絶しない。それは悪しき慣例や実態を正当化する、現場組織の価値観を転換しない限り、形を変えて繰り返される。


小生がこれまでコラム記事で指摘してきた食材の偽装表示やクール便の常温輸送。ユーザーの信頼を裏切る偽装行為が身近なところでも起きている。JR北海道の手抜き検査や虚偽報告も同種・同根の問題だ。

「いけない」と分かっているはずなのに、急場しのぎにやってみて、バレないと少しずつ大胆になり、それが広範囲に繰り返される。人が偽装に手を染めるパターンはどうやら似たようなものだ。問題は、一個人の不祥事ではなく、組織的な偽装が現場に蔓延していたことだ。

これはコンプライアンス問題として重要視されなくてはならない。そして、こうしたコンプライアンス問題が起きた企業では、往々にして弁護士や会計士が呼ばれて、手続きや罰則の強化が図られる。

でもそれは当面の問題表出を防ぐことには役立っても、本質的な問題解決にはならない。事実、そうした防止策をとったはずの会社で(形や場面は違っても)同様の問題が繰り返されている実態がある。それは価値観が切り替わるところまで踏み込んでいないからだ。

なぜ「価値観が切り替わる」という大仰な言葉をわざわざ使うかというと、これらの偽装行為を行っている現場の人たちの意識の上では、往々にして「確かに客に対してはごまかしている側面があるけど、会社のためなんだ、仕方ないんだ」と正当化されているからだ。

偽装を根絶し、違う形でも二度と繰り返させないためには、偽装が顧客からの信頼を裏切る行為であり、ひいては会社を貶める「悪」なのだと、現場の価値観を転換しなければならない。

「価値観の転換」があって人は初めて「このままではいけない、変わらなきゃ」と理解・納得し、どう変わればいいのかを学び始める。その変革のプロセスは簡単でも一律でもなく、断固として推し進める強烈なリーダーシップが必要とされる。

それはちょうど、しまむら(本社:さいたま市)の先代経営者がバイヤー諸氏に対し、それまで当然だった「返品」や「再値引き」交渉を禁止したときのように。または、印刷業の革新者と呼ばれるグラフ(本社:兵庫県加西市)の現社長が、それまでほぼ100%だった下請け仕事を引き受けないと決めたときのように。

記事読者の大半は今回の偽装騒動の渦中にいるわけではないだろう。しかし完全には「対岸の火事」視できない方も少なくないのではないか。もし自分の属する組織にも同様の問題が生じる可能性を感じている(もしくは既に生じている)のであれば、自ら率先するか、リーダーを担いで、いち早く対処に動いて欲しい。

我々のような変革コンサルタントは、そうした意思と覚悟を持ったリーダーやイノベータが反対勢力に押しつぶされたり計画不足で挫折したりしないよう、企業体質に合わせて「作戦」を一緒に練り、実行過程では先々を見据えて「陥穽」のありかを警告する。弁護士のような国家資格による権威ではなく、組織心理への理解と変革をもたらすノウハウによってお役に立ちたいと願っている。

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ニッポンの大企業よ、なぜそれほど社内議論が空転する

今日(じゃない、既に昨日)は新しいプロジェクトのキックオフだった。共同プロジェクトなので、クライアントはAとBの2社。A社が主導役でB社がサポート役。どちらも既存クライアントだが、その一方のA社メンバーは全く初顔合わせである。紹介終了後に背景説明やら状況説明をしてもらう。事前打合せもなしのぶっつけ本番なので、どんなサプライズが飛び出すか心配していた通りに、A社曰く、大顧客の意向でいきなりスコープが拡大していた。

本プロジェクトは東南アジア市場への進出を検討するためのもの。打診された段階での話を聞いただけで「なぜその国なのか、そのサービスなら〇〇国か△△国のほうが可能性は高いのに」と思っていた小生としては、クライアント自ら持ち出してくれたので反対する筋合いではなかった。しかし1国だけの検討対象が2国に増えたので、ただでさえ「せわしない」のが、さらに加速することは間違いない。

この件に関しては、クライアントA社内での検討は大顧客からのリクエストで始まった10月半ばだという。それから約1.5ケ月の間、実質的に空転していたことになる。B社は受け身ながら、「こんなことを検討しなきゃいけないんじゃないか、こんな情報はウチにあるよ」と返していたようだ。結局、B社のエライさん(この人も会合参加メンバー)が心配してA社に対し弊社を紹介してくれ、小生のファシリテーションで合同検討会を進めようということになった次第である。

それにしても、大顧客からのリクエストでは「〇〇月には回答してくれ」となっていたのを軽々と引き延ばした上で、貴重な1.5ケ月を堂々巡りの内部議論で空転させていたようで何とも勿体ない。今日のキックオフ終了後、クライアントAの責任者が「これでようやく動き始めることができます」と仰ってくれたのは有難いが、もっと早めに外部ヘルプを頼めば空転することもなかったのに、と思わざるを得ない。この超大企業、社内リソースは有り余るほどあるはずなのに、まず内部だけでと考えるパターンのようだ。

こういったことが稀でないのが日本の大企業の常である。この企業A、今年には別件で、弊社に緊急ヘルプの打診をしてから正式依頼まで1ケ月以上空転した「前歴」がある。今年には別のクライアントでも、社内議論が進まず2ケ月空転した結果、ようやく相談が来て数週間で決着させた件がある。酷いケースでは(昨年だが)社内議論が迷走し、当社に相談してもらえば確実に進められた改革プロジェクトを既存の(実質SIベンダーである)某コンサル会社に任せ続けているがために(社内システムのメンテを依存しているのがその主な理由のようだ)、未だにほとんど進んでいない。

ことほど左様に、日本の大企業は社内議論のやり方、ある程度以上の大きさのプロジェクトの進め方に根本的な問題を抱えているケースが少なくない。尤も、それだからこそ弊社のような資本力のないコンサル会社に議論に加わってくれと言って下さるのだから、有難いのはやまやまだ。でも、「そんなのでよく競争に勝てますね」ともどかしいのも事実である。

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韓国経済の苦境は「天ツバ」に過ぎない

12月2日放送の未来世紀ジパングは「反日の裏側で・・・韓国経済に異変!?」。韓国の本音とアキレス腱が少し見えた。

番組の冒頭で紹介されたのが、ソウル市内の高級デパート。開店前から長蛇列ができる日本発のスイーツがある。日本でも人気の「堂島ロール」だ。韓国では日本より600円高い1本1,800円だが連日100人以上の大行列、3時間で売り切れてしまう。

さらに韓国の繁華街では、日韓関係が悪化した今でも日本食レストランが急増。この日本食ブームに乗って、今年秋ソウルに出店したのがとんかつ店の「キムカツ」。しかし「キムカツ」が生み出した薄切り豚肉を25枚重ねた「かさねかつ」の模倣店が、韓国には既にいくつも出店していた。しかもその一つは味もよいときている。模倣店にどう立ち向かうのか、「キムカツ」では新メニューを開発し差別化を果そうとしていた。

また、番組では100人への街頭インタビューを実施。やはり反日的なコメントが多いのだが、「なぜ反日なのか、自分でも分からない」とか、ビジネスマンの「自分はどちらでもない」や「本当は仲良くして欲しい」といった異なる感情を秘めたコメントも少なくない。要は反日教育に刷り込まれている点と、世間の「反日風潮」のため、へたに「自分は日本が好き」などとは言いにくい雰囲気があるのだろう。普段メディアが伝えない本音が見えた。そしてその世間の「反日バネ」を利用しようとする朴政権の姿勢も窺える。

この背景を探るべく、番組は別の角度からの取材を進める。マンションの建設ラッシュに沸いていた韓国で各地に出現している「幽霊村」。巨大マンションを再開発しようとしたものの建設不況でストップし、放置されたままになっているのだ。「幽霊村」は様々な事件の温床となり治安の悪化が深刻化、大きな社会問題になっている。その先にあったのが金融機関や財閥(東洋グループや熊津グループなど)の破たんだった。不動産価格の暴落、そのあおりは一般庶民に。全財産を失った人たちが倒産した企業に乗込み、警察が出動するなど大騒ぎだ。これこそ韓国経済が今直面する、バブル崩壊の実態だ。

さらに現代自動車にも異変が生じている。グローバル市場で急成長し日本のホンダなどを追い抜き、販売台数で世界第5位となったヒュンダイ。しかし今年その成長がストップ。現代自動車の世界最大の工場がある南部のウルサン(蔚山。現代の城下町)はソウルを超えて個人所得が韓国一。しかし町を見下ろす高台に行ってみると「現代の失速」を物語る驚きの光景‐輸出を待つ、自動車の在庫の“波”‐が広がっていた。そのきっかけは公表されていた燃費性能のごまかしであり、その後に続いた品質問題。要は「偽装」がバレたに過ぎないのだ。

そしてもう一つの問題。現代自動車では「世界最強」といわれる労働組合によるストライキが相次ぎ、年間2千億円近い損失を出している。現代社員の平均年収は940万円(この8年で2倍に!)、韓国国内からも批判の声が上がるほどの高所得。このままではウルサンが「アメリカのデトロイトの二の舞になる」という不安の声も囁かれているが、現代の失速と従業員の苦境に同情する声はない。

韓国の製品やコンテンツが、世界市場で人気があるというのが韓流だったが、それに対し日本の製品や文化が世界市場を再び席巻する“日流の逆襲”が始まると後藤ナビゲータは予想した。実際、自動車の世界市場で日本メーカーが復活しており、日本企業の「倍返し」が始まっているのだ。

過去の日韓関係はシーソーゲーム。韓国が上がれば日本が沈み、日本企業が浮いたときは韓国企業が沈む。このシーソーの繰り返しが日韓両国の競争力を引き上げていた要因でもある。しかし物真似経済で伸びてきただけでその「師匠」である日本に対する尊敬を払わず(むしろ「反日バネ」で名誉を汚そうとするだけで)、技術開発力やサービス精神を発展させることのできない韓国経済が復活することは難しいのではないか。

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農業政策大転換「減反制度の廃止」は何をもたらすか

11月末、日本の農業政策の大転換となる「減反制度の廃止」が決定。生産規模の拡大や輸出増大に弾みがつくと期待する農家がいる一方で、助成金を支えに経営を維持してきた零細農家は存続の岐路に立たされる。これまで“聖域”として守られていた米価も、他の作物と同様に市場の需給によって決まることになり、コメ農家には高い経営力が求められる。国の成長戦略の下で、生産力拡大を旗印に進められる農業の構造改革の一丁目の一番地、“減反廃止”決定がもたらす生産現場への波紋、新たに開ける可能性を追った番組、「クローズアップ現代」の11月28日(木)放送「コメ作り大転換 ~”減反廃止”の波紋~」を観た。

“減反廃止”に大規模農家は期待する。コメの一大産地、北海道の駒谷信幸さんは減反が廃止されることを前向きに捉えているという。現在は10ヘクタールでコメを作っているが、かつては地域有数の大規模なコメ農家。昭和30年代以来、地域に先がけて大規模化に乗り出し、水田を次々拡大していったが、29歳のとき減反政策が本格的に始まった。生産を減らさなければ、地域に農業の補助金がつかなくなるという厳しい措置も取られ、駒谷さんや周囲の農家は、減反に応じざるをえなくなり、自由なコメ作りができなくなった。

駒谷さんは、水田のほとんどで転作を進め、現在は、主にタマネギやジャガイモなどを生産している。今回の見直しで、コメの生産量の割り当てがなくなれば、再び、自由にコメが作れるようになると期待している。今、生産しているのは全国的に人気の高いブランド米「ゆめぴりか」。消費者やスーパーに直接販売しており、販売価格は10キロ、4,500円。平均的なコメに比べ高めだが、日本各地から注文が相次いでいる。今後は市場のニーズや価格を見極め、コメを増やしたり、野菜を増やしたりと自由な生産ができると考えている。

一方、今後もコメ作りを続けていけるか不安を感じている農家も少なくない。山あいにある1.5ヘクタールの水田で、コメを生産している兼業農家、古滝初男さんが心配しているのは、農業収入の落ち込み。去年(2012年)のコメの売り上げはおよそ130万円。減反で国から得られる交付金などが、およそ60万円。そのほかを合わせると196万円。これに年金などを加えて暮らしている。今回の見直しで、5年後には交付金のうち21万3,000円が減るという。さらにコメの価格が下がれば、代々守ってきた水田を維持できなくなるのではと心配している。

古滝さんは仲間と共に品質の高いコメ作りに取り組んできた。そのコメは全国コンテストで最優秀賞に選ばれたこともあり、地元でも人気。今の収入を維持するには、水田の規模を拡大し、収益を上げる必要があるが、中山間地にあるため、大規模化は難しい。こうした実力ある農家でも難しい側面があるということだ。

生産者同士、または企業と連携する動きも出ている。11月に発足したコメの生産者連合では、秋田や宮城、岩手の大規模な生産者同士が県をまたいで連携した。連合会では、1万ヘクタールの水田で55,000トンものコメを取り扱うことを目標に掲げている。大規模でコメを生産することで、コストの大幅な削減や高い供給力を実現したいとの狙いだ。東日本コメ産業生産者連合会 涌井徹社長「…農家個々ないし農業法人個々では、力が弱いので、そこはぜひ連合会としてやっていく」。

連合会の供給先の1つは、これまでコメとは無縁だった大手生活用品メーカー、アイリスオーヤマ。スーパーマーケットやホームセンターなど全国に13,000店舗の取り引き先を持つ、そのネットワークを活用してコメを販売していく計画だ。先週、そのコメが首都圏の大手スーパーで売り出された。商品の特徴は3合ずつ、小分けの袋詰めにされている。1人暮らしの世帯などの需要の掘り起こしを目指している。

一方、JAグループも販売の強化に乗り出している。今月発表されたオリジナルブランド。いずれも国産のコメなどを使った加工食品。農産物の付加価値を高めて消費者にアピールする狙いだ。JA全農 生活リテール部 高崎淳次長「コメだけの部分の提供であれば、今までの流れからいうと、さらに消費が減退する可能性がある。その中にあって、(コメの)加工食品を作ることによって、コメとしての需要拡大、維持拡大をしっかり行っていきたい」。

こうした中、新たな市場を海外に求める大規模農家も現れている。紹介されたのは岩手県北上市にある農業生産法人。従業員は100人。地域の雇用の受け皿になっている。5ヘクタールからコメ作りを始め、担い手不足などで生じた耕作放棄地を次々と借り受け、水田面積は今では、205ヘクタール(東京ドーム44個分!)。大規模化によるコスト削減で、現在、コメ60キロ当たりのコストは9,552円。全国平均よりも40%低い水準にまで達している。それでも、国内需要の伸びが今後見込めないことに強い危機感を感じているという。一時は輸出を検討したが、現地との価格差が大きく十分な利益を上げられないことが分かった。西部開発農産 照井耕一会長「うちで作っているコメがいくら低コストでやっても、今の段階では9,600円。そうすると日本(で生産)というのは、限界があるかも知れない」。

そこで今年、照井さんは海外にも生産拠点を設けることを決めた。進出先として選んだのはベトナム。1年に2回から3回の収穫が可能で、日本よりも多くの生産量が見込める。照井さんは首都ハノイ近郊の4軒の農家と契約。日本の品種「ひとめぼれ」や「あきたこまち」を試験栽培している。照井さんの試算では、ベトナムでの生産コストは60キロ当たり4,200円。日本の半分以下にまで削減できると見込んでいる。このベトナムを生産拠点に、富裕層が多いシンガポールやタイに向けて輸出する戦略だという。

しかしこの輸出先に日本が将来加わらない保証はない。日本の農業が技術革新と産業革新によって足腰を強化するための時間はそう多くないのだ。だからこそ農協などの抵抗勢力の戦術に足止めを食らわずに着実に歩を進めなければ、日本のコメづくりは立ち行かなくなる。

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ブラジルは生体認証システムの実証実験国

11月21日(木)のNHK「ワールドWave Tonight」は「ブラジルで広がる生体認証システム」。非常に興味深いものだった。

指紋や手の血管などをもとに、個人を識別する生体認証。この生体認証が世界で最も普及している国の1つが、意外なことに(あまりハイテクイメージがない)ブラジル。

生体認証の普及拡大は、私たちの生活に何をもたらすのか。“生体認証大国”ブラジルが教えてくれる。スポーツジムの入り口で会員証を提示する必要はなく、指をセンサーに置くだけでジムに入ることができる。会員証を忘れたり、紛失したりする不安がなくなったと好評だ。客「生体認証なら不正使用されることもないし、安全なので、みんなにとっていいことです」と。

バスに乗る時も、生体認証。バスの定期をセンサーにかざすと、センサーの上にあるカメラが本人の顔を撮影。撮影データはバス公社に送られ、登録された顔写真と照合し、本人かどうかを確認。別人だと判明した場合、不正乗車として定期は使えなくなる。バス公社 広報担当者「不正利用が多かったのですが、これで不正乗車がなくなりました」。

ある大手銀行は今年(2013年)1月、すべてのATMで生体認証システムを導入。カードがなくても利用できる人は1,400万人に上る。2014年に行われるサッカー・ワールドカップに向けても、会場に設置されたカメラの顔認証システムによってフーリガンを特定し、排除しようとしている。選挙の投票も指1本かざすだけ。生体認証は生活の隅々に浸透している。

なぜブラジルで生体認証が広がっているのか。それは、多発する犯罪の防止。プライバシーよりもセキュリティーが大切だというお国柄なのだ。しかも経済成長の結果、インフラをリニューアルする機会が多く、最新のセキュリティーシステムが導入されている。ワールドカップやオリンピックなど特別な投資の機会も多く、システム開発がホットになっており、すでに開発されている優れた生体認証技術が導入できるチャンスがある、と大学教授が解説していた。

普及拡大を続ける、生体認証システムは5年後には、世界全体でおよそ2兆円の市場になると見込まれている。ブラジルは、国内で蓄積されたノウハウを生かし世界の市場に打って出ようと、技術開発に取り組んでいる。いわば国家戦略なのだ。

新たな問題も起きている。今年3月、指紋で勤務を管理しているサンパウロ郊外の病院で職員がシリコン製の指を偽造し、出勤したように装い、不正に給与を受け取っていたとして、関係者が逮捕された。生体認証の情報の漏えいに警鐘を鳴らす専門家もいる。サイバー攻撃で、生体認証に必要な情報が流出する恐れもある。情報技術の専門家が「本人から盗むより、システムを攻撃する方が簡単です」とコメントしていた通り、実は盗む側からすれば効率的なので、社会的なリスクは急速に高まる。もし生体認証に必要な情報が盗まれると、財産までもが危険にさらされる。情報技術アナリスト「システムによって安全性に差があるので、システムの普及によって、セキュリティーが甘いところから情報が簡単に盗まれると、全てのセキュリティーが危なくなる」。

専門家によると、犯罪防止の対策は3ステップ。まず、本人の情報を入手しにくくする。その情報を持ったような偽物を造りにくくする。偽物だったら確実にはじいてくれる、優れた生体認証システムが必要だということ。

それから(仮に精巧な偽物が造られたとしても)それを行使しにくくなるような環境づくり、運用。例えば、周りに人がいるというような状況。何か不正なものを提示しているのが、すぐにばれやすいということから、やりにくくなる。

さらには、生体認証情報を預けておく中央のデータベースからサイバー攻撃等によって情報が漏えいしないような管理体制。あるいは一部分が漏えいしたとしても、それが大規模に波及しないようにする、技術的対策が考えられているとのこと。

実は日本のN社はこの技術で世界をリードしている(これは番組とは関係ない)。それをベースに世界戦略を描けないかとの野望もあるらしい。N社に限らず、こうした技術開発・研究と、ブラジルなどでの「実証実験」を組み合わせて、犯罪を防止できる安心・安全な技術として日本では運用してもらいたいものだ。

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バングラディシュにおけるユニクロチームの奮闘

11月17日(日)放送のNHKスペシャルは「成長か、死か~ユニクロ 40億人市場への賭け~」と題して、ユニクロのバングラディシュ出店戦略に密着。熾烈なグローバル競争の中、新たなマーケットを切り開く奮闘ぶりを追った。

年間150店舗という驚異的なペースで海外出店を続けているユニクロ(ファーストリテイリング=FR)。グローバル展開を急ぐ背景には、世界で激化するファストファッション競争がある。日本ではトップのFRも、ZARA(スペイン)やH&M(スウェーデン)といったライバルの後塵を拝し、現在は世界4位に過ぎない。

同じことをしても追いつけないと考える柳井社長は、新たな手に打って出た。それが世界最貧国、バングラディシュ市場への競合他社に先駆けての進出。今年7月に店をオープンさせ、Tシャツ一枚230円という破格の安さで勝負に出た。同国でビジネスを成功させることができれば、アフリカなど世界中どこでも商売ができる、と語る柳井社長。「2020年に世界4,000店舗、売上高5兆円」という目標を掲げ、世界ナンバーワンを目指し社員を叱咤する。

バングラディシュ進出を前に地元グラミン銀行と提携した。日本からは山口さんたち5人の精鋭が送り込まれたが、店員は全員バングラディシュ人を採用、日本人担当者が2か月かけてマニュアルを教え込んだ。ハンガーが大きすぎるなど、想定外なことが続く。成功の鍵を握るのは新たな協力縫製工場の開拓。社員が「ソフト&ストレッチ」の工場を訪れて打ち合わせていたが、慣れない生地のせいで作業が遅れ、オープンまでに間に合わない可能性さえあった。

首都ダッカで1号店、2号店と出店するが、出だしでつまずく。破格の安さを実現した「ソフト&ストレッチ」はぎりぎり間に合い、多くの関心をひいたが、1号店では全体の売上が目標を上回った中、比較的高かった「ソフト&ストレッチ」の売上は期待したほど伸びなかった。1号店は開店当初はともかく、その後は伸び悩む。

住宅街に出店した2号店はさらに悪い。とりわけ女性客が来ない。それに対し米系MBA出身女性が創業した女性向け地元ブランド「アーロン」は繁盛している。丁寧な刺繍を施した民族衣装は1点もので、高価格にもかかわらず売れている。タマラ・アベッド社長は、この国ではターゲットにしている客層に合わせることが重要だと指摘した。その後アーロンは、民族衣装をカジュアルテイストにアレンジし、大人気となった。

関係者の伝手で実際の生活者のお宅に入り込んで調べてみると、外出時に女性はカジュアルを着ない。そもそも持ってもいない。通常の街頭インタビューでの結果だけで進出を決めたようだが、粗っぽ過ぎたのではないか。

結局、彼の地のユニクロは売上が回復しないまま、テレビ会議で柳井社長に対し山口さんは不振の女性服について報告。それに対し柳井社長は、女性服だけの専門店や、さらには今の生活習慣で着られる服(=民族衣装)などを検討するように指示を出した。

ユニクロ1号店では、ラマダン商戦の終盤、店に若い女性客が目立つようになった。最終日には、1号店で売り上げ目標を達成した。しかし、地元店長が引っ張り切れない2号店は目標を2~3割下回った。準備不足や戦略性の欠如などを指摘することは容易い。しかしきっと彼らは盛り返すだろう。この会社の「精鋭」たちの能力の高さは折り紙つきだから。

新卒社員の3年内離職率は実に5割にも及ぶユニクロ。ブラックと呼ばれようが全く意に介さず、「泳げない者は沈め」「成長か死か!」とひたすら事業拡大追求の道を歩む柳井社長。この程度の足踏みは気にする様子はない。体育会系的体質が、いい意味でも悪い意味でも同社のここまでの躍進と幾多の挫折をもたらしたのであり、改めてそれがよく分かった。

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極小内視鏡ハサミが世界の患者を救う

11月26日(火)に放送された「ガイアの夜明け」は「世界を救う…町工場の医療技術」。

以前番組でも紹介した長野県岡谷市にあるリバーセイコー。内視鏡の先端に取り付ける極小ハサミを製造している、従業員40人ほどの町工場だ。小さい上に細かく動くため、がんを切り取りやすいと医師の間で口コミが広がり、2012年には保険医療の対象になり、今や全国700の病院で使われているという。消化器を中心とした早期のがん切除手術で数多く用いられるようになった。

匠の技でハサミを手作りするのは、自らもがん患者である西村幸会長(63歳)。「がん患者が自分で作るというのは強いよ」と、自分と同じくがんで苦しむ人を一人でも多く救いたいという思いでハサミを作り続けている。0.3mといった微小な部品を手造りしているので、一日にそう多くの製品は作れない。ましてや少し前に心筋梗塞も発症し、まさに命を削りながら患者のために製品を作り続けているのだ。

日本だけでなく、西村さんの目は海外にも向き始めている。今回自慢のハサミを届けることになったのはブラジル。現地の名医から、西村さんの開発パートナーである日本海総合病院の本間清明医師が、極小ハサミで直腸がん患者を手術してみたいというオーダーを受けたのだ。しかし、日本人と外国人では内臓の壁の厚さや脂肪の多さなどが違うという。

そこで新たに最新型(滑り止めのために、極小のぎざぎざの歯がついている!その加工は神業としか云えない)の極小ハサミを開発・製造することになったのだ。依頼を受けて3週間、心配で見に来た本間医師。没頭して作り上げた後、体調の不安から長距離移動に耐えられない西村さん自らは現地に行けないため、本間医師にハサミを託した。

果たしてニッポンの町工場で生まれたハサミは、海外の患者を助けることが出来たのだろうか。午前4時、心配で眠れない西村さんだった。…しかし最新型のぎざぎざハサミはその威力をいかんなく発揮した。見事に脂分で滑るはずの患部を捉え、切除し切ることができたのだ。

さらに西村さんは新工場を立ち上げ、これまでの3倍である月3000本の製造が可能になった。そこでは最新のレーザー加工機が揃っていた。「これで世界の患者を助けることができる」と、西村さんの顔は誇らしげ だった。日本の技術が世界を救う。素晴らしきビジョンが現実になろうとしている。

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