牛脂注入肉の扱いがリトマス試験紙?外食産業はどこまで正直になれるのか

1月21日に放送された「ガイアの夜明け」を録画で観ました。「検証!食品表示の偽装 食の信頼は取り戻せるか」というタイトルで、相次ぎ発覚した食品表示の偽装問題に対する幾つかの業界・会社の対応をレポートしてくれました。

食品表示の偽装問題に関しては2つの「素朴な疑問」があります。第一は、これまで何度も幾つかの業界で発覚した問題なのに、なぜ性懲りもなく(というか「他山の石」にできずに)飲食店や「中食」の現場は同じことを繰り返したのか。もう一つは、なぜこれほどまでに多くの企業が、食品の表示を偽ったのか(日本ホテル協会によると、加盟247ホテルのうち約3分の1が、何らかの虚偽表示をしていたということです)。

今回、レストランメニューなどで偽装表示が発覚した北海道を代表するホテル、札幌グランドホテルに取材が入りました。国際会議の開催や天皇皇后両陛下の御宿泊などの輝かしい歴史と信頼が一気に揺らいだ老舗です。偽装に至った経緯は何か、内部で検証していくと、様々な根深い原因が浮かんできたようです。

特に現場責任者である総料理長と料理長の2人がそうした虚偽表示をしていたこと自体を知らなかったということが吐露されました(これはこれで責任者としては非常に恥ずかしいこと故に、責任逃れのコメントではないと信じる)。つまり重要なガバナンス不在だということです。もう一つは、コスト削減によって目先の利益を上げるという圧力が不正にまで手を染める行為に走らせるほど強烈だということです。

しかし「実行犯」の現場のコック長たちは実に歯切れが悪かったですね。誰もが自分が「お客さんを騙していた」という事実をまともに認めたくないため、「長年の習慣を変えることまで思いつかなかった」と、業界慣習のせいにしていました。確かにそうした側面があるでしょうが、近年の「食品偽装」問題が農産物卸や加工業界で大問題になったことを彼らが知らなかったはずはありません。そのときはむしろ被害者面していたかも知れません。その意味では現場のリーダーたちには「自分がかわらなきゃ」という当事者意識は薄かったかも知れません。

問題は、今後それらをどう克服するのか、です。信頼回復に向けたホテルの総料理長の動きを番組は追いました。再発を防ぐため、総料理長は仕入れる材料を自らチャックする気になったようです。仕入業者から産地証明を取るなど、部下任せの姿勢を変えることにしたようです。これは第一歩ですね。

東京本社のホテル経営側「グランビスタ ホテル&リゾート」も全国で3つも偽装表示に関わったホテルが発覚し、本腰を入れざるを得ません。札幌までスタッフが出張し、現場でのメニュー企画から表示の仕方に至るまで全てプロセスを見直そうとしていました(これは我々が幾つかのクライアント企業でやったことを似ています)。ただ、気をつけないといけないのは、こうした見直しが現場を委縮させてしまっては元も子もないことです。往々にして保守的になりがちなこうした危機的状況においてこそ、お客様の関心を惹くためのメニュー企画出しや表示の仕方でいかに新しい発想を引き出すことができるかが本当は求められているのです。

番組の後半で面白かったのは、牛脂注入肉や成型肉など、「低価格でおいしい肉」を作り出す技術がいかに進化してきたかを伝えた部分です。牛脂注入肉や成型肉の需要を捉え、長年、開発・製造してきた企業があります。番組ではその代表的な1社を取材し、今回特別に工場内部に放送カメラが入り、その最新技術を捉えてくれました(とはいえ、小生は前にも観たことがあるのはなぜでしょう?)。固そうな赤身だけのニュージーランドビーフが、牛脂を注入されることで「霜降り」状態になるのです。ほとんどマジックです。

業者の名誉のために付け加えますが、食品安全上、全く問題はなく、味も数段よくなるとのことです。実際、格安のステーキチェーンはこうした牛脂注入肉を使用していますし、しっかりと表示しています。そう、これはIKEAが合板でよい製品を提供するのと同じように、安い原価でおいしい食材を提供する革新技術です。違法な成分を注入して紛い物を作っているわけではないので、胸を張って売り、買えばよいのです。食品を消費者に出す役割の人たちも、しっかりと正直に伝えればよいのにと思います。

残念ながら、牛脂注入肉を消費者に提供する外食産業は、マイナスイメージが大きいと考え、食材として使用しても積極的に表示しない、あるいは隠そうとする傾向が未だに続いているそうです。成型肉業者の社長は非常に悔しそうでした。彼らはまともに表示し、妥当な値段で提供しているのです。どうもその川下にある卸業者や外食産業において不当な表示で不当な利益を得てきた輩がかなりいそうです。こうした連中をのさばらせておいては、食に対する消費者の信頼はなかなか回復しません。外食産業の正直さがどの程度進むのか、是非ウォッチすべきですね。
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会議参加者を削るだけで生産性は向上する

会議を主催するとなると、つい「念のためにあの人も呼んでおこうか」となりがち。プロジェクトを立ち上げるときにも、ついつい「あの人にも参画してもらいたい、あの人も入れておかないと後でうるさい」と、どんどん人数が膨れ上がる。でもそれは会議やプロジェクトの効率を下げ、ひいては会社としての生産性を下げる行動パターンなのです。


賃上げ論議が高まっていますが、賃上げというものは物価上昇への対応という側面と、生産性向上に対する労働の貢献への分配という性格を持っています。では日本企業の生産性は向上しているのでしょうか。

最近、「ワーク・ライフ・バランス」改善を訴える有識者の解説をお聴きする機会があったのですが、「なぜ日本では残業が多いのか?それは日本の労働生産性が欧米に比べ大幅に低いからだ」という主張と共に、日本生産性本部の調査結果が明らかにされました。2012年の日本の労働生産性は「前年度水準から2,848ドル(4.1%)上昇したが、順位はOECD加盟34カ国中第21位で、前年と変わらなかった」とのことです。
http://www.jpc-net.jp/annual_trend/annual_trend2013_press.pdf

その後、その有識者の見方を支持する数人の方から幾つかの体験事例をお聞きしました。それらは小生自身もクライアントから聞いたことがあるか、「過去の仕事で身近に触れたパターン」と感じるかのいずれかで、苦笑せざるを得ませんでした。例えば…

「連日の深夜残業でなんとか仕事をこなしていたはずだが、チームから一人抜けたのに各人の残業時間はその後もあまり変わらなかった」
「ある緊急のプロジェクトに別部署から呼ばれて参画したところ、担当者同士で延々会議をするばかりで、責任者は途中で出たり入ったりするだけで何も決定されない」
「定例ミーティングでは大人数が勢ぞろいするけれど、発言するのはいつも同じ人たちばかり」
「プロジェクト納期が迫っているのに、同僚担当者が兼務している仕事が多過ぎて、引き受けてくれたはずのことを約束の期限までに完了できず、結局は仕事のできる一部の人間が肩代わりしてやってあげている」

多くの日本企業で同様の実態があるのではないでしょうか。生産性の低さの原因としては幾つも思い当たり、多分それらの複合なのでしょう。例えば「会議の進め方」のまずさにもあるでしょうし、そもそも会議が多すぎることも指摘できるでしょう。

でも小生が以前から気になっているのは、会議に参加する人数が多すぎることです。大企業ですと、必要な人数の5割から8割増しという感があります。社員に色々なプロジェクトを兼務させることが企業文化になっている会社ほど、これが極端になっています。つまり、社内プロジェクトは兼務者ばかりでその人数は膨れ上がりますが、いつも似たようなメンバーが幾つもの別プロジェクトに顔を並べている状況です。

ご当人達の意識では、朝から晩まで会議に参加して忙しい、たっぷり仕事をした、という気になっているようです。でも仕事はあまり進みません。なぜでしょう。

そもそも各々のプロジェクトに割かれている業務量の総和は、頭数から感じられるほどには大きくありません。

実質的には、効率が落ちることが大きいです。各参加者としては幾つものプロジェクトに意識が分散して集中力が減り、個々人の作業時間においても実に効率が悪いのです。会議になると非効率さがもっと露骨になります。人の話を聞く時間が長くなるために参加者の集中力が途切れやすくなり、しかも人数が多くなると話題が分散しやすく、中だるみしやすいのです(ファシリテータとしては要注意です)。

さらにプロジェクトの参加人数が多くなればなるほど加速するのが、「社会的手抜き」の心理です。要は「自分一人が頑張らなくても他の人がやってくれる。こんなに人数が多いと自分の貢献度が目立たないし」という心理です。これは個人作業においても会議の場においても現れるものです。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/4716/loafing.htm

仕事柄、小生はクライアント企業の人たちに打ち合わせを呼び掛けることが少なくありません。その際に気をつけているのは、テーマに関し本当に発言できる人に限定して参加していただくようお願いすることです。皆さんが会議やプロジェクトの主催者となった際には、できる限り少数精鋭主義を貫くことをお薦めします(その分、参画してもらう人には応分の負荷をお願いしなくてはいけませんが)。そのほうが結局は、会議やプロジェクトを成功に導き、会社の生産性を引き上げることにつながるのです。

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ビットコインのもたらす世界は究極の「自己責任での利便性」

1月21日(火)に放送されたNHKのクローズアップ現代「仮想通貨 VS 国家 ビットコインの衝撃」で採り上げていた、世界で急速に拡大している仮想通貨「ビットコイン」。名前は聞いたことがあるくらいで、実態については殆んど知らなかったのですが、この番組を観て興味を持ちました。

どうやって入手し、使うのか。別の番組ではその様子を少し詳しめに教えてくれました。渋谷の繁華街での仮想通貨の取引の様子です。日本人男性がアメリカ人男性に現金を支払い、ビットコインを購入しました。手続きはスマートフォンで、僅か1分。30万円は、インターネット上の2.6ビットコインに変わりました。

注目すべきは、価格の動き。2013年初には1ビットコインは、およそ1,000円で取引されていましたが、利用者の拡大とともに徐々に値を上げ、11~12月にかけて世界中から投資が集まり、価格が急騰。結局、1年で100倍以上(10万円以上)に高騰しました。投資の結果に喜ぶ人もいれば、実感のなさに戸惑うばかりの人もいます。

番組で紹介したのは、格闘技の教室を開いている男性。1年前、生徒から授業料15万円の代わりに130ビットコインを受け取りましたが、仕組みもよく分からないまま、放置していました。しかし、最近、価格を確認して目を疑いました。1ビットコインが10万円以上になり、受け取った授業料が、およそ1,500万円相当になっていたのです。男性いわく「単純にすごいとは思うが、有効活用する方法も、よく分からない。まだ実感がない」と。そりゃそうでしょうね。

「仮想の通貨」が、世界に広まったきっかけは、ヨーロッパの“経済危機”だったそうです。国民の預金の一部を、国が強制的に徴収する事態もギリシャなどで発生しました。自分のお金を守りたいと、大量のマネーがビットコインに流れていったのです。

「ビットコイン」は、もともと、こうした事態を想定して作られた通貨でした。2008年、「サトシ・ナカモト」と名乗る、架空のプログラマーが書いた論文です(発案者がどうやら日本人だったこと、これも初耳でした)。ビットコインの目的は、国家から独立した通貨を作ることとしています。通常の通貨は、財政危機などで国家の信用が落ちれば、その価値も失われかねません。そこで、国家の枠組みを超え、世界共通の通貨をインターネット上に作ろうと考えたのです。その価値は、通貨の総量を厳しく制限することで担保します。この考え方に賛同した世界中のプログラマーによって、ビットコインは自然発生的に生まれたのです。

ビットコインは、今、ネット上だけでなく、現実社会で通常の通貨と同じように利用され始めています。財政難に苦しむ国々で、米国でさえも、自国通貨を信用できないという人たちがビットコインに流れ始めているのです。ビットコインの取引所によりますと、いまや、世界、数百万人が利用し、その市場規模は1兆3,000億円に達しているといいます。

その結果、世界は、この「新たな通貨」への対応を迫られることになっています。中国では、ビットコインが人民元の地位を損ないかねないと使用を禁止しています(でもネット上ではまだ使えるようですが)。他にも禁止している途上国がありますが、多くの先進国は無視するか、「自己責任だ」と警告するかに留まっています。日本はどう対応するか、「検討中」だそうです(他国を見て決めるのでしょう)。

もっと大きな問題もはらんでいます。アメリカでは、ビットコインを使用した、麻薬などの違法な商取引に頭を悩ませています。ビットコインで決済する通販サイト。ここに掲載されているのは、コカインや偽造パスポート。ビットコインで購入しても個人情報が残らず、購入者を特定することはできないため、違法な闇取引に利用されているのです。国が追跡しきれない資金の流れを生み出したということは、(番組では指摘していませんでしたが)きっとマネー・ロンダリングに使っている闇組織もあるでしょう。

さらに、ビットコインには価値の保証がないだけに、一度信用を失えば、またはコンピュータ・ネットワークのトラブルが生じても、すべてが消えてなくなってしまう危険性もはらんでいます。その時、誰かに責任を問うこともできません。

保有者たちがそうしたリスクを理解して使う(つまり自己責任で使う)分にはとても便利な仕組みで、ますます利用場面は拡がると思います。各国の財務官僚だけでなく、VISAやMasterも非常に嫌がるでしょうが。

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バンコクの非常事態宣言にみる、未成熟なタイ政治の実態

タイの首都、バンコクに非常事態が宣言されました。22日から始まり60日間に亙る予定で、非常に気掛かりです。昨年10月から始まった反政府デモが最近過激化しており、手投げ弾の爆発などで死傷者数も増え、これ以上の事態悪化を防ぐためとされています。

そもそもは罪に問われたまま亡命しているタクシン元首相の帰国の際の恩赦を促すための法律改正を、妹のインラック現首相が進めようとしたことがきっかけで始まった反政府デモです。しかし途中からどんどんエスカレートし、政府機関の占拠や政府関係者の自宅への押し掛けや嫌がらせなど、実にやりたい放題でした。政府は法律改正を断念した上に、12月には一旦、総選挙を2月に実施することで乗り切ろうとしましたが(ここまでは知り合いのタイ人も読んでいましたが)、さらに反タクシン派の反発が強くなるのをみて、今では総選挙の延期というカードをチラつかせて妥協の道を探っています。

しかし一体、この事態は何でしょう。そもそも野党の言い分は支離滅裂です。総選挙をすると負けるに決まっているからといって総選挙を拒否し、返す刀で違法デモと暴徒で首都を「占拠」(ダジャレのようだ…)し、正当な選挙で選ばれたインラック首相の退陣を要求する。民主国家の野党としては暴挙以外の何物でもありません。仮に将来自分達が政権を取ったときに同じことをされても文句を言えません(確かに、昔、タクシン派が似たようなことをしたのが最初ですが)。それより、都市市民に不利な今の選挙制度(区割りと代議士数)の改正を政権側に申し入れて、それを条件にデモを収めるとするほうが前向きかつ戦略的です(そうした助言をする参謀がいないのでしょうね)。

そうした戦略も見通しも互いにない今は、ほとんど「子供の喧嘩」状態です。観光はもちろん、普通の経済活動にも心配が先立つ状態です。実際、現地の日本人学校は暫く休校らしいですし、小生も複数の案件がありながら、1週間先の治安状況が読めないため、バンコク出張の予定が立たない状態です。2年前の洪水騒ぎの際にも政府の手際の悪さに呆れかえりましたが、今回は躍進しつつある中進国として情けないくらい、当事者能力のないタイ政治の実態を見せつけられる思いです。

でも不思議なことに、バンコクに住むタイ人の友人や知人たちにはそれほど危機感や緊急事態の切迫感はないようです。意外と気楽なメールやfacebookのコメントが届きます。人気スポーツ・チームの対決のように、劇場型政治の場外乱闘を楽しんでいるようです(確かにタイ人は政治好きで娯楽の一種なのです)。中には決着の行方を賭けにしている連中もいるらしいです。

普通の日本人には理解し難い、野党の傍若無人振りと政府の弱腰の背景には、長年の国王による「手打ち」という儀式か、軍隊によるクーデターのいずれかのパターンに慣れ切ったために、政党に当事者意識が欠如していることと、数年前のデモ鎮圧が日本人ジャーナリストを含む死傷者を出して時の政府退陣につながったトラウマ、という2つの要素が大きく絡んでいると思われます。要は、仮に思い切ったことをした結果、非難されて責任を採る羽目になりたくないという政府首脳部の責任回避心理と、それにつけこんで図に乗って好き放題している反政府デモ首謀者および結託している野党首脳部の節操のなさ、という構図です。

でも今回、国王は自ら仲介役に乗り出す考えはないと漏れ聞こえます。もう十分なご老齢である国王は、今後のことを考えられて、「与党と野党が当事者同士で妥協して話をつける、成熟した民主主義のプロセスを確立して欲しい」と願っておられるのでしょう。当然です。そして軍もまた同様です。一歩間違えば首脳部の失脚につながりかねないクーデターをやりたいほど権力欲がない、まともな軍人感覚の持ち主であれば、正当な民主主義プロセスの中で政治家同士が話し合って事態収拾へ向かってくれることを祈っているはずです。

今は、「チャイナ+1」および伸びゆくASEANにおける地政学的好位置にいるために、千載一遇の機会として高度成長への道を辿り掛けているタイです。人口ボーナスを享受できる期間は、実はあと10年あるかないかです。国民の大半が経済成長の果実を得る前に、ごく一部の政治家の個人的野心のせいで政治混乱が拡大し、ここで経済失速、ましてや国際的信頼を失う事態により外国資本が引き揚げ、以前のアジア金融危機の時の悲惨な状態に戻ることは誰も望んでいないはずです。

野党のアピシット党首をはじめとする反政府側が冷静さを取り戻すか、さもなければ法律に基づいて政府側が厳しく違法デモを取り締まる(つまり大勢の逮捕者を出す)ことで鎮静化させるか、どちらかしか民主的な進歩はないでしょう。少なくとも軍隊による鎮圧やクーデターは論外、国王のお出ましによる「手打ち」もなしにして欲しいと思うのは、この国を大好きな一個人としての願いです。

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アジア発のリゾート・ブランドは日本の“おもてなし”を凌ぐか

1月15日(水)に放送された「島耕作のアジア立志伝」は「 “アジア発ブランド”を生み出せ」と題し、リゾート・ブランドの「バンヤンツリー」を率いるホー・クォンピン氏(62)をフィーチャーしていました。

世界28か国に展開するアジア発のリゾート・ブランド、バンヤンツリー(本社シンガポール)。華僑のホー・クォンピン氏のブランド戦略は、客の度肝を抜く斬新な演出を誰よりも先に提供するインパクトと、その土地の文化に“おもてなし”の心を融合させる地域性重視だそうです。特に後者は星野リゾートのコンセプトと重なりますが、アジア・中東まで拡がるスケールの大きさは一歩も2歩も先を行きます。タイから始まったこともあり、タイ式をベースにしたマッサージやアジア風の静かで親密なホスピタリティは同リゾートの独自性にまで高められており、「アジア一のブランド、やがて世界一に」という自負心が感じられました。

放送された各地のリゾートホテルの様子は確かに魅力的。施設そのものがその土地の地域性を織り込んだコンセプトが表現されていて、しかも解放感やリラックスさに溢れています。余裕があれば泊ってみたいものです。ホー氏が今とりわけ力を入れているのが中国。秘境の魅力をそのまま活かす演出で、中国の富裕層の心を鷲づかみにしているようです。真に高級なサービスに飢えている彼らは日本の高級ホテルや旅館にもよく出没しますが、アジアのリゾート地にこうした素晴らしいリゾートホテルがどんどんできると迷ってしまうかも知れません。

こうした“アジア発”の“おもてなし”は特に日本独自のものではなく(とはいえ参考にはしているでしょうが)、同社が独自に編み出してきたものらしいです。うっかりすると、日本企業は“おもてなし”ができるのは自分達だけだという勘違いした自負心を持ちかねませんので、ここの認識は重要です。「バンヤンツリー」のサービスのベースにあるのは、正社員の待遇をよくし、常に向上心をもたらし教育を続けることの重要性を、経営トップが認識していることです。中身は独自のカリキュラムでしょうが、この大切さばかりはどのサービス企業にも共通なのだと、改めて認識しました。

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中小・零細企業こそ外部の知恵を借りよ

最近、あるビジネス関連のネットサ-ビス会社から個人的に、経営改善の方策について相談されたことがあります。

簡単に状況説明を受けての、当方からの助言としては、まず固定費削減策。具体的にはシステム関連費の見直しのために、既存業者以外にも声を掛けて提案を受けること、そのために無駄な機能を削ぎ落してシンプルな仕様にすることの2点が中心です。

もう一つは収入アップのための施策案の棚卸です。実は既に一つ、知人の会社と組んで取り組んでいたらしいのですが、十分な検討がないままの「決め打ち」だったせいか、あまり成果が上がっていないとのことです。まずはその既存取り組みの改善を含め、改めて選択肢の洗い出しをすることを薦めました。

いずれもオーソドックスな経営改善策です。不思議なのは、その会社の経営者自身が大手有名コンサルティング会社出身者であり、そのサービスに関わる周辺の人たちにもいわゆる「コンサルタント」がわんさかいることです(まぁその大半はただのIT/Web屋なのかも知れませんが)。それなのにここまでのところ、まともな経営改善策が採用・実行されていないことは極めて残念です。いわゆる「紺屋の白袴」の典型なのです。

尤も、小生も軽く「相談」されただけで、きちんと仕事として依頼されたわけではないので、現状分析や課題についての考察を深くやった上での助言を差し上げたわけではありません。それでも固定費削減策に関しては、すぐにできるし効果が出るはずです。でも収入アップのための施策案については、もっと色々な情報を基に仮説を作る必要があり、その時間を無料でひねり出すほどの義理は当方にはありません。本気でやるのなら有料で依頼をしてもらうしかないのですが(実際のところ時間的に難しいのも事実ですが)、なまじ「元コンサルタント」の人たちには、そのプライドを乗り越えるのは難しいのではないかとみています。

多分、世の中にはこんな事情で伸び悩んだままの中小・零細企業の中途半端なサービスが満ち溢れているのでしょう。小生は大企業の決断の遅さによく悩まされ、時折苦情を申し上げますが、それでもその幾つかは遅まきながらも依頼をして下さり、それで前進しています(もちろん、もっと早く依頼してくれればそれだけ早く結論が出ていたのにとは思うことが多いのですが)。それに対し、お金のない中小・零細企業は外部の知恵を借りることにすら臆病になり、ますます取り残されるわけです。悪循環ですね。

そのサポートをすると謳っている金融機関や税理士の人たちには、自らそうした経営改善を支援するだけの知恵や経験があることは滅多にありません(小生の先輩にもそういう分野の先輩方が一杯いらして、ホンネではそういうことらしいです)。彼らも自らの中途半端なプライドを捨てて、「まともなコンサルタントを有料で雇いなさい」とアドバイスできるかどうか。かなり難しいことなのでしょうね。

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実名のはずのSNSにも詐欺師は出没する

facebookやLinked-inで世界中にいる「友人の友人たち」とつながる。直接面識はなくとも同窓の先輩・後輩でつながる。国内にいながら海外の人たちとの仕事ができる可能性が拡がる。これもまたSNSの楽しみであり、ポテンシャルです。でも実名が原則とはいえ、それはまともな利用目的の場合の話。直接の面識がない「友人の輪」の先には、何食わぬ顔をして詐欺師が待っているかも知れません。


facebookを使っているお陰で海外の旧友とコンタクトが復活したり、新しい知人を増やしたりしている方も少なくないでしょう。小生もウン十年前の米国の学友と再度つながったり、以前のアジアでの仕事を手伝ってくれた人を見つけたり、それなりに恩恵を受けています。ネット上で友人から紹介された新しい知人とコンタクトして、現地出張時に会って情報交換することもあります。

ビジネスパーソン向け機能がさらに充実しているのがLinkedInです。こちらは自分の専門領域を登録して仕事を探すことや、自分と同じ専門分野の人を探すといった使い方が可能です。システムのほうであなたの人脈の先にいる人を紹介したり、同じ時期に同じ会社や学校に所属した人を紹介したりするだけでなく、似た様な職業背景を持つ人が「あなたの知人かも」という感じで表示されるなど、ビジネス向けだけあって「人脈づくり」支援機能はfacebookより充実しています。

facebookもLinkedInも実名ベースを謳い、その登録内容は相対的に信頼が置けるとされます。使い方さえ正しければ(そして参加者が正確な情報を登録している限り)とても有用なはずです。でもよいことばかりではありません。以下、小生の経験をお話しします。

ある時、LinkedInで海外の金融関連の人からの友人承認リクエストが続けて届きました。そのうちの一人は英国の有名銀行出身の機関投資家といい、もう一人は欧州のプライベートバンクの運用部門で海外投資を行っているというバックグラウンドです。どちらも「君が興味を持ちそうなビジネスプランがある」といったメッセージが付いていました。

もしかすると「景気回復しつつある日本への投資を検討したいので手伝ってくれないか」という仕事の依頼につながるかも知れないと思い(類似の実績を紹介英文に載せています)、「承認」しました。すると一方は「アラブの富豪の依頼で世界中から新規事業の提案を募集している。もし富豪の興味を惹けばXX百万~YY千万ドルの範囲で投資できる」という提案がメールで来ました。もう一方は「あなたと同姓の金持ちが銀行に巨額の資産を預けたまま異国の地で死亡した。身寄りがないので、国家に没収されてしまう前に国外に移したい。一時的受取人になってくれるだけで高額報酬を保証」という依頼でした。非常に魅力的なオファーです。皆さんならどうしますか。

結局、小生は後者のメールはそのまま無視し、前者についてはどういう基準とプロセスで進めようとしているのかを確認し、それに対する返事が信頼に値しないと判断して、それ以降は無視しています。どちらももう一度ずつ「どうだい?」といった感じのメールが来ましたが、それも無視したために音沙汰がなくなりました。実はそれ以降も、別名の友人承認リクエストは月に1~2通は来ていますが、今では最初から無視することにしています。

なぜ小生はこの2つの、一見魅力的なオファーを無視することにしたのでしょう。それは、国際的犯罪の可能性が高いと考えたからです。

前者は当方を選んだ基準が曖昧で(過去実績の内容を確かめようとしない等)、取引を成立させるために証明手続きを要する(こうした手数料を払わせる形でお金を引き出す国際詐欺もあります)、さらに提案のためにアラブの某国にまで行かなくてはならず、その際に誘拐される恐れも十分あると考えました。

後者は、文中に何度も「安全な取引だ」と念を押しているのと、あまりに楽に稼げるので、却って違法な手段によるマネーロンダリングに思えました(ヘタクソな英語だったので誤解ゼロとは断言できませんが、昔eメールが普及し始めた直後には、アフリカ某国発の似たようなメールがよく来たものです)。とにかく詐欺に遭うのも嫌ですし、犯罪の片棒を担ぐことになってもエライことなので、「君子危うきに近寄らず」です。

さて、実際にそれらが詐欺だったのかは今となっては分かりませんが、14日にはこんな報道がありましたね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140114-00000028-asahi-ent

以上は国際的な犯罪グループの話でしたが、もちろん国内にも同様の輩はいます。SNSは便利ですが、そこには怪しげな連中も潜んでいて、巧妙な罠を考えているかも知れません。皆さんも「甘い話」にはご注意を。

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親日国・スリランカはインド洋経済圏の中心になるか

1月13日(月)の未来世紀ジパングは「知られざる親日国シリーズ」!今回は、"インド洋の真珠"と呼ばれる国、スリランカ。題して「知られざる親日国スリランカ!経済&観光急成長...その裏には世界マーケットが!」でした。

行ったことはなかったのですが、実はビジネススクール時代の友人(彼は米国に永住することを選びました)がスリランカ出身だったので、親近感はありました。でもこんなに素敵な国だとまでは知りませんでした。

我々より年配の方々には「セイロン」という旧国名で有名ですね。スリランカが世界地図上のどこにあり、紅茶以外に何が主たる産業の国なのか、正確に答えられる日本人は多くはないかも知れません。でも今、そんなスリランカが経済的に急成長し、観光地としても世界から注目を集めているそうです。

スリランカは実は大変な親日国。同国出身の外タレの人が「多分、世界一の親日国だ」と胸を張っていました。そうするとタイ・インドネシア・台湾・トルコ・モンゴル以上だということですから、これはすごいことです。長年、高速道路や国会議事堂を作ったりした日本のODA援助をスリランカの多くの人は知っていて(以前、モンゴルなどについても同様のことを書きましたが、感謝の気持ちを学校やメディアが伝えてくれるということです。中韓とは真逆です)、日本について良いイメージを持ってくれているのですね。嬉しいですし、有難いことです。

元々、スリランカという国は教育水準も高く、真面目で手先が器用な国民性なのですが、内戦で外国企業や観光客が敬遠し、経済的に立ち遅れていました。しかし2009年にその内戦も終わり、状況が一変しました。

東南アジアやインド・バングラデシュの陰に隠れていますが、スリランカには今、続々と外資企業が進出しています(実は中国が一番熱心のようです)。日本企業もここぞとばかり増えているようです。何がいいのか。ズバリ、生真面目な国民性です。南方系には珍しいのですが、日本人の感覚に近いらしいのです。

スリランカに魅力を感じ、随分前から進出している企業として2つの会社が採り上げられていました。陶磁器メーカーのノリタケと、“午後の紅茶”でお馴染みのキリンです。両社とも、豊かな大地でとれる、それぞれ土と茶葉を求めてこの地に来たのですが、スリランカの人達の真面目さと手先の器用さに魅力を感じていると言います。確かに、陶磁器に色つけをする現地の女性職人の手さばきは日本人顔負けでした。

さらにスリランカ人が経営するケーブルメーカーに取材班が行ってみると、そこには日本の工場でよく見かける「5S」と「KAIZEN」の文字。日本で学んだスリランカ人の指導で取り組み始めたらしいのですが、日本人が一人もいない会社にも関わらず、日本企業と同等の高品質を実現できるということです。こうしたJapan Qualityを見事に実現している実力を見込まれて、高級ブランドの製造を担っている会社が多いということも実に驚きです。

また、スリランカの経済成長に伴いスリランカに進出した日本企業(広島に本社を置く造船企業など)は、スリランカで大きなビジネスチャンスをつかんでいました。やはり「日本のモノづくり」を現地の割安なコストで実現できる、と日本から来た担当者が興奮気味に語っていました。

さらに彼らは、「スリランカには希望とさらにその先がある」と口を揃えて言います。それは、スリランカを拠点に広大なインド経済圏を攻めることができるということです。それはちょうどシンガポールを拠点に東南アジア市場を攻めるようなイメージでしょう。沸騰ナビゲーターの後藤康浩氏は「スリランカはインド洋経済圏のビジネスセンターになる」と「未来予測」していました。東南アジアのASEAN(人口6億人)と南アジアのSAARC(人口17億人)を合わせた、そのちょうど中間に位置するのです。

そして実際的な意味合いもあります。インドに駐在することはかなりタフなこと(水が悪い、衛生状態が悪い、人が多く騒音が凄い、犯罪も少なくない、娯楽がない、等々)で、家族持ちはもちろん、若い独身も行きたがらないのです。それに対しスリランカは全く逆で、スリランカ駐在員はかなり恵まれているようです。近隣でありながらこの2国が全く違うのは、ちょうど大陸・中国と島国・日本の違いと同じ関係でしょう(互いに仲が悪いのもよく似ています)。

番組は貴重な情報を伝えてくれました。日本とスリランカの絆であり、(日本がスリランカに経済的に援助する事ばかりではなく)“日本人が知っておくべき、代々伝えるべき恩”がスリランカに対してあったのです。

1951年のサンフランシスコ講和会議において、第二次世界大戦で日本と戦った国から多額の賠償請求や分割統治の案が出されていました。その会議で、当時のセイロン(今のスリランカ)の大蔵大臣だったジャヤワルダナ氏(その後、スリランカの初代大統領になった方)が「憎しみは憎しみによっては消えない。愛によってのみ消える」と演説しました。それを聞いた他の国々も、日本を分割する必要はないとの結論に達したのでした。

もしこの勇気ある演説がなければ、日本も韓国・北朝鮮のようになっていたかも知れないのです。本当に有難いことですし、覚えておいて他の人に伝えたいことです。今後クライアントの海外進出支援でインドへ出張する機会があれば、是非、スリランカに立ち寄りたい、いやできればスリランカを主たる進出ターゲット地にお薦めしたいと思いました。

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元日本ユニシス社長・籾井氏の実績を考える

NHK次期会長に内定した元日本ユニシス社長・籾井氏に関して、少々辛口のコメントを日経ビジネスの記事で読みました。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20131224/257464/?P=2&ST=smart
いわく「1度目の落下傘降下は失敗」「2度目の落下傘降下は成功なるか?」ということでした。全体的には正しい指摘と感じましたが、一部は正確ではありませんので、補足したいと思います。

【記事】―籾井氏が日本ユニシスの社長を務めていた6年間で「日本ユニシスが大きく変わったことはない」。むしろ経営状態は悪化した。
実は大きく変わったことはあります(後述します)。それに続いて、記事は具体的な数値を追います。
【記事】―籾井氏が就任する前の日本ユニシスの年間売上高はほぼ3000億円でずっと横ばいだった。2005年6月に社長になってすぐ、籾井氏は「5年後に5000億円にする」と述べた。2007年度に3377億円と日本ユニシス史上、最高の売上高を記録したものの、それ以降は減収減益が続き、籾井氏が社長を務めた最終年度である2010年度には2529億円と、史上最低になってしまった。
これはその通りですね。

少しですが同情している部分もあります。
【記事】―2008年のリーマンショックの影響があり、他のIT企業も業績不振に苦しんだ時期であったが、…
公平を期すために補足すると、リーマンショック直後にSI業界の仕事は、案件が数割、単価も数割、それぞれ落ち込みました。掛け合わせて売上が半減した社も多くある中、むしろ同社は健闘したほうだと思います。案件は1年もせずに少しずつ回復しましたが、一旦落ち込んだ単価はなかなか元には戻りません。SI業界の売上は数年に亙って低迷せざるを得ませんでしたし、同社も例外ではあり得ませんでした。

むしろ記事は同社の低迷の原因を別のところに求めています。
【記事】―…日本ユニシスの場合、籾井氏が指揮した企業買収の失敗があった。2007年5月、ネットマークスというネットワーク機器の販売会社を買収し、売り上げは増やせたものの、買収直後にネットマークスにおける不正取引が発覚、日本ユニシスは投資価値を一気に目減りさせた。
このこと自体は事実ですが、それは株価低迷の主因の一つであって、業績低迷の主因ではありません(経営陣の時間が削がれたのは事実ですが、現場が支えるタイプの会社なので、あまり関係ないでしょう)。それにネットマークスにおける過去の不正取引を見つけられなかったこと、もしくは瑕疵担保条項を付けなかったことは主に専門部隊の責任であり(せめて小生たちベテラン経営コンサルタントにデューデリをさせてくれたらよかったのですが)、M&Aに関して素人の籾井さんに全責任を負わせるのは酷でしょう。

記事はさらに続きます。
【記事】―籾井氏は売上高を5000億円に引き上げる施策として、サービス事業の強化と企業買収を上げていた。だが、サービス事業は技術者を動員し、顧客のソフトを地道に開発するもので、総合商社のビジネスとはまったく違う。
というのはその通りですが、
【記事】―籾井氏は講演で指摘した「曖昧な商慣習」「コミュニケーション(相互理解)の欠如」「赤字プロジェクト」「高度技術者不足」という問題を解けなかった。
というのは一部間違っています。

籾井経営陣は実際に赤字プロジェクトを無くすための施策(実は前から検討されていた内容らしいですが)も実行し、どんな案件でも闇雲に取りに行くことをなくしました。

でも半面、「曖昧な商慣習」「コミュニケーション(相互理解)の欠如」に対する有効な施策だったはずの、前任者の進めた「上流コンサルティング力の強化」には熱心ではありませんでした。これは小生自身が関わったことなので、残念ながら明言できます。詳しいことは省きますが、折角育ってきたコンサルティング部隊のリソースを上流コンサルティングに注ぐ代わりに、特に新規事業開発業務にシフトさせようと少々無理もした(籾井さんが主導したというより、取り巻きにそそのかされのかも知れませんが、SIビジネスを最後までよく理解できなかった彼は、「次の柱を探せ」と躍起になっていたそうです)結果、新規事業開発の苦手な、業務コンサルティング一筋の人たちの居場所がなくなる可能性が少しずつ強まってしまいました。それを強く懸念し、外に彼らの居場所を見つけようと考えた小生が退職したため「防波堤」が減ったこともあり(この判断は失敗だったと今でも反省しています)、同社は苦労して集めた多くの優秀な人材をどんどん流出させてしまいました。

その一方、籾井さんには大きな功績もあります。それは出身の三井物産から自分の後任を出させず、生え抜きの黒川氏を後任社長に据えたことです(多分、その後の物産からの株式放出もセットだったと思います)。この「置き土産」こそが籾井さんの最大の功績であり、「剛腕」の彼でしかできなかった経営施策だったと、小生は思います。

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腹落ちした「“物語”が人を動かす」

1月7日に放送されたクローズアップ現代は「シリーズ 未来をひらく(2)“物語”が人を動かす」。とても示唆深い内容でした。

地域社会が抱える様々な課題を、人と人との「つながり」を広げることで克服しようという試みが始まろうとしています。これまで市民運動やNPOなどが活動を続けてきましたが、中々活動の輪が拡がらないのが活動家の方々の悩みです。

こうした中、多様な人々を結びつける市民運動を理論化し「分断されたアメリカを一つにした男」として世界的に知られるマーシャル・ガンツ博士(ハーバード大)が来日。日本各地で活動するNPOの代表ら47名を集めてワークショップが開催されました。ガンツ博士が訴えたのは、人々をつなぎ、動かすことのできる「物語」を共有することの重要性でした。

参加者は多様で、結構有名な活動家たちもいます。社会活動家・湯浅誠さん(元・年越し派遣村の村長)、難民支援NPO代表・大西健丞さん(紛争地域での難民支援活動家)、他にも病児保育NPO代表や不登校児童支援NPO代表等々。宮城県南三陸町で被災地支援活動の一環として漁業体験ツアーを主催する佐野哲史さんもその一人です。

ガンツ博士は、リーダーの多くはその責任感からすべてを抱え過ぎていると指摘します。求められるのは周りの人を巻き込み、それぞれが自発的に行動できるよう促すことだといいます。そうすれば活動は雪の結晶のようにつながり広がっていくというのです。自分の熱意は空回りしていただけなのではないか、佐野さんはこれまでの自分のやり方を変える必要があることに気付いたといいます。

マーシャル・ガンツ博士「人はきっかけさえあれば、誰かと思いを共有し、行動したいと願っているものです。そこで信頼を結び、関心を持ってもらえれば、また別の人へと自然と活動は広がっていきます。一人一人の力は弱くても、それらがつながれば、大きな力となっていくのです」。

ガンツ博士は、人々に行動を促すには心に訴えかける物語が必要だといいます。「相手に行動するきっかけや勇気を与えるのが『物語』です。いくら立派な活動でもそれがなければ、誰もついてきてくれません」。

ガンツ博士によれば、物語には3つの要素があります。自分はなぜこの活動をしているのか、背景を語る「セルフ・私の物語」。その価値観を相手と共有する「アス・私たちの物語」。そしてなぜ今、行動に移さなければならないのかを伝える「ナウ・今の物語」です。Self/Us/Nowですね。頭文字だとSUNです。

ガンツ博士「人々が行動を起こしてくれるのは、理念ではなく感情に響いたときです。大事なのは、自分を
突き動かす動機。その根底にある価値観を言葉で表し、相手と共有することなのです」。ガンツ博士はまず「セルフ・自分の物語」を語ることから共感は生まれてくるといいます。参加者も次第に納得していく様子が分かりました。

このワークショップは市民運動やNPOの人たちを想定したものでしたが、企業での変革活動にも同じようなことが云えるのではないかと感じました。一般社員に伝える際にはこうしたストーリーで伝えることに腐心してきましたが、そもそも中核となるべきメンバーにいかに共感してもらい、自発的に参加してもらうのか。それが最初のハードルです。難しさを熟知しているだけに、とてもよいヒントをもらったと思います。

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家族写真をSNS/ウェブ上に公開してはいけない

ブログ、facebook、写真共有サービス、LINE、等々。SNSはどんどん多様化し便利になるが、そこに潜むリスクを理解した上で楽しみたいもの。何の気なしに家族写真データをアップすることが、思わぬ将来のリスクにつながるかも知れません。


年始メッセージのやり取りで、facebookやご自分のブログで家族写真を公開しているのをお知らせいただくケースが幾つかありました。実に微笑ましいのですが、そこに将来のリスクが潜んでいることをご存じでしょうか。また、Twitterでご自分の行き先を逐一報告される、まめな人には感心してしまいますが、やはり懸念が残ります。ご自分はもちろん、家族の方にも、過度な個人情報をSNS/ウェブ上には公開しないようお薦めします。

少し具体的にお話ししましょう。あなたに一人っ子の年頃の娘さんがいたとします。あなたは仕事柄、セミナーで話したりインタビューを受けたりしたことが何度かあり、ご自身の顔写真が名前・役職と共に幾つかのウェブ上でも公開されています。facebook上では出張先での様子などが「友だち限定」で掲載されています。

一方、あなたの娘さんは大学に入ってからボーイフレンドを見つけます。でもご両親に紹介する前に、彼のちょっと変な性格に気づき、娘さんは別れることを一方的に宣言します。

でも彼は別れたくなくて、あなたの娘さんにしつこく電話やメールをしてきますし、行き先々に現れて話し掛けようとします。いわゆるストーカー行為です。娘さんから事態を告げられたあなた方夫婦は警戒し、警察にも相談しますが、元カレは暴力的な行為に及んでいるわけではなく、緊急的な脅威ではないということで、様子を見ることになってしまいます。

そんなある日、あなたが出張に出掛け、奥さんもここぞと羽根を伸ばしに昔の友だちとお食事に出掛けます。一人留守番をすることにしていた娘さんがいつもより早めに学校から自宅に帰ると、玄関わきに待ち構えていた元カレがぬっと姿を現し、娘さんに復縁を迫ります。パニックに陥った娘さんは恐怖の叫び声を上げ…。

さて一体なぜこんなことが起きたのでしょうか。鍵は顔認識技術です。元カレは、実はちょっとしたコンピュータ・オタクでした。まず彼は、娘さんのfacebookやブログから、娘さんの行動を調べ上げ、行く先々で待ち構えることができました。それだけでなく、娘さんは以前、ご自分のfacebook上で家族旅行のときの画像も公開していました。そこに写っている父親らしき人物の顔画像とマッチする画像をウェブ上で探し当て、苗字と娘さんから聞いていた情報から、あなたが彼女の父親であると確信できました。そしてあなたの職業と役職、出身校などの個人データを調べ出しました。そして偽名を使ってあなたの後輩を装い、あなたとfacebook上で友だちになっていました。そしてあなたがTwitterで告げる出張日程を正確に掴んでいました。奥さんについても同様です。

あなたの家族の行動は、盗聴器がなくとも、元カレには筒抜けだったのです。それらの個人情報はあなた方ご自身の手で公開されていたのです…。いかがでしょう。あなたは「我が家は大丈夫」と確信を持って答えられますか?(「ウチは息子だけで娘はいないから大丈夫」?いえ、そういう問題じゃなく…)。

顔認証技術は凄まじい進化を遂げており、近い将来、ご本人と家族、および友人が何気なく公開したインターネット上の写真および動画の画像が片っ端から結び付けられるようになるでしょう(現時点では顔認証の精度は発展途上ですが、ネット上の画像の大半が消せずに残るため、技術が完成した時点で難なく実行されるでしょう。またfacebook上のデータはGoogle検索ではヒットしませんが、「友だち」になってしまえば辿れます)。それはほぼ確実に個人情報の特定に結びつくと考えられます。

上記の仮想シナリオでは娘さんが主に画像を公開していましたが、あなたご自身のSNS投稿で写真や個人の予定が特定できるかも知れません。そして一般に公開されている同窓会や交流会などの写真データも解析する側からは鍵の一部となります。また、LINEで直接共有されるかも知れません。

特にお年頃もしくはその手前の年齢のお子さんを持つ親御さんには、こうしたリスクを知っておいていただきたいと思います。様々なSNSがありますが、決して家族写真や家族情報を「公開」することはされないよう、老婆心ながらご忠告申し上げます。

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オランダ発の農業革命、中国そして日本の農業を変える!?

1月4日(土)に放送された「ドキュメンタリーWAVE」は「「中国の農業を改革せよ~密着 オランダ“アグリ革命”」。オランダで開発された最先端の技術がアジア、特に中国の農業を大きく変えようとしている様子を伝えてくれました。

光、温度、CO2などをハウス内でコンピューター管理し、トマトなどの野菜を大量に作り出すことができるハイテク農業です。ハイテクハウスを使ったアグリ革命はすでに世界各地で起き始めています。その震源地はオランダです(以前にもこの欄で採り上げました)。国土面積が日本の10分1という小国にもかかわらず、最先端の農業技術を開発し、今や世界第2位の農産物輸出大国へとなりました。

そのオランダの有力企業が今最も力を入れているのが中国進出、そしてその先には日本です。オランダ政府も支援し、その成功経験とノウハウを用い、中国の農業を変えようとしています。一方、農薬の使い過ぎが社会不安さえ呼び起こしている中国。政府も後押しして農業の近代化を目指す中国で、今、IT技術を駆使したハイテクハウスの栽培が広まりつつあります。土を一切使わず、各種センサーで状況を把握し、パソコンで生産管理をする野菜工場です。特に熱心なのが農業への新規参入を狙う畑違いの企業だといいます。

ハイテクハウスで栽培された野菜は基本的に無農薬。普通の野菜にくらべ5倍程度と高い価格にもかかわらず、所得水準も上がり食の安全を大切にする消費者が増えてきた中国の都市のスーパーでは、先行して取り組んだ事業家が育てた無農薬野菜の人気がウナギ登りの模様です。

今のボトルネックはハイテクハウス設備費用の高さ。特に水を循環させる機器、温度調節するエアコン、無人で苗を植える機械などなど、様々な設備や機能があるわけですが、中国の農業事業者には必ずしも使いこなせないし、不要な機能もあると現地の社員は考えたそうです。その意見を本社がくみ取って出来上がったのが、よりシンプルで安価な中国市場向けのシステムです。これが今、中国の企業向けだけでなく個人の大規模農家にも関心を呼んでいるのです。

計画が進めば、質のいい野菜が安価で大量に、中国、そしてアジア、いずれは世界じゅうに流通するようになります。何と言っても土地の広さでいえば桁が違う中国です。そしてきっと東南アジアや韓国でも導入が進むに違いありません。

農業を「輸出産業」へと変換を図りたい日本にとっても大きな脅威であると同時に、日本も自国の技術にのみ拘らずにオランダの経験と技術に学ぶべきです(実際、林農水大臣がオランダの現場視察に行った様子もちらと映っていました)。定年を迎えて時間が余ってしまう人は大量に増えます。その人たちをこの仕組みに引き入れ、農業のコストを下げ、生産性を上げることを目指すべきと感じました。さもないと、JAという化け物組織に食い物にされて高コストのままの日本農業は先細りのままです。今こそ踏み出すときです。

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箱根駅伝人気の凄まじさの一端を見た

(この正月から文体を変更しています)

珍しく箱根駅伝の見物に出掛けました。小生は喪中の身分なので初詣にも行けず、買い物などもする気にならず、じゃあ暫く(10数年以上)見ていなかった箱根駅伝でも見ようと思い立ったのです。

自宅からは鶴見中継所が比較的近いので、早起きして電車を乗り継いで出掛けました。現場に近づいた時点でも気づいたのですが、予想到着時刻まで30分以上あるというのに、中継所周辺は既にかなりの人で埋まっていました。

「正月というのに、いや正月だからこそというべきか、皆さん暇だなぁ」というのが(自分を棚に挙げての)正直な感想でした。「はっきり言って、テレビ中継のほうがレース状況も各選手の表情も分かるのに」などと思いながらも、「でもやっぱり臨場感は違うよな」とも思いながら。

その後もどんどん人が増え、他の場所を探しに動くこともままならないほどになりました。ほとんど有名な神社での初詣ですね。

人ごみの中で揉まれながら待っているのに暇だったので、TV画像かインターネット中継のストリーム放送がないものかとスマホで探しましたが、これが全然見つかりません。数年前の箱根駅伝のサイトだったり個人の感想だらけのブログだったりと、見当違いの(屑)ウェブサイトしか検索に引っ掛かりません。グーグルって緊急のときにはあまり役立たないものだと実感しました。

色々やっているうちにラジオしか当てにならないようなので、そのアプリをスマオでダウンロードしました。こんなことでもなければ使わなかったアプリなので、今後も使わず仕舞いになるかも知れません。でもその場の役に立ち、先頭ランナーがどこら辺に差し掛かっているのか、鶴見中継所まであと何十分くらいで到着しそうなのか、逐一アナウンサーが伝えてくれます。ラジオっていざという時に役立つものと再認識しました。

そして肝心の選手たちが中継所にやってきました。え?それが最初の感想です。前に何列かいる人たちの首のすき間から見えたのは、とんでもなく速いスピードで駆け抜けていく選手の人影でした。先頭ランナーが過ぎて暫くして2人目、そのあとは次から次へと選手が来るのですが、あまりに速くて、撮影しようと頭の上にかざしたスマホの撮影スイッチを押すタイミングがよく分かりません。

中継所のほんの少し手前にいたので、きっと選手も疲れている分、よく見えるだろうと勝手に思い込んでいたのですが、とんでもない。全く当てが外れました。さすがアスリート達。実に感心しました。

あとで見た写真画像のほとんどは手ぶれか、選手ではなく沿道のギャラリーが主役のように写っていました。仕方ないので、facebookには中継所のアナウンサー達が映っている場面をアップしておきました(どうもしまらない…)。それにしても正月からスマホは大活躍で、1時間強のことなのに(往きにはフル充電だったのが)帰りには電池切れになっていました。

うーむ、次回からは中継所よりずっと後のほうに陣取り、タスキを渡す場面が写せるようなスポットを確保しないと意味がないことがよく分かりました。I’ve got a lesson.

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