主婦パワーを生かすには、社会制度に加えて企業の覚悟と眼力が必要

録画してあったNHK「クローズアップ現代」のシリーズ 主婦パワーを生かすの①②を観ました。①は「“高スキル主婦”が中小企業を救う」、②は「検証 103万円・130万円の“壁”~どう変わる?家計と働き方~」でした。

①の背景としては、景気回復で労働力不足に拍車がかかる中、「出産を機に退職したスキルの高い主婦」に中小企業が人材確保の鍵として期待しているのです。

国は昨年度から「中小企業新戦力発掘プロジェクト」を開始し、全国各地で行われる登録会で、‘中小企業が求める人材’と‘主婦のスキル’をマッチングする試みを始めています。最大3か月の職場実習が可能で、実習の費用はすべて国が負担します。それにより1300人以上の主婦の就職が決まるという成果を上げており、即戦力として中小企業の新規事業の開拓や販路拡大を実現するケースも増えているそうです。番組では幾つかの事例を採り上げていました。

荒川区にある印刷会社で働く、大手アパレルメーカーで17年広報を担当していた女性です。小学生の娘がいるため週3日、1日4時間のパート勤務です。しかし彼女の仕事はPRにとどまりません。商品開発にも積極的にアイデアを出します。

もうひとつは従業員100人のこの金属加工メーカーに派遣された、営業のスペシャリストです。大手の卸売り商社に17年勤務し、営業の戦略を立ててきました。2人の娘を育てるため週4日、1日5時間の勤務で月収は20万円ほどです。営業のリーダーを任され、月に2度、戦略会議を開いています。この人は成果を認められ、4月には短時間勤務の正社員になりました。

また、時間制約のある主婦が力を発揮できるよう、就業規則の抜本的見直しに取り組む企業も紹介されていました。小生が関わった最近のプロジェクトでも出産を機に退職・休職している優秀な女性従業員に在宅で仕事をしてもらう工夫をしました。中小企業の活性化の起爆剤と期待される、家庭に眠る高スキル主婦。その可能性は大きいと思います。

②の背景には「女性の活躍推進」のため、税と社会保障制度の見直しが行われようとしていることがあります。所得税の「配偶者控除」や、保険料を負担しなくても年金が受給できる「第3号被保険者制度」などです。「103万円、130万円の壁」と呼ばれ、「女性の就労拡大を抑制する効果をもたらす」可能性があると言われているのです。

番組ではまず、103万円の壁を意識している人の場合を紹介しました。3人の子どもを育てながら、パートタイムで事務の仕事をしています。1日6時間、週3日から4日働き、年収を100万円程度に抑えています。

この女性の年収が103万円以下なら、夫の所得に配偶者控除が適用されるため所得税が減り、その分この世帯の手取りは7万6,000円増えます。しかし女性の年収が103万円を超えると、その額が徐々に減っていきます。さらに自分の収入にも所得税や住民税がかかるようになり、負担感が増すといいます。

しかし女性が最も気にしているのは、夫の会社から支払われる扶養手当です。自分の収入が増えると、夫の会社の手当が支給されなくなることがあるため、世帯の年収は14万円ほど下がります。こうした負担感のアップを避けようと、自分の働き方に制限を加えてしまうのが103万円の壁の現実なのです。

もう1つの壁、130万円の壁にとどまっている人の場合です。首都圏に住む40代の女性。時給800円で、通販ショップの運営をサポートする仕事をしています。1日6時間働き、年収は110万円ほど。税金の負担はあるものの、より収入を増やそうと、103万円の壁は意識せずに働いています。警備の仕事をしている夫の手取りは月11万円ほど。世帯年収は240万円(年間の所得が200万円台前後の世帯は、今の日本で最も多いグループ)。

年収130万円以上になると、この女性の場合、自分の会社の社会保険に加入しなければなりません。その場合、保険料を年間およそ22万円負担することになります。元の手取り額を実現するには、年収154万円以上働く必要があります。ところが女性の場合、仮に1日8時間フルで働いても、年収は146万円ほど。保険料の負担があるため、かえって家計が悪化するのです。

正社員として働こうにも、資格や年齢に条件を設ける企業が多いため、40代のこの女性には転職は難しいのが現状です。これが130万円の壁の現実なのですね。

女性の前に立ちはだかる103万円と130万円の2つの壁。5月の政府の税制調査会で、配偶者控除について議論が始まりました。控除の見直しは家計への負担が重くなるとして、慎重な議論をすると表明しています。制度の見直しに合わせて政府は、女性が働きやすくなるよう、保育所や学童保育の充実、家事支援サービスの利用促進などの施策を、同時に進めていくことを検討しているそうです。是非そうしていただきたいですね。

ただ、本来的には性別や年齢に関係なく、企業が優秀な人材に適切な年収を支払うようになれば、大半の問題は解決する話です。そこまでの眼力が企業側にない、というのが問題の本質のように小生には思えます。
スポンサーサイト

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

調理家電はまだまだ成長途上

6月19日放送のガイアの夜明け(TV東京系)では、新たな付加価値を持った「調理家電」が取り上げられていました。題して「今までにない"調理家電"を作れ! ~フィリップス...シャープ...開発の裏側~」でした。こうした付加価値商品・サービスのアイディア作りは小生も時折頼まれるので、非常に参考になりました。

最初はオランダの大手家電メーカー「フィリップス」。去年発売された「油を使わずに揚げ物が作れる」という、「ノンフライヤー」は、日本で30万台を売り上げる大ヒットとなりました。人用のミキサーや製パン器などもヒットしています。同社は、日本市場向けに新たな調理家電の開発にかなり前から取り組んでいました。その一つが「家庭で簡単に生麺を作れる機械」です。「うどん」「そば」「ラーメン」「パスタ」など様々な麺を家庭で作れるというスグレもの。

まもなく発売されるこの商品、実はその噂は小生も聞いていました。番組ではなんと去年の6月から開発の裏側を1年間の長期にわたって独占取材。 フィリップスがどのように日本市場を調査し、便利な機能をどう開発したか、番組はその極秘の裏側を明らかにしてくれました。

責任者は日本人。でもフィリップスの調理家電の開発拠点は上海オフィスです。中国製の中華麺製造器はまったく「コシがない」麺しか作れず、現地に住む日本人女性達からすぐにダメ出しされます。しかも麺が出てくるキャップの部分に生地が詰まり掃除が大変そうだというのです。鋭いですね。

彼ら外人と日本人の混成チームは根本から考え直す必要を感じました。そのアプローチは日本の家電メーカーとほぼ同じ。まず日本に同行し、日本のうどんを食べ、その違いを自ら感じます。日本のうどんの多くは断面が四角い形をしており、ここにもコシを出す秘訣がありそうです。

そして伝手をたどって実際の製麺の現場を訪ねます。今や製麺所でも業務用の製麺機が主流です。その動きを観察し、素人には分からないコツを製麺所の職人から聞き取り、それをいかに機械で再現できるかを、試行錯誤と工夫を重ねて実現したのです。それに家庭用の小麦粉でシェア4割をもつ日清製粉の協力を得たことも大きいと思います。やはりノウハウが蓄積されていますからね。

彼らがコシを生み出すために改良したのはキャップにつけた段差でした。それにより三段階で圧力をかけるという、日本で得たアイディアでした。キャップに残る生地の掃除をするための掃除キットも開発しました。

製品完成後、製麺所のベテラン職人が麺の出来上がり具合に感心し、「こんなにうまくできちゃ、お店屋さんが困っちゃうね」と言っていたのが印象的でした。本当にどうなるのでしょうか、心配になりました。でも家電の製パン器が売れたにもかかわらず、街のパン屋さんが売れなくなって廃業した、という話が聞こえてこないのですから、何とかなるのでしょう。

一方、日本のシャープも新たな調理家電を生み出していました。実は、急須を使ってお茶を飲むと、カテキンなどの栄養素をあまり多くは摂取できないのだというのです。そこでシャープは、栄養素を損なわずにお茶をいれることができる、今までにない"お茶メーカー"を開発したのです。これでカテキンをたっぷり取ることができます。

でもこの商品、「コーヒーメーカーがあるのだから、お茶メーカーがあってもいいよね」という極めて単純な発想のような気がしますが、実態はいかがでしょうか。番組ではシャープの開発者たちの苦労が色々と紹介されていました。こちらも目標の仕様(2分以内に一人前に必要な0.6gの粉末を作り、しかも粒の大きさはお湯に溶けやすい20ミクロン以下にすること)は達成しました。あとは生活者に受け入れられるかどうかです。

ヒットしている調理家電の共通点は、新しい食べ方や飲み方を提案し、今までにない機能を持ち合わせたという斬新さにあるのでしょう。新しい調理家電が考え出される可能性はまだまだあります。

ダイソンなどを念頭に置いていたのでしょうが、シャープの開発者が「忸怩たる思い」といった発言をしていました。その通りです。日本の家電メーカーにもっともっと頑張って欲しいものです。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

農業も介護もロボットの最大課題はコスト

6月16日放送のワールドビジネスサテライト(TV東京系)では、特集 検証・アベノミクス成長戦略(3)として、農業分野でのロボットの活用への期待が取り上げられていました。題して「売れる農業ロボット作れ 無人でイチゴ収穫」。

愛媛県の松山市のイチゴ農家ではイチゴ収穫ロボットが活躍しています。人に代わって熟したイチゴだけを検出して自動で収穫するロボットが開発され、今、無償での実証実験中なのです。機能的には満足ですが、導入価格は1000m3あたり3500万円と随分高価なのがハードルとなりそうです。自己資金での導入は難しいと農家の渡辺茂さんは語っていましたが、当然でしょう。

開発したシブヤ精機の岡崎剛政専務は「農家にとって元が取れる価格を把握しきれていない」と述べていました。イチゴ収穫ロボットは国から開発費が投じられていますが、事業を担当した農研機構 生研センターも実用化の難しさに直面しているようです。はっきり言ってマーケティングセンス・ゼロですね。

和歌山県有田郡ではパワーアシストロボットの実験がされています。これを開発したのは和歌山大学の八木栄一特任教授。重いものを沢山持つみかん農家の助けになるロボット作りに取り組んでいます。八木栄一特任教授は「コストダウンして1台当たり100万円で売りだそうとしている。販売目標は100台」と語っていました。専用部品ではなく汎用的な部品を使うことでコストダウンを目指しているようです。

でも協力してくれている農家に尋ねると、「50万円を切らないと農家は買えない」と断言していました。確かにそうでしょう。差額の50万円ほどをどう埋めるか、さらなるコストダウンの道筋があるか(台数が出る家電製品との部品共通化しかないと思います)、自治体の補助金が使えないか、などあらゆる手立てを講じないと、難しそうです。これは役人、大学教授の手に負えるタスクじゃないと、残念ながら思えます。色々な伝手をもつ大企業の企画部門の人間か、製品開発分野に強いコンサルタントが真剣に取り組まないと実現は難しいでしょう。

6月18日放送の首都圏ネットワーク(NHK総合)で放送されていたのが、国家戦略特区での川崎市の動きでした。ロボットスーツを開発した企業と協定を結んだのです。ロボットスーツ「HAL」を製造・販売しているCYBERDYNEの山海嘉之社長と、川崎市の福田市長が調印式に出席しました。今後、ロボットスーツを介護施設や医療機関に導入し、実証実験を行うことになります。

同社は筑波大学発のベンチャーで、HALは同大学大学院教授も務める山海嘉之社長が、20年以上にわたり続けてきた基礎研究をもとに開発したものです。足が不自由な人が一定期間装着して治療を行うと、脳・神経・筋系の機能再生が促進され、歩行機能が改善されるというのがウリです。昨年にはついに欧州で医療機器の認証を取得し、世界で初めての「治療ができるロボット」となっています。

同じ神奈川県藤沢市の介護施設ではロボットスーツを生活に取り入れる取り組みを行っているのですが、ロボットスーツは医療機器とは認められていないため、高額な費用がかかるというのが実情です。そこで、川崎市では実証実験で効果・安全性を検証し、ロボットスーツ普及のために医療機器認定などを求めていく方針なのです。こうした公共側の思い切った取り組みにより、人手不足が明らかな介護分野でロボットスーツが普及すればいいですね。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

函館No.1のハンバーガー店の経営は真を見極める

6月19日に 放送された「カンブリア宮殿」は函館ナンバー・ワンのハンバーガー・ショップ、ラッキーピエロの社長、王一郎(おう いちろう)氏を招いての「大手に勝つ!地域No.1店のつくり方~熱狂ファンに愛される異色ハンバーガーチェーン」でした。初めて知ったチェーンですが、次に函館に行ったら是非食べたいと思いました。

全国ブランドの大手ハンバーガーチェーンを向こうに回し地域ナンバー1の人気を誇り、函館市を中心に16店舗を展開するラッキーピエロ。地域シェアは65%とダントツ。年間180万人が殺到する超人気店です。函館の人は何かあれば「ラッピ」に来店しますし、誕生会や退院祝いパーティでは「ラッピ」のハンバーガーを皆でほおばるのです。

大手を凌駕するローカルチェーンは“真逆経営“で、ともすると非効率に見えます。

まず、ハンバーガー店なのに、メニュー数は100種類を超えます。名物メニュー「チャイニーズチキンバーガー」(甘辛く味付けした鶏の空揚げが具材。村上龍氏と小池栄子さんにもウケていました)をはじめ、ハンバーガー類だけで15種類以上。ハンバーガー店なのにカレーやオムライス、かつ丼などもあります。

地元・北海道産の食材にこだわり、原価率は業界平均よりかなり高めの50%超。店舗も1店1店独自のテーマが設定されていて、内装が全て異なります。王社長は「函館から出る気はない」と語り、東京進出など規模拡大に走るつもりはないと断言していました。 規模の追求と標準化で低コストの効率的経営を進めてきた大手の真逆を行きます。「地域になくてはならない存在になれ」「客を愛すれば地域で長く愛される店になる」のが、ラッキーピエログループの創業社長・王氏のポリシーなのです。

接客方針も独特です。常連客を“えこひいき”するのです。来店回数が増えると4段階で利用金額の還元率が高まるポイント制。最高ランクの常連客は「スーパースター」と呼ばれ、来店すると大歓待を受ける(店長がハグしていました!)など特別なサービスもありますし、新メニューの試食会に招待され、意見を表明することができます。常連客を「身内」と位置付けているのです。

「えこひいき」された客は自然と店に愛着がわき、さらに来店頻度が上がり、友人を連れてくるなど、熱狂的なファンが増えていくのです。 王社長は「会社のエネルギーは本来、一番買ってくれる客に注ぐべき」と考えています。多くの客に一度来てもらうのではなく、1人の客に長く通い続けてもらうことを重視しているのですね。


函館の小さなハンバーガー・ショップだったラッキーピエロが人気店になったきっかけは、実は口コミだったそうです。オートバイ愛好家が宿泊する宿に置かれた、旅行中の体験を書き込むノートから評判が広がり、バイクに乗った客が大挙して訪れるようになり、やがて人気は地域全体に浸透していったのです。 口コミの大切さに気付いた王氏は、客を驚かせる仕掛けを次々と打ち出しました。幾つか驚きのメニューが放送されていましたが、特大大盛りのかつ丼、タワーのようなハンバーガー、等々。なるほどfacebookやtwitterで誰かに伝えたくなりますね。

でも、村上龍氏も指摘していましたし王社長も認めていましたが、こうした目立つためのメニューがあっても、それだけでは意味がなく、結局は美味しくて安全という食の基本がベースなんですね。だって店の誰もが「おいしい、おいしい」って嬉しそうなのですから。やっぱりここのチャイニーズチキンバーガーを食べたいなと思いました。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

「残業代ゼロ」法案にみる政策パッケージの矛盾

安倍政権の掲げる成長戦略には様々な政策が含まれますが、大方針または優先度づけが欠如するためか、政策間に矛盾が見られます。企業での改革プログラムを立案・推進する人々にとっては「他山の石」とすべきものです。


国家、産業、企業のいずれの単位でも、大きな改革を進める場合には一つだけでなく幾つかの政策を組み合わせた「政策パッケージ」として打ち出して推進することが多いものです。安倍政権の掲げる「3本目の矢」である成長戦略もまた、多くの政策群から成り立っています。その中でも雇用・労働規制の緩和は注目すべき政策群となっています。具体的には(1)解雇ルールの明確化、(2)非正社員の継続雇用、(3)時間規制の適用除外の3つが代表政策で、安倍政権は雇用特区でこれらの規制緩和を行い、その後全国に適用を拡大することを狙っています。

こうした雇用・労働規制緩和の狙いは、「外国資本の日本への投資意欲を高めるため」や「働き方の多様性を広げるため」という建前が掲げられてはいますが、産業界(特に大企業)が強く要望しているもので、実際には「いかに安い労働力を確保するか」「働き盛りのサラリーマンにいかに安く働いてもらうか」といった当面の人件費総額圧縮が本音でしょう。

3つともそれぞれ重大な問題を内在する「劇薬」なのですが、特に3つ目の「時間規制の適用除外」は潜在的なインパクトが大きい上に、安倍政権、いや日本社会の最大の課題である「晩婚少子化対策」と真っ向から矛盾するという性格を持ちます。それゆえ仮に法案が成立しても、特区での実施状況とその副作用を慎重に検証する必要があります。

何を懸念しているのか、もう少しブレイクダウンして見てみましょう。

「時間規制の適用除外」とは「残業代ゼロ」の対象を、年収が1000万円を超える社員のほか、高収入でなくても労働組合との合意で認められた社員とすることを検討するものです。いずれも本人の同意を前提としています。ちなみに、現在の労働基準法で企業が労働時間にかかわらず賃金を一定にして「残業代ゼロ」にすることが認められているのは、部長職などの上級管理職や研究者などの一部専門職に限定されています。

既に現時点でも、年収が1000万円を超える社員だけでなく、本人および労働組合との合意があればという条件ながら一般社員への適用拡大の道筋が見えていますが、特区だけでなく全国に範囲が拡大されれば、やがて年収のハードルはじりじりと下げられていく可能性が高いでしょう。そして一旦労働組合が同制度を認めた会社において、上司から「よい評価をされたいのなら合意せよ」と迫られたときに拒否できる従業員は少ないでしょう。その主ターゲットは管理職手前の層、30代の中堅サラリーマンです。まさに子育てに向き合わなくてはならない世代です。

「残業代ゼロ」の賛成派は性善説に基づき、次のように説きます。「残業代ゼロとなれば誰もが速く仕事を片付けようとするから、だらだら夜遅くまで残業したり休日出勤したりする人はいなくなる。その分、家庭サービスに精を出すだろう」と。しかし、「残業代ゼロ」の対象となった30代サラリーマンがどういう働き方をするかは、本人以上に上司および経営者の考え方で左右されるのが現実です。

無理の効かない40代以上の管理職やまだ仕事を覚え切れていない20代の若手よりも、確実に頼りになる30代の中堅に多くの仕事を振るのが普通の上司の行動です。ましてや経営者の視点からは、残業代の必要な若手よりも「残業代ゼロ」の人間に仕事を集中させるのが合理的と考えてもおかしくはありません。これまでは残業時間規制があったので歯止めが掛っていたのが、多くの職場でその遠慮がなくなる可能性は高いと小生はみます。

すると何が起きるのか。今以上に30代の中堅サラリーマンは仕事を抱え、さらなる残業・休日出勤を余儀なくされるケースが続出するのではないかと思います。その結果、彼らの妻たちは孤独な子育てを余儀なくされ、2人目の子供を作ろうという意欲は減退するでしょう。そうした状況を見ている後輩の女性たちはさらに結婚時期を遅らせるか、結婚そのものに踏み切れずに終わってしまう方も増えるでしょう。当然ながら男性も出遭いの機会が減るうえに、デートする時間も減り、女性を口説くタイミングも逃しかねません。しかも残業代という収入の重要な一部がごっそり減ってしまうので、結婚や新居に向けての貯金もままならないという事態が、より多くの層に広がる恐れが高くなります。

こうした状況は近年の不況下で繰り返され、強化され、晩婚・少子化を加速する主要因となったことは多くの識者の指摘するところです。小泉政権や第一次安倍内閣で緩和された労働規制と労働組合の弱体化により、減った正社員をカバーすべく残された従業員がサービス残業を余儀なくされ、こうした構図が強化されたのです。皮肉にも、第二次安倍内閣のアベノミクス景気のおかげで賃金アップに向かい、ホワイトカラー層の雇用増も生まれ始めており、この悪循環が減速・解消する可能性も近頃は出てきました。しかしその悪循環を安倍内閣は、「時間規制の適用除外」により再び動かそうとしているのです。

何といっても日本社会の最大・根本的な課題は晩婚少子化対策です。最も恐れるべきは、晩婚少子化、ひいては生産年齢人口の縮小がもたらす国内経済の縮小であり(これが確実に見込まれるために企業は国内に投資しなくなっているのです)、地域社会の崩壊であり、社会保障制度の自壊です。並んで大きな課題とされる高齢化対策は、逃れられない結果に対する対処療法でしかありえませんが、晩婚少子化対策は未来の話ですから政権の意思と政策次第で抜本的に改善できる余地があります。

安倍政権は一方で、晩婚少子化対策のために「子育て支援」メニューを幾つか打ち出してはいますが、迫力不足は否めません。人口1億人を保つと掲げながら、具体的・抜本的な政策を矢継ぎ早に打ち出すことをためらっているかのようです。その一方で、晩婚少子化対策と全く思想的に相反する、副作用の恐れの強い「時間規制の適用除外」を執念深く推進しようとしているのです。

こうした矛盾により政策が互いの効果を打ち消しあう事態が生じるのは、政権の中で優先順位がついていないせいだと類推できます。さらに司令塔が不在なのか、そうした役割にある方がこの矛盾に気づいていないか、または矛盾に気づいていながらも安倍首相が「残業代ゼロ」に個人的に拘るゆえにどうしようもないとさじを投げているのか、いずれかでしょう。

国の政策パッケージが多種多様な官僚発政策群のごった煮である場合、こうした政策間の矛盾が生じることは実は過去にもよくありました。経済が成長している時代はそれでも大した問題はなかったのですが、今のように低成長、いや縮小の時代においては致命的な結果を招きかねません。

同様に企業経営における改革においても、こうした政策間で矛盾があると、改革効果を打ち消しあい、それが意図しない暗黙のメッセージを伝え、思わぬ副作用のみ発現するという事態を招くことがあります。改革の思想とそれに基づく優先度づけが重要なゆえんです。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

トヨタ復活の求心力は元「御曹司」・豊田章男社長

6月12日に 放送された「カンブリア宮殿」はトヨタ自動車社長の豊田章男氏を招いての拡大SP「25兆円企業 トヨタ復活劇の真実!~豊田章男 激動の5年~」。なかなか見応えがありました。

豊田社長は製品発表以外にあまりメディア露出をしないため、メディア嫌いといわれ、この番組でも冒頭に聞かれて、「まぁそうですね。でもこの立場になってそうとも言っていられないので、出てきました」と言っていました。正直な方ですね。

豊田氏が社長に就任してからの出来事は、過酷な試練の連続でした。2009年はリーマンショックにより71年ぶりの営業赤字。このときには名古屋港に販売が見込めなくなったトヨタ車が溢れてしまっていた(ので「JITは輸出向けには成り立っていないな」と感じた)のを覚えています。翌2010年にかけては世界規模のリコール問題が発生し、米下院の公聴会で豊田自ら証言する事態となりました。結局、運転手の問題だったことが判明していますが、当時はそれを証明できないまま(小生は冤罪の可能性が高いと言い続けていましたが)、議会での吊るし上げに遭ったのです。あれはひどいものでした。

そして追い打ちをかけるように起きたのが東日本大震災、さらにはタイの大洪水。それと重なるように超円高…(不況で大震災により疲弊した日本経済がなぜ円高だったのか、今も陰謀説が消えません)。こう考えると、トヨタに限らず日本経済には試練が続いた時期です。しかし創業家出身社長はそれらの危機を見事に乗り切りました。6年ぶりに過去最高益を更新し、世界初の1000万台販売を達成しています。小生は前の社長である奥田・張の両氏の経営を尊敬していますが、こんな逆境を見事に乗り切った豊田氏はもっと凄いと思います。

14年ぶりの創業家からの社長就任となった豊田章男氏は、創業者・豊田佐吉のひ孫です。佐吉翁は海外製しかなかった織機の改良に挑み、独自のカラクリ全自動織機を開発して莫大な富を築きました。その息子の喜一郎氏は、佐吉翁が織機で得た資金を大胆に自動車作りに投資、大衆国産車を作り上げました。

そんな先代たちのものづくりへの執念を受け継ぐ章男氏は、「300万台を死守する」と国内生産体制の維持を明言しています。そして今、新たな自動車産業の一大拠点を、大震災に見舞われた東北に作ろうと奔走中です。世界と闘うためにも、第三のものづくり拠点を成功させるべく、トヨタは地元企業の発掘・育成、そして地元学生の教育に精を出しています。

豊田氏が掲げたキャッチフレーズ「FUN TO DRIVE,AGAIN」は、父・章一郎氏が80年代に掲げていた「FUN TO DRIVE」を復活させたものです。これは豊田氏が数字の追求よりも「走る楽しみ」の追求を強くメッセージとして打ち出していることとつながっているようです。若い人が運転免許を持たずクルマに執着しない今、章一郎氏の時代以上にクルマの「走る楽しみ」を若い人たちに知ってもらいたいという切迫した危機感があるのだと思います。

豊田氏は自ら新車の最終審査のためにサーキットで運転して(ほぼ毎月のようです)評価したり、海外や地元のラリー大会にドライバーとして出場したりするなど、「クルマ好き」「現場重視」を体現しています。これは創業家ならではの仕事振りですね。

「もっといいクルマをつくろう」と熱く語る豊田氏には、純粋で誠実なニッポンの経営者の血脈を感じます。これがガイジンと評論家ばかりの日産、サラリーマンと北米ばかりのホンダ、インドばかりのスズキにない、「ニッポンのトヨタ」として応援したくなる要素ですね。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

異業種の共同戦線は組み合わせ次第で効果大

6月3日放送の「ガイアの夜明け」を遅ればせながら昨日観ました。題して「今を生き抜く!共同戦線」。とても対照的な2件がフィーチャーされており、(実はそれほど期待せずに観たのですが)興味深い内容でした。

一つめは「コンビニ×カラオケ」の組み合わせ。これは想像以上によい組み合わせでした。コンビニのファミリーマートと、「カラオケDAM」を運営する第一興商が手を組んだ、一体型店舗が4月に東京・蒲田駅前にオープンしています(正確には第一興商がオーナーで、コンビニのFC店として展開)。正面のカウンターには、カラオケの受付とコンビニのレジが共に設置されています。カラオケルームは、飲み物・食べ物の持ち込みがOK。カラオケの利用客に、コンビニで弁当や総菜・菓子・飲み物などを購入してもらうのが狙いです。確かに大いに安く済むので、若い客やサラリーマン・OL客には大受けでした。

この共同店舗ではキッチンやボックスまで飲食物を運ぶスタッフが不要なので、出店コストを大幅に削減できるということです。確かに。客にも店にもメリットがあります。

スタート直後、意外な客層で賑わっていました。それは高齢者グループです。都会での安い社交場なんですね。でもファミリーマートには明らかな課題がありました。彼らは併設のコンビニではなく別の店(スーパー、弁当屋)で飲み物・食べ物を買ってくることでした。確かに普通のコンビニで売っているのは若者向けの脂っこい食品やインスタント食品ばかり。高齢者の口には合わないのでしょう。その様子を観察していたファミリーマートの担当者が本部と掛け合い、高齢者向けの食品を開発させ、来店する高齢者に新商品をアピールし続けると、少しずつ店内で買ってくれるようになっていく様子が放送されていました。

この連携は成功すると思います。

もうひとつの融合は百貨店×郵便局の組み合わせ。百貨店業界トップの三越伊勢丹と全国2万以上の郵便局を持つ日本郵便が共同で、新たな通販カタログ事業に乗り出したのです。三越伊勢丹グループのバイヤーが選りすぐった衣料品や雑貨などを、全国の郵便局を通じて販売するという事業モデルです。

日本郵便の通販は、各地の特産品など食品分野には強いのですが、それ以外は不得意というのが現状。三越伊勢丹と組むことで、そのブランド力と商品力を高める狙いです。一方で、三越伊勢丹側は従来とりこぼしていた地域の需要を、全国隅々まで網羅する郵便局のネットワークで掘り起こしたいという狙いです。番組の中でも、来店するなじみ客に郵便局スタッフが売り込んで買ってもらっていましたが、これは普段の信頼のなせる技です。また、通販に頼る田舎の高齢者のおうちを郵便局のスタッフが訪問して、ふとんクリーナーを売り込んでいました。確かに説明を要する商品なので、(ジャパネットの高田社長以外の)通販では二の足を踏むところですが、訪問販売で正解なのでしょう。

しかし問題は、この組み合わせは「負け組同士」なことです。継続的なマーチャンダイジング力も宣伝センスも、男性中心の日本郵便からは生まれてこないことでしょう。三越伊勢丹も、都会の高齢女性やビジネスマンに受ける品やサービスは分かるでしょうが、田舎の中高年に受けるファッションや雑貨はさっぱり分からないのではと思います。最初はともかく、長続きするのか少々不安な組み合わせです。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

農協改革にみる組織変革の攻防

大胆な組織変革案の撤回に潜む改革側のシナリオの裏を読む。これは政治ショーの楽しみ方でもありますし、企業での改革シナリオ作りの参考にもなります。



政府・与党が、農協改革において規制改革会議が打ち出していた「全中の廃止」案を撤回する方針を固めたようです。政府の成長戦略の柱の一つとして打ち出した農協・農業改革の目玉でしたが、公明党の了承を得た自民党案では、全中(全国農業協同組合中央会)を廃止することは見送られ、各地の農協に対する全中の指導・監査権限については具体的な変更は盛られなかった、との報道が昨日ありました。

規制改革会議が「全中の廃止」という大胆なテーマを含む改革案を5月に打ち出したときには、世間の反応は概ね2つに分かれました。「ここまで思い切ったことを掲げるからには政府は農協改革に本気だし、政高党低の力関係から可能だと考えているのだろう」というのと、「JAグループが猛反発するのは目に見えているから、自民党政権にはどうせできやしない」というものでした。実際、JAグループとの利害関係が少なからずある、地方に住む小生の友人数名の意見は真っ二つに分かれていました。

「全中の廃止」が仮に実現すると、2つの大きな効果が見込まれました。まず政治的には、大きな圧力団体であるJAグループの政治的司令塔がなくなるため、政府が目論む農業改革がスムーズに進めやすくなると期待されました。特にコメなどの価格引き下げを進めるには必須とまでいう人もいました。そして経済的には、JAグループの巨大なオーバーヘッドが縮小することで、個別農協からの「上納金」(賦課金)が減り、JAの供給する肥料や農薬などの割高感が抑制されると期待されました。つまりニッポン農業の最大の欠点である高コスト体質の改善にかなり貢献すると考えられたわけです。

しかし予想通りというか、この案は全中の猛反発を受けて、「選挙が持たない」と慌てた自民党の農林族の巻き返しにより撤回された格好です。これにより農協改革全体が骨抜きになるのではないかと心配する向きもあります。全中廃止がなくなった今、全中の指導権限を縮小するのか、賦課金制度を透明化し抑制できるのかが、この後の農協改革の焦点になるとみられています。

しかし小生はこの一連の農協改革の政治的攻防を見ていて、少し違った見方をしています。政府側は反発の矛先を組織改革だけに向けさせて、他の改革案を実質的に飲ませることにまんまと成功したのではないか、と考えます。

実際、規制改革会議が挙げた改革案のうち、「農業生産法人への企業の出資制限を25%以下から50%未満に拡大する」案については自民党も了承しました。これは結構重要なもので、民間企業が農業分野に進出することを後押しし、将来は50%超に緩和するためのステップともなりそうです。

さらに「農業委員会委員の選挙制をやめ、市町村長の選任制に変える」という案についても、市町村議会の同意を条件に飲ませることに成功しています。これにより、首長さえ改革に前向きであれば農協の影響を排除できるため、農地集約などを進めやすくなります。

「全農を株式会社に転換する」という案については「前向きに検討」という官僚の得意な玉虫色の表現なので、政権と党の力関係次第でどうとでも変わりそうです。これが実現すれば、全農という商社機構に対し、取締役会などを通じて政府のガバナンスを効かせようという腹でしょう。

つまり政府側は、JAグループが最も反発する組織改革テーマを見せ球にして、そちらに関心を集中させ、それ以外のテーマで「実」を取ったのではないかと思えるのです。もしかするとさらに、「全中廃止」案を引っ込める代わりに、TPP交渉での思い切った対米譲歩を認めさせたのかも知れません。

実は小生も過去、幾つかのクライアント企業でのプロジェクトで、構造改革を支援するコンサルタントチームの責任者として、似たような手を使ったことがあります。いずれの場合も、社長の社内における権力基盤が十分でないための苦肉の策でした。素のままの改革案だけを持ち出しても、反対派から色々と難癖を付けられて「値切られて」しまう可能性が高かったため、「見せ球」として大胆な組織変更を持ち出したのです。案の定、反対派の関心は自分たちの本丸である組織を守ることに集中し、それ以外の実質的な改革内容についてはあっさりと条件つき同意に応じてくれました。

但し、この手には良い点と悪い点が同居しています。良い点は、意外と簡単に「条件闘争」に持ち込める点です。多くのどっちつかずの人は「お手並み拝見」とばかりに様子見を決め込むので、改革賛成派が早く動いて実績を上げていけば、改革賛成ムードは一挙に拡がります。

悪い点は、「見せ球」を途中で引っ込める代わりに「条件闘争」に持ち込むやり方は、そう何度も使えないことです。そのうちに反対派も「ああ、この部分は見せ球だな」と学習しますので、こちらが狼少年になってしまいます。その間に改革の実績が上がっていないと、逆に様子見派の信頼を獲得できずに離反されるリスクが高まります。

つまり、改革を仕掛ける政権側は、既に獲得した改革テーマ(農協改革に限りません)で早急に結果を出し、それにより次の改革の推進力につなげる必要があるのです。さもないと政権は段々求心力を失い、足元を見る反対派から色々な場面で「値切り」交渉的な条件闘争を強いられ、いずれ実質的には日々の改善活動に格下げされかねないのです。

さて、安倍政権はこのあと年末に向け、具体案を固める過程でさらに後退を強いられるのか、それとも踏み留まって巻き返しを図るのか、見ものです。同時並行的に、その他の成長戦略でアベノミクス景気を持続させる成果を上げられるのかが、この農業・農協改革も左右することは、既に述べた通りです。

TPPによる大嵐がやってくる前に農協改革を着実に進めておくことは、ニッポンの農業の生き残りと再生にとっての重要な必要条件の一つです。同時に、「外から仕掛ける」組織改革の見本でもあります。注目する価値は十分ありそうです。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

ソフトバンクの会話ロボットPepperはただならぬ戦略的商品

ソフトバンクが来年2月の発売を予告した人型会話ロボットのPepperは大いに注目を浴びています。6月5日の孫社長の発表時にも反響が大きかったようですが、その後も色々と関連ニュースが飛び込んできます。

報道番組や幾つかのYouTubeにもPepperと人との会話の様子が映されていますが、それなりに会話が成り立っていますね。音声認識だけでなく、カメラで相手の表情も認識して、コミュニケーションをよりうまく成り立たせるようになっているそうです。思わず笑ってしまうような見事な会話の切り返しは、よしもとロボット研究所が開発協力をしているおかげだそうです。

発売前に人との会話データをもっと集めるために、ソフトバンクの銀座店と表参道店で現物と会話できるようになっています。かなりの人が実際に行って、会話を試しているようです。店内がざわついているので、人間の声をPepperが多少聞き取りにくいようですが、通常の家庭や会社での使用なら問題なさそうです。なお、今回のお披露目では時間が限られているので、自ら会話を打ち切るようにプログラミングされているようです。
http://www.youtube.com/watch?v=-sz339tx7-c

性能がなかなかよいのに値段は20万円を切る戦略的設定なので、驚きです。当初は損覚悟だと思いますが、これなら買う人は随分多いと思います。マニアだけでなくちょっと懐に余裕があるビジネスマンや悠々自適の高齢者(しかも会話相手に不足気味の)なら欲しいのではないかと思います。

MMD 研究所の調査では、Pepper の発表を知っていた人は全体の69.5%いるが、「購入したいと思う」人は2.9%にとどまったということで、大したことがないようにも見えますが、訊いた相手はネット上の若者が大半でしょう。大人がこの性能を知ったら態度は変わると思います。しかも来年2月までに相当性能が上がると思います。

ちなみに製造面に関していえば、会話だけの機能なので「歩行」の難しさはありません。多少手などが動くのでモーターも少しは使っているようですが、稼働部分によるコストは抑えていると思われます。そして戦略的値段で一気に市場を握って、台数をまとめることでコスト削減をする狙いは明らか。孫社長らしい思い切った賭けですし、多分、正解でしょう。

このPepperは通信機能を持ち(WiFiとつながるのでしょう)、センターのクラウド側に人口知能を持つと聞いていますので、購入先での会話(言葉だけでなくボディランゲージまでも含むかも知れません)のビッグデータが溜まり、よりスムーズなやり取りができるように集合体として学習できるモデルだと思います。これはなかなか賢いやり方です。もしかするとグーグルが自動運転に力を注ぐ間に、そしてアップルが画像センサーを使わないSiriに拘っているうちに、ソフトバンクは人口知能による対話ソフトで世界でも群を抜く存在になるかも知れません。

会話型ロボットPepperを開発したのは、ソフトバンク子会社でロボット開発を手掛ける仏アルデバラン・ロボティクス社。すでに世界70ヵ国以上でヒト型ロボットを販売している先進的な企業です。
http://toyokeizai.net/articles/-/39911

同社以外にもソフトバンクはロボット事業を進めています。それがグループ会社のアスラテックが担う「新規ロボット事業」で、ロボット制御ソフトウェア「V-Sido OS」およびV-Sido OSの一部機能を実装したマイコンボード「V-Sido CONNECT」を主軸とした事業展開を考えているようです。このOS上でソフトを開発してもらうよう技術者にも呼び掛けていますね。

ソフトバンクは本気でロボット事業を育てようとしているようです。エネルギー事業よりは通信事業との相乗効果も高そうですので、ニッポン代表として頑張ってほしいですね。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

アリアケジャパンのスーパー会長はニッポンの外食の黒子

6月5日(木)に放送されたカンブリア宮殿に招かれたのは、アリアケジャパン株式会社の会長、岡田甲子男(おかだ きねお)氏。「日本の“食”を支えてきた 知られざるトップ企業の秘密!」でした。

あるプロジェクトの関係で国内の様々な市場を調べている中に、食品加工市場がありました。リーマン・ショック後に少し持ち直したのに、東日本大震災を契機に混乱し、それが収まると食品偽装騒ぎでガタガタになる。そうした大変な逆風が相次ぐ中でも右肩上がりの業績を維持している企業、それがアリアケジャパンです。「食品業界のインテル」とも呼ばれています。

アリアケが手掛けているのは、業務用のスープのエキスやブイヨン、ラーメン店の秘伝のダシ、洋食店で使うソース、レトルト食品・カレーのルウ・離乳食などです。例えば、「即席麺」では、スープの元に入っている鶏や豚のエキスなど、いわゆる味のベースとなる調味料を作っているわけです。ファミリーレストランなど味が均一で、アルバイトでも調理が出来る様にブイヨンは工場で作られるものが使われるのですがそのエキスを作っているのもアリアケです。

食品そのものを作っている会社ではないので、一般の消費者には、ほとんど知られていませんが、畜産系調味料の専業メーカーとしては国内トップシェア。国内の食品メーカーにとっては必要不可欠で、食品業界の黒子的な企業です。

その凄さは、素材にこだわり、天然の素材しか使っていないところからまずは来ます。この売上高300億円のトップ企業を一代で作り上げたのが創業者の岡田会長、80歳。

消費者が知らないだけで、アリアケが作った味に、我々はほぼあらゆる外食の場面でお世話になっています。例えばリンガーハットの長崎ちゃんぽんのスープ、実はアリアケ製。その他にも、即席麺のスープ、カレールウ、冷凍食品に至るまで、多くの食品にアリアケの味が入っています。多くの食品に採用されている最大の理由は、もちろん、その「品質の高さ」。

飲食店・食品メーカーの担当者からは「アリアケなしでは商売できない」とまで言われる存在なのです。「依頼した以上の味を、手間暇かけずに手に入れられる」と彼らに言わしめるアリアケジャパン。

岡田会長の創業時は「3Kの極み」とも言われた、ほんの小さな『天然だし』の会社でした。しかし「即席麺ブーム」がやってきます。インスタントラーメンのスープとして採用された有明特殊水産販売には注文が殺到し、急成長を遂げます。一方、問題もありました。天然調味料という性質から原材料に個体差がありました。製造現場は「だし」を煮詰めるために想像を絶する過酷な労働環境に陥っていました。雇った新人従業員が午前中にへとへとになり、お昼を食べに行ったまま帰って来なかったというエピソードがあるそうです。

岡田氏は、この労働問題を解決することが「結果的に他を圧倒することに繋がる」と考えました。まず1978年、長崎県に小佐々工場、現在の九州第1工場を建設します。1990年には社名を「アリアケジャパン」に変更し、アメリカ、バージニア州に工場を建設し、米国市場への足がかりとしました。ここは日本国内の工場へ向けた天然調味料製造の為の材料供給を行う、フラグシップ工場となりました。

その頃、加工食品の次に着目したのは外食産業でした。外食企業にとっても、ブイヨンやフォンドボーなどのスープストックを液体エキスで代替することができれば、調理工程が簡素化でき、コスト削減にもつながる、と考えたのです。最初は相手にされませんでしたが、地道な営業活動の結果、やがてホテル・レストラン・ラーメン店など外食産業向けの売上がアリアケジャパン全体の約3割を占めるようにまで成長しました。

そして1998年、まだ売上高119億円だったのに、なんと100億円をかけてハイテク工場建設に踏み切ったのです。完成させたのは業界初となる、人の力に頼ることのない天然調味料製造の完全自動化でした。業界では、クレイジーと言われたそうです。しかし、衛生管理に関し世界で最も厳しい米国農務省(USDA)基準を自主的に採用し、無人化のおかげで最も衛生面で優れた工場であり、かつ製造原価の低減にも成功しています。とにかく凄いのです。

岡田会長は80歳に見えないどころか60代程度かと思わせるエネルギッシュな様子と、味に対する鋭敏さ。自分が旨くないと思えば絶対ヒットしないと豪語しています。この会社はどんな味のスープも完全再現できる技術力で、次々と新商品を開発します。海外出店を目論んで自分の店のスープの再現を依頼されたあるラーメン店のオーナーには「オリジナルよりうまいんじゃないか」とまで言わしめていました。

アリアケジャパンが新たな展開を見せているのが、いま話題のセブンイレブンのPB「金のビーフシチュー」です。食品業界の裏方として実績を積み重ねてきたアリアケが、ついに最終製品作りに乗り出したことを意味します。大手食品メーカーを相手に培ってきたその技術力は、消費者からどんな評価を受けるのか?興味津々ですね。

アリアケジャパンの進化はさらに続きます。長崎県の諫早で、国内最大級の広さを誇る有機栽培の玉ネギ畑の運営まで始めたのです。視察にきたサブウェイの伊藤社長は、その広大な農場を見て「最高の玉ネギ」と絶賛し、秋の新商品「オニオンスープ」の共同開発を持ちかけました。

さて、アリアケジャパンは一体どこまで進化するのか。この企業の最大のリスクは岡田会長の老化と退任、後継者問題でしょう。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

最新記事
月別アーカイブ
プロフィール

austintex

Author:austintex
FC2ブログへようこそ!

カテゴリ
最新トラックバック
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR