わが町を新たに作る、集団移転は住民主体でこそ成功する

9月27日(土)に放送されたNHKスペシャル、シリーズ東日本大震災「私たちの町が生まれた~集団移転・3年半の記録~」は感慨深い内容でした。

震災から3年半経ち、ようやく大規模な集団移転が始まります。人口1000人を超える新しい町が誕生しようとしているのです。宮城県岩沼市。ここも震災で8mの津波に襲われ、沿岸部が壊滅したところです。町ごと集団移転し、海岸から3キロほど内陸に入った20ヘクタールの農地に住宅地を造成し、仮設住宅からの引っ越しが始まっているのです。

実は各地で集団移転事業が検討されながら、住民同士、そして住民と自治体との意見がまとまらず、ほかに実施できているところはありません。そうした中、なぜ岩沼市だけが話が進み、トップを切れたのか?

この3年間の歩みに寄り添った人たち、その渦中でもがいてきた人たちの軌跡を辿ると、幾つかの要因が挙がってくるようです。行政の、コミュニティの維持にこだわった賢明な判断と、住民の意見をまず聞くんだというオープンな方針がまず特記されてよいでしょう。

岩沼では被災後数日で、元の集落単位で集まるように避難所でのグループ換えが行政主導で行われています。誰もが何も考える気力を無くしている時に、こうした賢明な判断ができた当時の市長は素晴らしいリーダーです。お陰でコミュニティの維持と、住民が話し合う土壌が造られたのです。

そして新しい街づくりのために行政の都合を押しつけることなく、街づくりの専門家(東大の教授)を呼んでファシリテーションしてもらいながら、ゼロベースで住民に話し合いを何度も何度もさせたのです。他の自治体が自ら考えた青写真を住民に押しつけようとしたのに対し、岩沼市はあくまで住民からの意見集約を辛抱強く待ったのです。

そのコミュニティと行政の理解をベースに、主体的に新しい町の設計に参加し、理想の町を目指して何十回となく徹底的に話し合ってきた住民たちの努力も忘れてはなりません。素人が思い思いに発する意見、その食い違いに嫌になることもあったでしょうが、世話役の人たち、町を再建したい思いの人たちが諦めずに粘り強く話し合いを続けたのです。

「話し合いによる合意」を徹底させたことで、住民の間にも、住民と行政の間にも、大きな対立が生まれず、住民には『自分たちの町を作る』という意識が高まったのです。例えば、行政が当初想定していた碁盤の目のような区画でなく、公園を囲んで住宅が固まり、その間を曲線の道が縫うような、米国にあるような洒落た町のイメージに住民の意見がスムーズにまとまりました。結局、こうしたボトムアップが廻り道のように見えながら、町の再建には一番近道だったのです。

しかし、新たな問題も生じました。住民たちが理想の町として描いたプランには、以前の町の特色である防風林や芝生に覆われた公園などがありました。しかし岩沼市の予算(および復興予算からの補助も加えても)の縛りから認められないと通告されたのです。集団移転自体に莫大な予算を投入しており、贅沢な街づくりに税金を掛けることには他の市民の理解が得られないと判断したのでしょう。「この地区だけ優遇させることはできない」「どうしてもやりたいなら、自分たちの負担でご自由に」ということです。ある意味当然でもあります。

しかし住民たちは諦めるつもりはありません。寄付などを募って資金を作り、森や芝生の維持管理は自分たちで担おうと考え、行政と交渉することにしたのです。そのための勉強会もやりました。「行政に頼る、ダメなら諦めるという発想はもうやめた。自分たちの町は自分たちで作る」と住民の代表は言っていました。そして公園全部でなく、一部の区画に芝生を自分達で植え、育て、少しずつ広げようとしているのです。

これが本当の住民による町づくりです。小生もある地方の街おこしを、部分的ですが手伝うことになっています。そこは被災地ではないので、住民の危機感や結束力をこれほど期待できないでしょう。また、自分が住んでいる横浜市を考えたとき、地元とこんな濃い関わり方をすることは難しいと感じます。今回の番組を観ていて、何か羨ましいような気がしました。
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ニッポンの子供を餓えさせるな

9月25日(木)の「クローズアップ現代」(NHK)は「おなかいっぱい食べたい ~緊急調査・子ども貧困~」でした。何とも悲しい、「飽食の国」ニッポンのとんでもない現実を知らされました。

学校教育の現場では、給食がない夏休みに食事を十分取れず、体調を崩す子どもの存在が危惧されているそうです。なんと「夏休みが終わる頃、体重が減る子どもがいる」という報告がそこかしこにあるのです。背景にあるのは、貧困世帯における「食の貧困」。7月の厚労省の調査では、「相対的貧困」状態にある子どもの割合は6人に一人(貧困率16.3%)と過去最悪の値、しかもこの10年、悪化の一途です。この8月には、子ども貧困対策に関する大綱が閣議決定されました。


今回貧困問題に取り組むNPO(フードバンク山梨)が、新潟県立大学と共同で調査を実施したところ、「子ども一人当たりの食費が一日329円」と、子どもの成長に必要な栄養が取れないほどにまで食費が圧迫されている実態が見えてきたのです。番組では、調査で明らかになってきた実態を分析するとともに、学校や地域で始まった先進的な取り組みを合わせて紹介してくれました。

フードバンク山梨では、企業や農家などから寄贈された食品を、支援が必要な家庭に無償で提供する活動を続けています。活動を始めて6年。行政などから紹介を受け、これまで1,000世帯以上を支援してきました。多くは収入が生活保護の水準を下回っていますが、さまざまな事情から生活保護は受けていません。最近は子育て世帯が増え、支援の対象となる人の4割を子どもが占めているそうです。

今回、子どものいる269世帯を対象に実態調査に乗り出しました。番組はその一端を伝えてくれました。この日訪ねたのは、7歳から17歳まで4人の子どもを育てる母子家庭です。収入や食費、日々の食事の内容など、支援を受けるまでどんな生活だったのか詳しく聞いていきます。

澤村さん(仮名)「ほとんど買えない、自分では買えない」
フードバンク山梨 代表・米山けい子さん「子どもたちも、おなか空いてたね」
澤村さん(仮名)「すいていたと思います」「これはフードバンクからいただいた。お米が一番うれしいです」

何とも悲しいやり取りが交わされています。これが先進国ニッポンでの現実なのかと胸が痛みます。澤村さん(仮名)は3年前に離婚。パートで毎日働いていますが、収入は生活保護基準を下回っています(これ、絶対におかしいですよ!)。一度は生活保護の申請を考えましたが、通勤に欠かせない車を手放さなければならず、諦めたそうです。

助けとなっているのが、NPOから2週間に1度送られてくる6キロのお米だそうです。浮いたお金で、以前はほとんど購入できなかった野菜などを少しは買えるようになったそうです。もらい物のきゅうりを漬物にして出すなど、なんとか栄養のバランスを取ろうと努力していますが、育ち盛りの子どもたちにとっては十分とは言えません。

子ども「みそ汁はおかわりないんだよね?」
澤村さん(仮名)「ないです」

胸が締め付けられてしまいます。この家庭の場合、パートで毎日働いて得る収入は平均10万円。児童扶養手当など合わせてようやく月収18万円ほどです。一方、家賃や光熱費、奨学金の返済など、毎月固定で出るお金はおよそ14万円。差し引くと4万円ほど。これで5人家族の食費をやりくりしなければならないのが現実なのです。首都圏でこれは無理でしょう!しかも非正規雇用ゆえ月によって働く時間が短くなることもあり、収入減の分はどうしても食費にしわ寄せされるといいます。厳しい時には、主食のお米さえ買えないこともあるのです。

次男(15歳)「お年玉を正月にもらったんですけれど、それをみんな回収して米はお年玉を使って買ってくるみたいな感じで。あまりおかずも食べないで、一膳よりちょっと少ないみたいな。おなかがすいたって感じです」。

こんなことを子供に言わせるのは親としては非常に辛いでしょう。でもこのお母さんは懸命に働いているのです。それでも食っていけないのは、社会のほうがおかしいのです。

今回NPOでは、栄養学が専門の村山伸子教授と共に、アンケート結果について分析しました。浮かび上がってきたのは貧困の厳しい現実です。今回調べた支援世帯では1人当たりの1日の食費は329円。300円にも満たない家庭が半数近くに上りました。一食にすると100円前後ということです。

食事の内容も、米や麺など主食のみというケースが多く、栄養バランスが取れた食事を1日に1度もとっていない家庭が8割以上に上ったのです。栄養不足で体重が減った、貧血で倒れたなど、子どもたちの健康にまで影響が及んでいることが明らかになりました。

新潟県立大学 村山伸子教授「体にまで現れてしまうということがすごく問題です。もっと発達・発育する時期に食べなきゃいけないものがある。(親も)分かっているけれどできない」。非常に深刻な事態です。

さらに今回の調査では、貧困が子どもの体の健康だけでなく、学校生活や友人関係など社会的な基盤を揺るがしていることも見えてきました。例えば17歳になる澤村さんの長男は、中学のころから不登校になりました。学校では友達が普通に楽しんでいることに参加できず、孤立することが多かったと言います。

長男(17歳)「遊んでいてファストフードをみんなが買うけど、俺は買わないで見ているだけというか。買えている人たち、他の友達がうらやましくて自分が情けない、惨めみたいな感覚でした」。

惨め、まさにそうでしょう。自己肯定感を育むべき時期に、こんな惨めで不平等な境遇に自分があることにやりきれない、うっ屈した思いが醸造され、社会にも絶望感や反感を持つようになるのは当然でしょう。これを放っておいた私たち大人の責任です。

スタジオで国谷キャスターと神奈川県立保健福祉大学教授・新保幸男さんのやり取りがなされ、世の中の無関心と誤解が浮き彫りにされました。

「昔は自分たちも同じだったという人もいるのでは?」→昔は皆が同じように空腹で、それを分かち合うことができた。しかし今は周りがみんな、ある程度の生活をしている。自分だけがなぜ?って思うはずです。

「生活保護を受ければいいじゃないか」→確かに状況はまず改善されるはず。しかし例えば車の保持はできないだとか、貯金はしにくいだとか、自立手段も尊厳も失われがちです。大半の人は、児童扶養手当の範囲内で自分たちで生きていこうと頑張っているのです。安易に生活保護に頼ろうとしない、むしろ立派な心構えの人たちです。

「子どもの貧困対策、食に関する支援は?」→大綱でも記述はされています。しかし、具体的な制度として明記されていないのです。子どもの貧困対策の4つの柱は、①教育の支援、②生活の支援、③保護者に対する就労の支援、④経済的支援、です。①は色々と具体策まで書かれているようですが、子供たちが学ぶための前提として②③④こそが重要で緊急です。

安倍政権がまずは早急にすべきことは、現行の児童扶養手当に対しての純増であり、多子の加算です。そして最低賃金のアップです。フルタイムで働いても子供を満足に食べさせることができないような「非正規の仕事」を許してはいけません。そしてこういった現実をもっと世の中に知らせ、金の使い道に迷っている富裕層にまともな支援団体への寄付を促すことです。

富裕層が喜ぶ株価対策だけでなく、貧困層を助ける政策こそが今、ニッポンの子供とお母さんを助けるために必要なのです。海外へのODAを止めろとはいいませんが、足元がぐちゃぐちゃの状態で他所のウチの掃除を手伝っているようなものです。まず「社会の宝」である子供たちが餓えないようにするのが、政治に最低限求められる最優先・緊急事項です。

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本心から従業員に感謝する経営トップが日高屋を一大チェーンへ押し上げた

9月25日(木)の「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)で紹介されたのは中華チェーン「日高屋」を経営するハイデイ日高の神田正(かんだ ただし)会長でした。題して「5坪のラーメン屋から一大チェーンへ!客も従業員も幸せにする男の波乱万丈人生」。とにかく素晴らしい経営者です。

都心の駅前に必ず見かけるラーメン店、「熱烈中華食堂日高屋」。中華そば390円、餃子210円。野菜炒めやレバニラなどの定食も600円前後と割安です。昼間の店には老若男女、時間帯を問わずに客が入っています。夜になるとサラリーマンであふれています。その秘密は、生ビール310円を筆頭に、安くて種類が豊富な飲み物です。一皿200円程度のおつまみも充実し、仕事帰りに“ちょいと一杯”やっていく店として定着しているのですね。

このラーメンチェーンを一代で築き上げたのが神田正会長、御歳73歳です。創業者・神田氏の昼食は、毎日決まって「日高屋」だそうです。上場企業のオーナー経営者が、です。店の様子を自ら確認しながら、従業員がやりがいを持って働いているか、困りごとがないか、相談を受けるためです。本人いわく、「普通の味。10人中7人がうまいと言ってくれればいい」。際だった味のラーメンではなく、毎日食べても飽きない味なのだそうです。

彼が描いた日高屋のイメージは、一昔前まで駅前に必ずあった“屋台のラーメン屋”なのだそうです。そして新店舗の場所探しは今でも神田会長の仕事です。いわく、「失敗したら責任が大きい。社員にさせるのは可哀そう」。乗降客などのデータは参考にしますが、結局信じるのは40年間培った己の勘だそうです。

店舗展開の戦略はシンプルです。①3万人以上の乗降客がいる駅前を狙って出店、②営業時間は深夜まで、③ラーメン店でありながら酒やつまみを充実させる(もちろん〆のラーメンも充実)。普通の中華店のアルコール比率は3%程度ですが、日高屋は15%と格段に高く、これが低価格と駅前一等地での出店拡大を支えているのです。平成の世に再現した“屋台のラーメン屋”戦略ですね。

神田氏は埼玉県の日高で育ちました(これが店名の由来なのですね)。父親が戦争で負傷して働けず、母と共に中学時代からアルバイトをして家計を支えました。村一番の貧乏家だったそうです。中学を卒業後すぐに就職しましたが、飽きっぽい性格だったため15もの職を転々としたそうです。パチプロをやっていた頃、友人から中華料理店を紹介されます。その場ですぐに代金がもらえる“現金商売”に魅力を感じた神田氏はその店で懸命に働いたそうです。その後独立し、1973年に大宮駅前に「日高屋」の前身である「来来軒」を開店。わずか5坪の店だったのですが、駅前の立地と、当時珍しかった深夜営業がウケて大繁盛し、「これだ」と確信したそうです。この頃すでに「駅前チェーン展開」の構想が浮かんでいたといいます。当時は郊外型のファミレスが主流でしたが、神田氏は都心の駅前一等地への出店にこだわって展開していきます。

その根拠は駅で見たサラリーマンの姿。「以前は弁当を手に持って出勤していたが、今は雑誌を持つようになった。この人たちは必ず外でご飯を食べるはず」と察知したのだそうです。その炯眼に基づく戦略で駅前出店を続けて急成長してきたのです。今では首都圏を中心に約320店舗。40年で一大チェーンにまで成長しました。外食不況が続く中、11期連続の増収増益を達成しています。

日高屋の特長は店以上に、経営者と従業員の信頼感のようです。「従業員が働いてくれるからこそ、会社が成り立つ」と話す神田氏の考え方がそこかしこに現れています。氏は毎日のように店を訪れ、休みは取れているのか?子供は何歳になったか?などと話しながら従業員を気に掛けているのですが、その気持ちが伝わりますね。

“フレンド社員”と呼ぶパート・アルバイトに感謝する催し会が定期的に開かれています。会社の利益が予想を超えた時は必ず従業員に還元する仕組みがあります。フレンド社員にもボーナスを出します。すき屋とは大違いですね。フレンド社員の「よしやるぞ、という気になる」という声が紹介されていましたが、人は信頼され、大切にされると、それに応えようと、やる気になるのです。さらに最近は、従業員が身体に負担をかけずに60歳以上になっても働けるようにと「焼き鳥店」を出店中です。“働く人も幸せにするラーメン屋”の姿です。

スタジオで語る神田会長の言葉は、スタジオ内にいる全員、そして小生を感動させていました。東証1部、年商300億円企業のトップとなった神田氏ですが、贅沢はしたくなく、「お金の使い途がわからない」そうです。お昼も自社の店で済ませ、店舗視察や物件探しのための移動も電車という、その質素さに皆が驚かされます。社用車はなく、上場時にもこの収録時にも地下鉄で来たのです。「運転手付きのハイヤーを使うくらいなら、その分、従業員の給与を上げます」と。こんな経営者ばかりならニッポンは世界一素晴らしい社会になれるのに、と思いましたが、稀だからこそ感激するのですね。

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中国の不動産バブルが破裂、あとはドミノ倒しか

中国の不動産価格が急落しています。ずっと「バブル」だと言われながら、それでも何度か持ち直してきた中国の不動産市況ですが、今年になってからの状況は明らかに今までとは違います。

中国不動産バブル崩壊へ 押しとどめる術はない…
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20140903/frn1409031140001-n1.htm
中国大手不動産開発会社、「次に倒産するのはわが社かも」
http://www.epochtimes.jp/jp/2014/08/html/d44577.html

もともとバブルと考えられるのは、実需ではなく投機の割合が圧倒的に大きくなっている状況があり、それを大半の市場参加者が認識している状況です。それでもずっと価格上昇が続いている限りは関係ないのですが、一旦価格が下落トレンドに入り込み反転しそうにないと多くの市場参加者が考えた時、オセロの白黒が反転します。つまりバブルの破裂です。

「買う人はほぼゼロ、いるのは少しでもいいから資金を回収したい人の投げ売りばかり」という状況になることがバブルの崩壊であり、まさにそのタイミングを迎えつつあるのです。そしてそれは不動産市場だけでなく、中国経済全体への大きな影響をもたらすと考えられます。不動産価格の急落がバブル経済全体の信用縮小、そして景気の大幅悪化に結びつくのは日本が経験した通りです。

「死期」前兆ちらつく中国経済… 不動産バブル崩壊、影の銀行“起爆”の恐れhttp://www.sankeibiz.jp/macro/news/140906/mcb1409060704001-n1.htm

中国の不動産バブル崩壊が中途半端に済まず、(従来期待されていたように)政府制御では難しいと見られる背景には、中国経済特有の構造もあるようです。

焦点:中国で不動産在庫が蓄積、開発加速が価格下落に拍車
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0GT07O20140829

年内にこうした(不動産価格だけでなく)中国経済そのものの悪化状況が明らかになるのではないかと小生は懸念しています。中韓嫌いの人々には「ざまあみろ」的な感情が湧くことでしょうが、中国経済と密接な関係を持つ日本経済にも大きな悪影響をもたらすと考えられます。消費税増税なんかをやっている場合ではないと個人的には思います。

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アフリカ開発にみる、現地を活かす日本人らしいビジネスの在り方

20日(土)夜にBS朝日『いま、日本は』で放送されたのは「アフリカ開発 日本の“ソフトパワー”」でした。

目覚ましい成長率を示すアフリカは今後の日本経済にとっても重要な存在です。元経済産業省官僚の古賀茂明氏も同行した取材内容は、非常に示唆に富む内容でした。

アフリカの成長は著しい。アンゴラ(11.1%)、ナイジェリア(8.9%)、チャド(7.9%)、など、高いGDP成長率を誇る国がめじろ押しです。 それだけに主要国はアフリカ諸国での開発プロジェクトに熱心で、とりわけ自国の成長に必要な資源獲得に躍起の中国の行動力は目覚ましいものです。

2006年にアフリカ諸国の首脳級48人を北京に招いて開いた「中国アフリカ首脳会議」を皮切りに、アフリカへの大規模な投資、援助を行なっています。2013年の時点で、中国の対アフリカ直接投資残高は約2兆2000億円で、日本の3倍以上です。 しかも中国は来年、この「中国・アフリカ会議」を自国でなく、南アフリカで開く予定です。「アフリカへの影響力を確実なものにしたい」という、習近平政権の並々ならぬ決意の表れでしょう。

日本も対抗するかのように、今1月には安倍首相が日本企業約30社のトップを引き連れ、コートジボワール、モザンビーク、エチオピアの3ヵ国歴訪に出かけたばかりでしたね。また、これまで東京や横浜で主催してきたTICAD(アフリカ開発会議)を、(中国のマネでしょうか)再来年にアフリカの地で開く予定です。

しかし主要国の行動には問題が少なくありません。国際支援の美名の下、資源獲得に奔走し、稼いだ収益は本国に吸い上げ、経済環境が悪くなればさっさと撤退する。その結果、アフリカの人々は豊かになるどころか苦しんできました。かえって貧困と環境汚染が深刻化し、格差は拡大しました。

あからさまに資源獲得やインフラ整備事業の獲得のために現地に進出している中国企業ですら、それまでの欧米先進国企業よりましなほうです。少なくとも現地の人々からは「中国企業は安く、現地人へのペイも(欧米企業より)よい」と評価されています。ただし彼らの仕事には質が伴わないのと、絞れるだけ絞り取って、用済みとなれば欧米企業と同じように現地から逃げ出す可能性が高いことでしょう。

しかしここアフリカに違うストーリーを描き上げた日本人がいます。アフリカで起業し、長年にわたり地元経済に貢献している日本人経営者、佐藤芳之(よしゆき)さん(75歳)です。

74年、佐藤さんはひとりで「ケニアナッツカンパニー」を創業しました。採取したマカデミアナッツやカシューナッツは殻を割って乾燥させ、実を選別するという地道な仕事ですが、こつこつと育て上げ、今ではこのナッツビジネスでたたき出す年商は約50億円。ケニアでは紛れもない大企業です。今ではケニア国内に9000エーカー、東京ドーム約780個分のナッツ果樹園を展開しています。取引先には「ゴディバ」や「ネスレ」など、世界的な食品企業が名を連ねます。おかげで、ケニアは90年代にはナッツ生産量で世界トップ3の一角を占めるまでになったのです。

驚くのはその雇用数です。直接雇用だけで4000人。関連企業や契約農家の雇用を入れれば、1万人を超えます。ケニアでは一人で10人を養うのが普通だということを考えると、佐藤さんの会社は10万人の生活を支えていることになります。 ケニアの人口は約4000万人。そのなかの10万人をたった1社で養っている計算になります。この国に巨大な産業を生み出したと言ってもよい存在です。

佐藤さんの強いこだわり。それは、雇用をひとりでも増やすことです。そのため、この工場ではいまだにナッツの選別や箱詰めは機械ではなく、人力で行なっています。

佐藤さんは次のように語っています。「この会社はみんなが収入を得るため、自立するためにつくったんだ」と説得した、と。「だからこそ、徹底して雇用の確保にこだわりました。ナッツを収める段ボール箱作りも、本来はひとりでやれる工程を6人で分担してやっています。とにかく、社員に自活のための給料を払いたい。貧しいこの国では機械化、省力化は“反社会的行為”なんです」 と。

ケニアナッツカンパニーは健康保険、年金を完備し、医務室も工場に併設しています。エイズ対策、家族計画のためのコンドーム配布も欠かしません。そして収益の多くは、福利厚生に回されているのです。

佐藤さんは、現地スタッフから「メンター」(そばに付き添って指導してくれる人のこと)と呼ばれているそうです。現地の人々は、彼を経営者やボスというより、自立をもたらす指導者として尊敬しているのです。

これこそが日本企業が目指すべき姿です。現地に溶け込み、現地の人に親しまれ、尊敬され、現地の人たちのために役立つことを最優先に考え行動する。目先の利益ではなく、長期的に互いにとって利益となるためにはどうしたらいいかを追求する。日本人だからこそできる行動であり、世界どこでも感謝され、受け入れられる存在理由です。

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中国に脅かされる香港の未来に幸あれ

9月22日(月)放送の「未来世紀ジパング」(TV東京系)は「ニュースが伝えない「香港」異変! ~中国返還から17年 今何が起きているのか~」。面白く、かつ心配な内容でした。

香港がイギリスから中国に返還されて既に17年。中国本土の経済成長の恩恵を受け躍進してきた香港でしたが、今、異変が起きています。その一つが、これまで香港経済を支えてきた中国本土への反発です。

年間4000万人を超える中国人観光客のマナー違反の数々。日常的に香港市民とトラブルが起きているというのです。「列を守らない」「どこでもゴミを捨てる」「子どもが街中で排泄する」等々。

ちらと映像も流れましたが、子供を抱えてゴミ箱に小便させる親の姿があり、これは確かに後進国・中国人らしいとはいえ、先進国・香港の市民からひんしゅくを買うのは当然です。多くの香港人が「中国人と一緒にされたくない」と感じているというのは無碍なるかな、です。でもその中国人観光客のお陰で香港が潤っていることも事実で、そうしたことを理解している金融街のビジネスマンたちは(商店街の人たちと違って)、彼らに対し概ね寛容でしたね。

更に大きな香港市民の不満の要因は、「水客」と呼ばれる運び屋です。観光客を装い、中国から香港にやってきて、粉ミルクやオムツをはじめ大量の食料や日用品を中国へと運び届けて、利益(小遣い稼ぎ程度ですが)を得ているのです。これ、商売としての関税を払っていないので、明らかな違法です。

香港では品不足や価格の高騰につながっており、市民の不満が噴出しているのです。香港から中国側へと渡った品物(ヤクルトや紙おむつのメリーズが人気だそうです!)は、そうした違法並行輸入商品専門のマーケットで取引され、そこから中国全土に流通するのです。巨大ビジネスが成立しているのです。

なぜ違法な「水客」は増え続けているのでしょうか。わざわざ素人の人手を介して香港で市場価格で買い付け、中国本土で流通させてもペイするのは、「香港で売っていた商品」が高額所得者に対し2倍、3倍と高く売れるからです。同じブランドの商品でも中国向けに製造された商品だと「おかしなモノが混じっているかも知れない」と消費者は信用していないのです(香港向けは香港または日本で製造されているのかも知れません)。中国人は中国人を信用できないということでしょう。

さらに返還時の約束でありながら棚上げにされてきた、民主化選挙が争点となっています。香港のトップ、行政長官を決める選挙の民主化を求めて、大規模なデモや抗議集会が発生しているのです。今年7月1日の返還記念日には、過去最大規模である50万人を超える市民がデモ行進を行いました。そして8月下旬には中国政府からの回答が出ました。結果は、これまで以上に民主化を排除しようという「ゼロ回答」=「中国政府が認めない候補者は立候補すらできない」というものでした。

民主派勢力はすぐさま大規模な集会を実施し、警察ともみ合いになり拘束される学生たちが続出しました。民主化を求める勢力は今、「金融センター香港」の象徴でもある中心部の「セントラル封鎖」を目論んでいます。市民の中でも議論が渦巻いているようです。

民主派リーダーの一人で「学民の女神」と呼ばれる女性大生がおり、番組は密着取材をしてくれました。デモの現場で拡声器やマイクを握り訴える彼女は現代のジャンヌ・ダルクばりの存在感ですが、素顔は今月から大学生になったばかりの17歳。日本のアイドルグループ「嵐」が好きと答える普通の女子でした。しかしすでに電話を盗聴されたり家族が嫌がらせを受けたり、当局の圧力が強まっているのです(これが中国のやり口です)。

番組ではもう一人の学生リーダーの様子も映していました。心配する母親を説得し、あくまで抗議活動を続けると、彼は語っていました。2人とも逮捕も辞さないという悲壮な決意に満ちていました。香港の未来を憂い、強大な中国政府に立ち向かう彼らの勇気に拍手を送りたいと思います。台湾で馬政権に対抗して議会を占拠した学生リーダーたちを思い起こさせますが、香港のほうが中国政府の権力下にあるだけ、民主派学生の危険が大きいのは勿論です。

アジアの癌、中国共産党政府に多くの若い魂が翻弄されているのです。妥協しそうにない中国政府と、その意図を受けて圧力を強める香港当局。最終的に彼女たちは金融街「セントラル」の封鎖を決行するのでしょうか。

そうなった時に「香港版天安門事件」が起きない保証はありません。もちろん、後藤ナビゲータが言うように、「金の卵を産むガチョウ」をわざわざ殺してしまう愚は、かの中国政府だって避けるはずという読みはありますが、民主化の動きが中国本土に飛び火しかねない、とメンツを最重視する中国政府が判断すれば、何が起きてもおかしくありません。実に心配ではありますが、彼女たちの純粋で堅い意思を応援したいと思います。

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あなたの家族に忍び寄る「介護による家庭崩壊」の危機

あなたの親、またはあなたの配偶者の親が要介護状態になったら…。そのとき「在宅介護」を余儀なくされたら…。あまり考えたくないリスクとはいえ、家庭の危機はすぐそこに忍び寄っている。


日経ビジネスの最新号の特集は「隠れ介護1300万人の激震」。本人や配偶者の親が要介護状態で、会社にその事実を伝えていない「隠れ介護」が1300万人にのぼるという推計が発表されています。政府の公式統計では約290万人ですが、どうやらそれは甘い数字のようです。介護を理由に離職する人は今でも年間10万人に及び、今後さらに急上昇すると見られています。エース社員や会社随一の技能を持つ熟練社員がある日突然退職するリスクが高まっているのです。日経ビジネスは「経営リスク」という観点で注意を喚起しているのですが、一市民としては、それだけ要介護者が身近にしかも急速に増えつつある(2013年時点で約560万人)という事実に気づかされます。

一方、今後の日本社会のあり方を左右する介護制度は、「在宅介護」重視の方向に進められようとしています。「在宅介護」重視とはどういうものでしょうか。端的に言うと、介護が必要な高齢者を、施設ではなく、なるべく自宅で介護するというものです。介護の担い手は、施設介護の場合には専門職の介護士ですが、自宅介護の場合には家族が「主」で訪問介護員(ホームヘルパー)が「副」、といった役割分担になります。

「在宅介護」重視の流れが強まっている背景には、介護給付が急増しつつあり、介護保険財政が圧迫されつつある現状があります。しかも今後ますます高齢者は増え、この傾向は強まるばかりです。一方で介護保険を支える国家財政は極端な赤字ですし、保険料を負担する労働者人口は今後減る一方です。そのため介護給付を抑制する方策が色々と求められており、その有力な手段の一つが、費用の掛る「施設介護」から「在宅介護」への重点の切替なのです。

しかしこうした政策転換が露骨な形で表面化する前に、実態として在宅介護が広がりつつあります。現実問題として介護施設の空きがないために、要介護度が高くなっても施設に入れず、自宅で介護せざるを得ないケースが増えているのです。今進んでいるのは、老齢夫婦の片方の介護を配偶者がするというパターンか、または超高齢の親を高齢の息子・娘世代が介護するというパターンです。いわゆる「老老介護」です。しかしこの先はさらに世代が下りてきて、現役世代が自宅介護を余儀なくされる時期に入りつつあります。

要介護度が高い老人を抱える現役世代の家族が自宅介護を余儀なくされると、どういう事態が生じるのか。そして多くの家族がその当事者になると日本社会はどうなるのか。よく考えてみる必要があります。

必ずしも介護制度成立以前の状態に戻るのではありません。なぜなら我々の社会はその後、核家族化が極端に進み、同時に少子高齢化が急速に進んでいるからです。息子や娘は都会で職を得て、結婚して核家族を養ってきたのです。そこに、同居していない実家の親が確実に年老いてきている現実が迫ってくるのです。その時、自宅介護を余儀なくされると、一体どうなるのでしょう。ちょっとシミュレーションしてみましょう。

あぁ、あなたは50前の既婚男性で、お父さんは既になくなっており、(その介護を独力でやり遂げた)お母さんが一人、実家で暮らしているのですね。え?お母さんは最近転んでしまい、要介護認定を受けた?しかもいつの間にか認知症が進んでいることが分かった?そうですか。それで適切な介護施設を探しているけど、空きが全然見つからないのですね。どこも人手不足ですからね。お母さんの面倒を見てくれる兄弟姉妹は実家の地元にいらっしゃらないのですか?いない、そうですか。では非常にややこしい「連立方程式」を解かねばなりませんね(しかも最適解があるとは限りません)。

自宅にお母さんを呼んで、そこで介護したいとお考えですか?しかし都会の狭い家にさらに老齢の家族を増やせますか?介護となればベッドを置く部屋が必要ですよ。大きくなったお子さんから部屋を採り上げますか?そもそも誰が介護を担うのですか?奥さんのご両親であれば、奥さんが仕事を辞めても、ということに落ち着くのでしょうが、旦那さんのお母さんであれば、奥さんに仕事を辞めてもらって介護に張り付けることに抵抗は小さくないでしょうね。ではあなたが退職して介護しますか?一家の収入は激減しますね。それとも夫婦お2人で在職したまま何とかやり繰りしますか?

今までのように残業はできませんし、昼間に付き添う必要もしょっちゅうありますよ。介護休暇なんてすぐ使い果たしてしまいます。あなたの会社にはそうした理解、行き届いた制度はありますか?夫婦でやり繰りするとしても、年数があらかじめ限定されていればともかく、介護はいつまで続くか分からないから精神的に大変なのです。自宅介護を担うということは並大抵の苦労ではありませんよ。

いっそのこと一家で田舎に引っ越して、実家またはその近所に家を構えて、そこで介護をしますか?でも会社は辞めざるを得ないですね。都会でやっていたような仕事は田舎にはありませんよ。故郷の友人の伝手で何かまともな仕事が見つかる人は非常に幸運です。今さら農家や林業を始める気力・体力がありますか?それにやっぱり「誰が介護を担う?」の問題は同じですね。今さら友人が誰もいない旦那さんの田舎に引っ込んで旦那さんのお母さんの介護をやってくれ、と奥さんに頼んだらどうなると思いますか?五分五分で離婚話を持ち出されるのではありませんか?

ではあなたが単身で実家に移り住んでお母さんの介護をしますか?奥さんとお子さんは都会に住んだまま。でもあなたは退職せざるを得ないですから、一家の収入は激減しますね。奥さんが働いている?ではその稼ぎで、二か所に離れ離れに住む一家を支えることができますか?パートの仕事では無理かも知れませんね。じゃああなたが都会に残って仕事を続け、奥さんに田舎に引っ越してもらって、お母さんの介護をお願いしますか?間違いなく離婚話に直行ですね。…いずれも難しい、そうですね。

でも冒頭で触れたように、現実に介護離職する方は少なくありませんし、今後ますます増えそうです。先ほど申し上げたように、田舎にご兄弟とかいれば問題は相当軽くなるのですが、そうした都合のよい肉親がいらっしゃるとは限りません。苦渋の決断をされるご家族は少なくないと推察致します。

「在宅介護」重視の方向に政策転換が進みつつあるとはいえ、施設介護の選択肢が今現在細くなっているわけではありません。しかし介護産業の構造が今のままでは、人手不足を原因として「施設介護」はどんどん狭き門となっていくことでしょう。

さらに今後、財政官僚と厚生官僚は間違いなく、「在宅介護」重視の制度変更を仕掛けてくるでしょう。10年もしないうちに中流以下の家庭では、費用負担面から在宅介護を選ぶしかないようになっているかも知れません。何せ日本政府は、中流以下の家庭に厳しい政策を採るのが好きですから。よくよく注意しておきましょう。いずれにせよこのままでは、多くの家族が自宅介護を余儀なくされ、そのために職を離れ、家庭が崩壊しかねない、そんな危機が日本社会に迫っていることは間違いありません。

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公共データは公共のためのものであって、役所のものではない

9月17日(水)に放送された「クローズアップ現代」(NHK)は「公共データは宝の山~社会を変えるか?オープンデータ~」。実に興味深い内容でした。

国勢調査や家計調査など行政機関に眠る膨大なデータを一般公開する「オープンデータ」。経済波及効果は日本でおよそ5兆円に上るとされ、企業がビジネスに活用するケースが広まっています。この活用面を調べるミッションを担っている知人もいます。実際小生も、ある分野での行政情報がデジタル化され一般公開されることを前提に、公共データを活用してのビジネスモデルを少し前、あるクライアントに提言したことがあります。

本番組では、厚生労働省の介護事業所のデータを使って、ニーズに合った施設を見つけ出すという、あるベンチャー企業のサービスを紹介していました。厚生労働省が公開している全国の介護事業所のデータに含まれるのは施設の住所や介護メニューの基本的な情報で、これだけでは使い勝手がよくありません。そこでこの企業は、厚労省が公開した情報を自社のシステムに取り込み、独自に180もの項目を追加しました。例えば介護事業所の空き状況などの情報を加えます。市内の介護事業所に呼びかけ、このサービスに登録してもらい、最新情報をリアルタイムで更新してもらいます。

これにより、ケアマネージャーは「木曜日、足のリハビリに空きがある事業所は?」などと検索すれば、条件に合う事業所をすぐに探し出せるようになったのです。介護事業所探しにかかる時間は、3日から僅か30分と大幅に短縮できました。また、受け入れ先を早く見つけられることで、その分家族の介護の負担を軽くすることができました。素晴らしいですね。

オープンデータをビジネスに取り込む動きが過熱しているアメリカでは、政府が5年前から行政データの公開を始め、今やその数は40万件にも上ります。人々はそれを使って新たなビジネスを生んだり、社会的な課題解決につなげようとしたりしています。

有効例の1つが、犯罪捜査や防犯の取り組みです。アメリカの警察はいつ、どこで、どんな犯罪が起きたのかという犯罪データを次々に公開しています。このデータをもとに、社員40人のITベンチャー企業が、犯罪が将来どこで発生するのかを予測するサービスを開発しました。全米各地の警察がパトロール活動に既に導入し、イギリスや南米の警察も契約を交わしたそうです。カリフォルニア州のアルハンブラ市警察では、パトロールは同サービスで指示されたエリアを重点的に行います。

農務省と国立気象局が持つ過去60年分のデータからは、天候のリスクなどを予測して農家向けの保険が作られました。悪天候などが原因で不作になった場合、農家の収入補償を細かく行うというものです。農地ごと、作物ごとに非常にきめ細かいリスク計算をして、農家の心配の種である、その収入の波というのをなくしていくというものです。農家の立場に立ったサービスだと思います。

アメリカでオープンデータを活用することで生まれたビジネスは500以上。今後、この動きは加速し続けると見られています。翻って日本ではまだまだ途上も途上です。まず行政がそれほど公共データ公開に熱心ではないのが一番のボトルネックです。個人情報保護を名目に、公共データの公開を拒む例が多いと聞きます。このボタンの掛け違いは、役所が、公共データを自分達の所有物と勘違いしていることから始まっていると思います。

従来は「オープン」といえば「データを見せること」というわけでしたが、「オープンデータ」というのは、自由に使える、編集加工してビジネスにできるように公に提供するというものです。公共のデータというのはそもそも公共財であるという認識を持っていくということが重要です。個人が特定されないよう公的機関が関与・保証して公開する。それを民間が知恵を使って役立つサービスに使っていく。こうした動きにつなげていくことを積極的に後押しする、これこそが政府がすべき第3の矢、成長戦略ではないでしょうか。

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英国に留まることを選択したスコットランドに幸あれ

スコットランドScotlandが大英帝国(United Kingdom)から離脱するかどうかを決める国民投票が昨日あり、結果はNoがYesを9%ほど上回り、離脱しない結論となりました。英国民におめでとうと申し上げたいと思います。

一時は賛成が反対を上回り、その後もEngland政府からの巻き返し工作により拮抗して、投票の行方は不確かでした。仮に「離脱」となっていたら、UKもScotlandも政治・経済的に弱体化し、欧州経済もさらに混乱し、へたをするとその混乱の中でScotland経済はとんでもない運命に陥ってしまったかもしれないほどリスクの高い判断だったと思います。日本では日本経済への影響とかいった偏った見方しかされていませんが、(一時は大喧嘩しましたが)長年の友人で恩義ある大英帝国の運命が掛っていたのですから、もっと社会面や国民心理面からの解説があってもよかったと思います。

ところで、なぜ多くのScotland国民が300年も連れ添ったUKと分かれることを真剣に検討したかというと、突き詰めると、北海油田の利権を丸ごと独り占めしたい、そうすればもっと経済的に豊かになれる、という単純なものでした。しかしScotland国民がそういう心情になったのは、長年の間(特にリーマンショック以降)、「ScotlandはUKの中で重要と考えられず、公正に扱われていない」という思いがうっ屈していたということでしょう。経済不況からの立ち直りが遅れていることも一因でしょう。


いわば長い結婚生活で慣れ倦んでしまった夫にないがしろにされてきたと妻が不満を溜め込む構図に似ています。ご同輩よ、用心しましょう。

この騒動はしかし、世界的な動向を考えると、ScotlandとEngland国民の成熟度を示すことになったと思います。

連合国家が分離を真剣に考える際には悲劇的な騒動が起きるのが普通です。最悪の場合、旧ユーゴや旧パキスタンのように内乱に発展しかねません。そこまでいかなくとも、ロシアとウクライナおよび旧ソ連諸国のように分離騒動の中で互いの憎悪を募らせ、分離後もぎくしゃくすることが多いものです。それに比べ、UK政府はScotland国民の意思を尊重し、住民投票に帰趨を委ね、しかも引きとどめることに成功したのですから。これに近いのはチェコとスロバキアですが、彼らは互いに連邦を解消することにしたのですから、今回の例はある意味、快挙なのです。

一旦は真剣に「離婚」を協議しながら、冷静に考え直して、共に歩むことを再び選択した。まるで熟年夫婦のストーリーのようですが、素晴らしい大人の選択だと思います。是非、UK国民全体として末長く仲良くやって欲しいと思います。

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「情けは人のためならず」はカタールにおける日本のこと?

9月15日(土)に放送された未来世紀ジパング(TV東京系)「“世界一裕福な国”カタール~知られざる日本との絆」。中東の富裕国と日本との意外なつながりを教えられました。

国民一人あたりのGDPは10万ドルを超え(外国からの帰国人や移住者も含まれるので、真の国民だけでいうとその5倍ほどという)、今や世界一裕福な国、カタールのけた違いの豊かさをほとほと知らされました。一般用の国際空港以外に王族専用の空港があるとか、普通の公務員の家庭に、来客用(しかも)2つとは別に家族・親族用のだだっ広い応接間があるのが一般だとか、住民の所得税がないとか、全く異次元の世界です。

カタールにこれほどの急成長をもたらしたもの、それは“世界最大の天然ガス田”です。首都ドーハから80キロ離れたところにあるラスラファン工業地帯。そこには、世界最大のLNG(液化天然ガス)のプラントが集積しているのです。このプラントにより、日本をはじめ世界中にガスを輸出することを可能にしました。つまりカタールに莫大な富をもたらしたのはこのガス田であり、このプラントであり、そして最大顧客の一つが日本なのです。

カタールガスのCEOは「この国の繁栄と現在の地位は、すべて日本の協力会社のお陰です」と語ります。実は、日本は商業化の目途が立っていなかったプラントを成功させた立役者だったのです。この生産・輸出量ともに世界最大(第6系が建設中)のLNGプラントは、オールジャパンで取り組んだLNG開発プロジェクトだったのです。

千代田化工建設のプラント建設現場の様子とその歴史が番組では紹介され、様々な苦労を重ねたノウハウが詰まっていることが感じられました(セキュリティのため滅多に取材許可が下りない現場だそうです)。

しかしながら、カタール国民の不労かつ裕福度に比較して、外国人労働者と彼らを指導する千代田化工の従業員が厳しい現場で懸命に働き、狭く暑苦しい宿舎で寝泊まりしているのを見て、アンバランスさを感じたのは小生だけでしょうか。あまりにひどい格差です。放っておけば(日本人はともかく)外国人労働者はすぐに帰国しかねませんよ。

一方、カタールからも日本に知られざる貢献が続けられています。例えばカタールからの資金で造られたフレンドシップ基金により、東日本大震災で被害を受けた子供たちの教育を支援する施設が仙台に、震災直後の女川に魚の冷凍施設が設立されています。「勇気をいただいた」と喜ばれています。

原発で足りなくなった発電量を補うための火力発電の燃料の8割を追加供給してくれたのもカタール。とてもありがたいことです。なんと日本は発電用エネルギーの42.5%をLNGに頼っているのですね(なんと偏った割合でしょう。まるで欧州がロシアのガスに依存しているのと同じです)。この2割がカタール産だということです。

それにしても、日本に輸入されているLNGの価格は原油価格に連動する契約になっていたはずで、そのため現在、ニッポンはLNGの輸入価格が非常に割高なのです。これを世界の市場価格に合わせることにカタールが真っ先に応じてくれるのが、ニッポンにとって一番嬉しいことです。他のことはさておいて、是非、お願いします。

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日本の水ビジネスの強みは、独自技術に加え、現地を活かす知恵

9月8日に放送された未来世紀ジパングは「世界を救う日本の水ビジネス」でした。深刻な水問題に直面する世界各地に安全な水を供給するために役立つ、ニッポンの技術と人々の努力を伝えてくれました。

実は小生も以前から興味を持っており、日本ポリグルなどの活動に関心を寄せていました。http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-144.html
加えて、ある大手企業のこうした分野についての活動のお手伝いをすることになりそうで、一層興味を持ってこの番組を観ていました。

世界の全く異なる3ケ所で、それぞれ中小企業、個人、大企業が現地の水事情を改善しようと奮闘する姿。そしてニッポンの「戦略」が示唆されていました。

1つ目はフィリピンのマニラ郊外。現地では水道を契約している世帯は中流以上で、水道契約ができない家庭ではその水道水を、いちいち買ってポリタンクに入れて自宅に運んでいるのが実態です。しかし、マニラの浄水場から送られてくる途中の水道管や給水タンクの状態が悪いため、水質がかなり悪くなっていたのです。

そんな水道を安全で美味しく飲めるようにするために山梨県からやってきたのが、明和工業。社員13人の小さな会社ですが、砂を使った画期的なろ過装置を開発しました。粗さの異なる砂の層をサンドウィッチのように粗い→細かい→粗いと多重化した構造です。

果たして、それまで塩素が強くてまずい水道の水が、このろ過装置を通すと、非常に綺麗でおいしい水に変わったのです。構造的にもシンプルなので、装置費用もメンテナンスコストも安く済みそうです。途上国のニーズにぴったり適合しそうです。

2つ目はバングラデシュの農村部です。ここに水道は通っておらず、村人たちは井戸水を飲んでいます。しかしバングラデシュの土地にはヒ素が含まれる地域が多いのです。なんと2000万人以上の人が、基準値を上回るヒ素の含まれた水を飲んでいるというのです。そんなバングラデシュで、人々に安全な水を提供できるよう尽力する日本人がいます。墨田区保健所の元職員、村瀬誠さんです。なんと雨水を利用するという驚きの方法です。

バングラデシュではインド洋から蒸発した水蒸気が雲となり、しかも農村部では空気が綺麗なため、雨水に不純物がほとんど含まれていないのです。つまり雨水を貯め、そのまま飲んで安全でおいしいのです(日本でも明治時代の途中までは全国でそうだったはずですね)。しかし井戸水は危険で雨水が安全というのは、まさに「所変われば」です。

村瀬氏は村人たちに、安全な水を確保するため雨どい作りを教え、貯めるための水瓶を販売しています。ボランティアではなく現地の人たちを巻き込んだBOPビジネスとして根付かせようとしているのです。無茶苦茶ローテクですが、現地事情に合った適正なやり方ですね。

3つ目はインド洋に浮かぶ楽園、モルディブです。周りを海に囲まれたこの国でも、飲み水に問題が起きていました。人口増加によって地下水を取り過ぎ、井戸水が枯渇し、海水が混じるようになったのです。

そんな水不足の解消に一役買っているのが日立です。日立とJICAは、逆浸透膜を使った海水淡水化技術で、海水を真水にろ過する施設を完成していたのです。お陰でモルディブでは、水道の水が安全に飲めるようになっていました。さらに日立は、水深800メートルの深海から海洋深層水を取り出し、飲み水に利用するという巨大プロジェクトにも乗り出していました。この壮大な国家プロジェクトが可能なのは、モルディブに観光が生む巨額な資金があることと、日本が支援していることです。

番組の最後に、沸騰ナビゲータ、グローバルウォータ・ジャパンの代表である吉村和就氏の解説がありました(この人、いい声と語り口を持っています)。

世界の水ビジネスは2025年に110兆円規模になると予測されています。その中で日本が狙うアジアの市場はそのうち約30兆円です。しかし、世界にはヴェオリアやスエズなどの水メジャーがおり、さらに韓国・シンガポールなど強力なライバルがアジアに出現しています。これらに対抗するためには、大企業・中小企業・個人などの民間と、事業運営のノウハウを持つ自治体が協力し、官民一体となり進出を狙う必要があると説きます。確かに、従来は各個撃破されていたようですから。

更に重要なのが「ジャパン・イニシアチブ」です。日本が主導権を取りながらも、海外の企業と協力する。現地に雇用を生み、産業を作ることで長期的なビジネスに発展し、日本がアジアの“水メジャー”になる可能性が膨らむという考えです。今回の番組でも紹介されていたように、海外メジャーと一味違う、現地と協業する「日本らしい」戦略を持て、ということでしょうね。

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公共事業頼りの景気維持は続かないばかりか副作用を生んでいる

アベノミクス第二の矢、公共事業による景気刺激政策は費用対効果でみると既に正当化できないばかりか、民間投資の「クラウディングアウト」を生んでいる。公共投資はむしろ抑制し、民間国内投資を促す「第三の矢」への重点シフトを急ぐべき。

第二次安倍内閣への支持率がぐんと跳ね上がって首相の御機嫌はよいのでしょうが、アベノミクスと称される経済政策には誤算が多々生じてきています。

第一の矢、大胆な金融緩和がもたらした「一層の金利低下」は確かに、株価持ち直しにより富裕層の懐を潤わせ、景気転換のきっかけをもたらしました。でも直接の目標であった「円安誘導」には成功しながらも、本来の狙いだったはずの「輸出主導の景気盛り上げ」にはつながっていません。長年の円高に懲りた大手輸出企業が生産施設を海外に移転し終わったタイミングでの円安転換だったため、輸出数量が意外なほど伸びないためです。反面、その円安は原燃料の輸入価格急騰を確実に生じさせ、日本経済に多大な負荷をもたらしていることは周知の通りです。

第二の矢、公共インフラ建設投資による景気刺激政策はもっと期待外れです。確かに当初は、第一の矢がもたらした資産効果と相まって、景気回復期待を高めました。「景気は気から」と言いますが、「この先、景気がよくなりそう」と大衆と企業の心理を転換させた貢献は高かったと思います。しかしその後、実態としての景気刺激のカンフル効果は次世代への財政負担押し付けを正当化できるほど大きくならないまま、むしろ今では逆に人手不足を通じての、民間投資に対するクラウディングアウト(押しのけ)効果という負の副作用が強くなっているのが実態です。

少々説明が必要ですね。そもそもなぜ公共インフラ建設投資が政府による景気刺激政策の代表的事業となっているのでしょう。これには経済学でいうところの「乗数効果」という概念が鍵となります。政府の公共支出額が次々と人々の懐具合を刺激し、最終的にどれだけの額の需要創出=人々にとっての総所得をもたらすかの増幅度合いを指しています。この需要刺激効果浸透の過程で、仕事を受けた人々が収入のうちなるべく多くの割合を早めに支出するほど、乗数効果は高くなります。簡単に言うと、「宵越しの金を持たずに、ぱーっと使う」江戸っ子ばかりだと乗数効果は非常に高く、「世の中の金回り」=景気を一挙によくすることができるのです。

公共インフラ建設に関わる肉体労働者の多くは、もらった給金の多くを飲み食いなどですぐに散財してくれる、その意味で理想的な労働者でした。そしてその金を受け取る飲食業や旅館業の人たちも、すぐに仕入れに回してくれます。彼らから金を受け取る漁師や農家の人たちも同様です。特に経済的に余裕のない人々ほど、飲食はもちろん、衣服や家屋の修繕など先送りしていた支出にすぐ回してくれるので(貯蓄に回す余裕がないので)、公共投資の金の行き先として望ましいといえます。少なくとも高度成長期にはこの歯車が絶妙に速く廻り、世の中が潤ったのです。インフラ建設投資が公共投資の模範的事業とされた所以です。

ところが低成長期になり人々が高齢化に向かうと、将来に不安を抱く人々は消費に慎重になり、しかも当面の生活が何とか廻ると、収入から貯蓄に回す割合を可能な限り増やします。着実に市場縮小に向かっていた当時の公共事業に関わる建設業の親方は、業態変換や廃業を念頭に置いて自らの取り分を増やし、内部留保に励みました。中高年になってきた建設・運輸業の労働者は「いつまでも働けるわけじゃない」と将来のために貯蓄の割合を増やしました。その他の業種の人々も同様です。こうして日本の公共事業投資の乗数効果はどんどん下がっていきました。そのため政府の借金が膨れ上がる一方で、公共事業のカンフル効果は情けないほど失われてしまったのです。

こうした状況は前回、自民党が世間の支持を失い下野する主因の一つになったものですから、憶えている方も多いと思います。今回、当面の景気が回復しても、建設および関連業界の人々の将来に向けての不安の構造は基本的には変っておらず、乗数効果が低いままなのは驚きではありません。つまり元来、公共事業投資というものは、たとえ工事が着実に進捗したとしても、今の日本では景気の持続的拡大にそれほど効果的とは言えないのです。

さらに問題なのが、その公共工事の進捗自体がまったく着実ではなく、原燃料高と人手不足からくる費用高騰により入札不調を繰り返していることです。その度に見積費用が上積みされて少しずつ工事が実施されていますが、当初計画からすると格段にペースが遅れ、しかも総額がどんどん高くなっているのです。結果として地方と国家財政への負担(つまり次世代への負担)が膨れ上がりながら、喫緊に必要なインフラ再整備や補修は大いに遅れ、社会としての生産性改善にもなかなか結びついていないのです。このあたり、小生は以前から指摘してきましたが、残念ながらその危惧の通りになりつつあります。

道路インフラを考える(1)新設はせず、維持管理を優先せよ
http://www.insightnow.jp/article/8059
五輪向け整備と震災復興の両立には規制緩和が必須
http://www.insightnow.jp/article/7900

つまり、アベノミクス第二の矢、公共事業投資は景気拡大を誘導する効果にもともと疑問があるばかりでなく、実際の進捗も遅れ気味のため、政府が主張するほど景気拡大に役立っていないのです。膨張する財政負担を次世代に先送りする側面を直視するならば、その費用対効果は正当化できない水準にまで低下しているといって過言ではありません。

それに加え、公共事業投資が引き起こした建設業での人手不足は、隣接業界である物流業界をはじめとして、同様に体力を要求される飲食・小売業界などにどんどん波及しており、そのせいで出店などの事業計画を見直すことを余儀なくされる民間企業が続出しています。これは新しい「クラウディングアウト効果」です。

ここで「新しい」というのは、伝統的なクラウディングアウト効果は政府支出の増加が利子率を上昇させて、民間の投資を減少させてしまう現象をいうのですが、今の利子率はむしろ低下気味なのに、人手という希少な資源を取り合う格好で民間国内投資を抑制する効果となっているからです。

政府・自民党は、今4月の消費増税後の景気の足踏み状態を解消するため、そして来年の2次増税の際の景気下支えのために一層の公共投資を画策しているとの話も聞こえてきます。しかしこれは見当違いも甚だしい政策です。これ以上、民間投資を抑制するクラウディングアウト効果を強めてはなりません。

政府がこの分野ですべきこと、できることは3つだけです。

1.政策的効果の薄くなった公共事業投資を再選別して全体として抑制し、民間に人手を返すこと。2.別ルートでのクラウディングアウトを生む「在宅介護を重視する介護制度」を見直すこと(別稿にて論じます)。3.不足する人手を補う民間の努力(女性・ニート・中高年者・外国人の活用、ロボット活用)を支援すべく、規制を緩和すること、および特区などでの実験の場を提供すること。先の2つは政府が民間の足を引っ張らないように政策を修正することであり、最後の項目がいわゆる第三の矢=成長戦略の本筋だと考えます。

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掃除ロボット戦争、第二幕のガチンコ勝負へ

サイクロン式掃除機で有名な英ダイソンが9月4日、ロボット掃除機への参入を発表しました。来春、サイクロン式ロボット掃除機「ダイソン360Eye」を、世界に先駆けて日本で発売するということです。

東京で開催された発表会には創業者のジェームズ・ダイソン氏が登場し、日本の消費者へ「ダイソン360Eye」の魅力を自ら訴えました。この様子は多くのニュース番組でも取り上げられていました。9月からは日本でモニターを募集。日本の家庭環境下で使用してもらい、これを発売する製品に反映するとのことで、同社の力の入れ具合が窺えます。

価格は未定としていますが、競合になると予想される米アイロボットの最上位機種「ルンバ880」(14年3月発売)が現在の市場では7万円前後で販売されているところから、「ダイソン360Eye」は10万円程度になると見られています。

ちなみに「ダイソン360Eye」は、直径約24.2センチメートル、高さ約12センチメートルの円形で、重さが約2.4キログラム。「ルンバ880」が直径35.3センチメートル、高さ9.2センチメートル、重さ約3.8キログラムですから、やや小ぶりだが高い(分厚い)印象です。これだとラックの足が低い(つまりラックの底と床の間があまりない)場合、潜り込めないので掃除されない、ということになります。日本の住居環境では微妙な不利点ですが、ダイソンお得意の吸引力を確保するためにはこの分厚さが必要だったのでしょうね。

その高い吸引力こそが同製品の特徴です。発表会でも「ダイソン360Eye」と競合他社の製品を並べ、レーンに置かれた5グラムの重曹をどれが一番良く吸い取るかのデモンストレーションを行い、ダイソンの吸引力の高さを強調していました。「ダイソン360Eye」は、高効率のモーターを使用することでバッテリーの持ちと高い吸引力を同時に実現することができたといいます。

同社によると、他社のロボット掃除機は、バッテリーの消費を抑えるために低出力のモーターを使用。出力が低くなると、吸引力もそれに伴って落ちてしまうとのことです。彼らに言わせると、「従来(他社)のロボット掃除機は、掃除機としての機能を全く考慮していない」とケチョンケチョンです。

同製品の特徴は吸引力だけではありません。本体上部には360度見渡せるカメラが付いており、ロボット掃除機自身が今どこにいるのか製品を回転させることなく把握し、マッピングをするのです(東芝の最新機も同様の機能を保有します)。自分の位置を常に把握しながら部屋を規則正しく移動(ある位置から四角い形を段々広げていました)。一度掃除したところを何度も掃除をするといったような無駄な動きはしないのです。確かに賢いですね。

発売までにさらなる改良を視野に入れているそうですが、現在の所、約120分の充電で約20~30分稼働可能としています。部屋の状態やモードによって異なりますが、「ルンバ880」は約180分の充電で最大90分の稼働が可能だそうです。つまりゆっくりそこらじゅう(しかも多少重複して)掃除するルンバに対し、大力量・効率移動で一気に掃除するダイソンといった違いですかね。

市場には、シャープ(おしゃべり機能やネット遠隔操作機能付き)や東芝(回転ブラシ付き、本体のゴミの自動吸い取り機能など)といった日本勢もユニークな機能を発揮しているのですが、現実にはルンバ一人勝ちの状況です。そこに強力ライバルが現れ、2強のガチンコ勝負になる可能性が高そうです。小生、個人的にはシャープのコミュニケーション型が一番ユニークで面白いと思っていますが、自宅はフロアリングでないので、ロボット掃除機は使えません。残念。

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丹羽宇一郎氏に早急なる引退を薦める

日経ビジネス誌の巻末近くに「賢人の警鐘」というページがあります。筆者は日本電産の永守会長、コマツの坂根相談役ら錚々たるメンバーが交代で務めます。小生は時々記事を切り抜いてしばらく手元に置いて、何度か読み直しをすることがあります。

その筆頭に名を連ねているのが、伊藤忠商事の前会長である丹羽宇一郎氏です。前駐中国大使でもある氏はアジアに造詣が深いということで、そうしたイシューに関するコメントがよく載せられています。失礼な言い方ではありますが、それらには随分「浅い」視点が多いと小生は感じます。

端的に言って、中国韓国の言い分の政治的意図や社会的背景を深く分析することなく、「(当面の商売上不具合だから)理不尽な言い分でも我慢して飲み込め」という主張が多いのです。特に靖国参拝問題と従軍慰安婦問題です。もしそうしたら、この悪名高い2カ国がつけあがって、さらに要求をエスカレートするだろうということを、過去の経験から学んでいないと言わざるを得ません。

仮に中韓の言い分に唯々諾々と従った場合、日本が彼らの主張を認めることになるのが国際政治上の常識であるという悪影響を理解しているのでしょうか。過去に「理不尽でもうるさい連中だから聞いたふりをしよう」と「大人の対応」をしたために、中韓は「日本という国は、喚けばいうことを聞くのだ」とつけあがって、その後何度も援助資金などをむしり取られて、それでもまったくそれぞれの国内に対し日本の好意を伝えることなく、むしろ悪しざまに宣伝され続けたことを知らないとでも言うのでしょうか。

また、冷徹な対中分析(領土的野心を隠さない異形の大国であり、かつ軍部に対するシビリアンコントロールが必ずしも効かないことなど)を欠いて、駐在時の中国要人が紳士的であったとか、これこれ言っていたとか、個人的感覚で外交や政治的判断に口出しすることは、元駐中国大使としては安直過ぎます。また韓国に対する見方もあまりにナイーブ(世間知らず)で、日本というブランドを汚すことが今の政権の戦略的方針だということが分かっていない癖に、妙に韓国に共感を覚えているようなのです。まるで朝日新聞の主張のコピーです。

例えば本年7月7日号の日経ビジネス誌では従軍慰安婦の話題を出して、「韓国側は、…。日本の姿勢を問うている。ならば、日本の政治家はもっと相手の立場を考えて行動すべきだ」と書いていますが、韓国の立場というのは、わざと困らせようと日本にいちゃもんをつけているものです。

まず事実を踏まえる必要があります。韓国の団体や政府が主張するような、日本の政府・軍部が朝鮮人の慰安婦を強制的に連行した事実はありません(朝日新聞が吉田虚偽証言に基づき誤報しただけです)。事実は、朝鮮人の貧しい家族が、朝鮮人業者に売ってしまったのです。朝鮮人業者は家族から離れるのを嫌がる娘たちを騙して慰安婦にして軍隊の慰安所に送り込んだのです。そしてこうした貧しさからくる悲劇は朝鮮人だけでなく、日本人の娘たちにも同様に(しかももっと多数)生じています。なぜ朝鮮人が朝鮮人にしたことで今の日本人が責めを負わなくてはいけないのか、誰がまともな説明をできるでしょう。丹羽氏はそれでも日本政府が謝罪すべきとでもいうのでしょうか。

氏は「韓国など周辺国の国民文化も理解した上で、それでも参拝するというのであれば、事前にもっと丁寧な説明をすべきだ。…と、粘り強く理解を求める」と言っています。実際、日本側はそうした努力をずっとやってきていますが、日本のメッセージを韓国側が無視し続け、日本が求め続けている説明のための政治家の会合すら拒否し続けているというのが実情です。

ましてや「靖国問題は日本側から仕掛けた話だ」と氏が言っているのは大いなる間違いであり、氏の認識の浅さを露呈したのか、それともわざと事実を曲げてしまったかのいずれかです。間違いなくこれは韓国側から仕掛けた話です。こうした事実関係まで捻じ曲げてしまうところも、朝日新聞と同じ体質をもった人物かと疑わせる所以です。伊藤忠という大企業のトップを長年務めた人物として、民間出身の前駐中国大使として、これ以上恥をさらされることがないよう、早急に完全引退していただきたいものです。

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中古車リサイクルのビジネスモデルをグローバルで成立させた男

9月4日(木)に放送された「カンブリア宮殿」(TV東京系)は「中古車解体業に革命を! “車の後始末”で世界を変える町工場」と題し、会宝産業の社長、近藤典彦がゲストでした。自動車解体でグローバル企業という稀有な存在です。

日本国内で1年間に販売される新車の台数は約530万台。その一方で廃車になる中古車は約340万台に上るそうです。そのほとんどが国内に約2500あるという解体業者によって解体され、鉄くずや使える部品として仕分けられます。その日本の中古部品に注目し仕入れているのが海外の自動車部品バイヤー達です。海外での日本車の人気は高く、新車だけでなく中古車需要も膨らむ中、補修部品の需要も高まっているのです。

そんな自動車部品の取引額で業界最王手の自動車解体業者が、石川県金沢市にある会宝産業です。世界74カ国と取引し、年間1万4000台の自動車を解体しています。実に売上げの75%を海外輸出が占めています。石川の小さな町工場がいかにして世界を股に掛ける企業へと成長をとげたのか。実に興味深い事例です。

その秘密は、他の追随を許さない徹底したIT化です。中古部品全てをバーコードで管理。車の年式や走行距離などのデータを一目で見ることができるのです。さらに品質を保証する独自の規格を作り、客から信頼される商品として提供するようにしたのです。さらに自社の在庫の管理データを海外でも見ることができる独自のシステムを構築。海外のどこからでも部品を購入することが可能になったのです。4ケ国語に対応する体制も築きあげています。凄いグローバル対応力ですし、ITを戦略的に使って競争力を上げています。

番組では、いち早く良い部品を手に入れようと泊まりこみでやってくる海外バイヤーの様子を見せてくれました。バイヤー達は1台の輸送コンテナに出来る限りの部品を詰め込みます。日本からのコンテナが行き着いたのは、ロシアのウラジオストク。街を走る車の9割が日本の中古車です。街には車の中古部品を扱う業者が200近くも点在します。そこでは日本から仕入れた中古部品が仕入れ値の3倍近くの値段で売られており、現地のドライバーは次々と部品を買い求めていました。エンジンを丸ごと積み替えて再利用することも現地では普通なのです。

近藤社長は22歳で同社を設立して以来、裸一貫で町工場をグローバル企業へと成長させました。世間から「解体屋」と冷たい目で見られてきた自動車解体業の悲哀を味わいながら、常に近藤社長の心の中にあったのが「誇りあるサービス業」として解体業を認知させたいという思いだったと言います。『あいさつ日本一、きれいな工場日本一』を掲げ、徹底的に社員教育、工場の掃除に力を注ぎました。業界を底上げするために車の解体技術者の資格を作り、人材育成の研修センターも立ち上げました。一般の人の理解を得るべく、自動車の解体ショーも毎週実施しています。

さらに海外からの幅広いニーズに答えるため、近藤氏の提案で、全国にある20の自動車解体業者が連携、会宝産業と部品の在庫を共有します。茨城の解体業者はこれで約2億円売上げを伸ばしました。協調することで収益を大幅に増加させる仕組みです。そして今や解体業を「静脈産業=エコ活動」として誇り高いビジネスとして考えるよう、業界全体の意識を高めているのです。

輸出だけでなく、自ら海外にも「伝道師」として進出しようとしています。途上国で廃車が不法に山積みにされている現実を知った近藤氏は、日本の進んだ自動車解体技術を途上国に伝えようと考えたのです。アフリカでも最も人口の多い国、ナイジェリア。国を走る約3割の車が中古の日本車です。この国では使われなくなった車の大部分が投棄され、ゴミとして山積みになっています。

しかし日本の優れた解体技術を使えば、それら自動車部品が新たな資源へと生まれ変わることができることを、会宝産業から派遣された社員が現地の解体業者に対し実演していました。日本の解体技術を一から教え、現地に日本からの部品を輸出する同社の取り組みが始まっているのです。素晴らしいニッポンの貢献であり、ビジネスモデルです。

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日本企業の新卒採用の実態は、実は進化していない

9月1日(月)放送の「クローズアップ現代」(NHK)は「シリーズ 成長への人材戦略① 
どう確保?有望な新卒」でした。

このシリーズ1回目は、異変が起きている新卒採用の現場からの報告です。今年、企業の大卒求人総数は約14万人(去年比25%増)増え、いわゆる“売り手市場”に様変わりしています。ついこの間まで就職氷河期と言われ、ブラック企業がのさばっていたのに、本当に数年で隔世の感があります。

その結果、企業間での新卒の奪い合いが激化し、内定式のひと月前になっても、大企業ですら人材が集まらないという事態も起きているのです。ファミレスを展開するロイヤルホールディングス(いい会社です)。会社説明会に参加した1,100人余りから選び抜いた学生58人。その内定者のうち半数以上が辞退(それらの辞退者の行き先は航空や商社、金融など、バラバラでした)。内定式までおよそ1か月。目標の40人まで14人足りません。

介護や医療などの新しい分野に進出し、業績を拡大しようとしていた矢先だけに、危機感を抱いています。必要な人材を確保できなければ、今後の成長に影響が出かねません。なぜほかの企業を学生は選んだのか。反省点として、社員が具体的にどのように仕事をしているのか、学生に十分に伝えられなかったと考えています。今、会社では、これ以上内々定の辞退者を出さないため、入社後の働き方などを若手社員に説明させています。

同社の菊地唯夫社長のコメントです。「来年、再来年、もっと厳しくなっていくと思う。人が枯渇してくるというのは、我々だけの話ではないので。その中で選ばれる企業にするためには、どうしたらいいかと我々自身が問われていて、企業が持続的成長を目指すなら、採用も持続的な採用が大事なコンセプトではないか」と。まったくその通りですね。

必要な学生の確保に向けて企業の採用戦略が問われる中、新たな動きも起きています。企業から内々定を得ている学生を、ほかの企業が引き抜くためのサイトです。およそ3,000人の学生が登録しています。内々定をもらっていても、より希望に合う企業に就職したいといった学生です。

企業は学生のプロフィールを見て、採用したいと判断すれば勧誘のメールを送ります。採用が決まれば、サイトを運営する会社に報酬としておよそ90万円を支払うという仕組みです。番組では名刺情報共有システムのSansanがこのサイトを使って他社の内々定学生を引き抜く動きを紹介していました。でもこの仕組み、引き抜き合戦という不毛の闘いを助長し、条件で動く学生の劣情を刺激し、サイト運営者だけが儲かるだけで、あまりフェアとは思えません。こんなのアリですか!?

ゲストに招かれていた、横浜国立大学の服部泰宏准教授が解説していました。「世の中の景気の変動に合わせて、企業が採用を合わせていくという実態があった…そもそも日本企業は新卒採用を行ってるというのは、10年後、20年後に優秀な人、この会社を引っ張っていく人を採ろうというのが…優秀な人をちゃんと今のうちに採っておこうと、こういう発想に、少し、日本企業が変わってきているのかな…」と。

でも、本当に日本企業が変わってきていると断言するのは早いと思います。大半の企業は、今は景気が回復して人材募集を再開しようとしたら取り合いになっている状況を見て、「これなら景気の悪い時にも採用を続けていたらよかった」と愚痴を言っているに過ぎないと思いますよ。はっきり言って、小生が知っている大企業のサラリーマンの大半は近視眼的です。

服部准教授が指摘していた面白い状況として「三極化」があります。売り手市場というのが当てはまるのはごく一部のトップ層の学生(偏差値の高い大学で、アクティブに大学生活を送ってきた人たち)だけだというのです。多くの学生は、1社内定もらうのに非常に苦労しており、もう1つ非常にその頑張っているんだけれども、そもそも内定すらもらえない層というのがある、という実態があるのです。この分析には納得性があります。

また、まだ日本企業が変わりきれていないのは、用とか面接で見ている能力というのは、非常に各企業、同じようなこと(例えばコミュニケーション能力とか協調性)を見ているという指摘がありましたが、まったくその通りだと思います。そもそも自社・事業の戦略を明確にすることが第一で、それができれば自ずと採用したい人材像は明確になります。人事・採用コンサルなどに指導されているようではダメなのです。

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原発を捨て、地熱発電にシフトしよう

日本での今後の発電方式に関する従来の議論には大いなる偏りと欠落があります。今後も価格上昇が予想される原油に頼った火力発電への極端な依存を続けられないことは明らかです。その依存度を下げる手段として、1)運転コストが安いとされる原発を再稼働させるのか、2)今は割高でも、安全で環境に優しいとされる太陽光発電と風力発電を増やして製造コストを少しでも下げる方向に持っていくのか、の2者択一の議論が横行しています。でも重要かつ有効な選択肢が抜けています。

もちろん、火力発電のための燃料として原油より割安になる可能性の高い天然ガスを、LNGの形で北米などから輸入するという当面の改善策も検討されています。それでも「ジャパン・プレミアム」と呼ばれる割高さが少しは緩和されるだけで、火力発電と中東原油への依存構造は変わりようがありません。

今後、新興国の経済発展がさらに進むことで原油価格はますます上昇します。そんな中、国際的に見ても割高なエネルギー価格を余儀なくされ続けることで、ただでさえ少子高齢化による活力低下に悩む日本の産業全般がますます不利な立場に追い込まれていくことが危惧されます。

また時間軸を長く取り、10数年~20年先まで待てば、メタンハイドレートや波力、水素など、現在開発中の新エネルギー技術も次々に花開くでしょう。でもそれまでの間が問題なのです。

そこで先に挙げた議論に立ち戻ります。本当に1)と2)のいずれかしか選択肢はないのでしょうか。そんなことはありません。第三の道があります。それは火山列島・日本が本来豊富に持つ自然エネルギー、地熱による発電です。地熱によって生成された水蒸気により、発電機に連結された蒸気タービンを回すことによって電力を発生させる、再生可能エネルギーの一種です。

最も望ましいエネルギー政策とは、その土地に豊富な資源をなるべく優先的に使い、社会全体で最も割安なコストになるようにエネルギー・ミックスを組み合わせることです。もちろん、安全が大前提かつ最優先です。日本国内の地熱発電の埋蔵量は多く、世界最大規模の地熱地帯をもつ米国、多くの火山島からなるインドネシアに次ぐ世界3位だそうです(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱山資源機構による。日本を含めたこの3ケ国がダントツで、4位以下は桁違いに小さい)。この国内に豊富に存在するエネルギー資源の活用を真剣に検討することこそ、日本のエネルギー政策の主要な一つになってしかるべきです。

地熱発電のメリットは圧倒的です。まず経済性。火力や原子力と違って燃料いらずで、ほとんどタダ同然の原価。機器の運転に必要な人員も少ない。装置も比較的小さく機構もシンプルなので保守が割安。ましてや原子力の核ゴミのような厄介な廃棄物も出ないので、処理費用も、住民懐柔のための巨額な対策費も不要。次に安全性。原子力と違って、災害やテロによりシステムが制御不能になって地域を崩壊させる危険もない。そして安定性。太陽光や風力と違って、季節・天候・時間に関係なく24時間安定した稼働で高い品質の発電ができる。最後に環境負荷。他の発電方法に比べCO2の排出量が少ない。このように火力・原子力・太陽光・風力などと比べ圧倒的に優れています。

例えば、リーマン・ショックで一旦は国家経済が破たんしたアイスランドでは、政策転換により今や発電は水力と地熱だけでまかなっており、従来頼っていた輸入燃料には全く依存していません。それでも豊富な地熱が余っているので、地域暖房や凍結防止、野菜栽培の温室、露天風呂運営に使われています。これらのエネルギー・コストはほとんどゼロですから、アイスランドという国は急速に生産性と豊かさを取り戻しています。ニュージーランドでも着実に地熱発電設備を増やしており、逆に火力発電所の建設を当面禁止しています(建前としては、2050年までにCO2排出量を1990年レベルに戻すため)。

ではそれだけ元来豊富で有利な地熱発電、実際に日本ではどれほど使われているのでしょうか。発電電力量は2764GWh(2010年度)、何と日本の電力需要のたったの0.3%ほどにしかなりません。要は、全くの「みそっかす」扱いなのです。なぜでしょうか。技術的な問題ではなく、地元一部の抵抗が強いのです(原発に対する国民的反対を無視する政府が、なぜかこうした一部住民の声には非常に神経質です)。地熱発電のデメリットとしてよく挙げられるのが次の2つです。

1つは、適している場所の大半が国立公園内にあるため、発電所を建設すると景観を損ねるという意見です。確かに地元の観光地では新施設の建設にナーバスになることは理解できますが、これは極端な意見です。環境保護団体にも冷静になって欲しいものです。水力発電のために巨大ダムを造るのとはわけが違います。地熱発電所自体が占めるスペースはたかが知れていますし、そこから立ち上る水蒸気は温泉宿のそれと基本的には同じです。地熱発電所の施設デザインを工夫すれば、やがて周囲の風景に溶け込んでしまうことも可能でしょう。

地域に道路や橋を建設することは歓迎し、温泉宿がグロテスクな建物を増設するのを許してきた地元観光業者が、自分達以外も含む広域公共のための施設だと景観上の難癖をつけるのは、首尾一貫性を欠きます。

もう1つのデメリットは、隣接する温泉に影響が出る可能性があるというものです。具体的には、湧出するお湯が減少、もしくは枯渇するという危惧が真っ先に挙げられます。そうした影響が出た実例も国内外であるそうです。さらには、地下深くを掘ることによって地盤に変化を生じさせ崖崩れなどが誘発される、というのもあります。こちらは当事者にとってより切実で、地元政治家や関係官庁が地熱誘致やその許可に積極的になれなかった主な理由だと推察できます。

でも考えて下さい。これらは可能性に過ぎず、必ずそうなるというものではありません。万一危惧する事態が起きたら、電力会社がその温泉宿や地元に補償すればよいのです。原発の場合には広範囲に深刻な放射能汚染をもたらし膨大な補償を余儀なくされることを考えれば、微々たる金額です。もし廃業を余儀なくされる温泉旅館が出れば、その一家の働き手を地熱発電所で雇えばいいのです。旅館に比べれば安定していて、いい仕事です。

何より重要なのは、可能な地域では地熱発電所をどんどん建て、かつアイスランドのように隣接地域まで温水パイプを引くことで、日本全体で見れば相当な規模のエネルギー需要を満たすことができ、ひいては原発という悪魔の施設を再稼働させなくて済むということです。地域崩壊、国家崩壊のリスクを減らせるということです。

日本のような地震国で原発施設を運転することは、火薬庫の上で生活するようなものです。どれだけ多重に安全策を巡らしても完全ではあり得ません。そして原発施設自体だけが危険なのではありません。稼働が続く限り、どこにも持って行きようのない核のゴミが確実に溜まり、地下に大量埋蔵せざるを得ない日がいずれ来ます。その埋蔵された核のゴミが大地震で地表に噴き出せば、深刻な放射能汚染が災害地に繰り広げられるということなのです。

こうした最悪でありながら可能性の小さくない事態を招かないためには、原発に頼らなくても済む発電体制を早急に築くことです。地熱発電はその有力かつ現実的な手段なのです。しかも一旦建設してしまえば、圧倒的な経済メリットを長期安定的にもたらしてくれるのです。

なお、地熱発電だけで日本のエネルギー需要を満たせると主張している訳ではありません。現在のような火力発電への極端な依存を脱するためのベース電源は、原子力ではなく地熱であるべきだと申し上げているのです。多くの国民の安全を守りながら経済活力を取り戻すことと、温泉地の一部の人の既得権を守ることのいずれを取るのか、国家戦略として判断すべき時に来ていると考えます。皆さんはどう考えますか。

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渋滞緩和と交通インフラ整備に貢献するニッポンの技術

9月1日(月)の未来世紀ジパング(TV東京系)は「アジアを悩ます大渋滞 日本の技術で解消せよ」でした。ホーチミン市では都市鉄道の導入計画を手伝い、最近も調査・研究していたテーマでしたので、興味深く録画を観ました。

国が豊かになる過程で必ずといっていいほど起こる事象、"交通渋滞"。自動車や2輪車が急増する一方で、交通インフラが整わないのが主な原因です。世界的にみてもひどい渋滞が日常的に起きているのがアジアの主要都市であり、大きな経済損失を生んでいます。

今回の番組は、想像を絶する渋滞から生まれた珍商売、そして渋滞を解消するため取り入れられている日本の様々な技術を紹介してくれました。取材場所はインドネシアジャカルタバングラデシュダッカです。

車にバイク、信号のない交差点、インドネシアの首都ジャカルタ渋滞につぐ渋滞で、「世界第二位の渋滞都市」と言われるほどです(不名誉なNo.1はタイのバンコクです)。勝手に交通整理をして小銭を儲ける人(でも役に立っているように見えます)や、渋滞で前に進まない車に物を売りつける人達までたくさんいます。もうカオスですね。

地元警察は渋滞を少しでもなくそうと躍起です。違法駐車の車両を懲らしめるため、タイヤの空気を強制的に抜いているのには驚きです。彼らが最近導入したのが、日本のホンダによるスマホ・アプリです。白バイに乗った警察官にこれを持たすだけで、よく渋滞する場所のデータが自動的に蓄積されるという優れモノです(センター側は日本で使われているホンダ・オーナー向けシステムを応用したと思われます)。このシステムが示す渋滞箇所に優先的に警察官を派遣すれば、不足する交通整理員でも何とか対応できるというわけです。

同じジャカルタでは、もう1つの日本の貢献がフィーチャーされていました。行政は、自動車の数を少しでも減らそうと、電車の利用を呼びかけています。しかし、インドネシアの電車は汚く、物騒だとしてこれまで人気がありませんでした。屋根に乗客が乗っかっている光景もよくありましたが、落ちたりして怪我するだけでなく、時には死亡するケースさえ毎年二桁あったそうです。

でも綺麗で冷房の効いた、日本の中古電車を輸入して走らせるようになって、今では電車通勤が快適なものになり、自家用車からシフトする人が増えているのです。車内が涼しいので、もう屋根に乗っかる人はいません(以前は車内が蒸し風呂だったから屋根に乗っていたのですね)。日本で20年以上走っていた電車が活躍しているというのは驚きですが、首都圏を走る電車の約8割が今や日本の中古電車だそうです。

アジアの最貧国、バングラデシュの首都ダッカでも渋滞は凄まじく、社会の発展が阻害されています。遅刻するのが日常茶飯事と諦め顔の学生。1時間ほどで着く予定が5時間掛ったと呆れるトラック運転手。等々。

自動車・2輪車以外に、「リキシャ」と呼ばれる三輪自転車タクシーが目立ちます。実はこれが渋滞の主要な原因の一つ。交通ルールを無視してどこでも客を拾う、そして客待ちでたむろっているからです。行政は渋滞解消のために人々にバス利用を促しているのですが、偽のチケットの販売や無賃乗車が横行していたため、バス会社の収入は伸びず、バスも増やせないため、乗客の積み残しがあるほど満員で、乗り心地やサービスは最悪でした。

そこで登場したのが、日本の“Suica”と同じ技術(Felicaシステム)を使ったICカードです。政府系のバス会社が採用したそうです。デポジットとチャージ代を払って入手したICカードを、乗車の際に車掌の持つ読み取り機にかざすだけです。現金もありですが、ICカードの乗客が優先のようで、多くの乗客がICカードを使用しているようです。

この方式を導入したお陰で、この会社のバスは乗車がスムーズになって一番スピーディなバスとしての評判を確立しました。それだけでなく、無賃乗車を一掃できたことで収入が大幅アップしたそうです。お陰でシステム投資もペイし、新車も多く導入され、女性専用シートも用意でき(イスラム女性には特に朗報です)、願ったり叶ったりの様子でした。日本の技術が役に立って喜ばれるというのは実に誇らしいですね。

PS 渋滞都市トップ10に欧米からランクインしたのは、米国のレキシントンと、情けないことに小生が昔住んでいた、同じ米国のテキサス州都オースティンでした。急成長に交通インフラが追いついていないと大渋滞が日常的に発生するのは洋の東西を問わないという証拠です。

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日印関係とそのポテンシャルを考える

(弊社のメルマガでお送りした内容を再稿しています)
インドのナレンドラ・モディ首相が5日間の滞在予定で日本を訪れています。戦後世代初の新首相が初外遊の相手国に日本を選んだこと、多忙な安倍首相がわざわざ京都まで出掛けて一日掛けて古刹を案内したことは、両国家首脳の個人的シンパシーと、両国の蜜月振りを世界にアピールしたかったことを示しています。

政治的に「敵の敵は味方」とばかり、中国との国境紛争を繰り返してきた経緯に注目した安倍政権が戦略的パートナーシップを持ち掛けてきた成果です。モディ首相はその経済政策における手腕が高く評価されて選挙で圧勝したばかりで、アベノミクスばりの(外資勧誘のための)「インフレ退治、インフラ整備、規制緩和」の3方針を掲げています。政治信条的にはヒンズー至上主義・民族義勇団メンバーという保守・民族派です。そして実務的には中国との経済・貿易関係には神経を使いながらも、中国の拡張主義には反対する姿勢を明確にしています。実に2人の政治家のスタンスは似ており、互いに個人的シンパシーを感じていることは不思議ではありません。

実は世界最大の民主国・インドは有数の親日国でもあります。遠くは日露戦争によってインド人の民族独立意識が覚醒。第二次世界大戦時には、日本の支援を受けたチャンドラ・ボースが樹立した自由インド仮政府が、日本軍とともに英米相手に戦っています。一旦は挫折したかにみえた祖国独立の夢はガンジーとネルーに引き継がれ、大弾圧による多数の死傷者を出しながらも2年間不屈の反英闘争を展開、ついに独立を勝ち取ったという経緯があります。

インド人の大半は、日本が白人列強に対し(無謀にも)戦ってくれたお陰で独立のきっかけを掴めたことに感謝しているそうです。また、戦後の平和外交、産業復興、技術立国にも並々ならぬ尊敬と憧れを抱いてくれており、インド人ビジネスパーソンの日本訪問も急増しています。

ところが日本は中国・東南アジアにばかり関心を寄せ、インドへの興味は高まりませんでした。しかしようやく最近になり、経済的に少しずつ豊かになり始めたこの地域大国に日本の産業界の関心が向き始めているようです。人口の多さから発想される消費市場としてだけでなく、優秀なエンジニア人口の厚みは開発拠点として、まじめな勤務姿勢は製造拠点として、大いなる魅力です。加えて、印僑の人脈は中東や北東アフリカにまで広がっており、インド企業と提携することでそうした地域への足掛かりを得る可能性も小さくありません。

間違いなく両国の政治・経済的関係は今後着実に深まり、発展することでしょう。有力政治家の思惑といった短期的な要素を超えて、両国の補完関係が理想的なためです。しかも歴史的にも尊敬すべき要素こそあれ、いがみ合う要素が全くないという、珍しいほど望ましい関係です。

こうした状況にあって、弊社にも幾つかインド企業からの打診や問い合わせが来るようになっております。多くは「こういう商品・技術を持っているが、日本企業は興味を持ってくれるだろうか」といった相談ですが、中にはコンサルを含む企業から「日本企業のパートナーを探している」といった相談も出ています。近々、日本企業のインド進出のサポートや、インド企業の日本進出といった案件で結実することを期待しております。もしかすると近々、インド進出も当社のサポートサービスメニューに追加されるかも知れません。

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ネットを取り込み、リアルならではの強みを活かす

本日、9月1日(月)のワールドビジネスサテライト(TV東京系)の特集「反撃する“リアル店舗”」は最近追いかけているテーマでもあり、興味深い内容でした。

要はShowrooming化の罠からどう抜け出すか、ということです。最近は店舗で現物のテイストとサイズを確認した上で、実際の注文はネット通販でしかしない(小生からすれば「猛者」です)という消費者が例外でなく、普通になってきているそうです。小売としては大変な時代です。

番組で最初に取り組みが紹介されたのは靴のABC Martです。店に来た客の好みの品の在庫が現場にない場合、その場で店員がiPadで本部在庫を調べ、そこで注文してもらえば自宅に直送する、という仕組み(iChock)ができているのです。

次はDIY業界。大手のCainzホームでは全商品の4割がPBという比率だそうですが、大阪にある専門店、DIY Factory Osakaでは業界大手のNBが主力。その場で試して気に入ったお客に対し、店員は自社のネットショップでの購入を勧めます。事実、そのほうが安いため、大半の客は喜んでその通りにします。

しかしこの会社の社長、実物(特に実演販)を見て買う気になってもらうリアル店は欠かせないと言います。目的買いではなく、ぶらぶら店内を歩いていたら興味をひかれて、つい買ってしまう。こんなパターンはリアルの店舗ならではの買い物の楽しみですからね。

しかもリアル店での展示コーナーはメーカーからすると新商品展示により知名度を上げ、ユーザーの反応を得るのに絶好です。この店では何と25社のメーカーから展示料(月数万円)を徴収しているそうです。それによりこのリアル店舗の賃料はほぼまかなえるというから驚きです。賢いですね。

7&iグループの「オムニチャネル」戦略の追求に代表されるように、リアル店舗とネットを融合させることで、より便利で有難いサービスを開発しようと、各社しのぎを削っていることがよく感じられます。逆に云うと、こうした知恵を絞らずに旧来のままのやり方でのほほんとしている小売業はやがて経営的に苦しい局面を迎えることは間違いないでしょうね。

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