新規事業における素朴な疑問(3)一貫しない取捨選択

新規事業に取り組む企業の行動パターンに関する素朴な疑問シリーズ、その3つめは事業テーマの採り上げ方と絞り方。目先の景気や世の中の流行、直近の業績のブレに任せて戦略方針もなしに変動させていると、中長期的にみると無駄が大きいという課題である。


新規事業に関する永遠の課題とも云えるのは、「本業とのバランス」ではないでしょうか。本業が絶好調という場合はともかく、競争も激しく利益もなかなか上がらない時は悩みどきです。それなら新しい柱を早く見つけて、今の本業が傾いても会社が倒れないようにしておくべきではないか。いやいや、そんな苦しい時だからこそ、全社を傾けて本業に注力して苦境を突破すべきだ、云々。どちらにも一理ありそうです。

もちろん、原則はシンプルだと思います。本業の回復・伸長が最優先で、新規事業の開発・展開のために本業を犠牲にするというのは邪道である、と。しかしながらその邪道が求められる特異なケースもあり得ます。例えば、本業たる銀塩フィルム市場が急速に消えつつあった時期の富士フィルムにとって、新規事業の早急な立ち上げ・収益化は何より最優先だったはずです。でもこれはあくまで「例外」ですね。問題は、個々の企業が直面する状況が「原則」と「例外」の間の何処なのか、という話です。これこそ経営戦略の中核テーマとして経営者の高度な判断に委ねられるべきものです。

大半のニッポン企業は今、景気が回復して一息ついている、もしくはさらにその先を見つめる余裕ができたタイミングではないでしょうか。この1年、弊社でも新規事業開発・展開に関する相談件数が明らかに増えています。喜ばしい状況ではありますが、これまでの新規事業への取り組みをヒアリングする中で思い知らされるのは、かなりアドホックな取捨選択を行ってきた、過去の実態です。

第一の問題パターンは、そもそもどうしてこういう分野・テーマで新事業を始めたのか、理解に苦しむものです。自社の既存領域とまったく相乗効果を見込めそうにない領域にいきなり落下傘的に新事業投資を始めるケースなどです。さすがにバブル経済の時に散々やって懲りた記憶が残っている企業ではあまり見かけず、どちらかというと若くやんちゃな経営者に率いられる新興オーナー企業に時折見られる現象です。経営者が知人やセミナーなどから仕入れた情報に基づいてノリで始めさせてしまったため、誰も止められなかったといったケースが典型的です。

第二の問題パターンは、(一つひとつのテーマはそれなりにその企業の既存領域と関連があるのですが)とにかくテーマ数が多過ぎて十分なリソースを割けない、または逆に一律に絞ってしまったので、現在ほとんど有望な手持ちテーマがないという状況です。前者の状況は前回の“「多重兼務」担当者が多過ぎる”という稿にても触れ、「掛け持ち」度の高いメンバーばかりのため、新規事業開発プロジェクトの質とスピードが劣化するという課題を主に採り上げましたが、本格展開後も同様です。せっかく立ちあげた其々の新規事業が、リソース不足のために競合に敗れてしまうリスクが高くなります。

もう一つ、第三の問題パターンとして挙げておきたいのは、主な仮説に対し未検証のまま何となく事業を進めているという(あまり指摘されませんが、実務的には非常に気になる)ものです。検証と判断を先延ばしするほど、結果が裏目に出た場合の痛手が大きくなります。

協業先の企業がその気になってしまい、立ち止まることも後戻りすることもできず、ずるずると新事業を開始してしまったというケースが典型的です。本来なら事業パートナー候補とは事業の前提となる主要な仮説も共有して、その検証作業を共に進め、ある程度の検証ができた段階で一歩踏み出し、共同事業を公表すべきはずです。しかし実際には、取引先である片一方の企業が既存事業との絡みで前のめりになってしまう、または両者のトップが意気投合して共同事業化をぶち上げてしまう、などの経緯があって、担当者からすると「実はまだ十分な検証はできていません」などと言いだせない雰囲気になってしまうようです。

いずれも問題の根本には、「事業の取捨選択基準が明確にない、もしくはころころと変わる」ということがあると考えます。第一の問題パターンは、そもそもどういった領域ならば自社が強みを発揮できるのかという基本方針がなく、流行や経営者の思い付きから出たアイディアを審査する基準がないため素通ししてしまうことから生じます。第二の問題パターンは、事業の絞り込みが業績や景気に左右されることから生じやすい事態です。業績が悪くなると一律に新規事業の検討を止めさせる一方で、景気と業績がよくなると急に手を拡げようとするわけですね。第三の問題パターンは、そもそも社内での事業企画において、何がその事業の前提となる主要仮説なのか十分に考え尽くさずにいるために典型的に生じます。協業話が進んでから重要な点が未検証であることに気づいた、といった事情があったりします。

併せて、新事業を開発・展開するにあたっての推進・審査プロセスが確立していないことも、一貫しない取捨選択基準を放置させ、問題を悪化させる要因です。要は、どのレベルまで事業仮説が検証されて要件が満たされたら次のステップに進んでいいのか、というルールが整備されていないということです(商社など一部の大企業はこうした問題意識に基づき随分前からルールが確立していますが、多くの事業会社では必ずしも必須と感じてこなかったようです)。

逆にいうと、そうしたプロセスとステップ毎の通過基準が決まっていれば、先に挙げたような問題の多くは深刻化せずに済むはずです。具体的には、例えば実現レベルに沿って「企画」「試行」「展開」といった具合にフェーズ分けし、新規事業案が「企画」から「試行」フェーズに進むためには、基本的なビジネスモデル要件と、事業案が前提とする条件(仮説)はもちろん、その時点で判明している基本的な事業性(実現性、収益性、規模目標など)を明らかにしないといけない、といった具合に特定の要件を満たすことを求めるのです。

なお、ここでご注意いただきたいのは、フェーズ分けの細かさや、それぞれのステップ(フェーズ)の「通過基準」には、一律にこれが正解というものはないということです。業態やビジネスモデルによって随分異なるはずですし、また個々の企業の考え方や成熟度によっても違ってしかるべきです。実際問題として、こういった基準を定める文化のなかった企業がいきなり高度な財務基準を導入しても機能しないので、最初はシンプルなものから始めたほうがよいと考えます。

例えば最初のハードルとして、新規事業の企画テーマとして公式に扱うかどうかを判断する選択基準をどの程度明確かつ厳密に持つべきか、もし持つのなら社内のどの階層レベルで運用すべきか、について考えてみましょう。これについても業界や基本的なビジネスモデルによってかなり事情が異なることは想像できるかと思います。

例えばITサービスの会社なら、新規事業のネタを思いついて数人のグループで検討するというのはそれぞれの現場の担当者レベルで機動的に行われることが多いものです。現場のマネジャーはアイディアを聞いて必要な助言を与えながら、時には「お前、そのネタより以前にぶち上げた○○の方、急いで企画案を出しなよ」といった具合に、その場で取捨選択を指示するでしょう。この時にあまりややこしい基準を持ち出しても機能しそうにありませんし、競合とのスピード勝負に負けてしまうからです。

一方で研究開発志向の企業では、正式に企画が通るということは、アイディアを検証し技術的な実現性などを見極めるため、研究開発者の相当なる時間が投入されることを意味します。そのため審査のハードルが最初からある程度高くならざるを得ません。したがってセンター的な機能をもつ部署が、企画案を審査し、それを担当する人的資源と進捗度を管理するようになっているケースが少なくありません。

しかしあまりに厳格な基準で一律に足切りすると、面白いアイディアだけど誰も検証したことがない、といった類の事業ネタは日の目を見るチャンスが永遠にやってきません。そのため3Mやグーグルのような一部の企業では、従業員に就業時間の15%とか20%まで好きなテーマの自由研究を許すといったやり方で、現場での機動的な企画を促進する工夫をしています。

つまり新規事業というイノベーションのネタを見つけ開花させるために、どの企業にも一律に通じるような絶対的なやり方はなく、それぞれの企業や事業部門が試行錯誤しながら色々工夫しているということです。したがって、ここで挙げたような事業案の取捨選択基準についてもそのプロセスにしても、一旦は確立させるべきですが、出来上がったからといって金科玉条のものとして金輪際変えてはならぬ、というのも間違いだということです。
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住民に近寄ってこそ保育園は受け入れられる

10月29日(水)に放送された「クローズアップ現代」。題して「子どもって迷惑?~急増する保育園と住民のトラブル~」。

子育て環境を改善する政策方針の下、全国各地で保育園の建設ラッシュが続いていますが、建設地の近くに住む住民たちによる計画反対運動が多いといいます。親による送迎の自転車による事故を心配する声が大きいそうで、区の強引な進め方も反発を強める要因になるようです。

相次ぐ苦情のせいで、保育のしかたを見直さざるをえない保育園も出てきました。番組で紹介された例では、園庭で遊ぶ時間を厳しく制限。午後5時以降は子どもを出さず、苦情があれば日中でも利用させない日があります。極端なようですが、子どもの姿を見たくないという声を受け(これはどうかと思いますが)、日中でもカーテンを閉め、窓は目隠し用のシートで覆っています。それでも、この保育園に対する苦情は収まっていません。

横浜市内の保育施設では、「大声を出さない」「楽器を使わない」など、音が漏れるのを気にしている所が7割以上にのぼるそうです。こうした遊びを制限することは、発達段階の子どもたちにとってストレスになりかねません。

東京・世田谷区の住宅地の年代ごとの遊び場の場所を示したマップからは、子供たちの遊び場所がどんどんなくなり、2000年代になると子どもたちの姿が戸外に見えなくなると同時に、子どもたちの生活と大人の生活というのが完全に分かれてしまった様子が浮かび上がりました。単なるうるさい他人だと見えると、保育園が迷惑施設に感じられてくるという構造なのでしょう。

希望をもたらす例も紹介されていました。東京・世田谷区の太子堂地区に3年前、新設された保育園です。子どもたちが住民たちに対し「おはようございます!」と明るく元気に挨拶しています。地域の人たちからも温かい声を掛けられ、親しまれていることが分かります。

しかし実はこの保育園でも、5年前に建設を計画した時には地域住民の反対の声に遭いました。議論がこう着する中、地域の世話人が粘り強く話し合いを続けることを呼びかけたのです。区には計画の詳しい説明や住民たちの要望をできる限り聞いて欲しいと求め、住民たちには不安や不信感を素直にぶつけることを提案しました。話し合いを続けること1年、回数を重ねるうちに合意点が見出されました。

当初は道路に面していた園庭の位置を変え、声が外に直接響かないように変更しました。敷地を掘り下げ建物の高さを抑えることで、隣地の日当たりの確保にも努めました。こんな調子で変更点は7か所にも及びました。住民たちは、自分たちの意見に耳を傾ける姿勢に好感を持ち始めたといいます。さらに、話し合いの場に建設予定の保育園の園長や保育士が率先して参加していたことも、住民たちの心を動かしたそうです。

今では地元の祭りに参加するなど、この保育園は地域の重要なメンバーになっています。ここには住民の暮らしと保育園の新増設をどう折り合いをつけるか、の一つの答えがあると思います。多少のうるささはあっても(かくいう小生宅の近所にも日大中学と高校があり、地域に大音量のスピーカーが鳴り響いています)、地域の子供たちを自分達の宝として抱える喜びを住民には見つめ直して欲しいものです。

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ASEAN最後のフロンティアで縁の下の力持ちとなるラオス

10月27日の未来世紀ジパング(TV東京系)は「日本との固い絆!知られざるモザイク国家 ラオス」。東南アジアの中で最もマイナーな存在だった国、ラオスをフィーチャーした回でした。個人的には数年前のASEAN遠征で行きそこなった国なので、一段と興味深いものがありました。

ASEAN10カ国の中で唯一、海に面していない国。カンボジア、タイ、ミャンマー、中国、ベトナムといった5カ国に接しているため、実に様々な国の影響を受けているのです。元々フランス領であったことで、お昼の定番はフランスパンのサンドイッチ。中国の影響を受けて健康ダンスを踊り、同じ社会主義の北朝鮮レストランが人気、隣国タイのテレビ放送に日常的に接し、日本のアニメが人気とか。

過去の負の遺産もこの番組で採り上げられていました。ベトナム戦争時には、隣国ラオスの東部の地域に約2億発のクラスター弾が落とされ(米国の仕業です)、今もその多くが不発弾として残っているのです。その不発弾を除去しているのが、日本人の率いるNGO。今も数えきれないほどの不発弾が眠っている、通称“爆弾村”で除去を進めています(日本のODAの一環です)。

そして今、安い人件費を理由に日本をはじめとして海外の企業が続々と進出してきています。そんなラオスに、いち早く進出したミドリ安全(安全靴メーカー)の工場には日本企業の視察が絶えません。そこではラオスの人々の気質が見えてきます。「素直で、言われたことはしっかりやる」一方で、ASEAN特有の“ゆるい”一面も見られます。お昼休みが終わってもまだ昼寝をしていたり、整理整頓が苦手だったり…。

この光景、昔は台湾やタイでもよく見ましたし、最近はベトナム、インドネシア、さらには直近ではミャンマーでも見掛けます。つまりラオスもようやく国際労働市場に参加するようになったということです。でもまだ慣れていない新人だから(しかも社会主義国だし)、の~んびりしているのです。実は先行しているはずの台湾やタイの人たちも実は本質的には同じです。(沖縄を除く)日本人や韓国人からすれば、随分ゆるい、南国人特有の働き方です。でも人間らしい生き方とも思えます。

番組の後半で採り上げていたのがダムと水力発電。国土の約8割が山岳地帯だというラオスの地形を利用した水力発電がラオスの強みで、“輸出産業”にもなっており、ラオスは“アジアのバッテリー”と呼ばれています。その水力発電を最初につくったのも、実は日本人だったということです。

ラオスには現在ダムが21基あるのですが、これを今後は80基まで増やす計画があるそうです(正直、自然破壊になるのではと懸念が残ります)。その全てが完成すると、総発電量は2000万キロワット(一般的な原発20基分)となり、実現すればラオスはASEANの他の国への一大電力供給国としてASEAN成長の屋台骨となるだろうと、沸騰ナビゲーターの後藤氏は言います。これもアリですね。

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晩年の秀吉が象徴するワンマン老害と盲従の罪

NHKの大河ドラマ、「軍師勘兵衛」が佳境に入ってきています。天下統一が成り、ようやく勘兵衛たちが待ち望む太平の世になるはずが、実際には「タガの外れた」秀吉の欲望は留まることを知らず、遂に朝鮮出兵に踏み切ります。

この無謀な戦さの顛末はそれなりに有名ではありますが、日本軍は緒戦では優勢で、首都・漢城(今のソウル)を落とす破竹の勢いでしたが、その後盛り返した朝鮮・明の連合軍に散々に打ち破られ、長年の遠征疲れから士気も落ち、総崩れ、全滅の恐れさえあったと言われます。

戦いを始める前からその無謀さを秀吉に箴言していた勘兵衛や利休らの意見は退けられたのです。そればかりか利休は政治に口出ししたことを口実に切腹を命じられます。このように天下統一前後から横暴度を増した秀吉は、彼らの言葉に耳を貸そうとしなくなっていました。

実は壮年時代にはことごとく取り入れていた勘兵衛の進言を秀吉は素直に聞き入れず、場合によっては裏切りともいえる仕打ちを与えるようになっています。例えば九州平定時には、勘兵衛が説得して味方に引き入れた城井城の城主・宇都宮鎮房が本領安堵の約束と異なる国替え(しかもよりによって黒田家を移封)に素直に応じなかったため、黒田家に宇都宮一族を滅ぼすことを命じました。また、天下統一最後の一戦である小田原征伐では勘兵衛の説得により最終的に北条一族は降伏するのですが、やはり秀吉は約束を違えて北条一族に本領安堵を許さずに、徳川家康にその地を支配させました。

この頃の秀吉は快活さや機知で味方を増やしていた上り調子の頃の人間的魅力は全く失せ、高圧的なやり方と強まる猜疑心を隠そうともしない、どうしようもない嫌な権力者と化していたようです。いや、これこそが秀吉の本質で、それまで成功するために必死に隠していたのがその必要がなくなったので露呈しただけなのかも知れません。

いずれにせよ、豊臣「帝国」が後年瓦解するのは、こうした晩年の秀吉の傲慢さがまき散らした害毒がもたらしたものです。

問題は、勘兵衛らと共にそうした秀吉の間違いを最も治めるべき立場にあった石田三成が、逆に勘兵衛の箴言を秀吉にはねのけさせ、時には勘兵衛や利休に対し不利な裁きや、または福島正則や加藤清正らの秀吉子飼いの宿将に厳しい沙汰を与えさせたのです。秀吉には逆らえぬとの恐れもあったでしょうが、彼らをないがしろにすることで己の立場を強化する面もあったでしょう。

しかしこうした目先の都合だけで秀吉に盲従した三成らの高級官僚が立ち振る舞った結果、天下人・秀吉が死去するや否や豊臣政権への求心力は失せ、多くの重臣や大名たちが一挙に徳川へなびく情勢となり、関ヶ原の戦いへの道筋が生まれたのです。

まさに秀吉が撒いた老害の種を三成が育て、茶々があだ花を開かせた短き豊臣家の運命。今の企業経営にも通じる話です。

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新規事業における素朴な疑問(2)「多重兼務」担当者が多過ぎる

新規事業に取り組む企業の行動パターンに関する素朴な疑問シリーズ、その2回目として取り上げたいのは推進体制面。関与する担当者が幾つものテーマを抱える「掛け持ち」度の高いメンバーばかりのため、プロジェクトの質とスピードが劣化するという課題である。


小生がアーサー・D・リトル(ADL)という戦略コンサル会社に勤務していた20数年前にも、新規事業開発や見直しの支援を毎年数件は手掛けていました。その頃のプロジェクトでは、コンサルタント側はもちろん、クライアント側のメンバーも専任が少なくありませんでした。少なくともプロジェクトリーダーと事務局メンバーは専任にしてもらうパターンが典型的でした。

ところが昨今の新規事業開発プロジェクトでは、期間は大幅には変わりませんが、専任メンバーが非常に少なく(時にはゼロ)、大半のメンバーは現業を持つ上に、他の新規事業プロジェクトにも幾つも関与している、といった事態が普通になっています。もちろんクライアント企業が同じではないので単純な比較はできませんが、他のコンサル会社の知人に聞いても、この「掛け持ち」度の高止まり傾向は同じようです。

時には苦笑するような場面にも遭遇します。あるクライアント企業での新規事業開発プロジェクトが完了し、(同じ企業内で)次のテーマに移ったら、1/3くらいのプロジェクトメンバーが前回と同じ顔ぶれだった、という事態です。ある意味やりやすい側面はありましたが、ちょっと考えさせられました。ことほど左様に、ほんの少数(ときには0人)の担当者だけが専任で、あとのメンバーは現業と複数の新規事業テーマを兼任しずっと薄い関与のまま、ということが実に多いのです。その兼任数も二つ程度ならともかく、大小合わせて三~四つということがざらで、いわば大半のメンバーが「多重債務者」ならぬ「多重兼務者」なのです。

各メンバーの「掛け持ち」度合いが高いと何が不具合かといいますと、プロジェクトの質もスピードも劣化するのです。

第一の問題は、個々のプロジェクトへの深い思い入れが生じにくくなることから発します。他にも幾つかのテーマを抱えて忙しくなると、「自分だけが頑張らなくとも」という他力任せの依存心が強くなってくるのです。そうなると人は楽をしたくなるもので、脳みそをぎりぎりと絞って考え、懸命にユーザーや関係者の真意を汲み取ろうとする努力から遠ざかります。自らの責任で外部と交渉したりリスクを取ったりすることにも及び腰になります。要は主体性がなくなり、サラリーマン根性が露骨に出るのです。こんなメンバーばかりで思い切った新規事業を開発できますか?

もうひとつの問題はスピード感が絶対的に不足し、プロジェクト完了までの期間が長くなることです。ほぼ専任化したメンバーだけで構成されるプロジェクトであれば毎日でも簡単な打ち合わせができ、状況と課題を素早く共有し、対策を協議することで着実かつ迅速に進捗できます。それに対し幾つも兼任しているメンバーばかりのプロジェクトチームでは、精々1週間に1度の打ち合わせで各自に振った「宿題」の結果を確認し、次にどうするかを考える、といったペースになりがちなため、進捗は4~10倍程度遅くなります。弊社がお手伝いすることでそのペースを倍以上に引き上げることはできますが、それでも兼任メンバーばかりのプロジェクトというものは厄介です。

どんな新規事業プロジェクトにも、クライアント企業メンバーしかできない部分が厳然と存在します。幾ら外部コンサルタントがしゃかりきに調査・分析しようとも、兼任者ばかりのクライアント企業メンバーが定期打ち合わせまでに「宿題」をきちんとやってこないことが繰り返されるとプロジェクトの進捗はままならず、スケジュールや課題担当の変更が繰り返され、非常に効率が悪くなることは間違いありません(もちろん小生のプロジェクトでは、そんな事態に陥らないようきっちり仕切らせていただきますが)。

中小企業であれば、こうした「専任化は無理」といった事態はある程度は仕方ないかも知れません。そもそも人材の層が薄く、新規事業を担当させる人材がもともと少ないからです。ただし、この場合、新規事業のテーマ数も絞られるというのが現実ですから、実際には「掛け持ち」度が極端に高くなることもないと思えます。

でも小生が問題視しているのは、むしろ大企業のケースです(現実に弊社が支援している対象の大半が大企業なので)。なまじ企業体力があるせいかテーマを絞り切れておらず、むやみに新規事業テーマが多いため、担当者の「掛け持ち」が減らないのです。不透明さを増す経営環境ゆえに、「保険」として常に新規事業テーマを開発していないと不安になる企業経営者の心理も強く働いていると小生は感じています(この問題を指摘したのが弊著「フォーカス喪失の罠」<日経BP企画>です)。

もう1つ、企業側が「掛け持ち」を増やしてきた理由がありそうです。それは「失われた20年」の間、じりじりと人減らしを進めてきた結果、新規事業を担当させることができそうな人材の絶対数が減っているという観点です。少なくない企業でそうした理由を聞いています。

しかしこうした「掛け持ち」度合いが高いままでは、先に挙げた不具合な点は何ら改善されません。どうすれば下げることができるでしょうか。大きく2つの側面で手を打つべきです。

まずひとつには、優先的に検討する新規事業テーマを絞ることです。少なくともある程度調査・検討してみたら、事業性が高いのか、事業化のハードルが高いのかは比較的早い段階で評価できます。そして時代が希求する要素が強いか、競合に先手を打たれる懸念が強いか、などで緊急性も評価できます。それらに基づいて検討の優先度を経営者が決めるのです。

もうひとつの視点は、特定の担当者たちばかりに兼任させるのではなく、もっと広い範囲で(できれば専任の)担当候補者を探すことです。必ずしも社外から採用せよという話ではありません。大企業であれば、社内で埋もれている人材は少なくありません。誰でも構わないとは申しませんが、例えば「直属上司との相性が悪くて真価を発揮できない」「性格的に地味でアピールできないまま黙々と現業をこなしている」等々、「磨けば光る玉」が隠れているはずです。いない訳じゃないけどそんな器用な人材じゃない?一人で新規事業開発に必要な役を全部こなす必要は全くなく、他の担当者たちとチームを組めばよいのです。要は組み合わせを考えるのです。

もちろん彼らに新規事業担当の経験は不足しているでしょうが、上長が期待を掛けて、やる気を持ってもらえば、人間は相当な力を発揮するものです。少なくとも「多重兼務者」が片手間でやるよりは、事業の良し悪しの見極めは素早くできるはずです。あとは経営者が大きな方向性を示すことができるか、そして適切な助言を与えるなどのサポート体制次第です。

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インドネシア新大統領の成否は成長戦略と日本の姿勢次第

インドネシアの新大統領にジョコ・ウィドド(Joko Widodo)氏が20日、就任しました。「ジョコウィ(Jokowi)」の愛称で知られます。河原のスラム街に生まれ家具屋としてキャリアを始めた新大統領は、地元ジャカルタ市長としての政治手腕から庶民派として人気を上げ、ついにはこの7月の大統領選で元陸軍戦略予備軍司令官のプラボウォ氏を破って勝利しました。そのプラボウォ氏も招いた就任式で、ジョコ新大統領は自らが掲げる改革政策への支持をライバル陣営にも呼び掛けました。

ジョコ氏は、長年インドネシアの政界を支配してきたスハルト時代の政治家や軍高官ではない初めての大統領となります。そのためこの日の就任式では国民の歓迎気分が盛り上がり、首都・ジャカルタに国内各地から人々が集まり、盛大なイベントが一日中続いたようです。就任式の後にはジョコ大統領が街頭に出て異例のパレードを行っていました(暗殺の恐れとか心配しないのでしょうか?)。本当に国民からの人気が高いことが分かります。

しかし、議会で多数を占めているのは大統領選でジョコ氏と対立した野党勢力であるため、東南アジア最大の経済の復活と貧困層支援を中心とした改革を掲げるジョコ氏の政権運営は難航するとみられています。いい意味でも悪い意味でも米国のオバマ大統領の就任時に似ていて、その庶民派的雰囲気かつ理想主義的アプローチで国民の人気は高いのですが、政治的足場の弱さにより政策実行が可能なのかどうかが不安視されているのです。

ジョコ新大統領が目指す貧困層支援を実現するには国民と経済界の支持が続く必要があり、そのためには高い経済成長を達成することが何より重要です。そのためには経済のボトルネックである社会インフラの整備、特に道路・港湾の整備、電力設備の能力増強が早急に必要です。また許認可を与える役人の汚職も海外投資を検討する際のハードルとなっています。

インフラ整備のための問題は財源です。この国は既に諸外国からの借り入れが巨額に上り、未整備のインフラのために海外から進出した企業にとって投資回収がままならない事態もよく起きたため、経済成長が鈍化した最近は外国からの投融資も慎重になり始めていました。「ニワトリと卵」ですが、やはりインフラ整備を先行させる以外ありません。

そのためにはアジア開発銀行などからの一段の融資が欠かせません。インドネシアにとって幸いなことに、中国が進めるアジアインフラ投資銀行設立の動きへの対抗心もあって、日本が支えるアジア開発銀行がさらに積極的になる環境にあることは間違いありません。

またジョコ大統領の進める経済改革が汚職追放にまで実効が上がれば、日本・豪州などからの民間投資は再び盛り上がる可能性は十分あります。何と言っても日本企業が今最も投資したい国のナンバーワンはインドネシアなのですから。

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エボラ出血熱の脅威はすぐそこまで来ている

エボラ出血熱感染した人を看護した結果、感染した医療従事者が欧米でも現れ、大きな衝撃を各地にもたらしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141014/k10015395121000.html

この件での衝撃は、当該の医療従事者が、防護服や手袋などを着用していたにもかかわらず、ウイルスに感染したことです。ガイドラインもあり、訓練も受けていたはずなのに、というショックです。もちろん、徹底度が足らなかった可能性が高いのですが、それだけエボラ出血熱感染力が強いという脅威を示すものです。

日本に感染者が入ってきたらどう対処できるのか、非常に不安であることは事実です。実はエボラ出血熱が拡散する一つのパターンは病院を中心に広がるものです。米国の病院以上に日本の病院では、こうした外来の感染症に対する備えが不十分と言われます。

厚生労働省はパニックを恐れ、徹底的な情報開示をしていませんし、「日本は西アフリカとの間の旅行者は限られており、ちゃんと監視しているので不安がる必要はない」といっているようですが、はっきり言って怪しいものです。7月末の時点ではアフリカ外には拡大しないと見られていたのが、今では欧米に拡散しております。

「日本-西アフリカ」間の旅行者だけを監視していても駄目です。エボラウイルスの潜伏期間は2日から21日とされ、感染した人がそれに気づかず飛行機に乗って移動してしまうためです。発症してもエボラ出血熱とは思わずに病院を訪れて普通に診察を受けることで、かなりの人と接触することで簡単に拡散しやすい状況なのです。

アフリカ外の感染者は今はまだ欧米までですが、アジアにも及ぶのは時間の問題ではないかと考えられます。西アフリカには中国人や韓国人、インド人などがかなり進出しており、母国にも戻っています。それらの国々から日本への渡航者は相当な数にのぼります。つまり3角貿易的に日本に感染がもたらされる可能性は低くなく、そのルートへの注意はあまり高くないのが実情です。そうした観点が求められています。

また、感染の可能性がある人に対する検査に数日の時間が掛ることも「水際作戦」を難しくしている大きな要因です。弊社ではこの面での対処の可能性がある技術を今、支援しようとしています。それが軌道に乗るまでの期間、何とか関係者の知恵で食い止めて欲しいものです。

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地位は“年功序列”でも“成果主義”でもなく、“能力”主義であるべき

10/14(火)の日経プラス10の特集テーマは“脱・年功序列”は日本企業に根付くのか!?“でした。

どこまで真剣に考えているやら怪しいものですが、安倍総理が「年功序列見直し」を日本企業に提言したのが注目されています。実際、最近は日立や楽天・ファスリテなどのグローバル展開中の企業が世界で人材獲得するために、日本に特異な人事制度を止めたというのは大きく報道されているようです。

でも一方で、一時流行した「成果主義」に対する反省から人事制度の再改革に取り組む企業も少なくありません。この放送回では“脱・年功序列”派としてジョーズ・ラボの城繁幸氏と、“脱・年功序列”見直し派として城南信用金庫理事長の吉原毅氏を招いて徹底討論という趣旨でした。

しかし結論からいえば、“年功序列”対“成果主義”という構図がそもそも間違っているのです。2人の識者は意見対立するというより、同じような意見の持ち主で何を強調するかの違いに過ぎないと思えます(それを分かっていないのはテレビ局側かと)。

城氏が主張するように、古臭い単純な“年功序列”(=能力に無関係に年功だけでポジションが上がる制度)はもう維持できません。旧態たる年功序列を維持するための年功カーブによる給与報酬制度では若年層が離職することは事実です。しかし吉原氏の主張するように、賃金を人事制度の中核に置くことは間違いで(「成果主義」が失敗した本質的理由の一つです)、それは色々な研究で証明されています。むしろ人は仕事の意味と仲間の評価によってやる気を上げるのです。つまり賃金は不平不満の立派な理由になりますが、やる気にはつながらないファクターなのです。

そしてもう一つ、吉原氏の主張するように、短期的な成果だけを評価して管理職に引き上げる抜擢人事をしても、本人・周り・会社とも不幸になるだけ。プレイヤーとして優秀でも監督として優秀とは限りませんというのは2人とも異口同音に言っています。人事制度成果主義に走ると、むしろイージーな目標設定に汲々し、チャレンジしないようになります。肝心なのは(多少時間をかけても多角的多面的な評価により)当人の「能力」を見極め、それに応じた仕事・肩書きを与えることです。

したがって必要なのは、仕事・地位と報酬の根拠をちゃんと整理して区分することです。仕事・地位は“年功序列”でも“成果主義”でもなく、“能力”に基づくべきこと。報酬は役割(仕事・地位に基づく)と成果に基づくということです。人事部と経営者、人事コンサルタントにはこれらを混同している人が多過ぎます。

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大阪発の眼鏡型ウエアラブル端末は作業現場を変えるか

10/13(月)の日経プラス10で特集されていた、眼鏡型ウエアラブル端末“インフォロッド”は注目の端末です。“企業向けウエラブル端末を実用化 大阪発世界へ!ITベンチャーの挑戦”というタイトルの通り、大阪の企業「ウェストユニティス」によるものです。

福田社長は自動車メーカーの設計部門にいたのですが、マニュアル制作会社を起業したそうです。現場での作業効率を考えマニュアルを動画にすることに取り組んだのが、この事業のきっかけです。さらにいちいちディスプレイを見るのが面倒だということで、2000年からウエラブルコンピュータの開発に取り組んできたそうで、製品化されたのは今年です。
http://gpad.tv/develop/westunitis-inforod/

これ、なかなか面白い端末です。グーグルグラスと同様、ハードとしてのデザインや完成度は今一つの感はありますが(ごく短期間に「えいや」とばかりに開発された模様です)、肝心なのは適用領域ごとのソフトの出来具合です(OSはアンドロイド)。特に遠隔作業支援システムというのが一番本質を表していると思います。
http://www.westunitis.co.jp/web/p_rms.aspx

作業者の視界に作業対象にかぶせるようにマニュアルを表示させた上で、第三者が「ここだよ」と書きこみをできるのです。これなら素人作業者(例えば経験の少ない医師)に対し円熟技術者(例えば経験の豊富な医師)が「この箇所を切除して」といった指示ができるわけです。

番組では、既に物流現場のピッキングなどで使われていると言っていました。観てみたいものです。実はグーグルグラスが登場したときに、小生はそうしたアプリケーションを考えていました。既に音声による作業支援システムはあるので、さらに映像を加えることでさらに効率化と正確性の両立が容易になると期待できます。

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新規事業における素朴な疑問(1)“万能”手法の信奉

新規事業に関するアプローチには幾つかあり、企業の置かれた経営環境次第で適切なものは異なるし、その中で適用すべき手法も一律ではない。それなのに流行の経営手法が万能のように効くと思うのはなぜ?

弊社がお手伝いする経営コンサルティングのテーマで今一番多いのは新規事業です。独自技術などの適用領域から考えるような新規事業の「開発」のケースから、既に数年前から始めてはいるけれど期待通りに伸びないので方向性・やり方を「見直し」たいというケースまで、色々な背景事情があります。小生個人としては20数年にわたってそうしたお手伝いをしていますが、今までどうしていたのかをお聞きすると、素朴な疑問を抱くことが少なくありません。その主なものをシリーズ的に取り上げたいと思います。今回はその1回目です。

大半の企業が新規事業に取り組んでいますが、経営者の方々のある行動が大きな問題を生むことが往々にしてあります。それは流行の手法を自社に盲目的に適用しようとすることです。

世の中で注目されている「○○戦略」とか「XX理論」とかいうのを書店やウェブで見つけ、経営セミナーで専門家の話を聞くと、なんだか自社でもすごく効果がありそうに思えてくるようです(当然ながら「専門家」たちはそう思ってもらうように語るのですが)。これは実は新規事業に限る話ではなく、業務改革や管理統制など他の経営イシューでも同様の傾向があると思えます。

関心の強い経営イシューにおいて専門家である経営コンサルタントや大学の教授などに相談をすることは正しいはずですが、彼らにぶつける質問の仕方に問題があるようです。いきなり「この手法はどうやったら我が社にうまく適用できるだろう」といった、適用することを前提とした尋ね方になってしまうのです。当然ながら答える側もその前提に乗って、しかも質問者の興味を逸らさないように答えます。

でも本当はまず、「我が社の状況において新規事業は本当に必要なのだろうか、もしそうならどういった位置づけの新規事業が望ましいのだろう」という自問があり、その上で「ではどういった考え方で新規事業開発に取り組めばよいのだろう」というアプローチに関する問いが続くべきです。その上で、自社のおかれている経営状況とそのアプローチの考え方に当該の手法がぴったり合うのであれば、初めて「その手法をどうやって適用すべきか」という話につながるはずですね。もしどうも合わないのであれば、「この手法を適用することはお薦めできません」というアドバイスがあるべきですが、必ずしもそうはならないようです。

身近な例で考えてみましょう。ダイエットしたい人は世に多いですが、その時に流行しているエクササイズや運動マシーン、サプリメントに飛びついて買ってしまい、長続きせずにお金の無駄使いを繰り返す人が少なくありません。本来ならまず医師に相談して、自分の体質や生活パターンに合ったやり方を検討すべきところですが、テレビショッピング番組を観ているうちにその気になってしまい、衝動買いしてしまうのですね。

企業経営でも同様に、世間で評判になっている経営手法に経営者が飛びついてしまいがちなのです。いわば“万能”手法にでもめぐり遭ったかのようです。でも、その企業・事業部門の背景・状況が異なるにも拘わらず一律のアプローチおよび手法で取り組もうとすると、まったく事業体としてのフィット感がないまま、貴重な経営資源を注いで関係者が懸命に努力しながらも、成果に結び付かない事態になりかねません。

例えば、本来なら事業部門のサイズに合った小振りの一連の事業群を続けざまに創出すべきところを、身の丈に合わない大型事業を一発創出しようと躍起になった揚句、競争相手にことごとく先を越されてしまう、といった事態を招くリスクが高まります。無理なダイエットが長続きしないばかりか、リバウンドによって却って肥満が悪化するようなものです。

実は新規事業の開発アプローチ(取り組みの考え方)というものは主なものだけで幾つかあります。例えば弊社では3つの類型に整理しています。

一番オーソドックスなのは「競争戦略」アプローチで、既存の市場・産業の枠組みの中でどう勝ち残っていくかを考えるものです。主に市場が確立している場合に適用します。次は「新カテゴリー創出」アプローチで、ビジネスの枠組みは既存のものを前提としながらも、ユーザーは今とまったく異なるカテゴリーを本当は欲しがっているのではないかということを考えるものです。これは主に市場が成熟している場合などに適用します。最後は「ビジネスモデル改革」アプローチで、(商品カテゴリーは既存のものであっても構わないが)ビジネスの仕組みそのものを変えてしまえないかと考えるものです。これは、市場が立ち上がる前後や市場が成熟し切っている場合に主に適用します。

この順にリスクも段々高くなるので、当該の企業および事業部門の置かれた経営環境や競争環境、人材資源なども考慮して、どのアプローチが最適かを推奨します。その最適アプローチに沿って、(時間・コスト・人的資源など)与えられた条件下で最も成果を出せると考えられる具体的な手法を選別し組み合わせて、当該の新規事業推進のプロジェクトを設計します。

なぜこんなに個別の対応をする必要があるのか。それは新規事業の開発は戦略開発でもあり、そこでは手法が答を自動的に導き出してくれるものではないからです。答はあくまで市場および企業内にあり、アプローチや手法は企業関係者が自社にとって適切な「問い」と「答」を導き出すための方法論に過ぎません。したがって千差万別の背景・状況にある企業ごとに最適のアプローチは異なり、それぞれのアプローチに応じて適用すべき戦略手法や分析手法は一律絶対ではないのです。

それらの適切な選別、推奨、設計をお手伝いするのが本来の専門家の役目のはずですが、実際に多いのは特定の手法に関する「専門家」と称する人たちです。この人たち(の一部?)に言わせると、彼らお薦めの手法は万能のようです。いずれの企業でも最善の新規事業を生み出すことができ、あーら不思議、企業業績は一挙に改善するというのです。本当にそんなことがあるでしょうか。どこかで見かけた「あなたも1ケ月でこんなに痩せられます!」という宣伝文句を思い起こしませんか?

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在宅医療の患者を支えるプロの訪問管理栄養士、ここにあり

10月6日(月)に放送、10日(金)に再放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」は訪問管理栄養士・中村育子さんをフィーチャーした「食べる楽しみが、希望を生み出す」でした。

在宅医療の現場で栄養指導を行い、1,000人にのぼる患者の食生活を劇的に改善させてきたのが訪問管理栄養士の第一人者、中村さんです。そもそも「訪問管理栄養士」という職業自体、この方が作り出したようなものです。

中村さんは患者を訪問すると、まず聞き取りから始めます。好みは何で普段どのような食生活を送っているかはもちろん、誰が料理を作るのか、食材を買う店はどこか、さらに趣味や育った環境に至るまで聞き出すのです。患者が食に対してどのような考え方を持っているのか、在宅患者だからこそ、様々な観点から捉える必要があると中村さんは考えるのです。

「在宅の患者の場合はよいお洋服を着て、どこかにお出かけできるわけでもないし、やっぱり食事っていうのがいちばん楽しみになってくるので、食事が嫌になったりとか苦痛になったら、いったい何のために食事療法してるのか分からないので、生きがいになんとかつなげていければ」と、中村さんは語っていました。

患者の食習慣を聞き取るのに欠かせない食品サンプルも紹介されていました。野菜や肉、お菓子など30種類にも及ぶものです。それぞれが栄養学の単位である80キロカロリーを基準に作られているのです。それを見せて、「これとこっちと、どっちを食べたい?」などと尋ねるのです。患者の目の前に示されるので、確実に伝わりますね。

患者と向き合うときに中村さんが心に留めるのが「自分は、招かれざる者」という考え方です。病状を改善させるためには、時に厳しい食事制限を患者に強いることがあります。最初から食事療法したいと思う人はいない。その嫌な食事制限をさせなければいけない立場です。自分がそんな存在であることをまず自覚し、それから患者に寄り添うにはどうすればよいかを考え尽くすのです。

元々は病院などの食事を手がける管理栄養士だった中村さん。患者の家を訪れるようになった出発点には、決して忘れることのできない悲しい出来事がありました。32歳のとき、70代の女性にお弁当を届けることになったのですが、訪れた時には女性は風呂場で息を引き取っていたのです。

自宅での食生活に目が行き届いていれば体の異変に気づけたのではないか。病状に合わせて献立を立てられていれば、亡くなることはなかったのではないか。猛烈な後悔から、それ以降中村さんは患者の家を訪問すると決めたのです。

しかしながら、前例のない「訪問での栄養指導」はなかなか受け入れてもらえず、転職すら考えるほど深い悩みに苛まれたそうです。そんなある日、出会ったのが脳梗塞の後遺症で飲み込む力が極端に落ちた男性でした。男性は胃から栄養を取る「胃ろう」に頼っていたが、もう1度口から食べたいとリハビリを懸命に行っていたのです。なんとか協力したいと、中村さんも安全に食べられる方法を模索し続けました。

1か月後、男性がペースト状にした大根を再び口から食べることができました。男性は涙を流し「おいしい」とつぶやいたそうです。中村さん自身も勇気を与えられたのでしょう。「食べるということは人に底知れない力を与える」。

番組の中で、ある老夫婦が紹介されていました。手が震える夫が、認知症気味で立てない妻を看護しているのですが、妻は一旦食べる力を失ってしまいました。でも夫の作る大根煮を食べたいと懇願するのです。飲み下す力を取り戻すため、おかゆをミキサーでペースト上にしたものから食べる練習を始めるのですが、妻はどろどろの食感が嫌で、ミキサーに掛けないままおかゆを食べるようになっていました。すると軽い気管支炎に掛かってしまったので、中村さんが辛抱強く説得してミキサーに掛けた状態で食べるように薦めました。

それでは長続きしないと考えた中村さんは夫の作る大根煮をミキサーに掛けて出します。その味が懐かしく、妻は「おいしい」と喜んでくれました。妻はおかゆも食べるようになり、やがて少しずつ飲み下すことができるように回復し、ついには大根煮をそのまま食べられるまでになりました。忍耐強いプロの勝利です。

小生は厚労省が狙っているような、在宅介護を主流にする考え方には批判的です。でも在宅介護・医療そのものを否定するつもりは全くありません。いやむしろ、在宅介護・医療を望む家族がいる限り、在宅介護・医療に関する公的サービスも充実させるべきです。その一環として、こうした訪問管理栄養士が活躍してくれることは非常に心強いことだと思います。最初は「招かれざる者」として訪問を始める彼女たちですが、「感謝される」存在であることは間違いありません。

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鎖国を脱したばかりの超リッチ&独裁国家、トルクメニスタン

10月6日(月)の「未来世紀ジパング」(TV東京系)は「池上彰SP第1弾 ~謎の国・トルクメニスタン~」。池上彰氏が注目し続けてきた国がトルクメニスタンだそうです。長い間、北朝鮮のような鎖国状態にありましたが、今回特別に許可が下りたのです。実に驚きの内容でした。

その首都・アシガバートには白く磨き上げられた不思議な街並みが広がっていました。異彩を放っていたのが、前大統領の金色の巨大像。なんとも成金趣味です。ギネス認定という世界一大きい"星形"建造物や、世界一大きい"屋内"観覧車などの奇妙な建物が立ち並び、しかもそれがすべて総大理石(海外からの輸入)! 世界一大理石が密集している都市としてギネスに載っているそうです。

市民に話を聞くと、みな「大統領様」への感謝を語ります。トルクメニスタンの書店へ行くと、目立つのは大統領関連の本ばかり。大統領の写真集や大統領の料理本もあります。トルクメニスタンのテレビでも大統領の映像ばかりです。取材中もトルクメニスタン政府の役人が取材に同行して監視しているのです。報道の自由度ワースト3位とされる国ですから。でも北朝鮮と違うのは、集合住宅にはパラボラアンテナが林立しており、衛星放送を観ることは許されているのです。

あるお宅は沢山子沢山の11人家族。通称“エリートハウス”。400平米の豪邸に住んでいるのですが、平均的な収入だといいます。何とこれ、家も家具も大統領からのプレゼントだというのです。子供が8人以上いる家庭には、この“エリートハウス”が無償提供されるのです。しかもトルクメニスタンでは電気・ガス・水道がすべて無料。医療費も無料。学費も大学まで無料。国民の暮らしとしては楽でしょうね。以前あったカタールと“いい勝負”です。

トルクメニスタン東部のガルキニシュ ガス田は2006年に発見されたばかりのガス田で、その埋蔵量は世界で2番目の規模です。巨大ガス精製プラントが出来上がっていました。運営しているのは国営のガス公社。働いているのはトルクメニスタン人だけなのですが、施設内には中国語の張り紙がありました。この施設の設計や建設を行ったのは中国の国営企業。この国は中国と深い関係にあるのです。そしてここからガスがパイプラインで輸出されるのも中国。同国にとって最大の顧客でもあるのです。

しかし日本も巻き返しの機会がありそうです。今のベルディムハメドフ大統領は日本びいきだそうです。また日本製品には根強い人気があり、バザールでは中国製のエセ日本製品が売られていましたが、やはり「日本製=性能がいい」というイメージがあるというのです。同国で最も人気のある自動車メーカーはトヨタ。「結婚式(トヨ)から草原(ヨタ)まで」というキャッチコピーが受け、新車が次々と売れています。土木工事現場ではコマツの建機が売れ始めています。

さらに双日と川崎重工が現地で、天然ガスから化学肥料を生成する巨大プラントを建設し、今月からの稼働に向けて準備するプロジェクトを進めてきました。これにより国内農業も盛んになり、肥料輸出は主要産業になる可能性も大きいとのことです。肥料以外の化学製品を作るプロジェクトは他にもありそうで、高級品も買うお金は一杯あり(しかも人口も増えてい)ますから、日本との結びつきは強くなりそうです。

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ブラック企業への転職の誘いにはご用心を

昨夜、ある同窓グループで会食をしました。その場では色々な近況報告があり、和気あいあいといった感じでした。あえて言えば、多くは世間的には相対的に恵まれた地位にあった人たちでありながら、(再就職など)自分のことだけで汲々している感があり、もう少し社会的な貢献活動をしてもよいのではと思っていました。

その中で一人が転職活動中だというので気になり、会食終了後に改めて話を聞きました。すると最近労務問題が取り沙汰された有名企業Aからの誘いがあり、子会社社長に就任する話を真剣に検討していたことが分かり、実に驚きました。結局、その労務問題でごたごたしたことで話はポシャったようですが、ほぼ正式に決まる直前まで行ったというのです。

彼は超有名企業の海外子会社の社長もやっており、結構すごいプロファイルと経験を持っており、本人も経営者として自負を持っている人物です。今は何年か前に転職したやはり有名企業のBで役職にありますが、やるべき仕事はやり尽くし、今では「やりたいことをやらせてもらえない」との事です(この科白、前回の転職の際にも聞きました)。

これ以上の出世はプロパー社員でないと難しいとの感触もあり、引退前にもう一花咲かせたいという気持ちが強いようです。彼のその気持ちはそれなりに分かるのですが、正直、今回は見送りになって正解だと感じています。

その企業Aの企業体質はとんでもないもので、あるルートで漏れ聞こえる社員・アルバイトからの告発内容は半端ではありません。経営トップの独裁性も問題なのですが、その直下の部下たちが完全に経営トップのミニコピーなのです。そのため現場の従業員の人権を軽視する企業体質となっているようなのです。多様性を欠いた「体育会系」経営陣の悪いパターンです。

彼がその企業Aの関係者(上層部)から聞かされているのは多分、よい話ばかりでしょう。しかし、実際には相当ドロドロした部分が隠されていると思って間違いはありません。小生がかなり昔に一時期だけ子会社社長を務めたグッドウィル・グループと大して変わらないでしょう。

確かに確証があるわけではなく、そうした企業体質問題は入ってみないと分からないものですが、そんな大変な経験を彼にはして欲しくありません。企業体質を根本的に換える時間の与えられた若い世代ならともかく、この歳でわざわざブラックな会社に入って苦労する必要はありません。彼にはまた次の機会があることを祈って、今回の見送りを幸いとして欲しいと思っています。

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正気を失った韓国は国際的信用もまた失った

韓国のソウル中央地検が8日、産経新聞ソウル支局の加藤達也前支局長(48)を在宅起訴しました。執筆した記事で朴槿恵大統領の名誉を傷つけたとして、情報通信網法に基づく名誉毀損(きそん)罪です(最高刑が懲役7年)。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/10/08/sankei-korea_n_5955692.html

民主国家で、国家元首への名誉毀損で外国メディアの記者が起訴されるのは極めて異例です。OECD諸国でここまで非民主的な行動が正式な政府機関によって取られたことは異例かつ衝撃的です。これで韓国を民主国家と思う人は中国人くらいになるでしょう。もしこの記事を書いたのが日本のではなく、欧米のメディアだったらどうでしょう。こんな強圧的なことはしなかったでしょう。

ここまであからさまな政権および反日的世論への追従が行われたことで、日韓関係が悪化することはもちろん、韓国の国際的信用は完全に失墜したことは間違いありません。実際、報道の自由を脅かすとして、国際社会の批判は高まっています。特に日韓関係の悪化に懸念を示してきた米国では、メディアのみならず政府高官が批判していますので、自業自得ですが、韓国の政治的立場はかなり悪くなりそうです。

問題とされた記事は産経新聞のウェブサイトに掲載されたものです。客船「セウォル号」沈没事故当日に、朴大統領の動静が7時間不明だった事実を伝え、韓国紙・朝鮮日報の引用や証券筋の話を通じ、男性と会っていたのではないかとのうわさを報じたものです(本来は全国紙が扱うネタではなく週刊誌の記事ですね)。

この記事に対し、複数の保守系団体が刑事告発。大統領府も民事・刑事の法的責任を問う考えを表明したものです。その段階で日本政府は抑制的対応を要請していましたし、米国も懸念を表明していましたが、韓国中央検察は3回にわたり加藤前支局長の出頭を求め、任意で事情を聴いていました。そして逮捕・起訴になったわけです。この検察の捜査に対して、外国メディアやジャーナリスト団体が批判する見解を表明していました。

加藤氏は、8月7日から出国禁止状態が続いているそうです。メディアの人間なので、ある意味こんな目に遭うことは途上国では慣れたものでしょうが、まさか中進国たる韓国でとは思わなかったに違いありません。でも、これで同氏は韓国でのルポを出版し売れるようになったことは間違いありません。記者としても箔が付くことになったのではないでしょうか。さすが産経新聞、韓国叩きの大きなネタを自作した格好です。

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BMWの電気自動車アプローチはユニークで実際的

10月6日に放送されたWBSの特集「エコカーウオーズ」の第19章では電気自動車の弱点克服につながるユニークなサービスや技術を紹介してくれました。その中でも小生が注目したのは、BMWの電気自動車「i3」です。
https://www.facebook.com/wbsfan/photos/pcb.767057136689232/767047760023503/?type=1&relevant_count=2

純粋なEVモデルは499万円に対して、「レンジエクステンダー」モデルは546万円ですが、いま大人気となっているそうです。このモデルには航続距離を通常モデルの倍に引き上げる技術が適用されています。電気モーターに加え、発電用としてBMWモーターサイクル用の2気筒4バルブ647cc、34ps、5.6kg-mユニットを、リヤに搭載しているのです。

一種のハイブリッド・カーともいえますが、ガソリンエンジンは発電専用だということがユニークです。だからこそ2輪用の小さなもの(燃料タンクは9リットル)で済み、お陰で値段も50万円ほど(補助金により実質は12万円ほど)のプラスで済むそうです。

バッテリー残量が75%を切ると、任意にエンジン始動可能となります。しかもバッテリー残量が6.5%を切ると自動的にエンジンが始動するのです。その結果、実航続距離はEVモデルより100キロ程度伸びます。走り方、条件によっては約300キロの走行が可能といいます。

BMW「i3」では「レンジエクステンダー」モデルが日本での販売比率約80%を占めるそうで、この人気ぶりはBMWでも予想外だったそうです。これは電気自動車の大きな弱点である「航続距離」を伸ばす実際的なアプローチになりますね。きっと真似るメーカーも今後多く現れるのではないでしょうか。

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外国人留学生は日本企業を目覚めさせる存在

10月5日に放送された「アジアン・タイムズ」(BSジャパン)は日本での留学生の就職難についてでした。

外国人留学生のうち日本で就職を希望する人は65.0%。でも実際に就職した人は23.5%という調査があります。 一方で外国人留学生を採用したいという企業は着実に増えており(小生も幾つかそうした声を直接聞きました)、求人がないわけではありません。ましてや多くは学業優秀でやる気もあるから留学生に選ばれているわけですから、彼らの能力に問題があるわけでもないのです。

番組はその謎を簡単に解いてくれました。日本で就職を希望する外国人留学生の大半が(日本人学生と同様に)有名な大企業に(しかも数社のみ)応募し、反応が悪いと「外国人留学生は求められていない」と早合点してしまい、早々に就活を諦めてしまうのだそうです。何ともったいない。

しかも外国人留学生の大半は、日本人学生ほど日本企業の「建前と本音」の区別を分かってもいません。そのため(どう答えればいいのか分からず)面談で失敗することも少なくないようです。

番組ではこうした外国人留学生の日本での就職を手助けする会社の人が登場しました。その一人は元外国人留学生の韓国人女性で、外国人留学生の気持ちも分かるし、日本企業のネイチャーも分かるという、就職アドバイザーの役割にぴったりの人物でした。

彼女のような人たちがもっと多くいれば外国人留学生の日本企業への就職もどんどん増えるでしょうね。何といっても大半の日本企業は多様性を上げる必要、アジア市場開拓の人材を育てる必要などが多くあり、外国人留学生がこれほど求められることはいまだかってなかったと思います。是非、彼らにはそのバイタリティで他の日本人社員に刺激を与える媒介になって欲しいものです。

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韓国政治はどうしようもないが、韓国映画には素晴らしい作品がある

この欄では珍しいことですが、昨日観た映画についてちょっと書きたいと思います。タイトルは「レッド・ファミリー」、家族を装って韓国内に潜入した北朝鮮工作員グループの話です。2013年 第26回東京国際映画祭で圧倒的な支持を得て観客賞を受賞した作品で、キム•ギドク氏が(監督ではなく)脚本、新人のイ•ジュヒョン氏が監督を努めています。

http://credo.asia/2014/10/07/red_family-2/

キム•ギドクの作品ということでカミさんは最初(きっとグロいだろうと)嫌がったのですが、監督は別ですし、映画祭の評判がよかったので、小生が引っ張るように「夫婦50」で観に行ったのです。結論は、「すごく笑えて泣けて、素晴らしく楽しめ」ました。いろんな人が映画サイトで同様の評価をしていると思いますが、素直に同意します。

そして「北」の視点で捉えた、今回の作品の秀逸さにも感心しました。色々考えさせられる社会的視点を持った映画ではありますが、エンターテインメント性も忘れておらず、国際映画祭に出品するだけの資格があると思います。こうした「日常的な危険」が隣り合わせになっている環境は個人的には嫌ですが、芸術には深みを与えるのでしょうね。太平の世にある日本人にはなかなか描けない世界です。

それにしても我々が観に行った時には、前評判も悪くなく初日の夜でありながら、ガラガラの入りでした(@川崎チネチッタ)。きっと韓国映画北朝鮮モノというだけで今の日本人には不人気なのでしょうが、これは表面的なことしか見ない日本人の「気分屋」体質を表すもので、残念です。韓流ブームの時にはどうしようもないものまで持て囃していたのに、政治的ムードが悪くなると本来関係ないはずのまともな芸術作品にまで見向きもしない、というのでは情けないです。

韓国政府や韓国人の行動にはしょっちゅう反発を覚える小生ですが、こうした風潮に違和感を持つのは、根がひねくれているからでしょうか?

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「忍者ロボット」はドローンを実用的に進化させる

10月3日に放送されたWBSの特集トレタマで紹介された「忍者ロボット」は楽しく衝撃的でした。画像のように通常の飛行ロボットですが、両側に大きな2輪があります。

https://twitter.com/wbs_tvtokyo/status/517967723175739394/photo/1

これで空・陸上・水上を移動できるのです。その動きはまさに忍者のように静かで小回りが利きます。羽がまわりにぶつからないので故障しにくいのも確か。コロンブスの卵ですね。名古屋工業大学が開発したそうで、素晴らしい発想です。

しかも材料費が安い。飛行ロボット部分は通常のラジコンヘリ(今は有監視型。多分、1万円ほど?)ですが、それに加わるのは100円ショップで買った材料で作った大きな2輪部分、なんと200円ナリ!このパターンで大量生産すればドローン(自動飛行ロボット)も随分手軽になりそうです。実用的な発想だと称賛したいです。

実は少し前にお手伝いした某大企業の技術サービスの一つに、ドローンを活用すると面白くなるのがありました。こうやってドローンが進化して身近になると、色々と発想が湧いてきますね。

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物流コスト削減のネタは各戸の郵便受けにもあり

日本郵便、インターネット通販大手のアマゾンジャパン、郵便受けを生産する住宅設備メーカーのナスタの3社が、大きな郵便受けの普及を目指して協力することを1日、明らかにしました。

集合住宅用には全体サイズを変えずに入口だけ大きくし(「D-ALL(ディーオール)」)、個人住宅用には一回り大きくして大型貨物も入るタイプ(「Qual(クオール)」)の新製品を企画開発したのです。
http://www.asahi.com/articles/ASGB15TVZGB1ULFA03D.html

そもそもネット通販が広がって郵便物が大型化した結果、従来の郵便受けに入らないケースが増え、再配達の費用が膨らんでいるというのです。具体的には、アマゾンの書籍送付用ですと縦の厚みが3.5センチで、従来標準の3.1センチでは入らず、日本郵便のめーる便だと幅が少し長過ぎて入りきらないのです。

アマゾンからの昨年の要望によりこうした事情に気付いたナスタの社長(商社出身で最近社長就任だそうです)が社内プロジェクトを発足させて取り組んだ結果、ようやく望ましい製品ができたという次第です。ちなみにWBS(テレビ東京系)によると、一旦製品開発ができたあとにもマンション会社に提案した際に、「内部のカギの出っ張りを削れば、中に2つ分の包みが入ると指摘されたのですが、正式発売前に対応できたそうです。ユーザーニーズに応えようという前向きな風土が出てきたと社長は嬉しそうでした。

ナスタ社が国内シェア40~50%という圧倒的ナンバー・ワンの地位にあぐらをかいて新商品のニーズを嗅ぎつけることがずっとできなかったことも確かに問題ですが、何度も再配達を余儀なくされて配送コストが大幅にアップしていた問題をずっと放っておいた日本郵便はやはりどうにかしています。こんな調子だからヤマト運輸(こちらは郵便受けは使いません)に全然追いつけないまま、宅配便市場で存在感をどんどん失っているのでしょう。ちなみに我が家のポストも同様の問題がありそうです。

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介護制度の立て直しこそ地方再生につながる

財政を理由とする「在宅介護」重視は、女性の社会進出を阻害する愚策。むしろ官僚的発想の真逆の施策により介護制度を再生し、地方「創生」につなげるべき。


前回の記事では、離れて暮らす老親の在宅介護を余儀なくされると、離職や離婚などで家庭が崩壊しかねないリスクが小さくないことをお伝えしました。
あなたの家族に忍び寄る「介護による家庭崩壊」の危機
http://www.insightnow.jp/article/8208

今現在では、人手不足のために介護施設に空きがないことが、こうした在宅介護を余儀なくされる最も大きな要因です。しかしこの先、厚労省が進めようとしている「在宅介護」の重視方針が現実化すると、経済的理由から在宅介護を選ばざるを得ない家庭が随分増えるのではないかと危惧されます。介護制度財政の厳しさゆえに、コストがかかる施設介護をそう簡単に選ばせないよう、施設介護を極端に割高にする方向にじりじり切り替わっていく可能性が高いのです。その結果、大半の家族が自宅介護を選ばざるを得ないようになると、前回の記事のような悩ましい事態が多くの家庭で生じることになります。

しかもこうした「在宅介護重視」の方向に政策を持っていくことは、第二次安倍内閣の看板政策になりつつある「女性活用」というスローガンの実現を邪魔する、という大きな矛盾を生むことを指摘しておきたいと思います。
在宅介護を余儀なくされたとき、ニッポンの典型的核家族では女性に主な負担が行きがちです。せっかく長い期間をかけてキャリアを築き上げてきた共働きの妻や独身女性はもちろん、ようやく子育てから解放されて社会とのつながりを再び持とうと考え始めた主婦もまた、(本人または配偶者の)老親の在宅介護のために家に縛りつけられるとしたら、本人も不幸、家族も不幸、会社・社会にとっても損失です。それは明らかに安倍政権の掲げる「女性活用」のスローガンとも、そして人手不足に悲鳴を上げる産業界の要望とも相反します。

では男性が主として自宅介護を担えばよいのか?それでは同じことです。女性でも男性でも、働き盛りの人々が望まぬ介護離職を余儀なくされるようではいけないのです。

そもそもこの「在宅介護重視」という方向性は、財政官僚の強い要請を受けた厚生官僚による「モグラ叩き」的発想から来ていると思われます。根本課題を解決することなく、「施設介護は公共のカネが掛かるから、自宅介護にシフトさせればいい」という安易な発想です。それに加え、「保守派」を自称する議員の「介護はまず家族がやるもんだ」という主張や、介護を受ける老人たちの「死ぬ時には自宅で家族に見守られて死にたいもんだ」という希望が反映していることもほぼ間違いないでしょう。しかしそれらの主張や希望はどれほど介護の現実を見た上でのものでしょうか、実に疑わしいと思います。

小生は幼い頃、祖父が晩年寝たきりになったため母がその介護に追われていた姿を間近に見ました。当時はまだ介護制度自体がなく、自宅介護が唯一の選択肢でした。その担い手である母は我慢強く体力があり、祖父は小柄で要求が少なかったのが不幸中の幸いでした。しかも数年後に祖父は亡くなり、母は解放されました。大好きだったはずの祖父が死んだとき、家族の間にほっとした空気が流れたのを覚えています。あれが10年とか続いていたらどうだったろうと思うと、安易に「家族が面倒をみるのが本筋」といったことを口にする人たちには、「ではあんた自身が介護を担うのか?」と質したくなります。

要介護度の高い老人の介護というものは素人には精神的・肉体的につらいものです。どれだけ尽くしても、「家族なら当然」といった受け止め方を被介護者や周囲からされがちで(不思議なもので、職業人としての介護士のほうが感謝される機会が多いくらいです)、感謝の言葉で家族介護者が満たされることは滅多にありません。家族による介護しかなかった時代には、介護を担う人(大体は主婦です)が精神的に追い詰められ、虐待が生じたりして社会問題になったのです。そうした悲惨な事態を避けるため、我々の社会は介護制度を導入し、様々なタイプの介護施設とサービスを作ってきたのです。それを忘れてはなりません。

「在宅介護」を積極的に選びたい家族に対し、そのための訪問介護サービスのオプションを増やすという方向性であれば何の問題もありません。むしろ、当初は在宅介護で始め、要介護度が高くなれば施設に入るというのが普通かも知れません。要は、選択肢を増やす方向ならば望ましいことであり、逆に、在宅介護しか選べないように仕向けるとしたら、それは社会的な「改悪」なのです。今必要なのは施設介護の否定や諦めではなく、むしろ中核たる施設介護の仕組みを立て直すことです。

ではどうすれば今の介護業界の「要介護者の増加→介護給付の増加→介護財政の悪化→介護報酬の抑制→介護職の離職→人手不足→介護施設増設の遅れ→“空き”待ちの増加」という悪い連関を断ち切り、施設介護の社会的持続可能性を担保することができるのでしょうか。その主なポイントはたった2つ、従来の発想を転換するところにあると思います。

第一に、官僚の意向とは真逆ですが、介護職に対する報酬を早急に思い切り引き上げて、介護を一生の仕事にして家族を養っていけるレベルにすることです。今後も介護給付が増えることが予想されるため、官僚は介護報酬を抑制することに躍起になってきました。しかしその結果、「人を助けたい」という純真な気持ちで介護の仕事を始めた若者は「こんな給料では結婚できない」と絶望し、前の職を失い「とにかく仕事にありつけるなら」と介護の職に就いた一家の大黒柱は「これでは家族を養っていけない」と呆然とするのです。その結果、介護職は常に全業種平均より高い離職率(H24で17%)で推移してきました。不況下で漸減傾向にありましたが、景気回復によって他業種に転職する機会が増えたため、離職率は再び上昇に転じております。

某外食チェーンで明らかになったように、忙しい職場で櫛が抜けるように同僚が辞めていくと、残った人たちの負担が急激に高まり、それが職場崩壊につながることすらあります。こうした悪循環を押し止めるには、その社会的価値に似合った、まともな報酬を支払うことが急務です。ましてや介護職が相手するのは、これまで長年社会に貢献してくれたお年寄りです。そうした人々に敬意を払いながら丁寧な介護をする気になる報酬と職場環境を提供しなければ、いずれ私たちが年老いたとき、腐った制度に復讐されることでしょう。

そもそも介護業界を社会の「コストセンター」扱いにしてきたことが間違いであり、介護制度の失敗をもたらしているのです。公共事業の観点からは、介護業界は土木・建設業界より優れていると小生は考えています。公共インフラ投資は乗数効果が随分低くなっているばかりか、人手の取り合いを通じて民間投資を「クラウディングアウト」しています(別記事「公共事業頼りの景気維持は続かないばかりか副作用を生んでいる」を参照されたし)。費用対効果が上がらない公共インフラ事業にこれ以上無駄金をつぎ込むよりも、介護職の人々の懐を潤したほうが乗数効果は高く(彼らは消費性向が比較的高いと推測されるため)、景気維持・向上への貢献は高いと考えられます。

そして何より、地方に継続的な仕事を生むことができ、若年層が定住するための核となる職場を生み、その土地でお金が循環する流れを作ることができます。原燃料や資材を通じて中央と海外にお金が流出する公共事業とは大いに違うのです。ただしその際に留意すべきは、潤わすべきはあくまで働く介護職の懐であって、彼らを雇う介護施設を運営する法人の理事たちではないことです。そのための担保の仕組みが課題です。

次に第二の点ですが、介護士の仕事にメリハリをつけて、要介護度の高い老人の介護に集中させることです。そして施設であろうが自宅であろうが、要介護度の低い人の介護と、介護そのものではない雑用は思い切って地域ボランティアに任せるのです。

これは第一の点に対する「そんなに介護報酬を引き上げたら、ただでさえ高齢者が増えてくるのだから介護財政はますます悪化し、介護保険料も政府がつぎ込む税金も上がってしまう」という懸念の声に対する答になります。つまり介護職の仕事の単価は引き上げるが、一人当たりの仕事量はこれ以上増やさない、産業トータルとしての仕事量もあまり増えないよう抑制する、ということです。とはいえ、高齢者が急増するのでトータルでは増加するのは避けられませんが、その増加分は消費税の増税分と公共投資を抑制する分の税金からシフトさせればよいと考えます。

今の介護職はあまりに雑多な仕事をし過ぎで、そのために休憩時間も少なく、帰宅時間も遅い、それなのに(残業代を含めても)給与は安い、と踏んだり蹴ったりです。先ほど触れた高い離職率の有力な原因の一つは、こうした仕事環境からくる「燃え尽き」症候群だと指摘されています。一人当たりの仕事量を減らすことで、本当にプロの仕事が必要なところに集中できる余裕が生まれます。

それを補うため、介護の現場に思い切ってロボットなどの設備を導入するよう公的資金で補助することも有効です。決して大規模なものである必要はありません。それでも介護の重労働さを和らげるのに大いに役立ち、介護士がぎっくり腰になるリスクをかなり少なくしてくれます。こうした介護設備を導入できるのは、施設介護ならではの利点です(当然ですが、自宅介護ではとても無理です)。これにより、極端な重労働という介護職のイメージ(というか現実ですが)が改善されると期待できます。

当然ロボット導入だけでは足りません。介護職の仕事量の軽減のためには、地域ボランティアがそれ以外の仕事をカバーしてくれることが必須条件です。こうした体制を既に充実させているところは稀でしょうが、地域にボランティア志望者は意外といるものです。ただ、自ら声を上げることは普通の人には難しく、きっかけを待っていることも多いのです。
地元の市区町村が本腰を入れて、こうした「軽い介護のボランティア」を組織化することが必須で、住民連絡網や催しを通じて何度も呼び掛けることでその「きっかけ」を生みだします。うまくいけば地域再生のための絆作りにもなるでしょう。

暇を持て余している定年後のオジさんたちにも、「(遠くない)将来の自分たちがお世話になるための仕組み作りだ」と説得すればよいでしょう。現役企業戦士が、会話の減った娘や息子を誘って地域の役に立つ機会にもなります。地元の学校と組んで、お年寄りと交流する機会が減っている小中学生の学習プログラムに組み込んでもらうことも一つの手です。とにかく多くの住民に、できる範囲で少しずつ参加してもらうのが長続きするコツでしょう。

「軽い介護」だけでなく「介護予防」もボランティア体制が効果的な対象です。地域住民が主体となって、筋力や持続力を維持させるための体操などをお年寄りにしてもらう活動です。寝たきり老人をなるべく増やさないのがその狙いで、住民もハッピーに暮らせて地域の絆を保て、市町村も医療費を抑制できます。厚労省の「介護予防」のモデル地区となっているのが三重県・いなべ市で、小生の親戚が市長として、「元気づくりシステム」と称して引っ張ってきました。今では全国から視察が相次いでおり、ほぼ完成した形となっているようです。
http://genki3.net/?p=10302

第一点の報酬改善、第二点の多忙過ぎる仕事量の抑制と重労働の改善が実施されれば、介護を仕事にしたいという女性・若者は確実に増えます。そうなれば、地方の過疎化にも歯止めが掛かると期待できます。故郷に戻りたいけど仕事がない、というボトルネックがなくなれば、豊かな自然と人間らしい生活を手に入れられる地方のほうがいいという人は多いでしょう。安倍政権が急に唱え始めた「地方創生」は、介護制度の再生こそが基礎になるはずです。

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