そのセキュリティ・ソフト、本当にインストールされていますか?

一般向けITサービスに関しては玉石混交というのは昔から変わらない。実にいい加減なものが平気で提供されて費用請求されていながら、目に見えないためになかなかその実態に気づかないことがある。信頼していたPCショップで最近直面した、意外な事態とは?


先日のauの海外通信明細書の顛末に続き、我が家が経験した「もう一つのお粗末」をレポートしましょう。ちょっと情けないといった側面もあるのですが、もしかすると同様の事態に陥っていて実害を蒙りかねない世帯もあるかも知れませんので、注意喚起にもなると考えるからです。

我が家ではPCおよびその周辺機器に関しては、その大半を近所のPCデポで長年購入してきました。近所といっても車で行くしかない、隣町にある店舗です。入口は交通量の多い交差点近くに面しており、我が家の方向からは入るのも出るのも不便なロケーションです。小生が経営者だったら決して選ばないようなそんな店舗で長年購入し、しかも有料の会員契約までしているのは、PCデポが専門性の高いPCショップだと評価してきたからです。

PC・周辺機器の購入だけなら他にいくつも選択肢はあります。最寄りの駅にはヤマダ電機、よく行くモールにはビッグカメラがそれぞれありますし、品揃えも上です。値段だけを考えたら、アマゾンをはじめとした通販ショップのほうが明らかに安くて手軽です。でもPC・周辺機器の購入後の接続、ソフトの更新、ハードに関するトラブルや修理などで様々な相談が生じることを考慮して、安さよりも店舗スタッフの知識の確からしさに軍配を上げ、この店を頼りにしてきたのです。

でも一方で、一部ベンダーのコールセンター対応がレベルアップし、しかも技術進歩のお蔭でコールセンターからの遠隔操作すらできるようになり、リアル店舗の有難味が着実に減っていることは小生も実感しています(店舗を運営する経営者には気になる点でしょう)。それに加えて最近、この店に対する小生の信頼感に陰りを生じさせる事態が続いているのです。

はじめは某メーカーのノートPCに関する修理でした。高額なビジネスユース用の製品でしたが、持ち運びを常態とする小生の使い方に耐え切れなかったのか、時折バッテリーなどのプラグのゆるみが生じる度にフリーズするので、現物を持ち込んで修理をお願いしていました。しかしPCデポは受付窓口をしているだけで、診断すら実質的にできず、付加価値がないと感じました。でもこの時点では、小生のPCデポに対するロイヤルティはほとんど揺らいではいませんでした。

しかし最近続けて直面したのが、セキュリティ・ソフトの契約・説明に関しての不手際です。実はその種は約1年前に蒔かれており、それに気づいたのが最近だというものです。

約1年前の3月、大学入学を控えた娘が自分用のPCを欲しがりました。そしてPCデポに2人で出掛け、娘が欲しがっていたMacBook Airを購入しました。

同店でのその製品には、セキュリティ・ソフトのKがバンドル(パッケージ販売)されており、「マルチデバイス」(面倒を見る対象は5台まで)かつ「年間更新版」(放っておくと自動更新)でした。我が家では別のセキュリティ・ソフトWをずっと使っていましたが、PCは既に3台あってWの対象台数ぎりぎりでした。そのため新たに増えた娘のPCのセキュリティ用にはちょうどよかったのです(既存3台のうち1台は1年以内に廃棄を見込んでいたので、その際に娘のセキュリティ・ソフトもWに切り替えようと考えていました)。

さらに購入の際には、アプリとしてMS Officeも追加購入し、一種の「お任せサービス」的なアプリケーションインストール・サービスをお願いしました(ここで大いなる誤解が生じたのですが、この時点では全く気づきませんでした)。そしてセットアップが済んだ状態での新品の製品が我が家に後日届き、娘は機嫌よく大学の履修登録などを進めていたのを覚えています。

さて約1年経過した、この3月です。何となく虫が知らせたのか、小生は同店の契約書類などをざっと確認していました。そしてセキュリティ・ソフトKに関する自動更新が1年単位であることに気づきました。ソフト購入時に発行されたサービス会員登録証(PCデポではサービス購入ごとに発行されます)によると発行が3月30日なので、急いでPCデポのコールセンターに電話し、セキュリティ・ソフトの切り替えを相談しました。

そこで意外なことが分かりました。既に2月末時点で自動更新になっており、年間料金の引き落としもされていたのです。確かにその月の月額料金がいつもより高いなぁと思ったことを思い出しました。コールセンターの窓口の人いわく、「(たとえ1日といえど)3月からの契約なので、2月末までに契約解除を申し入れていただかないと、自動更新となります」とのことでした。

サービス会員登録証には、そうした注意事項はもちろん、サービス期間すら記載がなく、あるのは発行日だけなのです。そして3月末に購入したのに3月頭からの使用者と同じサービス対象期間なのです。しかもそうした注意すべき事項を、店舗でも全く伝えてもらっていませんし、書類にも全く記載していないのです。

正直あきれ返る思いでしたが、コールセンターの人に怒っても仕方ありません。次回の年間契約更新時に解約するかどうかを検討するため、改めて最新のサービス会員登録証を発行していただくよう、依頼しました。

その際にはきちんと契約期間を明記するようお願いしたのですが、当初かなり抵抗されました。後日、自宅に送付されてきた最新のサービス会員登録証を見ると、一見そうした契約期間が明記されていないようでした。しかし最後のメモ欄に手書きで、契約期間と契約終了日が記載されていました。なるほど、PCデポの契約管理システムには、顧客に対し契約期間を明記し伝える機能は備わっていないことが、これでよく分かりました。

本件は相対的に罪の軽いものですが、もしかすると確信犯的なものかも知れません(顧客の「うっかり自動更新」を狙っているということです)。正直、同社に対して失望し、少し不信感も芽生えました。

その翌週でしたか、またPCデポで自宅作業用の新しいラップトップPCを購入し(小生も懲りないですね)、旧PCからのデータ移行などを進めました。しかし完全な移行にはまだ日数が掛かると判断し、当面は廃棄せずに旧PCを残すことにしました。そうなると一時的にセキュリティ・ソフトWの対象台数をオーバーしてしまいます。

そこでハタと思い出し、半ば強制的に自動更新させられたセキュリティ・ソフトKをこちらのPCにインストールしたのです。するとWと違ってKの場合、画面の下部で鼓動しているような動きをすることに気づきました。

そこで小生は娘に「Kの動きは面白いね」と話し掛けました。すると娘はきょとんとして、「Kって何?」と問い返すのです。小生と娘の間でしばらく、噛み合わないやり取りが続きました。娘は自分のPCではそんな動きをするソフトはないと言い、しかもウイルス駆除などのレポートも受け取ったこともない、定義ファイルの更新もしたことがないと言います。

ようやく事態がおかしいことを感じた小生は娘のMacBookの画面をみましたが、小生の使っているWindowsと違って、インストールされているソフトを確認する方法が分かりません。PCデポに電話し、「もしかすると契約しているはずのセキュリティ・ソフトがインストールされていないかも知れない」「どうやればインストールされているか否かを判断できるのか」などと問い合わせました。しかし電話越しでは分からないとのことで、店舗に娘のPCを持ち込んで診てもらうことになりました。数日後(何とか娘と小生の都合を合わせて)、店で現物を診てもらうとすぐに、セキュリティ・ソフトは全くインストールされていないことが分かりました。

当時のサービス会員登録証には細かい記載は何もありませんが、たまたま残していた店発行の「パソコン購入メモ」(一種の購入商品・サービスの明細書)には「設定」の項目にしっかりとチェックマークがついていますが、「万全セキュリティ」の項目にはチェックマークが入っていません。店側に好意的に解釈すると、セキュリティ・ソフトは売ったけど、インストールを引き受けてはいない、ということでしょう。

しかしソフトのインストール・サービスをお願いした当方は、その対象にMS Officeと一緒に購入したセキュリティ・ソフトも当然含まれていると解釈し、全く疑っていませんでした。当然、娘も小生もそれに関し「セキュリティ・ソフトはご自分でインストールしてくださいね」といった注意は一言も受けていません。

事情が判明してから、PCデポの店の人にはしっかりと苦情を告げました。「確かに書類上はそちらにセキュリティ・ソフトのインストール責任はないのかも知れないが、セキュリティ・ソフトを売っておきながら、そのインストールに関し何の説明もないし、説明書も渡されていません。明らかに片手落ちです」と。当時担当してくれた人とは別の方でしたが、恐縮していました。今後注意をしていただくよう要請し、こんなことが続いてちょっと不信感が募っていることも伝えました。

どうやらたまたまウイルスによる被害はなかったようですが(Windows PCでなくマイナーなアップル製のMacBookだったことが功を奏したのかも知れません)、今考えると冷や汗ものです。何せ1年間、セキュリティ・ソフト無しの状態で娘はPCを使っていたのです。しかもその間、年間のソフト使用料金だけはしっかりと徴収されていたのです。やっぱり少し腹が立ちますね。
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au明細書の「海外通信料金84万円也」に驚かされた

一昔前と違って、国際電話がとんでもない高額になることは最近少ない。ましてやデータ通信であればなおさら。にもかかわらず、データ量を抑えながらネットを使ったのに、帰国後に取り寄せた明細書には桁違いの料金表示が…。心臓に悪い、こんな『ふっかけ商売』はなしにして欲しいもの。実はICT分野にはユーザー無視のサービスも多く、これはそのほんの一例に過ぎない。


小生宅では携帯サービスはauを長年使っています。この4月、仕事兼家族旅行で台湾に3泊4日滞在し戻ってきたばかりの翌日、KDDIからのショートメッセージが入っていたのが、そもそもの始まりです。いわく、「パケット通信料が10,000円を超過しております。お問い合わせ:TEL157」となっていました。今まで受けた記憶がないメッセージです。

台湾でも日本と同じようにfacebookやメールなどを使っていましたが、海外ローミングサービスの設定を事前に済ませ、自動で現地キャリアへの切り替えも行われていました。小生は4G LTE 通信モードのiPhone5を使っていますので、「海外ダブル定額」というのが適用され、一日当たり最大で2,980円というのが上限だと知っていました。

4日間のうちスマホを使った頻度は少なく、10,000円超というのはちょっと多いなというのが正直な感想でした。事実、3月のニュージーランド(NZ)出張時にも同様の設定と使い方でしたが、特にそうしたメッセージは届きませんでした。それなのに台湾では何か違ったのかしらん、と首をひねっても何も思いつきません。

そこで指定された番号に掛けて料金について問い合わせしてみると、応対はあまり要領を得ません。ショートメッセージの通り「パケット通信料金が10,000円を超えている」こと、彼らは明細を見ることができないこと(じゃあ何のための問い合わせ先なのやら…)、通信明細については本人から郵送での請求手続きをしないといけないことぐらいしかしか分かりません。埒が明かないので明細請求手続きの用紙を郵送してもらうことにしました。

後日、その請求用紙が届いたので署名捺印し、免許証コピーと共に郵送しました。この煩雑さはきっと、あまり気軽に明細請求されるとかなわないので、わざと面倒にしているのでしょうが、互いに無駄なコストです。

それから数日後、件の「通話明細書」なるものが自宅に届きました。それを見て、実に驚きました。「グロパス(CDMA/GSM)パケット通信明細/LTE通信」という項目に、4日間の通信ごとのバイト数と利用地域(および現地のキャリアの略称らしきアルファベット3文字)が10行ほど列挙されており、その後に「通信料合計」として841,592円という数字が記載されていたのです。

最初はコンマではなく小数点なのかとも思いましたが、よくよく見ると桁数は6つ。ゆっくり数えましたが84万円超です。他の項目を見ると、(国内の)通話明細やSMS送信明細に加えて、(やはり国内の)こくパケット通信明細も記載されていましたが、それらは割引や定額サービスのため微々たる金額なのです。どうやら84万円以上の金額を国際通信料金として本当に請求されるのだと理解しました。

国内のパケット通信の明細を見ると、こちらの各通信はバイト数でいえば一桁多いのですが、別に超過料金が請求されるわけではありません。つまり台湾で使った通信のバイト数というのは、やはり普段国内で使うよりも格段に少なめだったのです。それなのに84万円超の通信料金というのはあまりに無茶です。

通話明細書」を受け取った日は出張から帰ったばかりで仕事が忙しく、特に対応はしませんでした。翌日、家族が国内旅行から戻ってきたので、その旨を話しました。すると娘は大いに驚き、しかも「私も同じメッセージを受け取った」というのです。確かに娘も台湾ではiPhone6でグーグルマップやfacebookなどを使っていました。へたをすると2人合計で160万円とかの請求額になりかねません。慌ててauに連絡させて、同じように明細請求手続きの用紙を郵送してもらうことにしたのは言うまでもありません。

でもさすがに変です。3月のNZ出張時も同じような使用条件でありながら、4月の請求時にはこんな高額な通信料にはなっていませんでした(クレジットカードの請求は目の玉が飛び出るほどでしたが、使った自覚もありました)。もしかしてauのグローバルパス/ダブル定額の対象地域にはNZは含まれているが台湾は含まれないのか。そんなことはありません。auのHPでは、しっかりと台湾も対象地域に含まれています。

そもそもデータのバイト数当たりの金額がかなり割高です。1キロバイト当たり1.5円以上と、まるで昔のパソコン通信なみです。ただし今どきはネット上のサービスを少し使っただけで、キロバイトではなくメガバイトのデータを通信することになります。これはもしかするとダイヤルキューツーとかいう類かとも思いましたが、そのサービスはとっくの昔に終了しています。

ちなみにアダルトサイトを閲覧して後日高額請求に驚きおののくといった話はたまに聞きますが、小生にはそうした経験はありませんし、さすがに天下のKDDIがそこまで悪徳な商法をやるとも思えません(実は少しは疑いましたが)。

さすがデジタルエイジの娘はすぐさま幾つかのネット情報を調べ、なぜこういう事態になったのかを「分析」し始めました。こうした高額請求の例がインターネット上には結構転がっているのです。

それによると最も似たような例で有力なのは、海外でローミングする際に提携先でないキャリアに接続された可能性です。ソフトバンクの場合には手動切り替えなので、ユーザーが誤って接続設定してしまい、高額支払いを余儀なくされた例がありました。一方、auの場合には自動的にキャリアを切り替えるようになっていますが、その仕組みにバグがあり、非提携キャリアにつながってしまって高額請求された事例が載っていました。しかし結局、システムのバグなのでau側が陳謝して事なきを得ているようですし、しかも随分前の話です。

そんなこんなでどうにも腑に落ちないままでした。小生は「きっとこれは80数万円を一旦請求し、最後に割引して5万円ほどにする腹積もりだ」と言い出しました。娘が不思議がるので、「最初から5万円也で請求したらバカ高い!と拒否されるけど、最初に80数万円を請求しておいて5万円で決着したら、何となく得をした気になるだろ?途上国にはよくある、一種の『ふっかけ商売』だよ」と言うと、妙に納得した様子でした。

半ば冗談でしたが、半分は可能性ありだな、もしそうならauも落ちたもんだと小生は思っていました。娘は「そんな嫌らしいことをするauは止めて、ソフトバンクにしよ?」と言い出し、それを聞いていた妻は「冗談じゃない、5万円でも嫌よ」と憤慨していました。

妻は台湾ではiPhoneをもっぱらカメラ代わりに使っており、本人の通信料金の心配はありませんでした。しかし最も大騒ぎしたのは彼女です。翌日は朝からやることが目白押しで忙しいという小生に対し、他のことを差し置いてもこの件で、auに朝一番で電話で問い合わせし、抗議・交渉しなさいと「厳命」が下ったのです。

翌日の午前中に小生はauのユーザーサポート番号に電話しました。事情を説明して、「一体どうなっているのか聞きたい」と伝えました。すると最初に出た電話問い合わせ窓口の男性は「専門の部署に回します」ということで代わり、今度は若い女性の声に代わりました(これは効果的ですね、さすがに喧嘩腰にはなりません)。

事情を説明して本人確認などをすると、彼女はあっさりと「お客様、申し訳ありません。それは割引前の料金で、実際に請求されるのは11,920円です」と言うのです。コールセンター側からは通話・通信明細は見ることができないようなのですが、項目別料金表示だけは見られるようです。

「やっぱりそんなところか」と思いながらも、「なんでグロパスだけ割引前の料金表示なの?紛らわしい」という小生の素朴な質問に対しては、彼女も「確かに」と困っているようでした。善処はお願いしましたが、いつシステム対応してくれるやら…。

そのあと料金の計算方法を教えてもらい、本当にその割引後の料金が正しいのかを確かめることができるようになりましたが、分かってしまえば事実はシンプルです。上限の2,980円/日×4日=11,920円なのです。大してネットやメールなど使ってはいなかったのですが、すぐに上限に達してしまうのですね。

結局、この騒動は何だったのか。結論的には、小生が怪しんだ『ふっかけ商売』なのですね。5万円という高額ではなかったですが、一人の4日間の通信だけで1.2万円ですから決して安くはありません。でも84万円という高額請求の可能性が頭をよぎった後ですから、1.2万円がすごく安く感じたのも事実です。ただ個人的にはとても嫌な感じが残りました。

そもそもデジタル通信に掛かるコストは加速度的に低減しています。ルーターやサーバーなど通信会社にとっての設備料金は激減しており、相互接続のコストもまた10年で2桁3桁は下がっているはずです。そんな中、10年以上前のような通信料金を示して、「ホントはこんなにコストが掛かっているのですが、わが社の経営努力で思い切って割引しちゃいますね」とばかりに恩着せがましくアピールするのは、一種の「偽装」行為です。そこが嫌らしいと感じさせる部分なのです。

auの業務プロセスにおける問題は、最初の問い合わせ窓口の対応と通信明細書の書き方という2点です。それらのいずれかがまともであれば、我が家が大いに心配する必要もなく、明細開示に手間暇を掛ける必要もなく、auのユーザーサポート窓口の仕事も減ったはずです。結果として、auに対する我が家のロイヤルティが毀損し不信感が募ることもなかったでしょう。

ではどうなっていればよかったのでしょうか。実にシンプルです。最初の問い合わせ窓口が事情を聴いた際に「もしかすると割引前の料金かも知れません」と気付いてくれて、その場で実際の請求金額を調べてくれれば、すぐに「なーんだ」となって、一番良かったはずです。

仮にその段階で事情が判明せずに通信明細を取り寄せることになったとしても、明細書に割引後の料金も記載してあれば、誤解の余地はありません。もしそこまでは当面システム的にできないとしても、グロパスの「通信料合計」に括弧書きで(割引前)とあれば済む話です。全く人騒がせで不親切な表記方法です。同社にはまだ昔の官製「国際電信電話(株)」の感覚が残っているのかも知れませんね。

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誘拐に基づく子供の人身売買が広がる中国社会とは

4月21日(火)放送のクローズアップ現代は「“行方不明児20万人”の衝撃」。いくら中国でもこんなことが現実にあるのかという、本当に驚愕の話です。

今、中国では子ども誘拐が大きな社会問題になっています。行方不明になる子どもは年間20万人といわれます。でも先進国やら中南米で想像されるような「身代金目当て」の犯罪ではありません(もちろん、犯罪です)。

犯罪組織に誘拐された子供たちは、農村部に労働の担い手や後継ぎとして売られるケースが多いのです。つまり農村部では老後の社会保障がぜい弱なため、子供に恵まれなかった普通の人々が老後の支え手として子どもを買うのだというのです。5年分の年収を必要とするため、借金をする人が多いそうです。

このニーズがあるため、他国に例をみない特殊な誘拐ビジネスが成立するのです。しかもなかなか摘発されないそうです。地方政府・警察と癒着しているケースが多いためだそうです。何という国でしょう。

しかもさらに驚きなのは、中国の法律では、誘拐犯は罪に問われますが、それを依頼し子供を買った側は、逃げようとする子供を監禁したり暴力をふるったりしなければ、罪に問われないのです。実際、番組では子供を買った人が登場し、子どもを買わなかったら老後が成り立たないと主張していました。

当然、自分が奪った子供を奪われて悲しむ親が出現するのは自明ですが、そうした罪悪感は見えませんでした。農村の人たちはむしろ子供を買わざるを得ない人に同情的でさえありました。人身売買なのに、まるで高額なペットを買うような感覚なのでしょうか。

さらにびっくりしたのは、自分が買われた子供だということを知っていて、それでも「育ててくれた養母に感謝する」という息子が登場したことです。彼は都会の工場で働いていて、自分の生活を切り詰めて、田舎に住む養母への仕送りを欠かさないそうです。そして生母を探し続けた結果、息子を奪われた母親は悲しみのあまり失踪して行方不明なのだそうです。この息子は悲しんではいるようですが、養母がその原因となったとは考えないのでしょうか。不思議です。

息子を誘拐された父親たちは、インターネットで情報提供を呼びかけるとともに、自ら各地を回ってわが子を探し続けています。上海などで捜査強化と情報提供を訴えている人たちも映されていました。誘拐根絶に乗り出したNGOの取り組みなども取材されていました。

中国社会に広がる歪みの背景は、経済発展から取り残された貧しい農村での貧しい社会保障制度です。都会だと月30000円の年金が、農村では月1500円ほどしかもらえないそうです。さすがにこれでは中国の田舎でも生活していけません。

だからといって人様の子供を誘拐させてまで老後の面倒をみさせるため子供を獲得したいというのは、自分さえ良ければいいというエゴそのものです。いくらエゴの塊の中国人でも許されていいとは思えません。こうしたニーズがある限り、犯罪集団が暗躍します。

田舎であろうと社会保障制度を充実させること、誘拐されたと疑わしい子供を買った側も厳罰に処すこと、当然ながら捜査を強化して摘発された誘拐犯連中にはさらに重大な刑罰を処すことなどは最低限やって欲しいものです。日本人駐在員の子女が誘拐されるような事態は勘弁して欲しいものです。まともな社会とは元々思っていませんが、共産党の存在意義として民が安心して生活できるようにする義務があるはずです。

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改革を目指す個々の農協がベンチャーと組み始めた

昨日(4/20)のテレ東WBSに「農協×ベンチャー」というトピックがありました。一部の農協農業ベンチャーに急接近しているというニュースです。

具体的に取り上げられていたのは、例えばグローバルGAPというcertificateを扱うベンチャー、ファーム・アライアンス・マネジメント(FMA)です。
http://www.japan-globalgap.com/%E3%81%94%E6%A1%88%E5%86%85-introduction/

番組の中では、FMAが提供するシステムを使って労務管理をしている農業生産法人の様子と、丸山柑橘農協がFMAを呼んでグローバルGAP導入の相談をしている様子が映されていました。後者は今までは9割ほどJAを通していたのを、独自ルートを通して3割ほどは海外市場を狙いたいとのことでした。米国などのスーパーに卸そうとしたら必要だ、ということになったのでしょうね。

一方、個別農協の人が独自販売ルートを開発する営業活動をしている様子も映されました。番組では、都内百貨店など9店舗を運営する旬八青果店に対し、JA全農おおいたの東京事務所の営業マンが大分産の野菜を売り込もうとしていました。いいことです。JAも尻に火が点いてきたのでしょう。

一方、JAの力を借りて急成長するベンチャー企業の例も紹介されていました。「シェア畑」を運営するアグリメディアです。
http://www.sharebatake.com/

同社は去年から地域の農協と協業して、「シェア畑」を展開しています。普通の農家の10倍ほどの売り上げを上げることができるそうで、売上の一部を賃料として地主農家に支払います。3方両得のいいアイディアですね。

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被災地発のイノベーションは「過去にとらわれないこと」

4月14日(火)放送のクローズアップ現代は「復興イノベーション ~被災地発 新ビジネス~」。なかなか興味深い内容でした。東日本大震災の被災地に、復興への志を持った地元の若者と外から入ってきた人との新たなネットワークが生まれ、イノベーションが起きているのです。

最初の例は、1粒が最高で1000円にもなるイチゴを生み出した宮城県山元町にある農業法人です。この法人を立ち上げたのは、東京でITコンサルティング会社を経営し農業の経験がなかった岩佐大輝さん、37歳。地元、山元町の出身です。

東北を代表するイチゴの産地だった山元町ですが、津波による塩害で、これまでの露地栽培を続けることは難しくなりました。ボランティアで地元に戻って泥かきの手伝いをしていた岩佐さんに、「社長なんだから、泥かきをずっとやっているのではなくてちゃんとビジネスを持ってきてほしい」と言われたそうです。確かにそうですね。

そして、岩佐さんは自分が得意だったITの分野と、そしてイチゴの分野を掛け合わせたITでフル制御された、新しい本当に先端農業に取り組んできたわけです。一般の農家は、人件費や施設の維持管理など生産に関わる部分に資金をかけています。一方、岩佐さんが重視したのは、イチゴの研究開発やマーケティングでした。

地元の農家が蓄積してきたノウハウ、熟練の技を分析し数値化。それをもとに生産に乗り出しました。3億円の補助金を活用したハウスでは、温度や湿度など、品質を高めるための環境を管理しています。先端の糖度が12度を超えると甘いといわれるイチゴ。測ってみると、15.2度。全国トップレベルの甘さを安定的に生み出せるようになりました。

さらに、イチゴ1粒1粒をパッケージングするなど、高級感を演出。独自のブランド名も付けて売り出し、特別なイチゴだと消費者に訴えることで、1粒最高1,000円のイチゴが生み出されたのです。

国からの補助金を取るのも、かなりの企画書を書かなければならないのですが、岩佐さんは銀行員や弁護士の友達のボランティアのパワーを集結させて取ってきて、そして今、最先端農業を宮城県の山元町で展開をしているわけです。何事も大変ですね。

もう1件は漁業の分野。これまでの常識にとらわれない若手のグループが誕生しています。横浜市内のホテルで人気を集める魚介料理。使われているのはすべて、宮城県で水揚げされたものです。提供しているのは2014年8月に結成されたフィッシャーマン・ジャパン。異なる産品を扱う県内各地の若手漁師たちが集まり、立ち上げました。

グループ結成の背景には、震災のあと、これまで知り合うことがなかったような人たちとの出会いがありました。自分たちが考えていた以上に品質や漁業の持つ価値を評価してくれる声に触れ、これまでの漁業の在り方を変えたいと考えるようになったのです。

どうしたら、自分たちが持つ価値を最大限に発揮できるのか。従来は一般的に地域ごとに漁協などを通じ、市場に出荷していました。その垣根を越え、強みを持ち寄ることで、三陸の海の幸をそろえた日本を代表するブランドを作ろうと考えたのです。そのため、これまでは取る魚が違うため交流があまりなかった若手漁師たちが、グループを組むことにしたのです。

品ぞろえを強みに販路を開拓。直接売り込むことで、例えばわかめは震災前の2倍から3倍の値がつくようになりました。独自のブランドを武器に、海外にも販路を広げています。とても素晴らしい動きです。これが先例として、積極的な試行が色々と広がることを期待したいです。

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北陸新幹線開業のもたらすもの

昨夜は大学時代の自動車部のOB会(ただし年次の近い分科会)でした。仕事を途中で打ち切って駆け付ける羽目になりましたが、随分久しぶりの人もいて、楽しみました。

その中に富山から駆け付けた先輩が一人いました。地元で親からの商売を継いだ方ですが、教育委員長も務めておられます。一昨日は教育委員会の仕事で上京し、一旦日帰りで帰郷し、再度昨日は会社の仕事で上京して最後にOB会に寄ったという次第です。

なぜ東京で宿泊しなかったのかという疑問には、「教育委員会の仕事と会社の仕事と、経費の出所が違うので、きっちり分けるためだ」というお答でした。なるほど律儀なことだと納得しましたが、ある意味、だからお役所の仕事は非効率なのだ、とも思いました。

そして、この先輩はスケジュールの都合で、一昨日と昨日の往復にはそれぞれ北陸新幹線航空という別の方法を使われていて、直近の比較ができたわけです。

新幹線は新しいのと落ちる心配が皆無ではありますが、富山~東京間で所要時間が約2時間15分(従来は3時間半から4時間弱ほど掛かったと記憶しています)、指定席で12,730円です。それに対し航空(ANA便)路線では飛行時間は約1時間ですが、富山市内~空港、羽田空港~東京都心で約1時間はかかりますので、トータル2時間程度になってしまいます。つまりスピード的には大差なくなっているのですね。

むしろ本数が多くて遅延の心配がない新幹線のほうが、ビジネスパーソンには有難いでしょう。そうした背景があって、新幹線開業に対抗するため、ANAはそれまでの片道約1.8万円の航空運賃を一気に何と9千円に半減させたそうです。つまり新幹線より安いのです。若干でも速いのに、です。露骨な対抗策ですが、これが自由主義経済のダイナミズムですよね。

ただしそれでも旅行のピーク時を除けば、航空客は3割程度落ち込んでいるそうです。旅客が航空から新幹線にある程度はやはり流れているのですね。新幹線開業で東京から北陸に向かう全体旅客数は増えたわけではありますが、その大半は新幹線がかっさらい、わざわざ航空を使うのは従来から使っていた(しかも各空港から相対的に近い拠点の)ビジネス客だけなのでしょう。

お蔭で航空需要は落ち込み、首都圏・関西圏と北陸を結ぶ路線の多くで、減便もしくは場合によっては廃線になりそうだということでした。富山に限らず北陸の地方空港の存続は元々かなり地元自治体からの補助金に支えられていますので、地元自治体は今、必死になって役所内と地元企業に対し出張には航空を使うよう、キャンペーン活動をしているそうです。こないだまで新幹線開業と駅開設を躍起になって誘導していたのに、何と先が見えない、そして一貫性のないことでしょう。

ちなみに教育委員会の委員長という役職は、法制度が変わったため、やがて順次廃止されるそうです。知っていましたか?

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大塚家具の新戦略は理に適っているのか

親子喧嘩」報道に隠されていた路線転換のリスクとハードルの高さを冷静に検討してみると、大塚家具が向かおうとしている「一般大衆路線」の前途は容易ならざるものと覚悟すべき。


先月末の株主総会をピークに世間を騒がせた大塚家具。ご存知の通り、娘である社長が株主の多数派の信任を得て勝利という決着を見ました。実は現社長の久美子氏が小生と同じ大学出身者でして、少し前から関心を持って眺めていました。その過程では茶の間の興味をひくため、「親子喧嘩」「御家騒動」という側面にスポットを当てたTV/週刊誌等の報道が過熱し、同社のブランドを少なからず傷つけたと懸念されます。直近の業績悪化も表面化しています。今週からは「お詫びセールス」と銘打って巻き返しに掛かるそうで、頑張っていただきたいものです。

騒動の最中ではそうした三面記事報道にかき消されるのが明らかだったので(それと久美子社長の足を引っ張ることに利用されかねないので)、コラム記事に取り上げるのは控えていました。しかし戦略コンサルタントとしてはとても気になる重要な点がほとんど論点になっていなかったので、ここで採り上げたいと思います。

この権力闘争の本質は、父親である勝久会長が築き上げてきた、従来の「経済的に余裕のある消費者をターゲットとした高級路線」を続けるのか、久美子社長が推進しようとする「より多くの一般大衆に向けた路線」に全面的に切り替えるのか、という「経営の基本路線の選択」です。決して単なる「世代交代の難しさ」の話でもないし、ましてや「親子喧嘩」という低次元の話ではありません。

そして久美子社長の勝利が確定した現時点での隠れた論点は、「本当に『一般大衆路線』への全面切り替えが正しい戦略なのか」というものです。もちろん、権力闘争に勝利したばかりの久美子社長側が、今さら錦の御旗を下して「冷静になって考えてみたらあなた方のいうことのほうが正しいようなので、再度路線変更します」などというわけはありません。

その意味で、本稿は他企業の関係者に向けたものです。特に、今までうまくやってきたが最近は売り上げが伸び悩み、一方で路線の違う同業者が伸びているという状況にある企業において、『路線転換』を検討するにあたって考慮すべき要素を考えてみたいというものです。大塚家具はそのよいケーススタディになりそうなのです。決して久美子社長らの新しい門出に水を差そうという意図ではないことをご理解下さい。

さて、ちょっと前置きが入ってしまいましたが、「経営の基本路線の選択」という話に戻りましょう。勝久会長(すでに元ですが)の「高級路線」vs久美子社長の「一般大衆路線」という構図です。

前者のやり方は、欧州のデザイン家具、日本の職人による手作り家具、といった高級な商品を中心に幅広く展示し、来訪時に名前と住所を書いてもらい(これは後ほど顧客データベースに反映されます)、広い展示場を担当者が寄り添って案内し、商品説明します。

後者ではイケアやニトリと同じようなやり方になるはずです。つまり中国や東南アジアで大量規格生産した、割安な普及品を大量に展示(一部はカタログ展示)。大勢の一般客にフリーで(いちいち受付せずに)出入りしてもらい、自由に商品に触れてもらいます。たぶん、商品説明も求められた時しかしません。

株主総会でのプロキシーファイト(委任状争奪戦)が決定的になった時点で、焦点の2人の経営者の論点認識は全く違っていました。勝久会長は「考え方の違いは宣伝のやり方だけだ」といい、久美子社長は「経営路線の違いであり、全く相容れない」と語っていたのです。その意味では久美子社長のほうが現実的な認識を持っていたということでしょうか。この2つの路線の目指すものは全くといっていいほど逆です。

そして重要なことは、今の同社の調達能力・店舗構造・社員のスキルを最も活かせる可能性が強いのは、ほぼ間違いなく従来の「高級路線」なのだということです。

例えば(私自身も顧客の一人として経験していますが)同社の販売担当者の提案・説明スキルは他の大量家具販売店のそれとは格段に違うものです。イケアやニトリのような(お客が勝手に見て回るスタイルの)店舗では「宝の持ち腐れ」になってしまいかねません。

また、同社の仕入れ担当者は、ある程度以上の高級家具に関する目利き能力は高いでしょうが、コストパフォーマンスを最重要視する若者やファミリー層が魅力を感じるような商品を企画し、大量発注して大幅にコストダウンさせるノウハウも協力工場網も、イケアやニトリに対し格段に劣ることは明白です。

そもそもこの2強が躍進した原動力であるSPA方式(企画・生産・販売を直結させるやり方)、もしくはカタログ販売方式に本格的に取り組むとしたら、会社の機能と組織体制を大幅に入れ替えないといけません。

2つの路線間のギャップは簡単に埋まるようなものではありません。仮に強引に進めた場合には多分、オペレーション上は相当な混乱が予想されます。仮にそうしたハードルの高さやリスクをよく理解した上で、それでも敢えて思い切った路線転換を図るというのでしたら、私ならば、別のブランドラインの子会社を立ち上げて、別店舗・別人員で全く違うオペレーションにて行うことをお勧めするでしょう(でもどうやら、そうしたやり方を採るという話は聞こえてきません)。

そんなこんなを考えると、戦略上の観点だけで言えば、権力闘争に敗れた勝久会長派の判断のほうが正しかったように、傍からは見えます。でも客観的かつロジカルな説得をできる方がいなかったのかも知れません。世の中的にも大株主の動向としても、「世代交代の流れに抗しているだけの創業者とその取り巻き」と評されてしまった模様です。

ではここまで明らかに不利な条件の路線転換を、なぜ久美子社長はお家騒動を引き起こしてでも進めようとしてきたのでしょうか。ご本人に直接尋ねたわけではないので本当のところは不明なのですが、幾つかの記事コメントから多少の推察は可能です。

その判断には幾つかの要素が絡んでいそうです。一つには、高級路線を採る自社の業績が近年伸び悩んでいるのに、低価格品路線を進むイケアやニトリは大幅に業績を伸ばしているという事実です。もう一つは多分、日本社会の少子高齢化・人口減少による国内市場規模の縮小でしょう。つまりこのまま手を拱いていてはジリ貧に陥りかねない、という危機感だったのではないでしょうか。

よく似た思いにとらわれる会社経営者は少なくありません。いわば「青い鳥症候群」とでもいうのでしょうか。新方式を採用してうまくいっている同業者の後追いをかなり遅れてしてしまうのですが、大抵は痛い目に遭うだけに終わります。グローバル規模やアジア規模の巨大で強力な先行企業がいる土俵に、特別のコストダウン・ノウハウもなくコストパフォーマンス競争を仕掛けようとするのであれば、極めて当然の結果といえるかも知れません。

もし大塚家具が本格的に「一般大衆路線」に切り替えるのであれば、独自に何らかのコストダウン手法もしくは大量販売システムを開発する必要があります。もしかすると我々が知らないだけで、久美子社長はそうしたものを構想し、既にめどを付けているのかも知れません。しかし万一そうではない場合、同社の前途は少なくとも当面、いばらの道とならざるを得ないのではと懸念されます。よほど社員が奮起し、一丸となってがむしゃらに取り組む必要があります。

これは、同様の状況にある企業が真剣に考えるべきテーマです。業績が伸び悩んでいる、もしくは明らかに悪化している状況において、直すべきはターゲット市場(where)なのか、それとも商品(what)やアプローチの仕方なのか(how)という問い掛けです。もしかすると大塚家具が今最も必要なのは、路線転換ではなく高級路線の徹底であり、新富裕層への積極的・戦略的なアプローチなのかも知れないのです。

つまり、ますます高齢者に富が集中し二極化する日本社会において、実は高級路線の市場は縮小どころか拡大する可能性が十分あります。子供が独立したのを機会に住みやすい住居環境にリフォームしようとする高齢者世帯が、より自分の嗜好に合った家具に囲まれて定年後の日々を送りたいと考えるのはむしろ自然です。

あとは彼らにいつどうやってアプローチするのか、という部分に知恵を絞れば、おのずと選択肢は出てきます。大塚家具はこうした顧客層に対するアプローチ戦略を十分検討していなかった可能性が捨てきれません。

ここでは家具市場の場合を例にとってお話ししていますが、他の市場でも考え方の基本は同じです。「隣の芝生が青く」見えるからといって単純にそちらに引っ越そうと考える前に、「さて、我々の今いるこの市場は今後拡大するのか、そして我々はそれを十分取り込めているのだろうか」というごく当たり前の問い掛けをしてみるべきだということです。

さて話は戻りますが、今回の株主総会でのプロキシーファイトにおいて、金融機関などの大株主の多くは、先の路線転換のハードルの高さを理解した上で社長に賛同したというより、単に「勝ち馬に乗った」のではないかと言われています。

こうした安易な賛同者は、久美子社長が路線転換に手間取った途端に、手のひらを返すように「だから私はあの時『本当に大丈夫か』と聞いたんだ!」とか言い出して、それ以上のサポートをしてくれない懸念が拭え切れません。「前途はいばらの道」とは申し上げましたが、久美子社長には何とかこの壁を乗り越えて欲しいものです。

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外国人向け観光振興にビッグデータと新発想が活躍

4月8日(水)放送のクローズアップ現代(今、やらせ問題で叩かれていますが、小生はこの番組、好きです)は「観光にビッグデータ!?~外国人呼びこむ新戦略~」でした。

円安の追い風を受け、去年日本を訪れた外国人旅行客は過去最高の1341万人を記録したそうです。政府は成長戦略の要として、2020年までに2000万人を呼び込む目標を掲げています。そうした中、観光庁が外国人観光客の行動や嗜好を分析する新たな取り組みを開始しましたが、本放送ではそれを紹介していました。

空港などで呼びかけて、スマートフォン用の乗り換え案内アプリをダウンロードしてもらい、5000人以上の外国人観光客の位置情報を本人の同意を得て収集したうえで、行動パターンの詳細な分析を開始したのです。

ちなみに、東京で最も人が集中していた地点は、有名な神社仏閣でも遊園地でもなく、渋谷・ハチ公前のスクランブル交差点です。あの沢山の人達が、ぶつからずに素早くすれ違う光景に感動するのですね。外国人にとっては、観光客向けに作られた施設では味わえない、日常の中で自然に生まれたもの、本物でユニークな経験をすることが大事なのだそうです(外国人向け旅行ガイドブック著者の談)。

さらに明らかになったのは、全国規模で見てみると、外国人観光客の訪問先に大きな偏りがあることが分かったのです。海外の旅行代理店にツアーを売り込むなどの従来型プロモーションの効果に限界があることが露呈したのですね。

集中していたのは東京と大阪を結ぶ、いわゆる「ゴールデンルート」。富士山や京都などを巡る日本観光の定番コースです。ここに6割を占める個人客の移動が集中しており、そのほかの地方への移動は、スキー場が多い北海道や、原爆ドームがある広島など、世界的に有名な観光地に限られていました。観光客増加の効果が他地域に殆ど波及していないというのが現実でした。

どうすれば個人客の心をつかむことができるのか、「ビッグデータ」から外国人観光客の好みをつかみ、新たなサービスを展開する模索が各地で始まっています。

山梨県の観光課では、県内の外国人観光客の移動データを分析しました。県内一の観光地である河口湖周辺に人が集中している一方、意外で辺鄙な場所に外国人が集まっているのを見つけ、実地調査に出かけました。そこにそびえ立っていたのは、戦後建てられた比較的新しい五重塔。しかしタイから来たという若い男女がカメラを向ける先に目をやると、富士山と五重塔が1枚の絵のように見える絶景が広がっていました。この光景がタイの旅行サイトで絶景ポイントとして取り上げられていた、というのが旅行者集中の謎の種明かしでした。

このように日本人が観光用としては見過ごしているような絶景ポイントというのは、まだまだ全国に多く存在しています。また、飛騨古川という町に今、里山サイクリングのために外国人観光客が殺到しているそうです。日常の中で自然に生まれた里山の風景や、地元の人たちとの交流ができるようなところが評価されているのです。

外国人向け観光を推進する人たちは固定観念を捨て、その地の原風景はどういったものなのか、何がその土地らしいのか、を真剣に考え直すときです。それは実は、外国人向けだけでなく、日本人観光客を呼び寄せるためにも有効なはずです。

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"民泊"を外国人観光客の受け皿に

4/6のワールドビジネスサテライトにて放送されていた「"民泊"が抱える課題とは」は興味深いテーマです。

外国人観光客が急増する中、彼らの不満の一つは日本のホテル・旅館の設備の貧弱さと非合理性です。日本人でさえ狭くて高いと思うのですから、外国人にとっては理不尽過ぎますよね。日本の旅館業の人達が現状に甘んずることなく改善に努めるには、業界の外からそれに対抗し、圧力となる勢力が必要です。でも外資系ホテルは頼りになりません。高級ホテルしか作らないので。

そこで"民泊"、つまり民間のホテル旅館以外の施設を転用する仕組みが注目されているのです。ロンドンやオランダの例が紹介されていましたが、世界的な民泊仲介サイトのAirbnb(エアビーアンドビー)が日本でも活動を始めています。これは一般の人同士の部屋の貸し借りを仲介する仕組みです。同社は190ヵ国以上で約100万物件を提供しているそうです。日本でも広い家、空き部屋のある家は少なくないので、外国人との交流ができてちょっとした小遣い稼ぎになる、この仕組みを知れば興味を持つ人は少なくないかも知れません。

ただし課題もあります。日本では厚生労働省が管轄する旅館業法により、不特定多数の人を継続的に泊めるには都道府県の許可が必要です。一方、部屋や家の貸し出しを管轄するのは法務省の借地貸家法です。そのため個人同士が貸し借りするエアビーアンドビーのビジネスモデルをどの法律で管轄するのか整備できていない状況なのです。今は互いの良識と善意で順調に進展していますが、もし何らかのトラブルや犯罪が発生したときに、だれがどういう根拠でどう対処するのかが決まっていないのです。

日本にも民泊ビジネスを運営するサービスがあります。宿泊予約サイト「とまりーな」を運営する「百戦錬磨」です。東北を中心に約300軒の民家などを掲載しているそうです。
https://tomarina.com/?locale=ja

農山漁村余暇法」により農業・漁業に従事していることが認められれば簡易宿所の開業基準が緩和される仕組みを活用しているそうです。客室の面積(旅館業法 33㎡以上)、風呂場やトイレ設置(宿泊者専用)、避難経路の設置などの点で規制緩和された扱いを受けることができるのです。

百戦錬磨」社が指摘するように、こうした簡易宿所の開業を農業・漁業者だけでなく一般の人にも広げるべきですね。そうすれば訪日外国人の宿泊受け皿不足も緩和され、彼らの不満を和らげることができます。実際のところ、日本には今、空き家が急増しています。外国人には貸したくないという人たちは無視するとして、需要と供給が一致する点があるはずです。

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台湾出張から帰国して思うこと

本日、台湾台北市から帰国しました。彼の地にいるパートナーとの打ち合わせミーティングが主たる目的ですが、併せて家族サービスを兼ねて久しぶりに家族を連れて参りました。

台湾のパートナーは、元々はハイテク製造業に強いのですが、サービスや不動産にも投資しており、しかも台湾・北米への投資はもちろん、中国本土にも(中国企業と共に)共同投資しています。業種にもよりますが、弊社のクライアント企業が台湾もしくは中国への投資・進出を考える際の支援を様々な形で手伝ってもらえます。今、幾つか可能性の高いテーマがあるので、どういうやり方がベストか打ち合わせに行った次第です。

今回は週末を跨いでの出張でしたので、その打ち合わせは初日に済ませ、土日はほぼ観光モードでした。これだけ時間があったので、地元の友人(台湾人)に車で市内観光に連れて行ってもらったり、一緒に食事したり、もちろん家族と幾つか名所を訪れたり、すっかり『観光客』していました。

こんなにゆっくりと市内観光をしたのは25年振りでしたので、色々と気付きました。

第一に、都心部だけでなく色んなところが再開発されており、台湾101に代表される高層建築物が随分増えたことを改めて認識しました。言い換えれば、台北市が随分拡大している印象です。

次に、防犯カメラが随分普及していることです。今回は主にMRTで週末にそこらじゅうを移動したので、駅や商業施設の大半の色んな場所に設置されていることに気づきました。以前だったら気にも留めていなかった点ですが、比較的最近のプロジェクトで関連する分野をやったので、どうしても意識するようになっているのですね。

3つ目として、台北市の整理整頓具合に改めて気づきました。元々、日本の首都圏と近い『清潔さ』の都市なのですが、特にモーターバイクの整列駐車具合は感心するしかありません。
http://www.getbike.co.jp/img/mi-01-10.jpg

最後に、中国観光客の多さです。御多分に漏れず、彼らは非常にマナーが悪いのですが、台湾の人はあからさまには嫌な顔をしません。ただ、親しい間柄の仲では「あいつらはどうしようもないね」みたいな話はしているようです。

とにかく日本人は往々にして台湾人と中国人を同一視までいかなくとも類似視しますが、彼らは全く別の民族といっていいと思います。確かに台湾の政治・経済の主導権を握っているのは本省人(大陸出身の漢民族系)ですが、彼らはとうに『我々は中国人ではなく台湾人』と考えています。

ただし彼らは中国に狙われていることも知っていますので、下手に中国を刺激しないよう、そうした主張を声高にしないのです。小国の知恵ですね。

そして一番素晴らしいのは、何といってもアジア危機も含めて長期に亘って台湾経済が発展を続けていることです。多少の政治的揺れはあれども、韓国や中国、そしてタイなど比べて圧倒的な安定感があります。これは民度の高さでもあります。日本企業はもっと台湾への投資や台湾企業との提携をもっと真剣に考えてしかるべきでしょう。

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シングルマザーの看護師が働ける病院こそ、地域に根差すことができる

「ガイアの夜明け」の3月24日の放送は「"子育てママ"を救うと... ニッポンが変わる!」。只今小生が最も気に掛けているテーマです。

出産を機に仕事を辞める人の割合は、働く女性の4割にも及ぶといいます。中でも看護師は夜勤があったり残業があったりで、なかなか育児と仕事の両立が難しい事情があります。20代から30代の女性の看護師の離職理由の半数以上は出産・子育てなのです。

こうした中、画期的な方法で看護師の離職を防いでいる病院があります。鳥取県にある鳥取大学医学部附属病院です。この病院が注目される理由、それは「女性看護師が働きやすい病院」ということです。

まず、病院に「24時間完全保育」の保育所を併設。普通の保育所では嫌がる、熱を出したような子供も受け付ける「病児保育」も行っています。保育所だけじゃなく、仕事で遅くなって夕食を作る時間がない職員のために、持ち帰りできる「夕食弁当」も用意します。とにかく子育て中の看護師が仕事と両立しやすい環境を作っているのです。

それが看護師仲間で評判を呼び、全国から20名以上の看護師たちが殺到、約50名のシングルマザーの看護師が働いているというのです。全国の地方病院が聞いたら「えっ?」と驚くような話です。

この日の番組では、「驚きの病院」の裏側を取材してくれ、ここでさえも小学校に入る児童の預かり場所が不足していること、そのために相談係の人が奔走したこと、そして経営幹部の人達が、看護師・医師の人達が働きやすい環境を作ることこそ自分たちの役割だと理解しているのが伝わってきました。

フルタイムで看護師をしながら子育ても出来る病院。鳥取にしかないというのがむしろ不思議です。そして同じような課題は全国の病院以外に介護施設や流通現場など多くの職場に共通し、解決法もそれほど難しくありません。問題は経営者のやる気です。

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