欧州一の親日国・ハンガリーは不思議な魅力にあふれている

6月29日に放送された未来世紀ジパングは「知られざる親日国シリーズ・ハンガリー」。かつてハプスブルグ家が統治したオーストリア・ハンガリー帝国の中心地が同国の首都、ブダペストです。ドナウ川の両岸に広がる歴史ある街並みは、その美しさから「ドナウの真珠」と称えられています。

番組のはじめに教えられたのが、ハンガリーと日本の間の意外な共通点。ひとつはお辞儀の習慣。また、名字と名前の順番が日本と同じ(ヨーロッパではハンガリーだけ)。しかも祭りのときには流鏑馬が披露されます。これはハンガリーと日本が同じ中央アジアに民族のルーツを持つからだとのことです。これは全く知らないことでした。

他にも、温泉好き。ブダペストにはまるで宮殿のような豪華な建物の中に巨大な露天風呂があり、一度に2000人以上も入浴できます。さらに、さらに300校以上の小学校で“そろばん”が使われています(中国製の品質の悪い算盤を使っていたので日本の算盤メーカーが販売攻勢をしかけていました)。25年前の東欧自由化の際に日本が算盤を紹介したところ、もともと数学教育が盛んだったハンガリーであっという間に広がったそうです。

そういえばハンガリーは天才国家として知られており、人口当たりのノーベル賞受賞者が世界最高だそうです。ハンガリー発の発明品としては、マッチ、ボールペン、炭酸水、コンピュータです(現在使われているコンピュータの99.9%はノイマン型)。ルービックキューブもハンガリー人のキュービック氏の発明ですね。

“ベルリンの壁”崩壊のきっかけは、ハンガリーにあったという話にも驚きました。オーストリアとの国境にある街ショプロンで、“ベルリンの壁”崩壊の3か月前に、極秘で西側への脱出劇が仕組まれていたのです。計画の名は「ヨーロッパ・ピクニック」(その計画が練られた家の音楽家の日本人妻が当時のエピソードを語っていました)。その計画が成功し、ハンガリーの国境は結局撤廃され、それを見てベルリンでも“壁”崩壊に至ったのです。小生は当時米国にいたので、大半の日本人と少し違うニュースエピソードに触れていましたが、これは知りませんでした。

1991年、自由化直後の(つまり特に産業のなかった)ハンガリーにいち早く進出した日本企業が、自動車メーカーのスズキです。自由に車を買えなかったハンガリーの人たちにとって、高品質で割安なスズキは圧倒的なシェアを誇る国民車となったのです。「夢の車だった。ハンガリー人の夢の車なんだ」と番組が取材した人は言っていました。

しかもスズキは自由化直後の1992年には生産拠点として工場を設立しました。最初は小規模から始め徐々に拡大、25年を経てエステルゴムにあるスズキの工場は一時ハンガリーのGDPの5%を担ったほどの巨大な工場となっていました。ここでハンガリーに一から自動車づくりを教えたのですね。

番組では同国が欧州一の親日国である理由は特に語られていませんでしたが(多分、昔ロシアに戦争で勝ったことが大きいとは思いますが)、こうしたことも重要な要素かと感じます。今のハンガリーは経済的には少し調子が悪いようですが、ギリシアと違ってEU加盟国ながらユーロを使っていないので、通貨安により欧州からの観光客や輸出で盛り返すことも可能なはずです。頑張って欲しいです。
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イーグルバス社長が示す、地方創生の形

6月25日(木)に放送されたカンブリア宮殿はイーグルバス社長の谷島賢さんをフィーチャーしての「赤字路線バス復活劇!愛される超地域密着戦略」でした。イーグルバスは前にも採り上げた、賢く誠実なバス会社ですね。

レトロ感で人気の街、川越の名物となっているのが、やはりレトロなボンネットバスです。実は観光客のためのバスではなく、住民の足である路線バスなのです。運転手が観光名所を案内してくれて、車内に笑い声が溢れる路線バス。そんなユニークな路線バス「ボンネットバス」を運行している会社が、イーグルバスです。社員193名、車両111台、売上高9億7000万円の中堅規模のバス会社です。

1980年、地元川越で小さな旅行会社を経営していた父親とともにイーグルバスを創業。まず許可制の送迎バスで事業を始めました。最初に取り組んだ送迎バスには、車椅子用のリフトが設置されていました。イーグルバスは、養護学校の送迎により10年の実績を積み、1990年に観光バス事業の免許を取得。その後、路線バス事業へと進出を果たしたのです。

ヒットしたのが、いまや川越の名物となっているボンネットバスの小江戸巡回バスでした。イーグルバスは、価格ではなく顧客満足で業績を伸ばしているのです。朝の朝礼では、日課の発声練習を行います。外国人観光客のために、運転手さんは英会話の自主トレを合間の時間に行っています。

谷島さんにはもうひとつの顔があります。それは観光協会の理事を務めて、川越に観光客を呼ぶ活動をしています。彼が音頭をとって始めた「川越きものの日」は、今年で5年目を迎え、川越の名物となっています。きものを着ているとお得なサービスがたくさん用意されているのです(小江戸巡回バスの1日乗車券も、通常500円のところ350円に値引きされます)。

様々な取り組みによりイーグルバスの小江戸巡回バスの利用者数は1.5倍に増加し、商店街を訪れる客も増えています。「地元と一緒に元気になる」「街が盛り上がってお客さんが来てくれば、バスに乗ってもらえる。最初に街づくりをするのが順番から考えてやはり正解だったと思う」と語る谷島社長の言葉が、地方創生に対する一つの答えだと思えます。

以下、備忘メモですが、イーグルバスが引き受けた近隣地区の赤字路線バス路線の復活劇のポイントです。

<埼玉県日高市>
改革1)データ収集による見える化(実態把握)
改革2)運行ルート変更
改革3)ダイヤ改正
→時間通りにやってくる便利なバスに生まれ変わった結果、月間利用者は3000人も増加しました。

<埼玉県ときがわ町>
改革1)中継ポイント設置で便数を増やす
改革2)デマンドバス
→便利になったお蔭で、バスの利用客は1.7倍に増加しました。

<埼玉県東秩父村>
改革1)和紙の里にバスの中継ポイントをつくる
改革2)和紙の里に郵便局やコンビニ、レストランなどをつくる
→観光客にも住民にも便利になる。雇用も創出。休日には乗り切れないほどのハイキング客が乗り込み、収支的にはトントンの様子です。

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「タイプが違う人間のチームだから強い」ということを教えてくれるスーパー

6月24日に放送された「ガイアの夜明け」は「快進撃スーパーの裏側”驚きの人材力”」というタイトルで、消費増税や円安等で苦戦を強いられるスーパー業界にあって、業績をあげているスーパーを採り上げていました。

特に面白かったのは、最初に紹介された広島のスーパーエブリイ」。開店30分前に既に100人以上の行列ができている光景は驚きです。これを可能にしているのは、この会社の人材力です。要はチームワークがよく、色々な工夫が詰まっており、そして客から見ても楽しい、ということです。

店内には、「朝精米した米」や「朝採れたまご」、「朝さばいた鶏肉」など鮮度の良い商品が並んでいます。中でも圧巻なのは鮮魚売り場です。

午前中は魚の扱いに慣れた年配のお客にあわせて丸ごと1匹で魚を販売しています。その分、新鮮で割安です。

午前11時頃になると、午後にやってくる(魚をおろせない)若い客層に向けて調理しやすい切り身にして販売する準備を始めます。店員同士の連携で、ものの10分で売り場をがらりと変えてしまいます。

夕方4時になると、売れ残った切り身を全て回収します。切り身にタレをつけてオーブンで焼き上げ、夕飯にぴったりの惣菜に変えてしまいます。狙いどおり、夕方の6時には完売していました。

スーパーエブリイ」は、14年連続の二桁増収、売り上げは479億円を記録。安くて新鮮でおいしい商品と、お客のニーズに合わせた販売方法、店員同士のチームワークの良さの賜物です。

この会社がユニークなのは、タイプ別特性を生かしたチーム作り、人材指導法の育成をしていることです。社員をオラウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボという4つの類人猿の行動傾向に分類し、適材適所の人材配置を行うことで、職場での良好な人間関係が構築されているのです。それが就任した頃は毎年赤字の負け組スーパーを一挙に勝ち組に変えた、岡崎雅廣社長の経営の要なのです。

オランウータン型:冷静で納得するまで仕事をする人で、論理的で分析を好みます。
ボノボ型:相手の気持ちに敏感で共感できる人です。そのため相談相手に向いています。
ゴリラ型:辛抱強く、地道で細かな作業に向いています。
チンパンジー型:積極的で直感を信じて前進するので旗振り役に向いています。

定期的に開催する類人猿セミナーという社員研修では、タイプ別の接し方を学びます。岡崎社長は、その狙いについてこう語ります。「人は同じものを見ても違う見方をしていることをゲーム感覚で教えていくことで、チーム力を上げる手助けになる」と。なるほど、とても参考になります。

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ソフトバンクのPepperの進化が待ち遠しい

ソフトバンクが6月20日(土)から一般向けに販売を始めた人型ロボットPepper(ペッパー)が、販売開始から1分間で6月販売分(千台)が完売したそうです。やっぱり凄い人気です。

ご存じの通り、ペッパーはマイクやセンサーを使って人の感情を読み取り、それに対応して会話するのが特長です。ため息などでロボット自らの感情も表現できる(これは吉本仕込みの学習ソフトが入っています)ところが話題となり、注目されてきました。

でも本当にすごいのは、そのための人間の感情を表す反応をデータとしてクラウドに貯め込み、それを共有して、どんどん進化するところです。このあたりは昔のAIBOや他の人型ロボットと違うところですし、小生が注目している部分です。
http://www.softbank.jp/robot/special/pepper/

ちなみに気になるお値段は、本体価格21万3840円(税込)。アプリを利用するための基本プランや修理時の保険料は3年間の分割払いの場合、月々計2万6568円。本体を購入し、基本プラン、保険パックを契約した場合、総額108万3600円となるそうです。
http://www.softbank.jp/robot/price/

2月に開発者向けにWebと店頭で発売したときにもやはり約1分間で完売しています(300台)。Webは開始1分で販売予定数を超える申し込みがあったため、抽選による販売となったとのことです。

実はこのときには小生も購入を考えていたのですが、開発者向けということで諦めた経緯があります。今回も周りから説得されて購入申し込みはしていませんが、研究対象としてそして個人的に、興味は持っています。未来のビジネスの「相棒」のひな形となるかも知れない、そんな予感があります。

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ドローン規制は業務用と趣味用を分けて議論せよ

このままではドローン規制はこのイノベーションの意義を極小化し、社会的な効用をほとんどもたらさないことに陥りかねない。少なくとも業務用と趣味用は扱いを分けるべき。


首相官邸の屋上に小型無人飛行機(ドローン)が落下していた事件を受けて、自民を含む4政党が規制法案を今月12日、衆議院に共同提出しました。国会議事堂や首相官邸など、国の重要施設などの上空を無断で飛行させた者に1年以下の懲役を科すことなどが盛り込まれているそうです。

これとは別に政府では、今国会では空港周辺や住宅密集地などの上空や夜間の飛行を禁じること、さらに秋の臨時国会では購入時に機体の登録を課すことや操縦資格制度を設けることも、それぞれ航空法を改正して盛り込むことを検討しているようです。

それぞれの規制案の全貌が分かっていないのでもどかしいのですが、今の「野放し状態」から一気に過剰規制に極端に振れる事態を危惧しています。気になるのは、そもそも業務用と趣味用を区別せずに規制しようとしていること、将来の技術向上の可能性を考慮せずに一律に住宅密集地の上空の飛行を禁止する方向になりそうなこと、さらには目視できる範囲でしか飛行させないというガチガチの規制になる可能性すらあること、の3つです。

日本でドローンを適用しようとする業務領域は、既に現れているだけで防犯対策、災害報道、インフラ整備など着実に広がりつつあります。それだけ有用さが認識され始めたのです。それなのに「落下する可能性がある」からと、業務用と趣味用を区別しないで一律に住宅密集地の上空の飛行を禁止することになってしまうと、この新しいテクノロジーの適用可能性を相当つぶしてしまいます。

ましてや目視できる範囲に限るなどというのは論外です。画像カメラとGPS機能、それに加速度センサーなどを組み合わせて、飛行姿勢の自動制御は既に相当なレベルまで来ており、見えない遠隔地からの操作で障害物を避けながら自動で発着することもやがて確実にできる見込みです。必要な空間で一定時間ホバリングすることは既にできています。

つまり我々は、過疎地や災害などで隔絶された場所に取り残された人に手軽に物を届けたり、迷子になった子供や高齢者を遠隔操作で探しにいったり誘導する手段を手に入れようとしているのです。橋の下などの建造物の見えない部分を人の代わりにカメラで「目視」して、問題が生じていないかをチェックすることができつつあるのです。そうした適用場面は今後ますます広がるはずです。弊社でも新規サービスの開発支援を頼まれて、ドローンを使った新サービスを既に幾つか民間会社に提案しています。

社会的な効用を考えると、今不用意な規制で、遠隔地への飛行や操縦者の見えない範囲への飛行を一律に禁止することは大いに馬鹿げています。肝心なのは、適用場面とその安全面を考えて必要最低限の規制をすればいいだけの話です。そのためには少なくとも業務用と趣味用とは全く思想と取扱いが違うべきなのです。

現在の技術レベルでさえ、素人でもある程度練習すれば結構上手に飛ばせるほど今のドローンは手軽なのですが、やはりそこには趣味の無責任さが伴います。一般人が技量を維持・向上するために真面目に練習する保証はありません。そのため、一般人が趣味用に飛ばす場合は、住宅密集地の上空だけといわず、人の集まる公園など公共の場所での飛行を禁止するのも妥当でしょう。

でも業務用であれば、社会的責任を果たすため、そして何といっても事故を起こさないため、担当者は自己の技量を向上し保つ努力を惜しまないでしょうし、監督者は自らの責任において担当者にそうさせるでしょう。事故が起きれば、操縦担当者および監督者が責任を問われるのもやむを得ません。そうしておけばドローンの飛行安定性が相当高まるまでは、業務用といえど、都市や住宅地などの上空を不必要に飛ばす業者は現れないでしょう。

そのために業務用については、当面は免許制にすることも妥当だと思います。しかしその場合、多少は技量が必要なものとしないと意味がないと思いますが、ドローンの飛行安定性に関する自動制御技術は今後飛躍的に進歩するでしょうから(日本での規制とは無関係に海外でも進化します)、免許のための試験はどんどん陳腐化して無意味化することが目に見えています。多分、この免許が本当に必要とされる「当面」というのは10年程度でしょうか。

一方、「素人の趣味用であろうと免許制にせよ」との意見も政治家には強いようですが、あまり意味はないのではと思えます。既に述べたように、趣味用で飛ばす分にはそもそも大した技量を必要としない程度には今のドローンの性能がよくなったので人気になっているのです。誰でもすぐできる簡単な飛行をさせて免許を与えてやる、などとやったら、役所が免許代をせしめるためだけの無駄な制度だと猛反発されます。かといって高度な技術を要する免許にしてしまえば、かえってお墨付きを与える格好になって、アクロバティックな飛行やきわどい所を飛ばす誘惑を素人に与えることになったら本末転倒です。

話を整理しましょう。一般人が趣味でドローンを飛行させる場合には免許不要とすべきで、その代わり目視できる範囲でしか飛ばせない、(空港周辺や特別重要な施設以外にも)居住地や公共の場所など人の集まるところでは飛行禁止とする。一方、業務用にドローンを飛行させる場合には当面の適切な期間は免許を要し、もし事故が起きたら業務上過失○○罪などに問われ得る。行政府関係や原発施設など特別重要な施設の周辺以外は原則自由もしくは届出制とし、目視できることを要件にはしない。こういうことでよいのではないでしょうか。

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ラップ口座には本当に価値があるのか

大手証券会社ラップ口座の普及に注力中だそうです。15日のWBSでも取り上げていましたが、残高が急拡大しているのですね。
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/newsl/post_91855

ラップ口座とは証券会社などに資産を預け、その運用を一任する「お任せ口座」のことです。元々は投資額が数千万円以上の富裕層を狙ったサービスでしたが、ここ数年、野村や大和などの大手証券会社が運用先を投資信託に絞って最低額を300万円や500万円に引き下げたファンドラップという商品を投入した結果、市場規模が急拡大し(つまり預け入れる人が急増し)、業界全体の残高は約3兆9,000億円(前年比2.8倍!)になっているとのことです。

相場がいい今だから人気になっていますが、相場が下がる局面では「ラップ口座なのに」という不満が噴出するでしょう。番組でも指摘していますが、投資初心者の場合、いつまで経っても投資がうまくならないでしょう。

そして手数料を超えるリターンを得ることは簡単ではないものです。投資信託で同じことが実証されています。「投資信託では随分損をした。だからプロに任せるラップ口座だと安心」というコメントをしていた定年退職金を預けた人がいましたが、酷かも知れませんが、アホだと思えます。

運用は金融機関にお任せで、年間の手数料などは年1.7%ほどですが、その費用に見合う運用能力が日本の大手証券にあるとはとても思えないからです(大半の中小証券にはもっとありませんが)。

小生は日本の大手証券(つまりサラリーマン)による運用能力をかなり疑問視しています。小生には大手証券会社に勤めてきた友人が随分いますが、役員を含みかなりの人が株式投資そして投資信託で大損しています。損していないのは、全く投資していない人だけです。

ラップ口座に注力する証券会社の事情と戦略はよく分かります。従来のような手数料稼ぎ狙いで売買回転を上げる方向ではお客のためになりません。それよりはラップ口座のように顧客の資産残高を増やすことでWIN-WINの方向に向かう可能性があるので、正しい戦略です。

でも小生個人的にはラップ口座は使いません。本当に気に入った個別の会社の株式に長期投資するほうが割安で着実だからです。

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小さな島の時計再生職人の意地

6月8日にNHKで再放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」は「時計に命、意地の指先」でした。元々好きな番組でしたが、今回は特に好きな内容でした。フィーチャーされたのは時計職人・松浦敬一氏。

松浦氏が居を構えるのは、瀬戸内海に浮かぶ広島県の大崎下島。小さな島の時計屋には、全国から壊れた時計が舞い込んできます。高級腕時計からキャラクターウォッチ、大昔の掛け時計まで、年間300個も。メーカーや他の時計屋がさじを投げた時計ばかりです。松浦氏は他の職人が避けて通る困難な仕事をあえて引き受けることを信条としてきたのです。

時間をかけて考え続けることで、別の時計の部品を代わりに使うなど、直すためのアイデアが思い浮かぶことがあるのだと松浦氏は言います。そして、しんどい方へ進めば、他の職人に諦められた時計でも救うことができると信じているのです。

松浦氏は言う。「しんどいことはみんな逃げようとするから。たいぎい(つらい)からね。それを可能にするには、どうしてもしんどい方へいかんと。何でもしんどい方へ考えた方がええ案も浮かぶこともあるし。プラスにはなる」と。

松浦氏が大切にしている信念があります。それは「どんな時計でも、常に最善を尽くす」ということ。松浦氏は言います。「一つ一つの時計に、抜け目ないように、誠心誠意尽くす。最高のものに持って行きたいからね。最善を尽くして、動くものにして戻したい気持ちが一番強いです」と。

松浦氏が戦っているのは、ミクロの世界です。1ミリにも満たない部品を正確に、かつ緻密なバランスで組み上げなければならないのです。しかも、古い時計の部品は替えがきかないものばかりです。そのため、松浦氏には極度の集中力が求められます。

修理の現場において、松浦氏は常に最高の技術と集中力を発揮できるように、努めています。番組の中でも、本当に難しい修理の際には、ビデオカメラを持つスタッフが出す微かな音さえ嫌って遠ざけていました。

実は、客の修理の現場にカメラが入ったのは、今回が初めて。カメラが入ることで、松浦氏の集中力がそがれ、世界に二つとない客の時計に、もしものことがあってはならないという配慮からです。今回は、足音も立てないという条件で、特別に許可されたとのことです。

松浦氏は修理に入る前に、必ず依頼者から送られてきた手紙を丹念に読み込みます。持ち主はどんな職業でどんな使い方をしてきたのか。いつ頃、誰からもらったどんな記念の時計なのか。そうした依頼者の情報や思いを知ることが、不具合の特定など修理に役立つと考えているのです。そして、手紙だけでは分からないことがあれば、電話をして確認します。こんな時計屋、確かに滅多にいませんよね。

松浦氏は言います。「私は時計そのものよりは持ってくる人の依頼者の気持ちを一番大事にするんですよ。そうすると、直すのも力が入る。それが応援してくれる」と。持ち主を想像し、持ち主の思いを知ることが、松浦氏の原動力となっているのです。

凄く分かります。小生もプロジェクトの始まりにおいて、責任者である経営者の方から直接に危機感や改革の思いを聴き、そのやる気に触発されないと力が湧きません。職人の感覚や気概というのは、同じようなものなのです。

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「盛る」生産方式が脅かす地方のモノづくり

「金属積層造形」という生産革新が立ち上がろうとしている。対処のしかたを間違えると、日本のモノづくりを支える地方の金属加工業や中小部品製造業にとって致命的な事態となりかねない。


昨年、ある自治体の依頼に応じて、その地域の有力企業数社の経営課題をヒアリングしたことがあります。その1社は金属加工が専門で、日本でも数少ない複雑な加工技術が可能ならしめる、特殊な形状の掘削機用刃物加工で大企業との取引が伸びていました。経営者は非常に元気な方で、将来の展望を色々と語ってくれました。しかしその話を聞いた後で小生はその経営者に、新しい技術の習得と適用の検討を早めに始めるよう薦めました。

また3年ほど前ですが、小生がMOT(Management of Technology=技術経営)の講座を持っていた大学院のクラスに金型大手の1社から学びに来ている社会人学生の方がいました。講座の合間に色々と話をしていたのですが、当時その会社の関心は圧倒的に、中国の競合が金型技術を向上させていることでした。しかし小生が注意喚起したのは、むしろ欧米での新しい代替技術でした。

いずれも当事者がどれほど真剣に小生の話を受け止めてくれたかは別として、ここまでお話するだけで一部の業界の方々はピンとくるでしょう。今、欧米の製造業で静かに進行している生産革新の一つ、「金属積層造形」と呼ばれる技術です。英語でadditive manufacturing(AM:以下、「AM方式」と呼びます)、人によっては「盛る」生産方式とか「金属3Dプリンター」技術などとも呼びます。

一般の3Dプリンターは樹脂素材を「盛る」だけなので、どうしてもおもちゃっぽいイメージが強いですが、金属3Dプリンターは樹脂ではなく金属粉を射出成形またはレーザー溶解することで、しっかりした金属部品や製品を成形できるのです。当然、設計データは3D-CADで作成されたデジタルデータですから、素材や製造・使用環境を考慮した加工条件を編集・修正することも手軽にできます。

AM方式による最大メリットは、従来の製造法でできなかった構造の金属製品を直接作りだすことができる点です。例えば中空構造やスポンジ状の製品を一体成形できるので、素材の強度次第では非常に軽量化できるのです。または新たな機能や特徴を持たせることも可能です。

先に挙げた掘削機の刃型も、ドリルやレーザーが外側から直接当たる範囲しか加工できないため形状の複雑さに限界があるのですが、金属を「盛る」方式であればほぼ限界はありません。または、従来なら別々の部品を比較的単純な形の金型で成形して、後で組みつけたり溶接したりしているので、手間が掛かる分だけコスト高になったり、経年変化で接続部分が脆くなり故障の原因になったりします。AM方式であれば最初から一体成形できるので、こうした問題は回避できます。設計データさえ切り替えれば「段取り」完了するので、多品種少量生産に向いています。

こんなにいいことばかりなら生産方式が一気に切り替わりそうなものですが、そうなっていないのには理由があります。そう、この方式にもデメリットが幾つかあります。

3Dプリンターの成形過程を見たことがある人ならすぐ気づくでしょうが、製造スピードが格段に遅いことがまず挙げられるでしょう。いくら一挙に完成できるといっても、従来方式で製造した部品を組み合わせるほうが圧倒的に量産に向いています。しかし生まれたばかりの技術ですので、今後のスピードアップの余地は大きいでしょう。

ある程度のスピードまでくれば、あとは3Dプリンターの数を増やして、並行して同じ製品を作ることで従来方式に対抗できるかも知れません。もしくは初期量産分は従来方式のままで生産し、サービス用部品と追加生産分の完成品は在庫せずに、追加受注に応じてAM方式で生産するやり方に切り替えるところも出てくるでしょう。

とはいえ、1台当りの装置コストが今のところ1億円前後と随分高いので、そうなるまでには時間がかかりそうです。しかし数年前には単純な機能の製品でさえ1千万円超だった樹脂用3Dプリンターが、今では汎用機だと100万円台で入手でき、普及機だと10万円を切るものまで登場しているほどに一挙に低価格化が進んだことを考えると、金属用でも今後予想を超えるスピードで価格低下が進む可能性は高いでしょう。

AM方式で製造できるサイズがまだまだ小さいのも事実です。ただしこれは3Dプリンターのサイズが大きくなれば対処できる話です。事実、GE傘下のGE Aviationではadditive manufacturing方式でジェットエンジン(でかいことは分かりますよね)用のパーツを製作し始めています。
http://www.ge.com/stories/advanced-manufacturing

結局、何といっても従来と全く違う方式なので、本来の効果を引き出すべく本腰を入れて切り替えるとなると、設計~部品製造~部品調達~組立というサプライチェーン全般を見直さなければなりません。それだけ手間とコストを掛けてもメリットが上回るのかを見極めなくてはなりません。この大変さが一番大きなハードルです。

したがって自動車メーカーや大型機械メーカーなど、産業構造の大本がその気になって号令を掛けない限り、なかなか切り替わらないというのが日本の現実でしょう。事実、2013 年に世界で 348 台売れている欧州製の金属3Dプリンターが、日本では2013年時点で販売実績ゼロでした(2014年11月時点でも数台と聞いています)。
http://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07002014/07002014a.pdf

しかし欧州や米国では、完成機メーカーも部品メーカーも思い切って金属3Dプリンターを試行導入し、そして生産方式の一部切り替えが進んでいます。

欧州および米国の製造業が、こうした今はまだ高価な金属3Dプリンターを購入してまでAM方式の導入を急ぐ理由は何でしょうか。もちろん、先に挙げたような、AM方式でないとできない構造の製品を製造したいというケースもあったでしょうが、実際にはそこまで設計検討を尽くして、しかも取引先との契約ができている状態になってから導入したという話は滅多に聞きません。

2~3年前の技術展示会やセミナーでのコメントでは、むしろ「これは未来を決めるテクノロジーだ」「多品種少量生産へのトレンドは変わらない」「どんな新たな機能を追加できるか、これから検討したい」といった声が多かった印象があります。

綿密に費用対効果を計算して踏み切ったというより、技術発展の方向性に賭けたのです。先行導入してノウハウを身に着けて、中国などの新興国とのグローバル競争に勝ちたい、といった戦略的思惑が強かったのだと小生は考えています。特に先行した欧州の製造業は、悪く云えば「バスに乗り遅れるな」、よく云えば「リスクを取らないと成功の芽を失う」といった感覚だったのではないでしょうか。

それが、2013年にGEが、AM方式で先行していたイタリアの航空エンジン部品メーカーAvioを43億ドルで買収してからは、「やっぱりこの方向は間違っていない」という確信に替わったようです。今ではドイツのIndustry 4.0戦略の中核テーマの一つにまで格上げされています。
http://www.plattform-i40.de/sites/default/files/Report_Industrie%204.0_engl_1.pdf

では今後、世界の金属加工の生産方式は一挙にAM方式に切り替わるのでしょうか。小生はそうは思いません。むしろ棲み分けが進むと見ています。事実、先行導入した欧州や米国の金属部品製造業でも、全面切り替えの前触れというより、従来方式のほうが向いている領域と、AM方式のほうが望ましい領域を見極めて展開しているようです。

先に触れたGEでは、新潟県刈羽郡にあった操業62年のバルブメーカーを2011年に買収して、今ではGE オイル&ガスの刈羽事業所としてAM方式による生産を立ち上げようとしています(その試行錯誤の様子が先日のNHK総合「NEXT 未来のために」で放送されていました)が、課題も色々と明確になっているようです。
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2015062719SC000/

例えば現時点の3Dプリンターで製造できる寸法精度は0.1ミリ程度に留まりますが、顧客の要望に応えるためにはその10倍、100倍の加工精度が必要とされます。逆に熟練の職人ならば、3Dプリンティング後の熱処理による膨張を予想して製造時の値をあらかじめ微調整することも可能だそうです。

こうした実用的なノウハウが貯まることで、先行してAM方式を導入したGEなどは最適な生産方式を組み合わせて、顧客要望により的確に応えていく体制が出来上がるというわけです。

言い換えれば、「そんな海のものとも山のものとも分からない技術なんぞ糞食らえ」とずっと拒否している日本の大手メーカーたちは、知らない間に世界の趨勢から大きく取り残されようとしているのです。そしてある時(かなり痛い目に遭ってから)、彼らもAM方式の意義と性能向上に気づき、急遽かつやみくもに生産体制を切り替えようとするでしょう。

その際、彼らは地方の下請け加工メーカーの生産方式の転換(または追加)まで指導してくれるでしょうか。地域の金融機関は、まだまだ高価な金属3Dプリンターの導入に便宜を図ってくれるでしょうか。過去の超円高の際の行動を見る限り、そうした思慮深い行動をしてくれる大手メーカーや金融機関はごく一部に過ぎないと考えざるを得ません。

きっと大半の大手完成品メーカーは単純に、自らの設計内容を変え、その3D-CADデータで生産してくれる大手Tier-1部品メーカーに生産委託するでしょう。そしてそのTier-1(もしくはTier-2の)部品メーカーはモジュール部品をAM方式で一体成形するだけで、下請けに出す度合は一挙に減る可能性が高いと推察されます。

もしかすると一部の大手完成品メーカーは、自ら3Dプリンターを導入して内製化する方向に走るかも知れません。外に発注するのは、従来方式で生産するほうが有利な部品だけにするのです。

そうした動きが急に始まる場合、先に触れたAM方式の、精度に関する課題等を克服する時間的余裕がなく、品質問題が急増することも予想されます。思慮のないメーカーだと、(新方式のノウハウが貯まるまで)従来方式に一旦戻すことを宣言するなど、かなりの混乱が生じかねません。

いずれにせよAM方式へのシフトが本格化すると(その割合は誰にも分かりません)、今までの方式に磨きに磨きを掛けてきながら大手メーカーの海外生産シフトに苦しんできた地方の下請け部品メーカーは、さらに生産額を減らすことになりかねません。地場の金属加工業者の中には死活問題となるところも出てくるでしょう。

だからこそ地方の中小加工メーカーの関係者や、地場の金属加工業を支援する商工会議所や金融機関の方々には、このAM方式に関する動きに目を光らせておいて欲しいのです。できれば皆がドタバタと動く前に、先見性のある加工業者に薦めて、(GEの刈羽事業所のように)金属用3Dプリンターを先行導入させてノウハウを貯めるように促して欲しいのです。その際に必要なら、高価な金属用3Dプリンターを導入できる体力をつけるため、合併・統合も躊躇すべきではありません。

日本のモノづくりの重要な一部が急死しないようにするため、できることは幾つもあるはずです。

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「ペヤング」のブランド力を示した販売再開

ペヤングのソース焼きそばが市場に再び現れるようになりました。インスタント麺「ペヤングソースやきそば」を製造するまるか食品は、全面的に休止していた商品販売を再開しました。まずは首都圏から開始して順次地域を拡大する予定だそうです。当面は主力のペヤングソースやきそばのみを生産するとのことです。

主なスーパーでは昨日から棚に並びましたが、そばから買っていくコアなファン消費者の姿がニュース番組で放映されていたようです。ネット上にも「ぺヤンガー」と呼ばれる強烈なファンの喜びの声が渦巻いているようです。

正直言って部外者にはピンときませんが、ぺヤングは消費者の間に一貫したブランドイメージが浸透しており、従来からコアなファンが多いことで知られています。あのプラスチック製パッケージのレトロ感が「たまらなく好き」というファンも多いのだそうです。

大半のスーパーではぺヤングが生産中止の間、他のメーカーの製品を増やして代替していたのですが、また元に戻す動きが出ており、それだけ「ペヤングソースやきそば」のブランドは強いということです。まだ入荷する数量が限定されているため、特設コーナーでの売り出しをあきらめたというスーパーの声もありましたから、大した人気です。

そもそもの発端は約半年前の12月2日、Twitter上で「ペヤングからゴキブリ出てきた」とのつぶやきが写真付きで投稿され、拡散したことです。ペヤングを製造するまるか食品によると「混入の経緯は不明」ですが、ゴキブリに加熱処理が施されていたことが明らかになり、製造過程での混入の可能性も否定できないとして、当該商品以外を含む全商品の生産中止・自主回収に踏み切ったのです。

ただそこまでの経緯が多少もたついており、同じ時期にゴキブリらしき虫の混入事件が発覚しながら素早い対応でむしろ好感を獲得した日清食品と比べて批判されたのは事実です。しかしながらその際の叩かれ方に業界では同情が集まったり、「ぺヤンガー」間での販売再開を待ち望む声がネットで盛り上がったりと、不思議な現象だったのを覚えています。

販売中止から今回の再開に至る一連の騒動はある意味、「ペヤングソースやきそば」のブランド力の強さを示す機会になったのかも知れません。

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IoTとGEに日本企業はどう立ち向かうのか

6月4日(木)にNHK総合で放送された「NEXT 未来のために」は「アメリカ発 新産業革命の衝撃 岐路に立つ日本の製造業」。小生の追いかけているテーマでもあり、非常に興味深く観ました。

あらゆるモノからデータを集め、効率化やコスト削減を目指す、製造業の新たな革命「IoT」で先行するアメリカの巨大メーカーGEの動きに日本はどう向き合うのか、密着取材したものです。

GEが進めるソフトウェア(というよりIoT Platformサービス)「Predix」を用いた新産業革命に日本の製造業が持つスキルは最高の資産になるとGEソフトウェアのビル・ルー副社長は語っていました。

まずは日本企業ユーザーを開拓し、その実際のデータを取得することが一つです。千葉県成田市にある日本貨物航空は、費用の40%を占める燃料費に頭を悩ませていましたが、自分たちの企業規模では専門のアナリストをおいて分析する余裕や1社だけで解析ソフトを開発するわけにもいかないと手をこまねいていました。

そこへアプローチしてきたのがGEでした。「Predix」を売り込みにやってきたのです。実際にGEには台湾の航空会社・エバー航空での実績がありました。実際のデータを基にGEが分析した結果、飛行経路を変更することで収益の改善につながったのです。日本貨物航空は、GEのソフトウェアの活用を前向きに検討することを決めました。

一方、技術を持つ日本企業が、GEの傘下に入ったり、提携関係を模索したりとその対応が迫られています。GEが日本の中小企業の優れた技術を発掘し、活用しようと動き出しているのです。幾つかの実例が紹介されていました。

一つ目は石油プラントなどで使う特注のバルブなどを作っている、新潟県刈羽村にある操業62年の金属加工会社。比較的最近、GEの傘下に入り、トップにはGEの社員が派遣されています。どうやら、GEの狙っている新産業革命でポイントとなるadditive manufacturingの実践の場として選ばれたようです。

しかし同社は今、金属用3Dプリンターを使うにあたり問題を抱えていました。仕上げの熱処理で変形するため、設計図通りのものができないというものでした。そこで設計者は熟練の技術者に相談を持ちかけました。熟練者の勘を頼りに、熱処理でどれほど縮むのかを考慮して設計図を見直すことにしたのです。GEが期待する熟練技術の技です。こういうのを褒めながらも飼い殺ししてきた日本企業が多い中、GEは本気で活用するつもりです。

2つ目は、京都市内にある近畿レントゲン工業社。歯科用のレントゲン装置を主力製品とする社員30人の会社です。レントゲン装置の肝となるX線の発生装置の小型化技術を得意としています。高い成長が期待できない国内市場で価格競争にさらされ、悩んでいました。

そんな時、GEが企業の高い技術をホームページ公募していることを知り、販路拡大を期待して応募したのです。GEの社内で技術を使いたいという声が出たので、GEの社員が会社を訪れました。GE側は「技術を盗むのではなく利用したいだけなので心配しないでほしい」といいますが、企業側としては不安をぬぐえないようでした。

最終的に技術を提供するときにどこまで開示してどこを守るのかをきちんと社内で決めておく必要があると担当者は語っていました。この心配は外資系だからしてしまうのでしょうが、GEのように倫理性の高いグローバル企業なら大丈夫です。中国や韓国の企業だと倫理性がないので絶対ダメですし、たとえ日本企業でも倫理性がないところはダメです。

さて、日本はこれからも世界の製造業をリードしていけるのか、このIoTの流れについていけなくなればその立場も危うくなります。番組の最後に日立の人が登場して、「GEの動きは全く怖くない」と言い切っていました。日本が得意とする製品の品質や信頼性をベースに、(GEのように手広くではなく)自分たちが得意で強い事業領域で勝負をするというのです。正しい考え方です。実際問題として、いくら日立でも得意な社会インフラ系以外はGE・シーメンス等に対抗するのはしんどいでしょうから。

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韓国の反日は根が深すぎて手をつけようがない

6月5日(金)にフジテレビ系で放送された金曜プレミアム「池上彰 緊急スペシャル 反日・韓国特集」は不思議な番組でした。情報は与えるのですが、分析が中途半端なため結局、なぜ?が大半の視聴者には分からないままだったと感じます。

「日韓基本条約締結から50年という節目の年!」との触れ込みが示す通り、本来なら隣国で国交樹立から50年というタイミングでは様々な祝典の催しがあってしかるべきですが、両国間ではまったくそうした雰囲気ではなく、両国の首脳ですら会談をしたことがないというザマです。なぜそうした事態になっているのかを冷静に考えてみよう、そのためには相手国の事情をよく知らないと、という至極まっとうな発想から企画が始まったはずの番組です。

主なトピックは次の3つでした。(1)日韓最新情報を解説、(2)なぜ韓国人はそこまで日本が嫌いなのか?(3)なぜ反日だったのに日韓国交正常化したのか?

(1)日韓最新情報を解説」→新聞などを読んでいる人には当たり前の内容ですが、今の人達は読まないですから、こうした整理が必要なのでしょう。

・日韓基本条約の締結から50年の記念の年なのに、いまだ首脳会談が行われていない異常事態!→それまで両国の首脳のいずれかが代わる度に行われていたのに、安倍首相・朴大統領の組み合わせになってからはゼロ。確かに異常なのです。

・朴槿恵大統領が語った「日韓首脳会談」を行うための条件とは?→首脳会談の開催に条件を付けること自体が、友好国ではなく敵対していることを象徴していると思いますが、「慰安婦問題を中心に『謝罪せよ』と韓国側が相変わらず要求していること」が原因ですね。日本側はもちろん条件なしでの会談を求めていますし、これが国際的な良識ある対応です。

・今年、韓国が注目しているのは、安倍首相が「お詫び」をするかどうか。→戦後70年になる今年に発表する「総理大臣談話」について、自分たちに向けた『お詫び』の言葉が盛り込まれるかを韓国民とマスコミが注目しているのですね。安倍首相にはそのつもりはないでしょうし、既に度々繰り返してきた『謝罪』を繰り返すべきではありません。未来に向けての自国民の方向を示すためにも、米上下両院での演説で使った『痛切な反省』が適切な表現です。

・日韓首脳会談が行われるために両国にとって何が必要なのか?→戦後の日本は、中韓がゴネるとその場を収めるために「謝罪」や賠償代わりに金を掴ませてきましたが、それが彼らを助長させ、国家の関係をより複雑・険悪にしてきました。もうそんなことはやめにしなければいけません。それで日韓首脳会談が行われなくとも、日本にとっては何の問題もありません。いずれ韓国が困って頭を下げてくるまで待てばよいだけです。

(2)なぜ韓国人はそこまで日本が嫌いなのか?→テレビ東京やNHKの番組では何度も分析している内容ですが、改めて(在日韓国系の力が強いといわれる)フジテレビがこうした内容を伝えようとすることが珍しいし、意義深いのかも知れません。

・韓国人の日本に対する最新世論を調査!日本を嫌いな理由をランキングで解説。→ダントツに2つの理由が他を引き離していました。「慰安婦などの歴史認識問題を日本が謝らないこと」と「独島(日本名・竹島)を日本が自分の領土だと主張していること」です。いずれも韓国側の一方的な言いがかり的主張ですが、これを繰り返しマスコミが煽り、「日本人は韓国の主張を無視している、つまり我々を侮辱している」といった調子で、自らの怒りがエスカレートしているのです。

・学生時代からの反日教育、小学校から高校まで存在するという「独島部」の活動とは?→これがこの番組で唯一「へー、知らなかった」という点です。大半の学校の普通のクラブとして(歴史研みたいな感じで)、「独島が韓国に所属しているということを学ぶ」ためのクラブ活動です。そしてそれを学校および国家が推奨しているのでしょう。ちょうど中国で共産党の青年部会に所属するように、米国の地方で(特別に裕福でない家庭の子息が)共和党の活動に参加するように、エリートになるための登竜門の一つになるのかも知れません。これこそ韓国らしいところです。

・「反日」の原点は建国当時の憲法にあった!?第二次世界大戦中に日本に抵抗するために中国に出来た「大韓民国臨時政府」。しかし、その実態は?→これは面白いポイントなのですが、いかにも突っ込み不足でした。建国当時の憲法に明記されているのが「三・一運動」です。それと関係づけて語られていたのが中国で設立宣言された「大韓民国臨時政府」(その初代大統領は大韓民国の初代大統領になった李承晩)です。この「臨時政府」は実質的には数ある当時の反日組織の一つとして中国政府から援助されていましたが、一度も日本と戦ったことはなく、いわば「建国神話」なのですが、番組ではあまり明確には解説されていませんでした。

(3)なぜ反日だったのに日韓国交正常化したのか?→端的に言って互いに「本音では仲良くなりたいと思っていたわけではないが、メリットのほうが大きかったし、断ると米国の機嫌を損なうので、ビジネスライクに付き合おうと考えた、ということです。現在の事情とそれほど変わっているわけではないですね。

・国交正常化のカギは現在の大統領“朴槿恵”の父親“朴正煕”元大統領。→当時の朴大統領が日本との国交正常化を決断したのです。その理由は上記の通りです。

・朴正煕大統領と日本には深いつながりがあった!!→そう、彼は実は日本の将校だったのです。満州帝国の軍官学校(士官学校)に志願入隊し、卒業後は成績優秀者が選抜される日本帝国陸軍士官学校への留学生となり、日本式の士官教育を受けました。帰国後は満州軍第8師団参謀として対日参戦したソ連軍との戦闘に加わり、内モンゴル自治区で終戦を迎えています。つまりバリバリの親日エリート一族の「期待の星」だったのです。

・日韓両国にとって国交正常化を結んだ理由とは?→日本にとっては、その直前に公海上で操業していた日本の漁船が韓国に拿捕されて(その過程で殺害された漁民もいたそうです)韓国に連行され、刑務所に放り込まれるという事態が幾つか起きています。国交がないため釈放の交渉すらできなかったのです。いわば日本海で操業する漁民全体を人質に取られた格好です。それに加えて朝鮮戦争がエスカレートする中、沖縄をベースに中国・北朝鮮連合軍と戦う米国としては、何としても日韓両国の関係正常化&国交樹立を促す必要があったのです。

一方、韓国は元々農業国であり、工業化で先行していた北朝鮮に対抗していくためには、何としても経済発展を進める必要がありました。しかしそのための巨額の社会投資を賄うだけの内部蓄積はありません(朝鮮戦争のせいで、なけなしの内部蓄積をほぼ吐き出し切った状態です)。日本と本当に国交正常化したいわけではなかったのですが、日本から賠償金をふんだくれると冷静に判断した(日本通の)朴大統領は、反対する閣僚や政治家に圧力を加えて、半ば強引に国交正常化の交渉に突き進み、最終的に調印したのです。

そしてその「実質的賠償金」と、それに続く日米両国からの経済支援をもとに、「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を達成したのです(つまり日本の援助金がその大きな要因なのです)。なにやかや言ってもこの大統領がいなければ韓国は未だにOECDに加盟もできずに最貧国のままだったかも知れません。いわば(シンガポールのリー・クワン・ユー首相と同じ)「国父」なのですが、この歪んだ国ではそうした正当な評価を得ることは難しいのかも知れません。

こうした近代史・現代史をしっかり理解したうえで、バランスの取れた議論をして欲しかったのですが、さすがフジテレビ、ほとんど深掘りはしません。最後には池上さんがかなりミスリーディングな発言をしました(わざと?フジにそそのかされて?無知で?)。「東日本大震災の時、一番最初に助けてくれたのは韓国人と韓国の救助犬なのです」といった趣旨です。全く知らない人が聞いたら「何やかや言ってもやっぱり隣国、いざとなれば頼りになるじゃない」と誤解した日本人視聴者が多かったと思います。でも実態はかなり異なるようです。

本当に真っ先に駆け付けようとしたのは台湾の救助隊ですが、時の民主党政権が中国に余計な気を使ったのか、許可が下りずに2日ほど足止めされたのです。韓国が派遣した先遣隊はたった隊員5名・救助犬2匹だけです。その後の本隊100名余りも含め、彼らは本格的な捜索活動をしないまま引き揚げています。一体、何をしにきたのやら(本当にやったのは、放射能汚染の範囲などの現地調査と在日韓国人が不利益を被っていないかの調査だけ)。

それ以上にひどいのは、その年の9月、ACL準々決勝第2戦で「日本の大地震をお祝いします」という横断幕がスタンドに掛かった事件です。ここまでくると、この国民の品格に関する疑惑は確信に替わります。
http://koramu2.blog59.fc2.com/blog-entry-814.html

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「駆け込み寺」を運営する日本一の尼さん

5月30日(土)に放送されたテレビ東京系「Crossroad」(小生、この番組も結構好きです)は尼僧、戸澤宗充(78歳)さんをフィーチャーしていました。もう感動モノの人生です。こんなに他人のために懸命になれる人生って、観ていて羨ましいほどでした。

全国各地の寺や講演会で説法をしてまわる活動の一方で、12年前に私財を投げ打って作った「駆け込み寺」を運営。彼女に助けを求め、夫からの暴力や家族の問題などで心身に傷を負った女性たちが駆け込んでくるのです。その人たちや震災で苦労した子供たちに文房具などをあげるための資金を(寄付以外に)集めるために、朝早くからおにぎりを作って街頭で売ったり、ランチのお店を運営したり、東奔西走とはこのことです。この人、本当に体が丈夫です。

もともとは2児の母親であり普通の主婦だった彼女が、出家して人々を救う活動を始めた理由は…。この道を選んだのは、彼女自身もまた暗闇に迷い込んだ経験があったからです。33歳の時、二男を出産した2日後に、最愛の夫が交通事故で突然他界。全く生きる気力をなくした彼女は何度も自殺を考えたそうです。でも周囲の人々に助けられながら懸命に2人の子どもを育ててきたのです。

そして46歳になった年、長男が成人したのを機に一念発起し、「今度は私が人助けをしたい」と出家したのです。なんと凄い行動力でしょうか。

そして説法で全国を飛び回る中、聞こえてきたのは、家庭内暴力や身内の死などに苦しむ女性たちの悲痛な叫びだったそうです。そんな女性たちを救いたいと、平成の駆け込み寺「サンガ天城」を作ったのです。半端な額ではないですが、ほとんど自己資金で賄い、家族や周囲の人達は猛反対だったそうです。

いつでも大勢の女性が駈け込んできても大丈夫なように、布団が30組も用意されているそうです。料理をするのはボランティアの人達と、駈け込んで厄介になっている女性たち。本来は一泊数千円の有料ですが、実際には大半の人が着の身着のままで逃れてくるので、持ち合わせがないのです。

それにしても食材や光熱費だけでもすごい金額になると思います。それをひねりだすのは寄付と戸澤さんの活動です。ボランティアの中には昔、戸澤さんにお世話になったことで恩返ししたいという方もいます。観ていて、ついもらい泣きしちゃいました。

駈け込んだ女性のなかには、いつのまにか姿を消す人もいれば、ずっとお世話になる方もいるそうです。それにしても意外と中高年の女性が大半なことには驚きました。多分、夫の暴力にずっと耐えてきたけれど、息子・娘が独立したのを機に逃げ出す決心がついたということなのでしょう。やりきれない話ですが、こうしたどうしようもない男性がまだ少なくないということなのですね。何とかならないものでしょうか。

それにしても戸澤さんの毎日は全て人のためで尽くされ、ご自身のためには一瞬たりとも使われていないといっていいでしょう。人のために尽くすことが生きがいになっているというのは何と素敵な生き方でしょうか。並の人間にはできないことを軽々とやってのけるからこそ、この方は輝いて見えるのですね。

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GEが今、GEキャピタルを手放す理由

GEが長年の懸案、GEキャピタルの売却を公式に発表した。そのスケールもインパクトも例外的だが、意図はこれ以上ないほど明確である。


今年の4月上旬、米GEのジェフリー・イメルトCEOは金融事業から事実上撤退するという大胆なリストラ方針を正式に表明しました。GEキャピタルとして知られる世界有数の金融機関で、その保有資産たるや5千億ドルという途方もない金額です。巨人・GE全体の売上の3~4割を占める巨大ビジネスであり、利益ベースでは半分近くを稼いでいるというのが実態です。
http://www.gereports.com/post/96727111405/ge-boosts-focus-on-growing-industrial-core-with

こうした超巨大企業による主力事業の切り離し・売却というのは、日本では似たような事例がほとんどないので、これがどれほどすごいことなのか、一般の人にはなかなかピンと来ないでしょう。例えて云えば、シャープがテレビを中心とする家電事業を売却するようなものでしょうか、しかも経営が左前にならないうちに。

海外では巨大企業におけるこうした思い切った事業ポートフォリオの組換え事例が、10年に一度程発生します。例えば農薬と種子・バイオテクノロジーの世界的リーダー企業である米モンサントは、主力だったPCBなどの汎用化成品を思い切って売却しています。IBMが 中国のレノボにパソコン事業部門を売却した事例は有名ですね。通信機器大手ノキアはかって携帯電話メーカーとして世界首位でしたが、スマホで出遅れてサムソンに抜かれた時点で携帯電話事業を手放し、通信設備事業に集中しています。

ではGEの業績には何か問題でもあるのでしょうか。その点で云えば、特段切羽詰まった問題があるわけではありません。昨年期は増収増益で、今期も同様の見通しだそうです。でも敢えていえば、グラフを見てお分かりいただけるように若干の伸び悩みを示しているといえば、そう云えます。
http://www.statista.com/statistics/263828/revenue-of-general-electric/

ただしこの図体になると、多少の新製品ヒットなどでは増収にはほとんど効かず、特定事業部門で多少の増収があっても全体としてみるとほとんど影響はありません。しかも2011年から2013年に掛けてメディア大手のNBCユニバーサルを、2014年には家電部門をエレクトロラックスへ売却していることを併せて考慮すると、それでも売上微増を続けていることは大したものだと言わざるを得ません。

では何がGEをして、これほどの主力事業の切り離しを決断させたのでしょう。当然、金融事業に第一の理由があります。ある種のとてつもないリスクを抱えているからです。それは2008年のリーマン・ショック時に顕在化しました。GEキャピタルが瀕死の状態に陥り、ひいてはGE全体も深刻な状態になったことを覚えている諸兄もおられるでしょう。

当時、GEは150億ドル規模の増資を実施してこの危機を乗り切りましたが、このうち30億ドルの優先株はウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが引き受けました(のちにGEが買い戻し)。そして多くの米大手銀行と同様、GEキャピタルもまた、債務に対する600億ドルにも上る政府保証を受けてようやく存続できたのです。

その後も金融部門の利益は伸びず、負債額は簡単には縮小せず、今現在でも同社の負債は約33百億ドルに上るとされています。米金利がじりじり上昇気配を示す一方で新興国経済に変調の兆しが見られる中、いつまた大きな経済ショックが起こり、悪夢が蘇らないという保証はありません。

ではなぜ今なのでしょう。実はリーマン・ショック直後はもちろん、過去数年の間に何度も、資本市場関係者からは「GEはGEキャピタルを売るべきだ、でも無理だろう」という提言的な批判記事が出ていました。しかしながらそうしたコメントを裏付けるようにGEは金融部門を保持し続けてきました。ずっと売上で40%前後、利益で半分前後を稼いできた部門を手放すことがどれほど難しいか、想像に難くありません。

しかし昨年のアニュアルリポートでは遂に「金融部門は当社の中核ビジネスではない」というコメントが掲載されるに至ったのです(つまり今回の発表は全く唐突ではありません)。これで売却の方向性は決まったことは外部にも分かりました。問題はその踏ん切りをつけるタイミングであり、きっかけでした。

ヒントは、イメルト氏は過去にも似たような行動を起こしていることです。2007年にプラスチックス部門を、そして先に触れたように2011年から2013年に掛けてはメディア部門を、昨年には創業事業である家電部門を、それぞれ切り離しています。前任者のジャック・ウェルチ氏は「中性子爆弾・ジャック」の呼び名があったほど苛烈なリストラ実行が目立っていましたが、イメルト氏にはそうしたイメージはありません。しかし実態は違います。彼もまたウェルチ氏に劣らない「リストラを躊躇しない経営者」なのです。

ただしウェルチ氏のように単純に「業界1位または2位」以外は手放す(といいながらもNBCや家電部門・金融部門を残していましたが)という「ポートフォリオ経営」に徹しているわけではないようです。むしろ少しずつグループの事業ドメインをはっきりさせて理想の形に近づけるべく動いてきたというのが事実のようです。その過程ではウェルチ氏同様の「業界1位または2位」などの原則も掲示していましたが、重きを置いていたのは全体像であり、そのための投資の原資を賄う一助にすべく、全体像に必要のない部門を売却してきたという、実に長期観点での戦略経営をしてきたのがイメルト氏です。

そのイメルト氏が「今がその時だ」と考えた理由はおそらく3点あります。その第一は、「今が金融事業の売り時だ」という判断でしょう。

リーマン・ショック後、GEキャピタルは資産の切り売りを着々と進めてきたため、そのバランスシートは縮小と同時に相当な改善を既に果たしたと見られます。そうした売り物に「磨きを掛けた」状態に持ってきたうえで、今は米系・中国系を中心に世界の金融業界が「いい出物がないか」と探し回っている、一種のバブル状態です。これこそGEにとっては長年待ち焦がれた売り時の到来です。実際、GEキャピタルの大幅な事業縮小策の発表時には同時に、米投資会社のブラックストーンや米大手銀行のウェルズ・ファーゴに不動産関連資産を265億ドルで売却することが公表されました。

第二の理由は、昨年に決着がついた、仏重電大手アルストムのエネルギー産業向け事業をめぐる争奪戦での勝利です。独シーメンス・三菱重工業の日独連合との熾烈な争いを制したことで、元々世界トップの航空・運輸・医療向けに加え、電力・ガス向けでも圧倒的な世界トップの座を確定させたのです。要は、「自分たちは世界の製造業の王者だ」という誇りを強めると共に、GEキャピタルの売却によって生じる収益の落ち込みを埋める見込みが立ったのです。

「製造業だとか言いながら金融部門に食わせてもらっているんじゃないか」といった陰口はもう言わさないぞ、と悲願達成へ邁進する気分になったことは間違いないでしょう。ついでながら「業界1位または2位」というスローガンの徹底にも役立ちます。GEキャピタルだけは(大きいとはいえ)全米7位という中途半端な市場地位でしたから。

理由の第三は、同社の掲げるIndustrial Internet戦略の成果が見えてきて自信を深めたことでしょう。これこそ弊社がGEをウォッチしている主たる理由なのですが、今世界が注目するIoT戦略の先駆者として2012年11月に”Industrial Internet” Visionを発表後、新しいビジネスモデルにより顧客への価値提供の次元を上げると同時に、製造業の未来を変える試みを着々と進めています。

例えば航空機分野では、エンジンに備えられたセンサーや通信システムを通してエンジンの稼働状況と調子が刻々とGEおよび顧客の間でシェアされて、不調の前兆が把握され、航空会社における保守点検の優先項目やタイミングが調整判断されるところまで来ています。

この結果、GEがIndustrial Internet戦略を推し進める大型機器の製造業分野では、単なる機器の価格競争や人海戦術のサービス合戦ではなく、顧客のビジネスにとって付加価値をもたらす度合によって機器ベンダーの評価、ひいては将来のビジネス機会が変わってくる方向に変わりつつあります。それを主導しているのがGEなのです。しかもその仕組みを他のメーカーに外販し、新たな収益の柱にする体制まで整っているのです。

つまりイメルト氏がずっと狙ってきた、強く賢くたくましい製造業の代表選手に復帰する見込みが立った今、その足かせにしかならないGEキャピタルを抱えておく理由はもう存在しないということです。これほど明確な「なぜ今か」の答は他にありません。

ちなみに今後、GEが金融サービスを全く手掛けないかというと、そんなことはなさそうです。他の電機大手が実施している程度の、機器を売るためのファイナンス手段(産業向けローン、リース等々)の提供というオーソドックスなB2B金融サービスは今後とも継続されると見られます。

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