TPPにおいてISDS条項は制御できるのか

世上取沙汰されている交渉事項に隠れているが、TPPの本当の問題点はISDS条項である。妥結を焦るあまり、うっかり受け入れてしまうと、国の政策が振り回されてしまいかねない危険をはらんでいる。先進国を含む多国間協定にこの条項は相応しくなく、もし訴訟乱発を防ぐ歯止め策をきちんと構築できないのなら、むしろ排除すべきである。


安全保障関連法案の取扱いで支持率を急低下させた安倍政権が今、政権再浮上の鍵を握ると注力しているのがTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の妥結である。

この交渉においては日米2大国間の交渉が注視され、米国産のコメの日本への輸入拡大や日本製自動車部品の関税撤廃が懸案とされてきたが、7月24日に始まった主席交渉官会合では事務レベルの調整にまで進んでいる模様だ。残ったイシューの中では、医薬品などの知的財産の保護期間が主な対立軸とされている。

しかしこれらの報道に隠れながら、日本を含む参加各国により深刻な衝撃を与えかねない、全く別の論点がある。それがISDS(Investor-state dispute settlement=国家と投資家間の紛争解決)条項である。

これは海外企業を保護するために内国民待遇が適用されるもので、これにより当該企業・投資家が損失・不利益を被った場合、国内法を無視して世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターに提訴することが可能となるというものである。

この条項の危険性に関しては一部の専門家がずっと指摘しており、ネット上では散見されるトピックだが、一般にはあまり注目されてこなかった。

ここで注意を要するのは、ISDS条項というものは先進国と途上国が投資協定を結ぶ際に含まれることが多く、それ自体に問題があるどころか、むしろそれがないと先進国の投資家は安心して途上国に投資できないという必須条項だ。日本も過去に数多く途上国との間で締結してきており、特段何の問題もなかった(だから何の心配もないという向きもあるが、それは締結相手の違いを無視する暴論といえる)。

しかしながら、これが多くの先進国を含む多国間協定であるTPPで適用されると、元々固有の社会・経済制度が確立しているために別の問題を引き起こす。特に国際的辣腕弁護士チームが数多く存在する訴訟大国・米国が絡むと、一挙にややこしくなるのである。

何が問題なのか。端的に言うと、社会的要請に基づく国の規制に足かせをはめられる形となってしまうことである。新規の規制導入だけでなく、既存の規制や制度そのものが米国の特定大企業にとって不都合である場合には訴訟が相次ぎ、やがて機能不全となる可能性すらある。

例えば、米国の大メーカーが日本で生産する製品に含まれる成分や機能特性が、消費者に健康被害や物理的危険をもたらす可能性が高いことがTPP成立後に分かったとしても、米企業からの訴訟を恐れて日本の監督官庁は規制に踏み切れないかも知れないという話である。薬でも食品でも、建材でも雑貨でも家電でも、皆同じである。

この条項の導入に最も強硬に反対してきたのは豪州である。その懸念には裏付けもある。1993年締結の豪州・香港投資協定のISDS条項に基づいて、フィリップ・モリスの香港法人が豪政府に補償の支払いを求める国際調停手続きを起こしているのである。喫煙抑制を目的に2011年に成立した「プレーン・パッケージ」法(たばこ箱からロゴ表示などの宣伝色を一掃)など、一連の豪政府の規制措置が同社の利益を不当に侵害しているとの主張である。

また、この条項は拡大解釈を許しやすく、訴訟を起こす側の戦略が巧妙だと、制度そのものを変質させる事態すら想定できる。

例えば遺伝子組み換え食品のように日本が明確に禁止しているものですら、グレーゾーンにあるものを規制対象としようとすると、損害を受けたとして米国企業から訴訟を起こされる可能性があり、やがては実質的に規制できなくなるかも知れない。

事実、2012年に発効した米韓FTAはISDS条項を含んでおり、その結果、米国企業からの訴訟を恐れて遺伝子組み換え(GMO)穀物を排除できなくなった韓国の学校給食市場には、米国産GMO食品による学校給食が始まろうとしているそうである。

ではそんな一見理不尽とも思える訴訟がなされた場合にどう処理されているのか、国際投資紛争解決センターに提訴された訴訟案件の実態を見てみよう。

1994年にアメリカ、カナダ、メキシコの三国間で締結された北米自由貿易協定はISDS条項を含んでおり、その後米国企業がカナダとメキシコの両政府を訴えたケースは36件もあり、請求棄却はわずか6件に過ぎない(ちなみに米国政府が訴えられたのはわずか15件で、敗訴はゼロだそうだ)。決着したケースのうち米企業が賠償金を得たのは6件、アメリカ企業の敗訴はないとされる。

和解の場合も米企業が事実上勝訴する内容が多いと言われている。なお、仲裁廷の実態に関しては必ずしも一方的な内容とは限らないことを示すスタディもある。http://www.hamamoto.law.kyoto-u.ac.jp/kogi/2012/2012seminar/zemiron_isds.pdf

こうした諸々を勘案すると、米国企業に有利な実態があるということは否めないのではないか。

しかしながらウィキリークスが今年はじめに暴露したTPPの投資家条項の最新バージョン( 2015年1月20日付)に関して、「曖昧な規定であって企業を優先する姿勢に変わりはない」として、ニューヨークタイムズが今3月に批判記事を載せている(面白いのは、「外国企業が米国政府を訴訟するだろう」と反対している点である)。
http://www.nytimes.com/2015/03/26/business/trans-pacific-partnership-seen-as-door-for-foreign-suits-against-us.html?_r=0

この5月には、Roosevelt Instituteのチーフエコノミストでノーベル経済学賞受賞者、Joseph Stiglitz氏が、米議会の指導的立場にある人たちに「確かに米国は国際訴訟では負けていないが、アンフェアな条項であって企業のみ得をして米国民にとってよくない」として反対するよう手紙で要請している。
http://www.rooseveltinstitute.org/sites/all/files/JEStiglitz%20Trade%20Letter%205.18.15.pdf

実は2013年11月に既に、訴訟の乱発を防ぐことを条件に、ISDS条項の導入については事務方の交渉で合意している。しかしその歯止め手段について具体的な詰めが行われないまま来ており、この終盤にきて再度注目を浴びそうな気配なのである。

漏れ聞こえる報道によると、1)申立期限を一定の年数に限る、2)明らかに法的根拠がない申し立ては迅速に却下する、3)条項適用の場合には情報を公開し手続きを透明化する、といった内容が現在の検討事項だという。これで国際訴訟に前がかりになっている米企業および弁護士に対し何の歯止めになると交渉事務方が考えているのか、何とも理解しがたい。

有効な歯止め手段なしに、こんな危ない条項をどうしてもTPPに含めたいのは、理不尽な訴訟で将来の投資先国から弁償金を奪おうと舌なめずりしている悪徳企業か、環太平洋を股にかけて大型の訴訟フィールドを広げようと躍起になっている多国籍法律事務所くらいだろう。

もしこのまま有効な歯止め手段が見つからないのなら、たとえ事務方で一旦は大枠に合意したとしても、日本は米国の良識派や他の参加国と手を結んで、TPPからはISDS条項を排除すべきである。ISDS条項が必要となる先進国‐途上国間の投資協定は、TPP決着後に個別の2ケ国間で結べばよい。
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OB/OG会にて考えたこと

昔勤めた会社のOB/OG会に出席した。新入社員時代から数えると35年ほどになるので、比較的最近会っている一部を除き、随分と皆さん、(自分を含めて)変わり果てた姿になってはいたが、さすがに昔の面影を残しているものだった。

話が盛り上がる頃には年代と性別を反映した話題にそれぞれ集中していたようだ。

大半がサラリーマン人生の男性陣は、定年退職と再就職。年齢的には難しいはずながらも、当人の業績や評判、それに昨今の景気回復もあり、概ね順調に再就職できているようで、実に喜ばしい状況だった(数年前とは大違いだ)。

少数派ながらも出席してくれた女性人は子育て(一部は既に孫育て)、そして一部はパートの仕事との両立の大変さ。でも立派なお母さん振りを発揮していると感じた。こちらの話もなかなか面白かった。

小生とごく一部の独立派は逆に質問責めだった。コンサルとは何をするのか、(零細ながらも)事務所経営の大変さ(完全な休みがなかなか取れないことなど)、儲かり具合、等々。今さら独立することを考えている人間はいないだろうが、隣の芝生は青く見えるものらしい。

しかし小生の頭を占めていた関心事は全く別事だった。(直近の仕事のことを除くと)子育て真っ最中を含む若い世代に対し我々以上の世代が、負ではなく正の遺産として、何を残してやれるのか、ということだった。あと10年かそこらの現役期間の中で何ができるだろうかと。

残念ながら我々の少々上である団塊の世代は最後の逃げ切り世代として、多大な借金しか残していきそうにない。かといって我々「谷間の世代」は迫力不足、力不足と言われている。何とか再就職でほっとするばかりでなく、次の世代にとって役に立つことをやって引き継ぎたいものだと、酔いの回る頭で考えながら帰宅した。

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廃棄家電に見る、愚かしき人間の哀しさ

7月2日(木)に再放送されていたBS世界のドキュメント「廃棄家電の悲しき行く末」(原題:E-Waste Tragedy)を観た。少しは予想していたとはいえ、やっぱり環境的もしくは人権的に凄まじい現実を知らされただけでなく、我々先進国の人間にとっても恐ろしい事態になっていることも教えられた。

アメリカやヨーロッパの家電製品が大量に不法投棄されるガーナから番組は追及を始める。その廃棄ルートをたどっていくと、我々は欧米各国でリサイクル制度が機能していない現実にぶちあたる。

パソコンなど、家電製品の廃棄量は年間 5000万トンにもなる。その多くが途上国で不法投棄され、家電に含まれる有害物質が環境を汚染し、健康被害を引き起こすことも。ガーナでは中古品として売られた家電が壊れてゴミとなり、子どもたちが金属を取り去っていく光景がみられる。彼らが数年後、数十年後に公害で体が動かなくなっていても不思議はない。

リサイクル制度が整うヨーロッパでも廃棄品の3分の2が正式ルートに乗らず、適正に処理されないというのが現状だ。

最もリサイクル率の悪いスペインでは、不況のために若者が廃棄家電を盗み、転売できる部品だけ取り外して残りは空地に捨てられていた。フランスでは、リサイクルを行うはずの企業が廃棄物を斡旋業者に売り、それが中国に渡って処理されるというルートと組織が確立していた。彼らと政府・NPOとのイタチごっこはまだまだ続きそうだ。

中国では公害も深刻だが、さらに厄介なことが起きていた。重大な事故につながりかねない。
劣悪な作業場で取り出した中古ICチップを、新品と偽って流通させているのだ(さすが中国人らしい)。

ICチップは、あらゆる電子機器(もちろんコンピュータにも)、管理システム、飛行機、原子力発電所にも利用されている。それなのに中古の粗悪品が検査された新品として売られているのだから、いつ誤作動してもおかしくない。ICチップの表示改竄も行われており、不良品を使用した結果、電子機器の内部の部品が爆発したケースもある。

この偽造品と正規品とを、見分けることに大変な時間と労力が掛かってしまうことも現実とんでもないことだが、安いからと中国製の横流し品を平気で買い付けることは、とんでもない事故を引き起こして、結局企業の存在を喪わせてしまうかも知れないのだ。しかし、そんな愚かしい行動をするのもまた人間なのだ。

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再生する中央アジアの息吹が感じられた

「井浦新 アジアハイウェイを行く」の第三弾、「中央アジア 再生への道」を観た。今回の舞台は、旧ソ連からの独立後25年目を迎えた中央アジアを俳優・井浦新氏が自然体で巡ってくれた。

ウズベキスタンで出会ったタクシー運転手の家族、カザフスタンで出会った建築現場で働く労働者、キルギスの市場で出会った娘の嫁入り支度をする母親。いろんな人たちに「25年で変わったもの、変わらないもの」を彼は問い続けた。

建設ラッシュが続くカザフスタンの新しい首都・アスタナは(以前にも他の番組で観たが)、急成長中の都市らしい姿だった。街自体のエネルギーがほとばしっていて(前回のアゼルバイジャンと通じるところがあろう)、それに惹かれて周辺の地域から集まってくる人々の「明日に期待する」熱気が伝わってきた。黒川紀章氏がグランドデザインを考えたという建物群は圧巻で、よくも悪くも未来都市の映画のようだ。

しかしもっと凄かったのは天山山脈の麓に広がるキルギスに、独立後に誕生したという巨大なバザール。アジアハイウェイを渡ってきた品々がここで取引される。ここは現代のシルクロードの要所、巨大物流拠点になりつつあるのだ。井浦氏が規模にあきれて「バザールというより、一つの村ですね」と言っていたが、本当だ。コンテナを積み上げて店とバックヤードにしてしまうという構造もユニークで、感心した。

一番心を打たれたのは、ウズベキスタンの小学校。独立後にできたこの小学校では、ロシア人、ウズベク人、ユダヤ人が同じ教室で机を並べる。「この町はどんな宗教の人にとっても居心地がいい」と語る地元の人が誇らしげだった。世界中が他の宗教に不寛容になっている現代、シルクロードの要衝の街には多様な文化を認めあう寛容な精神が息づいていることに一息つけた。

再生・成長のスピードとやり方は3国ともまったく違うが、少なくとも旧ソ連に征服・抑圧されていた頃を懐かしむムードは全く感じられなかった。いくら生活が大変でも、やはり自由というものは人間にとって何にも代えがたい有難味なのだ。

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ドイツ、見習うべきところが多い工業大国

7月13日に放送された「未来世紀ジパング」は「池上彰2Hスペシャル!"知られざる注目国"」の第一弾、「ヨーロッパの"主役"ドイツ」だった。幾つもの示唆があり、興味深い番組だった。

最初は「世界で一番行きたい」名所にも数えられる「ロマンチック街道」。その中核は中世の街「ローテンブルグ」。世界中から年間200万人の観光客が訪れ、日本人の観光名所となっている。ノイシュヴァンシュタイン城の姿はワーグナーのCDなどでよく見たことがあるが、香港ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとされているそうだ。「ロマンチック街道」というネーミングと観光スポットを線で結んだ戦略がとにかくうまく当たったということだ。

“失われた街”といわれたドレスデン。美しい古都だったドレスデンは終戦間際の1945年2月、無差別爆撃を受け、街の80%以上が焼失、2万とも10万とも言われる人々が死亡したのはよく知られている。この古都に根差すのが高級時計メーカーA.ランゲ&ゾーネ。無差別爆撃で工場が破壊され、共産化による接収・国有化を乗り越え、ベルリンの壁崩壊後に再建。波乱の歴史に翻弄されながらも見事に世界最高峰の技術を復活させたのだ。製造工程のこだわり具合は見ものだった。特に完成品を一旦組み上げてから再度バラし、洗浄後に塵のない部屋で再度組み立てる、という徹底度には目を見張った。

次はドイツの一大産業、自動車。世界の高級車市場で販売台数トップのBMWでの新車発表会、新車引き渡しなどを観ていて、ワクワクするような“ブランド”戦略に感心した。1台当り利益で見ると、日本のメーカーではトヨタが最高で27万円、他は10万円台前後。それに対しドイツの各メーカーは軒並み40万円以上。まったく同じ産業とは思えないくらいの差だ。

時計と同様、やっぱりブランド力の違いというのは大きいと改めて感じた。価格戦略と併せてマイスター制度がそのブランド力を支えているという解説もあった。日本人は「いいものを安く」と考え、ドイツ人は「いいものであれば高くても買ってもらえる」と、ベースの考え方が大きく違うというのがここで教えられることだ。

ドイツはGDP世界4位、日本は3位。しかしその労働時間は、日本の年間労働時間より300時間以上も少ない(日本も随分減ったのだが)。番組ではAdidasの社員に密着し、同じオフィスで働く外国人、日本人の目から見たドイツ人の働き方を見せてくれたが、要は密度の違いということのようだ。その分、休日には店が開いていない、自宅への持ち帰りも少なくない、などのネガティブな側面も紹介されたが、やはり日本人から見ると大したものだと感心した。いや正確には羨ましいという感覚か。

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故障続きでも可愛い愛車、シトロエン

車が故障した。運転席側のパワーウィンドウが完全に下りたまま、少しも上がらないという現象である。したがって、この暑いのにエアコンが利かない。矢も楯もたまらず、ディーラーの整備部門に持っていった。

週末にせっせと作業を進めたお蔭で何とか「宿題」を終わらせ、せっかく空いた時間だったが、リラックスどころか、ディーラーのショールーム(むしろ寒かった!)で診断待ちと整備担当者との相談に3時間ほども費やす羽目になってしまった。

小生の車はシトロエンC5というタイプで、前々から運転席側のパワーウィンドウに弱点があった。スムーズに上がり降りせず、何度かスイッチを押し直さないといけないことはしょっちゅうだった。しかも昨年のこの時期にユニット交換したのに、この夏、再発したのである。

南欧系の車は電気系統に弱みがあるといわれているが、どうやら当たっている。この先、梅雨空の下もしくは炎天下にどこかに遠出(最近はめったにしないが)した際にこの症状が出たら悲惨だと考え、急いでディーラーに駈け込んだ次第である。

しかも一旦持ち込んだ直後は再発せずに、整備担当者から「現象が起きないとどこが悪いのか診断できません」と言われて、引き取ろうとしたのである。自宅に戻ろうとした直後にもう一度、運転席側の窓を一番下まで下げたら再発したので、再びUターンしたというおまけまでついた(そのせいで余計に時間が掛かった)。

国内とはいえ部品取り寄せも必要なので(日本国内で大量に売られた車種じゃないため)、車はディーラーに置いて、電車で帰ってきた。お蔭でカミさんは歯医者などに電車で行く羽目になったとこぼしている。そういえば先々月にはバッテリーが死んでしまい、交換したことも思い出した。

こんなトラブルに時々見舞われながら、相変わらずシトロエンに乗り続けている。今のC5で3代目である。どのシトロエンも何らかのトラブル箇所の癖があった。2代目はいきなりエンジンストップという厄介な癖があったものだ。それに比べれば窓が上がらないくらい、大したことではないと思えるから不思議だ。ドイツ車や日本車に乗っている友人に話すとあきれかえるようだ。

愛好者なら分かるのだが、一旦乗ってしまうと、なかなか他の車に乗り換える気にならないのが、シトロエンの魔力である。特にC5にはハイドロニューマチックという特殊なシステムが使われており、乗り心地が特上なのである。
http://matome.naver.jp/odai/2139573679513578901

兄がメルセデス、義姉がミニクーパーを乗っていたので、乗り比べたことがあるが、シトロエンC5の圧倒的勝利だった(個人的感覚だが)。道路の継ぎ目を拾っての振動がほとんど体感されないのだ。遠出したときには疲れ方が全く違う。この違いは体験している人間にしか分からないだろう。多分、次もシトロエンに乗り継ぐことになるだろう。

他の細かい部分については日独の車にはかなわないだろうが、この基本点にかけてはダントツなのである。こうしたとんがり具合も小生の好みに合うのである。

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新国立競技場計画の破綻と“ごまかし”

東京五輪・パラリンピックのメイン競技場となる新国立競技場の建設計画。抑制されたはずの建設コスト見積もりにも、建設完了後の収支計画の説明にも、明らかなごまかしがある。


2520億円に膨れ上がった総工費に対し財源確保の見通しはいまだに立っていない。1000兆円という空前絶後の負債を抱える国家でありながら、財政再建に取り組むどころか、不必要な巨額赤字をなお積み上げようとするのは世界中のもの笑い以外の何物でもない。

しかし見直しを求める世論を無視するように、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)有識者会議が建設計画を了承したことに、各方面から批判が渦巻いている。

主な批判の論点は当初予算の倍近い金額に膨れ上がったこと。確かに当初の想定が大甘だったことは間違いない。

審議委員だった安藤忠雄氏は「コンペの条件としての予算は1300億円であり、応募者も認識しています」とコメントしており、当時の審議委員の一人であった建築家は「委員にはコスト見積もりを精査するようには求められなかった」とインタビューで述べていた。

つまり、建設コストの根拠がいい加減なままデザインを決め、基本設計や実施計画を詰めてみたら倍に膨れ上がったということだ。プロセス自体に問題があるとしか言いようがない。

これはまさに東京五輪向け整備に関し、小生が従来から指摘してきた懸念が現実化している事態だ。
http://www.insightnow.jp/article/8089
http://www.insightnow.jp/article/7900

無策のまま最悪の事態に至ることを避けるため、この問題に関し4つほど関係者の「ごまかし」を指摘しておきたい。

1.最新の建設コスト見積もりに潜むごまかし

当初見積もりとの食い違いに関するJSCの今回の説明にはごまかしを感じる。建設計画の了承を発表した際にJSCは、当初予算から倍増した理由を次のように説明した。資材や人件費の上昇で350億円、消費増税分で40億円増、さらにアーチ2本で建物を支える「キールアーチ」というデザインの特殊性によって765億円増、と。

まるで途中から「キールアーチ」になったような説明である。しかし途中から環境条件が変わってしまった資材・人件費の上昇や消費増税と違い、「キールアーチ」のデザインは五輪が決定する前から分かっていた条件である。

もし「このデザインでは予算1300億円に収まるのは初めから無理なんです」と言いたいのなら、何としてもデザインを変えるべきだったという肝心の結論も伝えるべきだろう。

もしくは「このデザインでは建設経験が世の中にほとんどなく、正しいコストの見積もりが限りなく難しいんです」と言いたいのなら(建築家の幾多のコメントを拝見する限り、こちらが真実に近いだろう)、今回示されている「2520億円」という総額もまた信頼に値しないと言わざるを得ない。

しかも、この金額には五輪・パラリンピック後に設置を先送りした開閉式屋根の整備費や1万5千席の仮設スタンド設置分に加え、200億円超と見積もりされていた周辺整備費も含まれていない。これらを加えると結局、総額は3000億円前後になるのではないか。

しかしそれでは改めて批判が高まるため、今回は先送りした分の建設費などを除外して、一見コストが減額された印象を与えようとしたのではないか。実に姑息なやり方である。

2.運営後の収益計画におけるごまかし

今回JSCが発表した収支目論見では、開閉式屋根を設置した場合という条件付きで、収入40億8100万円、支出が40億4300万円、締めて3800万円の黒字と試算している。この微妙な黒字額からは、いかにも無理矢理に黒字にした印象が強い。弊社が時々頼まれる事業見直し時に、担当部門がこんな事業計画案を出そうものなら、真っ先に疑って精査の対象となる。

既に各方面から、これらの収入の見積もりの甘さと支出の過小さを指摘されている。つまり、これは楽観シナリオに基づく見積もりだということである。

通常、事業計画の策定には悲観シナリオと(2つの中間に位置する)妥当シナリオも並行して検討し、その上で妥当シナリオの計画値を正式に上申する(楽観シナリオと悲観シナリオの予測数値は添付資料に回されることが多い)。楽観シナリオに基づく数値だけを提示するJSCのやり方は、ごまかし以外の何物でもない。

ちなみに、この収支計画には完成後にかかる修繕費が以前より多少増額して約1046億円と計上されているものの、50年間に必要な大規模改修費は別枠扱いとして、収支計画に組み込んでいない。これもまた「ごまかし」である。

しかもその年平均21億円という修繕費はまだまだ随分と過小だと言わざるを得ない。専門家の指摘によると、JSCが収支計画の前提としている開閉式の屋根というものは非常に故障しやすいものらしい。

実際、大分銀行ドームは前年の故障に応じて2011年に大規模な改修工事を終えたものの、2年後の2013年に再度、故障によって屋根が開いたままになり、大分県は予算措置に往生したそうである。また、豊田スタジアムは、多額の改修費と維持費を理由に今年度から屋根を開けっ放しにしている(開き直った措置だが、問題が判明した時点で現実的な対処をしたといえる)。

これらのスタジアムでの改修工事費は5~15億円掛かっている。建築費がこれらの10倍以上掛かる上に、特殊構造となる「キールアーチ」に対応した新国立競技場の開閉屋根の改修工事となれば、100億円前後に上るのではないか。新しいうちはともかく、稼働後20~30年経てくれば故障が頻発することは避けられない。

ここで今ある情報に基づき妥当シナリオを想定してみよう。

建設当初の数年間は可動式の屋根ができていないため赤字になるとJSCはいう。毎年数~10億円程度の赤字としよう。

数年後に300億円ほどの追加費用を掛けて可動式屋根を追加設置、その後仮に20年ほど幸運にも故障なしに運用できたとして、既に見た通り楽観シナリオの下でギリギリの収支である。実際には1~2億円程度の赤字は避けられないのではないか。

その後は数年に一度の(しかも頻度は段々高まる)改修工事のたびに100億円ずつ吐き出すばかりか、故障期間は雨天時に使えない、工事期間は全く使えない、となれば収入はガクンと落ち込む。平均して毎年20億円近くの赤字を積み重ねることになるだろう。

こんな収支計画の事業をGOさせる経営者がいたら、お目に掛かりたいものだ。間違いなく負の遺産になろう。

3.納期に関するごまかし

見直しをしない理由として、関係者は「今から国際コンペをやり直して設計を詰めてから建設するとなると、2020年の五輪に間に合わない」という。安倍首相もこのため変更を断念したという。本当にそうだろうか。

まず、国際コンペをやり直す必要はない。デザインコンペは既に実施されており、ザハ・ハディド氏のデザインがどうしても予算内に収まらないということで失格するとしたら、次点とされた作品を選ぶのが筋だ(もちろん予算内に収まるという条件の下ですが)。

これから基本設計そして詳細設計、さらに実施計画を詰めると五輪に間に合わないというのは本当だろうか。まだ5年あるのだ。

ザハ・ハディド氏のデザインに基づく特殊な構造の場合にはそうかも知れないが、もっとまともな構造であれば、日本の建設業界の設計力・実行力をもってすれば十分可能ではないか(ただし、工事ピーク時前後には周辺のあちこちに臨時の資材置き場を設ける、などの工夫も必要となるかも知れない)。

JSCのいう「間に合わない」対象は本当に東京五輪なのか、かなり疑わしい。本当は政界・スポーツ界に隠然たる影響力を持つ森喜朗・元首相がかねてご執心の、2019年9月からのラグビー・ワールドカップ日本開催に間に合わない、ということなのではないか。安倍首相と菅官房長官は関係者を問い詰めるべきだ。

4.責任の所在に関するごまかし

下村文科相はデザインの審査委員長を務めた安藤忠雄氏に(先日の有識者会議を欠席したことに絡めて)「説明を求めたい」と批判している。当初見積もりが甘かったことに全ての責任を負いかぶせようという意図が透けて見えるものだ。確かに安藤氏に非がないとも思えないが、「第一級戦犯」ではなかろう。

本当に責任を取るべきは、過去に何度もあった見直しの機会に、当初のデザイン案をあきらめて基本設計を見直すという決断を先送りしてきた文科省とJSTの幹部である。とりわけ、最後のチャンスでありながら今また、見直しをせずに他に責任をなすりつけようとしている最高幹部の下村文科相の責任こそが重大ではないか。

改めて感じるのは、これほど「ごまかし」を重ねてでも関係者が基本設計の見直しに踏み切らないのには、よほどの理由があるのだろうということだ。

関係者や事情通は「国際的信用」や「無責任の構造」、先に触れた森・元総理への遠慮、などを色々と挙げる。しかしそれにしてもここまで政治問題化しながらも文科省とJSCが強引に世論に抗するのは、今一つ腑に落ちない。もしかすると我々の知らない巨悪の構造が隠れているのかも知れない。ジャーナリストの活躍を待つ所以である。

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今、ビジネス現場がドラマとしてホット?

ちょうどTVドラマの改編期で、新しいシリーズがどんどん始まっている。小生の家族の中では今、小生自身が一番集中的に録画したドラマを観ることができる。

今日はその初日として、なんと3つも新番組を観た。たまたまだが全部、ビジネス現場を描くものだが、舞台は随分異なる。

一つ目はTBSの「ホテルコンシェルジェ」。主演女優の名は知らないが、何度か観たことがある人だ。ホテルに勤めて何年かした主人公の女性が、ホテルの顔であるコンシェルジェに抜擢されて、理不尽なお客の要求に戸惑い悩みながらも成長する物語だと見受けた。その意味でこれはオーソドックスなビジネスドラマで、安心して観られるパターンだ。

二つ目はフジTVの「リスクの神様」。堤真一と戸田恵梨香のW主演のようだ。総合商社と電機メーカーの合弁会社でPL問題が発生し、危機管理室長として招かれた男と、そのPL問題の責任を取って降格人事に甘んじ部下になった女が、様々なリスク対策に活躍する話のようだ。これは新しいジャンルだが、結構リアリティがある。期待したい。

最後はTV朝日の「エイジハラスメント」。憧れの総合商社に入社することが決まって張り切っていた主人公が、希望していなかった総務部に配属されて、降りかかるトラブルに立ち向かう物語のようだ。若さと可愛さだけを持ち上げる男性社員の贔屓的扱いのため、却って職場で浮いてしまう戸惑いと、自分を成長させてくれる仕事を求める若い女性の怒りを、武井咲ちゃんがうまく演じてくれそうだ(娘は『合っていない』と冷淡ですが・・・)。そして『戦う!書店ガール』で好演した稲森いずみがなかなかいい役どころを演じている。

3つとも20代の女性が主人公のドラマで、舞台は違っても、日本の職場の問題点をそれぞれ浮き彫りにしてくれそうだ。それぞれ違った角度から楽しめそうだ。

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リピートされない観光地に輝く将来はない

小京都といわれる有名観光都市、K。一般人が勝手に持つ優良な観光地イメージと違って、実際に最近行ってみたばかりの若者の評判は芳しくないようだ。リピータのない観光地に輝く将来はない。

小生の娘は旅行好きの大学生だ。つい先日も友人と一緒に2泊3日でKを旅行してきた。帰京日に羽田空港に迎えに行った(何と甘い親でしょう)帰り路の車中で、楽しかった珍道中の出来事をあれこれと語ってくれた。

機関銃のように次から次へ出るエピソードが一息ついたところで、小生が運転しながら「そうか、そんなに楽しかったのなら、また行きたいだろう、今度は蟹が美味しい冬がいいぞ」と水を向けると、娘は即座に「もう行かない。あそこは一度行けば十分」と言うのだ。

意外な反応に驚いて理由を問うと、娘は幾つかKの良かった点(施設、ホテルと民宿での対応など)を挙げたうえで、「実は色々とがっかりした」ことを次々に列挙し始めた。

いの一番に挙げたのが、彼女たちが乗った市バス(正確には私鉄バス)運転手の態度の悪さだ。

当地のバスは、後方のドアから乗り込んで整理券を取り、前方のドアから降りる際に近くに掲示されている料金表を見て対応する料金を支払う方式だったようだ。乗り込み時に定額料金を払う市バスしか知らなかった娘たちは、当初はどういう料金方式になっているのか分からず戸惑ったそうだ。

同じように他の観光客らしき人が何人も、料金の支払い時に戸惑ってもたついていたそうだ。しかしその度に、バスの運転手は「頭を使え」などという悪態をつき、その声がマイク越しに車内に聞こえたというのだ。

彼女たちも最初は耳を疑ったそうだし、小生も信じられない気分だったが、彼女たちの思い違いではなく、何人もの人があからさまに馬鹿にされていたというのだ。

もちろんバスの運行が遅れることで利用者や会社から文句を言われるのだろうが、お客さんに対して使う言葉としてはあり得ず、無礼な態度以外の何物でもない。娘と友人は最初あっけに取られ、やがて非常に腹が立ったそうだ(ごもっとも)。

ちなみに、地元の人たちが文句を言っているコメントもネット上で数多く見つけたので、必ずしも例外的場面でもないのだろう。

その光景を話す娘はその時の怒りを段々思い出してきたのか、返す刀で地元の乗客にも非難の刃を向ける。「乗り合わせた大人たちは誰もその運転手をたしなめたりしないんだよ、ひどいよ」と。

小生は心配になり、つい「お前が運転手に文句を言ったんじゃないだろうね」と尋ねた。娘いわく、「ちょっと考えたけど、バスが混んでて、私たちは(バスの)後ろのほうにいたからね」。ちょっと残念そうだった(前にいたらやったんかい、うーむやっぱり親子だ)。

さらに地元の乗客を非難する娘の言葉は続く。「大体、地元の人は要領を分かっているんだから、教えてあげればいいんだよ。でも誰一人としてそんな親切な人はいなかったよ。冷たいよね」。

小生、なるほどと思いながらも、「Kくらいになると少し都会になってしまうので、他人に無関心なのかな」とKを弁護してみた。すると娘いわく、「でも東京でも横浜でも、あんなときには親切な人が一人や二人はいるもんだよ。こないだ行った台北だって、親切な人が一杯いたじゃない。京都や大阪でも、そんな場面が幾つかあったもの」と、自分の地元や少し前に行った有名観光地と比べる。

娘がさらに指摘したのは、Kの小売店や飲食店での愛想のなさだ。通り一遍の対応ばかりで全く心がこもっていない店ばかりだったそうだ(小生も以前に何度かKを訪れたが、地方都市なんてそんなものと思っていたので、感受性の違いは認めざるを得ない)。「じゃあ京都はどうだった?」と小生が尋ねると、「京都人はプロ。観光客への応対に抜かりはないよ」と褒める。

だから娘は将来も、京都や大阪は時々訪れたいと言う。でもKはもう結構だというのだ。若いリピータが来ない観光地、それは開設当初しか客を呼べない施設と同様、将来に暗雲が漂う。

そして娘は最近習ったばかりの用語も織り交ぜながら、Kという観光都市の問題点を鋭く突き始めた。「あの街は、観光地としての自覚と成熟度が足らないと思う。京都人は性格的に問題あるとかよく言われてるけど、観光地としての自覚があって、観光客には街じゅうで親切にするもん。肚の中で何を思っていても笑顔で丁寧な対応をしてくれれば、観光客は満足だよ」と(なるほど、成長したなぁ)。

結局、Kという地方都市はハード面では悪くないけど、ソフト面ではかなり見劣りし未成熟だということのようだ。バスの運転手については当りが悪かったとしか言いようがないが、その場に居合わせたバスの乗客の態度については弁護しづらいものがある。

小生はクライアントと実施した最近のプロジェクトで地方創生に取り組む事例について調べており、多くの地域で関係者が観光に力を入れて頑張っている姿を教えられた。しかしいくらホテルや役所が懸命に観光客を呼ぶ努力をしても、商店街の人々や交通機関関係者、そして一般市民におもてなし精神が欠如していては、観光客には不満が残り、リピータは増えない。

今回は娘が行ったばかりのKを例に挙げたが、実は小生も他の地方都市で似たような光景を幾つも見ている。観光関係者は地域ぐるみの対応を改めて考える必要があろう。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

文房具好きの聖地は魅力にあふれている

7月2日(木) に放送されたカンブリア宮殿は「東京・銀座で111年 進化を続ける文房具のテーマパーク」。ゲストは伊東屋社長、伊藤明(いとう あきら)氏だった。

文房具好きの聖地、銀座・伊東屋本店。今年6月に新装オープンし、現在の店の様子と商品、裏手にある別館(万年筆や地球儀などを集めた「大人の隠れ家」です)を併せて紹介してくれた。

伊東屋の魅力は、社員が間違いなく文房具オタクであること。ユニークな商品を揃えた品揃え、ずば抜けた商品開発力(PB商品も魅力的)、接客力(商品知識に基づく対応力)だ。調子の悪くなった万年筆を自分で直せる店員がいるなんて、びっくりだ(小生も伊東屋で万年筆を買ったことがあるが、修理はお願いしていない)。

明治37年に創業した専門店も、1990年代からのパソコンとプリンターの普及によって、主力の取扱商品が大きく変ったそうだ。さらにネット通販が登場し、文房具店を激減させた。いま伊藤氏は「ライバルはIT」と言い切っている。日本一の文房具専門店でも、もはや商品数ではAmazonに代表されるネット通販には勝てない。伊藤氏自身がAmazonのヘビーユーザーとのことで、その脅威をよく理解しているのだ。

そこで伊藤氏が狙うのが、「客が文房具と出会え、文房具と過ごせる店」だ。百貨店のように大勢の人をターゲットにした店作りは止めたという。売りたい商品をイメージし、店にあっても客が気づかずに通り過ぎてしまうことを避けるべく、旧本店に比べて品数を大幅に絞ったという。商品のフェースを見せるためだ。

また、文房具を体験できるように全ての筆記具の試し書きができるほか、グリーティングカードや便せんを店で実際に書いてもらうスペースまで作り、すぐに投函できるよう郵便ポストを店内に設置している。ネット通販に決してできない、リアル店舗ならではの「体験ができる」ことをウリにしているのだ。見事。

伊藤氏は「『品数が多い』ではなく『品揃えが良い』と言われる方が嬉しい」と言う。本店と別館の商品数は9万点に上る、日本最大級の文房具専門店だ。鉛筆なら10Bから10Hまで揃い、ノートの書き味まで試すことができる。万年筆を中心とする高級筆記具が1日に100本売れるのはこの店だけだろう。多分、日本全体の半分以上、いや2/3ほどになるのではないだろうか。

別館の「大人の隠れ家」には大小さまざまな地球儀だけを集めたフロアがあり、他では絶対味わえない感覚だ(小生の娘も「ここ行きたい!」と絶賛だった)。模造紙などの大きな台紙の種類も半端ではない。触って感触を確かめられるのもリアル店舗の強み。客が「ワクワクする」のも無理ない。

番組後半では創業直後から行われている、オリジナル商品の開発・販売について紹介された。いずれもデザインにこだわったもので、代表的な「オリジナル鉛筆」は消しゴム部分と本体を接合する金具を使わないので、一本の木のようにスッキリとした形になっている。

伊藤氏自身もデザインを勉強したため、デザインにはこだわりが強いのだ。メーカー製品のデザインが気に入らないと、伊東屋オリジナルでさらに使いやすさとシンプルなデザインでつくりなおしてしまうほどだ。10人ほどのデザイン研究所を中心にオリジナル文具の開発・制作が常に進んでおり、一部の開発商品が紹介されていたが、ぺんてると共同開発されている、サインペンを中に入れて使うカバーが魅力的だった。

司会の村上龍氏自身も万年筆の愛好家のようで、伊藤氏の万年筆コレクションには目を輝かせていた。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

北京のイトーヨーカドーにみる成功の復讐と失敗の本当の理由

WBS(ワールドビジネスサテライト)の7月2日放送、「激動中国への挑戦 イトーヨーカ堂苦戦のワケ」が示唆深かった。中国から撤退する日本企業が1200社になっており、北京に出店した日本のイトーヨーカ堂も、北京に9店出店して4店舗閉鎖撤退だというのだ。

事情についてはちょっと前に新聞報道されている。
イトーヨーカドー中国で苦戦、北京4店舗目を閉鎖へ
http://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201503050049

実はイトーヨーカドーは数年前までは中国で最も成功した日本企業の1社に挙げられるほど成功していたのだが、今や昔日の感がある。

中国で最も成功した外資系小売業
http://www.dfonline.jp/articles/-/6567
イトーヨーカ堂はなぜ中国で成功することができたのか
http://diamond.jp/articles/-/27992

そんな成功の絶頂にあったイトーヨーカドーが業績悪化に陥った理由は一体何だろう。

ヨーカドー関係者は「タイムリーに顧客満足度を得られなかったことが最大の要因」と語り、WBSの取材陣は北京市内での競合に押されていることを挙げている。成都のイトーヨーカドーから異動して北京の華糖ヨーカドー商業有限公司の副董事長兼総経理に就任した今井誠氏は、「北京ヨーカドーは価格戦争に入れ込みすぎたことで、企業としての発展が制約された」と述べている。

小生はWBSの放送中にヒントがあったように思う。苦戦するイトーヨーカドーの北京の店を尻目に、2つの店舗群が対照的に好調だ。北京を中心に急成長している「BHGスーパー」と、成都のイトーヨーカ堂店だ。

元中国国営のスーパー「BHGスーパー」のトップは、日本の西友を長く経験して転職した人物だ。日本流の工夫でイトーヨーカ堂を上回る成果を出していたのだ。しかも中国人スタッフの意見を取り入れながら、それを実行する部分で日本流の細やかな気配りを全面に出しているのだ。こうなるともう「おもてなし」は日本企業の専売特許ではないのだ。

一方、成功している成都のイトーヨーカドーは行列繁盛店だ。小生の記憶が正しければ、ここは反日暴動の際には暴徒に破壊された経験を持つはずだ。しかし今は中国人スタッフが中心になって店舗運営に磨きを掛け、常に新しい商品を提供し売り場を刷新しているのだ。今では日本含め全店最高の売上をたたき出している。

要は、この2つの成功例は商品政策・売り場構成には中国人スタッフの意見を取り入れ、どんどん新しい提案をしているのだ。そしてその接客の仕方においては日本流の細やかな気配りを忘れていないのだ。これが競合に打ち勝つための勝利の方程式だが、そのベースにあるのが現地スタッフの重用・登用だ。急速に移り変わる中国人消費者のニーズを正確に捉えられるのはやはり中国人スタッフなのだ。

それに反し、北京のイトーヨーカドーは一時の成功に奢ってしまい、それまでのやり方に固執し過ぎたのではないだろうか。「俺たちはこのままでいいんだ」と。そして細かい競合対策、価格政策に走ったのかも知れない。本当にお客様のニーズを捉え、実験的な試みを続け、仮説‐検証のサイクルを回すという仕事のやり方になっていないということだ。

そのどんよりとした内向き志向をもたらしているのは、幹部が日本人だけだという事実だ。つまり中国人スタッフの意見を重用する、彼らを幹部に登用するという基本的なことができなかったことが、中国人スタッフのやる気を引き出すことに失敗し、今の長期低迷という事態を招いているのだと感じる。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

ウォルマートの「ピックアップグローサリー」が注目の的

ウォルマートのドライブスルー専用スーパーがWBSでも紹介されていた。グローサリーピックアップは、オンラインから注文し、店では車から降りずにわずかな時間で生鮮品などを持ち帰ることができるドライブスルーだ。
https://vimeo.com/107608198

ウォルマートのグローサリーピックアップはアリゾナ州フェニックス郊外のチャンドラーに展開するスーパーセンター1店舗と、メサ地区にあるスーパーセンター2店舗など、現在計6店舗で行っているそうだ。

ユーザーはパソコンやモバイルからWalmart Pickup Groceryのサイトにアクセスし、ジップコードを入力。アカウント開設後に商品を選び、注文確定から2~4時間(店によって違うようだ)以降のピックアップの時間を指定する方式だ。

ピックアップの用意ができると連絡が入り、店ではピックアップ専用の場所からコードを入力すると商品が運ばれてくる。グローサリーピックアップに手数料はないが、ある金額以上の買い物をする必要がある(店によって異なるようだ)。

 ウォルマートは2011年4月、サンノゼとサンフランシスコで生鮮食品などの当日宅配サービス「ウォルマート・ツー・ゴー」と当日ピックアップを開始した。2年後には同サービスをコロラド州デンバーの一部店舗にも拡大。昨年9月にはアーカンソー州ベントンビルにドライブスルー専用スーパー「ウォルマート・ピックアップ・グローサリー(Walmart Pickup Grocery)」を初めてオープンした。ウォルマートではいずれもテスト展開としている。

Walmart Pickup Groceryはアマゾンを強烈に意識したサービスで、配達に2~3日かかる米国ではアマゾンよりも早く商品を入手できるだけに需要はありそうだ。日本では「出かけないで済むからアマゾンが人気なのに、出掛けてピックアップするんだったらスーパーで買い物するわよ」と相手にされないかも知れないが…。

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ジャンル : ビジネス

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