"意外なコラボ"と称された"全く意外でないコラボ"

8月18日に放送されたガイアの夜明けは『"意外なコラボ"が...これまでにない商品を作る!』と題して、メーカーの常識を覆すアイデアでヒット商品を連発する秘密や、それまでにないコラボによって新商品を生み出す現場を追った。

今年4月に全日空が開いた記者会見で、国内線エコノミークラス用に開発された新しいシートがお披露目された。登場したのはスキージャンプの高梨沙羅選手。身長152センチと小柄な彼女が、座り心地をアピールした。「体全体が包まれた感じで、腰もしっかり支えられている。一番驚いたのは、足が床に着くこと」。

実は航空機用シートの市場は、これまで独仏米メーカーの3社がほぼ独占してきた(航空機メーカーのお膝元にいるメーカーということ)。そのため、主に欧米人の体型に合わせてシートが作られていたという。

そこで全日空は日本の自動車シートメーカー最大手、トヨタ紡織とタッグを組み、日本人の体型に合わせたシートの開発に乗り出すことにした。同社は自動車シートではトヨタ車の8割を生産。コンパクトカーから高級車、レース用まで、様々なシートを開発してきた。そうした自動車で培ってきた技術を、航空機シートに生かそうというのだ。

全日空とトヨタ紡織がタッグを組み、3年間かけて開発した航空機エコノミー席用シート。今年5月の初フライトでお披露目されるまでの舞台裏を番組は伝えてくれた。ポイントは、従来の航空機シートメーカーが見逃していた幾つかの点をユーザー目線で改善したことだ。

まず、従来は平べったい構造だった背もたれシートを彎曲させ、背中を包むようにしたこと。これで背中の位置が安定する。次に前後の距離が近いため圧迫感があるエコノミー席ならではの問題である。背もたれの底を斜めにカットすることで、膝の先との間のスペースを広げたのである。

最後に、一番欧米メーカーが気にしないが、日本人などのアジア系の特に女性にとって悩みだった点の改善だ。普通に座った際に足裏が地面にぺったりと着かないため、先のほうのもも裏に圧力が掛かって、長時間では疲れるのだ。トヨタ紡織は自動車シートの開発でこのことを熟知しており、改善の目玉とした。5cmほどシートを低くし、小柄な日本人女性が座った際でも足裏が地面に着くようにしたのだ。

効果はてき面、乗客の女性たちには「楽だった」と好評で、全日空は他の国内路線だけでなく、国際線にもこのシートを採用することを決めたようだ。そしてトヨタ紡織は今後、このシートを航空機メーカーに売り込んでいくようだ。当然である。

それにしても、これが"意外なコラボ"だろうか。もし小生がトヨタ紡織から新規分野の開発を求められていたら、真っ先に航空機市場を提案したろう。むしろ今まで開拓しようとしていなかったとしたら、それこそ不思議な気がする。

確かにトヨタという盤石の顧客が控えているのは分かる。しかし同時にトヨタ相手の商売では収益は対して上がらず、シートメーカーとしてはきっと他のOEM(自動車メーカー)に売り込むことが事業拡大の道筋だったのだろう。

しかしそれも一段落したら、次に狙うのはもっと収益性の高い市場であり、その第一に挙げられてしかるべきは航空機市場である。その突破口が日系の航空会社であるのは凄くいいが、本丸はボーイングやエアバスなどの航空機メーカーであろう。

トヨタ紡織は新事業による事業収益拡大のシナリオを見つけたのではないか。
スポンサーサイト

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

中国の製造業・アパレルの街は混沌のさなか

今、中国のモノ作りに激変が起きているということは世界の多くのビジネスマンが感じている。安い労働力を武器にした従来の労働集約型産業が限界を迎えているのだ。

8月2日に放送されたNHKのドキュメンタリーWAVEは「激変する中国の製造業・アパレルの街で何が起きているのか」というタイムリーな番組だった。

この中国での異変が顕著なのが繊維・アパレル産業だ。事実、売上高20兆円、関連企業が1万社を超える、繊維・アパレル産業の本拠・青島(山東省)では、工場がカンボジアなどアジアの国々へ次々と移転し始めている。揺らぐ「世界の工場」の様子を現在進行形で伝えてくれた。

山東省の繊維アパレルの貿易額は前年比5.4%減。人件費・原材料価格の上昇、人民元高という逆風の中、経営者たちが生き残りをかけて「海外脱出」を選択。さらに、工場用地の賃貸や誘致の紹介業など非「製造業」に向かう経営者すら現れた。

しかしそれは地元産業の空洞化を一気に進めることを意味する。ちょうど日本が「失われた20年」の間に苦悩しながら経験したように。

今年の3月、全人代で李克強首相は「目標とする経済成長は7%、中国製造2025を実施し、製造大国から製造強国へ転換させる」と述べた。政府の産業構造改革プラン、「中国製造2025」では「我が国の製造業は先進国より劣る。大きいが強くない、質の向上と発展が急務」としている。正しい自己分析である。

デジタル工作機械、ロボット、省エネ、新エネルギー自動車、バイオ医薬品を育成する産業に指定し、労働集約型のものづくりを知識集約型のものづくりへと国ぐるみで脱却を目指しているのだ。

そんな背景で、7月初めに上海の株式市場で株価が暴落、上場していた企業の約半分の株が売買停止した。日本市場にも、そして世界の株式・債権市場に多大な「中国ショック」をもたらしたことは記憶に新しい。

カジュアルウェア製造「桜花」では日本のクライアントから持ち込まれた注文の検討に取り組んでいた。それと同時に、国内での販売を始めようとオープン前のデパートに子ども服のショールームを作った。桜花・王旭東社長は(日本への輸出だけでなく)国内販売にも乗り出そうとしているのだ。自己ブランドも作ることになるだろう。茨の道だが、正しい選択になる可能性も結構ある。

6月、中国有数の輸出基地の青島港は中国経済の更に厳しい局面を示していた。山東省政府が発表した統計によると4か月連続で前年比対日輸出が減少。

そんな状況を背景に政府が発表した、青島を大改造してハイテクやバイオを中心とした新たな先端産業の集積地を作ろうとする「ブルーシリコンバレー計画」。青島の工業地帯に衝撃が走った。

シリコンバレー計画の用地に含まれた寝具カーテン製造「保利」は政府のプロジェクトからも追いつめられている。工場を全て閉じるまであと半年。キ鋼威社長に残された仕事は従業員を選択すること。今後、国内に残すのは試作品を作る為のわずかな職人。苦楽を共にしてきた従業員の首を切る苦しみ、これも日本の多くの製造業が経験した「痛み」だ。

そして彼らが新天地として追い求めるカンボジアなど、アジアのより貧しい途上国での生産立ち上げの苦労が色々と紹介されていた。日本からはクライアント企業のデザイナーが厳しい品質要求を突き付ける。今の(カンボジアの)職人レベルでは特売品しかできないと断言され、新工場での収支計画が崩れる予感がひた寄せる…。

しかも急激な賃上げの波が今押し寄せようとしており、今後もさらなる賃上げが予想される。アパレルなど軽工業には、世界中どこにも安住の地はないのだと思い知らされる。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

ノンアルコールビールは「当たり外れ」の面白さ

久しぶりの「折角なのに惜しい!」シリーズ。今回はノンアルコールビール。数も増えて選べる楽しさも出てきたが、いまだに「何じゃこれ?」という商品も少なくない。あなたは何を基準に選びますか?


この夏の暑さは尋常じゃなかった。仕事が終わって旨いビールを飲めることへの感謝が自ずとにじみ出る季節でもあった。しかし外から帰ってもまだ仕事が残っている、またはランチ時に喉を潤したい、こんな時に強い味方がある。そう、ノンアルコールビールだ。

小生は比較的最近になってノンアルコールビールを買うようになった人種である。昔、ノンアルコールビールが登場した頃に何度かトライしたが、そのマズさに辟易し、ずっと避けてきたからだ。

しかしこの夏の暑さは異常だった。クライアントとの約束で抱えた作業を自宅で片付けているうちに、どうしてもビールらしきものを飲みたいという気持ちが収まらず、近所のスーパーに買い出しに出かけたのだ。

すると棚にはあるわあるわ、20弱種類ものノンアルコールビールの缶が勢ぞろいしていた。ほぼ全部買い込んで、数日かけて片っ端から試してみることにした。その際のことを報告してみたい。

ただし個別銘柄の味の評価は省く。なぜなら味覚は個人・体調によって相当違うので、小生がマズイ!と思っても、それを美味しいと思う人もいるだろうから(この件については後ほどコメントしたい)。

まず驚いたのは、メーカーが異なるのに缶パッケージがそっくりなのがあること(しかも大手同士である)。「ドライ戦争」時に(知らない?かなり昔です)似たような現象があったが、先行メーカーが訴訟をちらつかせて類似パッケージを止めさせたことがあった。それ以来ではないか。

消費者にとっては紛らわしくて困る。事実、小生も後になって「あれ、どっちの銘柄のほうがよかったっけ?」と混乱してしまい、もう一度買いに走って比べ飲みしたくらいだ。

次に気づいたのは、多くのノンアルコールビール銘柄が似たような味わいだったこと。しかも大手メーカーの製品の多くに共通するので、もしかすると製法が近いのかも知れない。基本となるバージョン(というの?)はいずれもちょっとボケた味に、小生には感じられた。今回のように飲み比べてみると、確かに少しずつ風味は違うようだが、それでも微妙な違いに過ぎないし、飲み終わった後の印象ではその違いすら分からなくなってしまうくらいだった。

大手メーカーは基本バージョンに加えて、さらに風味の違うバージョンを出している。柑橘系などの風味を加えたものが多かった(つまりビールの味からは離れてしまう)が、むしろ基本バージョンよりも飲料としては美味しいと感じられた。しかしこれまた皮肉なことに、メーカー間の違いは一層少なくなってしまうのだ。

それに対し、独立系メーカーの商品や海外メーカーの輸入品は、パッケージはもちろん、味の違いもしっかりと感じられた。個人的には独立系メーカーの商品は好きになれなかったが、海外メーカーの輸入品には美味しく感じられたものがあった。

後者の缶パッケージの説明をよく見ると、「アルコール分0.9%」とかなっており、「これじゃノンアルコールじゃないよ」と思ったが、缶パッケージのどこにも「ノンアルコール」の文字はなく、スーパーが「ノンアルコールビール」のコーナーに並べていたのが、小生の誤解を招いただけだ。

結論から言うと、小生はこの輸入品を追加で、まとめて買い込んだ。どうしてもその後に車を運転するとか、クライアント先に出掛けるとかがなければ、小生の場合、微量のアルコールで仕事が滞ることはないと判断したからだ(強引な理屈?)。

この結論が意味するのは、純粋な意味での「ノンアルコールビール」で満足できる商品には、小生はまだ巡り合えていないということだ。まだ発展途上だと言わざるを得ない。

ここで感じるのは、「ノンアルコールビール」という商品の立ち位置の難しさだ。全くアルコールを加えない製法で、ビールのテイストに限りなく近くて美味しいものという3要素を満足しなければいけない訳だ。それを同時に実現するのは、巨大なR&Dリソースを持つ日本の大メーカーでも、いまだに技術的に難しいようだ。

伝聞ではあるが、今後の開発方向としては幾つかの選択肢があるようだ。あくまで1)ノンアルコールでありながらビールのテイストに限りなく近いものを追求するのか、むしろ2)ビールのテイストに拘らずに「食事と一緒に飲めるノンアルコール飲料」という路線を極めるのか、または3)微量ながらアルコールを含ませることでビールのテイストを実現しようと考えるのか、である。メーカーの方々のさらなる努力に期待したい。

最後にお伝えすると、小生が思いっ切り「マズイ」と思った銘柄が数種類。いずれも「ビールテイストのノンアルコール飲料」としての前に、飲み物としてマズイ!と思った次第だ。家族と一部友人(何と迷惑な!)にも試してもらったが、同意見だった。

しかし不思議なことに、ネット上の評価では満点に近いものが見つかった。コメントを読んでも(遠慮がちに「引いて」いる1~2割を除いて)賛辞が並んでいたりする。仲間内のサクラ行為でなければ(?)、「個人の味覚や好みというのは随分違うもんだなぁ」と感心した次第だ。小生はあの銘柄は決して二度と買わないが…。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

テンポスバスターズ創業者は苦労人で人事の達人

8月20日 (木)に放送されたカンブリア宮殿に登場したのはテンポスバスターズ創業者の森下篤史(もりした あつし)氏。題して「会社は社員が活躍する舞台!“社員が変わる”驚きの企業再生術!」、実に面白い回だった。

飲食店向けの厨房機器のリサイクルを手掛ける「テンポスバスターズ」。飲食店の開業を志す人たちにとって欠かせない店として有名である。中古も新品も、開業に必要なものなら何でも揃う店で、その価格は驚きの安さ。テンポスを利用すれば、通常400~500万円かかると言われる開業費用が、およそ半額で済むという。しかも、単に厨房機器を買うだけでなく、開業の支援サービスまで受けられる。業績も右肩上がりに推移してきた。

創業者・森下篤史は大学卒業後、電気機器メーカーに入社。普通のサラリーマン人生を歩んでいた彼は、36歳の時に一念発起し食器洗浄機の販売会社を設立する。しかし順調だった売上はすぐに頭打ち。そこで森下は事業の幅を広げようと、回転寿司や英会話学校などの事業に手を出したが、その全てが相次ぎ失敗に終わったという。

失意の最中、何気なく見ていたテレビ番組がリサイクル会社の特集だった。それを観て、「こんなに儲かるのなら」と、食器洗浄機で見知っていた厨房機器のリサイクル事業を始めたのだ。これが当たった。どんどん事業が拡大し、店も増やし、一挙にダントツの業界トップまで上り詰めたのだ。

なぜそんなに一挙にトップになれたのかという村上氏の質問に対する森下氏の答えがふるっていた。「秘密なんかは何もない。業界の先輩たちはちょっと儲かるとすぐに自分の私生活の贅沢のために使った。私は事業拡大のために店舗を増やした。その違いだけだ」と。呆れ返るような話だが、実際にそうなのだろう。中小の私企業意識のままの同業経営者と、上を見ていた森下氏との違いだ。

テンポスにはユニークな人事制度が目白押しだ。テンポスの社内には高齢の社員があちらこちらにフルタイムで活躍している。実は、テンポスには定年が無く、60歳以上の社員が全体の1/3を占めている(これはこれで凄い)。社員が上司を通さずに、自分の行きたい部署・店舗の管理者に電話しOKが出れば、異動できる「フリーエージェント制度」や、欲しい他部署の社員をスカウトできる「ドラフト制」など。まるでプロ野球のような仕組みだ。

こんなユニークな人事制度を導入した森下氏には「自分の人生は自分で決めるもの」という信念がある。さらに驚くべき人事制度が4年に1度行われる「社長のイス争奪戦」。テンポスでは“社長”を選挙で決める仕組みまで導入しているのだ。…凄すぎる。

森下氏が今、一番注力しているのが飲食店プロデュース業務。名古屋を拠点に拡大してきた「ステーキのあさくまだ」が目下の対象。一時、180億円の売り上げを誇ったレストランチェーンだが、無理な出店と激しい競争の中で縮小の一途を辿り、年商は1/6近くにまで落ち込んでいた。

森下氏は、テンポスで培った飲食店経営のノウハウと、社員のやる気を引き出す人事制度を導入し、「あさくま」の再建に乗り出している。「ヤマンバ軍団」という女性マネジャーたちに大幅に権限を委譲し、リストラでも残った店を鍛え直させている様子が紹介されていた。森下氏と彼女たちの強い信頼関係が感じられ、この再生も期待できそうだ。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

ジョブズvs.ゲイツが体現したPC勃興期の波瀾万丈

BS世界のドキュメンタリーが、「名作」を8月19日(水)に再放送してくれた。「スティーブ・ジョブズ vs. ビル・ゲイツ」。何度か放映されていながら録画する機会を逃していたが、今回は気づいて録画できた。そして観て楽しめた。

同じ1955年に生まれ、時に対立しながらもパソコンの黎明期から飛躍的普及を牽引した立役者の2人の歩みをドラマチックに追ってくれた。実に魅力的な時代に巡り合った、人間臭いライバルの葛藤だ。

スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツは得意分野も性格も対照的だ。ハードのジョブズ、ソフトのゲイツ。ヒッピー対オタク(英語ではNerdだった)である。

AppleⅡで先行して成功、大金持ちかつPC業界の大物になったジョブズは、自らが催したイベントでゲイツらMSの幹部を下っ端扱いし、彼らの反発を買う。Mac用にOSを提供したりエクセルを納入したり協業関係にあったMSは1985年、Windowsを発表し、それをジョブズが模倣だと批判して以来、誰もが知るほど確執が続いた。

その後は片方が調子よくなると、もう片方が不調になるというシーソーゲームが続く。MSがWintelとして業界を席巻した頃、ジョブズは自ら招いたジョン・スカリーと、自分が育てたはずの部下たちによってアップル社を追われた、云々。しかしジョブズの復帰に伴い、2人は提携関係を復活(この辺りは昨日のことのように思い出せる)。

復活した(そして少しだけ人間的にまともになった)ジョブズに率いられたアップル社はiMacを始めとする革新的な商品を発表していき、破竹の進撃を開始するのである。その後の歩みは、経営の天才の名を欲しいままにする、ジョブズの神話化が進んでいく。

その歩調に合わせるように、既に超富豪になっていたゲイツは少しずつMSの経営に興味を失い、妻・ミランダと共に慈善事業家として第二の人生を歩むようになる。

土俵を違えた、そして大人になった二人にはもう一時の感情や確執に拘る必要もなく、あるカンファレンスの公開舞台でウィットに富んだ会話を楽しむ余裕さえあったことが分かる。感慨深いというのはこういった光景である。その数年後、癌に犯されていたジョブズは先にこの世を去った。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

ゲノム編集のインパクトとポテンシャル

ちょっと前から注目している新技術がある。ゲノム編集だ。色々と考えると凄いことになりそうだ。

7月30日(木)に放送されたクローズアップ現代でもこの注目の技術を採り上げていた。題して「“いのち”を変える新技術 ~ゲノム編集 最前線~」。録画してあるのを2度も観てしまうほど、実にインパクトのある内容だった。

和歌山県・白浜町で、京都大学と近畿大学が共同でゲノム編集をしたマダイを育てている様子が最初に映される。2014年春、受精卵の段階でゲノム編集を行ったのだ。

1年余りがたった今、同じ時期に生まれたタイの1.5倍の大きさ(体幅4.6センチ)になっている。目的どおり、タイは大きく成長しており、食品としての安全性が十分に確認できれば、3年後には市場に出したいとしています。

生き物の遺伝子を構成する4種類の「塩基」。それぞれの塩基は、特定のタンパク質などと結合することが分かっている。目的の遺伝子と結び付くタンパク質などを並べ、それを細胞の中に送り込むと、何万もの遺伝子の中から目的の遺伝子を探し出して結合する。これに遺伝子を切る物質を乗せておくと目的の遺伝子を切断し働かなくすることができる。こうして行うのがゲノム編集だ。

京都大学農学研究科の木下政人助教は「魚の品種を改良するのに偶然を待っていれば、100年とか200年かかります。ところがこのゲノム編集だと数年でできる」という。確かに。

国内ではほかにも、収穫量の多い米や腐らないトマト、養殖しやすいおとなしい性質を持つマグロなど、ゲノム編集を利用した品種改良のプロジェクトが始まっているという。

ゲノム編集はヒトに近い動物でも行われるようになっている。薬の効き目などを確認するために、研究用に飼われている小型のサル、コモンマーモセット。受精卵にゲノム編集を行い、免疫が働かない病気の状態を再現したのである。

実験動物中央研究所の佐々木えりか氏によると、マウスよりもヒトに近い動物なので、薬の効果をより的確に確認できるという。ほかにも糖尿病やがん、神経疾患など、さまざまな薬の開発につなげたいとしている。

番組ゲストの山中伸弥氏(京都大学iPS細胞研究所所長)によると、「このゲノム編集の技術というのは、私自身が基礎研究を始めてもう25年くらいになりますけれども、その中で出会った技術の中でも…一番すごい技術じゃないかなと思っています」とのことだった。

「今までの品種改良は、多くの部分は偶然に生じる遺伝子の変化、これに頼って長い年月をかけて少しずつ品種改良をしてきたんですが、今回のこのゲノム編集というのはもう狙い撃ちで、この遺伝子、この機能のこの遺伝子をこう変えて、そして自分たちの人類にとって役に立つ品質に変えようという、しかも短時間で。今までちょっと考えられなかったような技術ですから、研究者としてもいまだに驚きの気持ちでいっぱいです」。そうなんですね。

「5年ぐらい前に突然出てきたこのゲノム編集という技術は、どんな種でもどんな人間であっても、ネズミであっても植物であっても、魚であっても使えますし、効率が非常に高いんですね。…数十%の成功率を誇りますし、それから一番大切なのは、技術として簡単です。
非常に単純な技術で、簡単な遺伝子工学の知識のある科学者だったらもう誰でもできる技術ですから、本当にこの3つが簡単で成功率が高くて、いろんな種に適用できる、いろんな生物に適用できるという、この3つがそろっている技術というのは、ちょっとほかに今までなかったんじゃないかなと思います」と。

ここまで効果的な技術には期待したいのは当然だが、同時に倫理的な問題をはらんではいないのか。また、生物学的・遺伝的な操作をすることで、地球上の生物体系にとんでもないリスクの種をまくようなことにはならないのか。そうした面での検証も是非、お願いしたいものだ。

今回の内容はもしかすると、近いうちに読み返す(または観返す)かも知れないので、URLを以下に残しておくこととする。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3694_all.html

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

ビッグデータ分析とアルゴリズムの限界

最近、小生が関わっているプロジェクトで、ビッグデータ分析をどう使うかというテーマに頻繁に出会う。パソコンやスマートフォンによって、個人の行動がネット上に逐一記録されるデジタル化社会。膨大な個人情報から一定のパターンを読み取り、行動を予測する研究が各方面で進んでいるからだ。

例えば犯罪予防や医療の現場などで、“ビッグデータ”をコンピューターで解析して未来を予想しようという研究や実証実験が今、世界で動いており、その成果がさらに別のところで活かされている。

7月31日(金)に再放送されたBS世界のドキュメンタリーは「未来予測図~ビッグデータが読み解く世界~」(原題:Mapping the Future The Power of Algorithms)という、ドイツの放送局a&o bueroによる制作。コンピューターは人間の未来の行動を予測できるのか?という非常に興味深いテーマの番組だった。

番組ではインタビュワー&リポーターを勤める2人のディレクターのスマホに監視ソフトを埋め込み、その行動パターンを専門家2人が解析して将来の行動を予測する、という設定。その2人のディレクターはこの「未来予測」研究の最前線の動きを追って欧米の研究者や開発者にインタビューを重ねる、という趣向だ。

男性のほうのディレクターは米シリコンバレーに出張し、最先端の実地使用や実験、そして開発者を訪ねる。女性ディレクターはドイツを中心に欧州の研究者を訪問する。そんな役割分担である。

紹介されたのはほんの一部だが、例えば、犯罪が起きる確率が高い場所を予測するシステム、Predictive Police。通称PredPolである(米カリフォルニア州Santa Clara警察における。多分、IBMによる)。開発に携わった数学者のGeorge Mohler氏(Santa Clara Univ准教授)が解説していたように、過去の犯罪事例データを徹底的に解析することでパターンを浮き彫りにする手法である。効果は歴然だ。その前年から48%増加中だった駐車車両の盗難件数が15%も減少したのだから。

GoogleのFlu Trendというアプリ(インフルエンザの流行地域の予測)やスイス連邦工科大学での感染症の流行地域予測の研究(結局、航空NWの影響を正確に予測することがポイント)、身体データ収得デバイスによる病気の予兆を知ることでの健康管理(これは別件で少々調べたことがあるが、米国には多くのStart-upsが存在する)、“うつ”の兆候を知らせるアプリ(ボン医科大学のThomas Schlapfer精神科医が開発に関与)、購買分析・レコメンデーション(類似の背景・嗜好を持ったサンプル集団に特有の購買行動を素早く見つけ、適切な商品を推奨する)など、計算式・アルゴリズムを使った未来予想はすでに導入されていることも分かる。

ビッグデータ分析や未来予測で有名なKaggle社の創業者、Anthony Goldbloom氏の短いインタビューというかコメントもあった。「工場や機械化による便利さと同様、100年200年後の人々は、未来予測により受けるメリットに感謝するでしょう」と。実際、Kaggleのクラウドソーシングシステムを使い、多くのプログラマーや科学者が様々な課題に挑戦し、解決に向けて競い合ってもいるのだ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Kaggle

一方、批判も少なくない。ドイツ在住のEvgeny Morozov氏(”Smart New World”の著者)は「今の世界の仕組みが完璧だという前提で分析・予測するところが大きな問題であり、危険をはらむ」と警告する。なるほどと思わせる。

その意味でアルゴリズム・アプローチの限界を理解しておく必要があろう。人間が考えて設定したアルゴリズム以上の推測・予測はシステムにはできないということを。番組でも、2人のディレクターのうち1人はあまりに不規則な生活・行動パターンのため、将来の行動予測はできないと判断されたのである。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

シンガポールは戦略性で成り立つ企業国家

今年3月、「建国の父」リー・クアンユー元首相が亡くなり、この8月9日には建国50周年の節目を迎える。

8月3日に放送された未来世紀ジパングは『巨星墜つ・・・超優良国家!シンガポールの"表と裏"』。歴史的経緯や現代の制度など知っていたことはある程度あったが、改めてこの特殊な国を考えるいい機会になった。

今やシンガポールはアジア1の金融経済国家。シンガポールの一人あたりのGDPはアジア1位と日本、米国をも上回る。6世帯に1世帯が資産1億円以上という世界一の富裕国家である。

観光と金融、貿易がこの国の最大産業である(実は石油化学コンビナートも巨大なものがあるが、番組では触れていない)。したがってそれらの産業を支援する様々な制度・体制を築いている一方で、阻害要因をかなり強制的に排除している。その後者部分を番組では"裏"と呼んでいたのである。

観光にとって重要な体制の一つが航空会社であり、それを代表するのがナショナルフラッグ、世界一のサービスを誇るシンガポール航空である。番組ではその訓練の厳しさや行き届いた顧客視線を、日本の別の航空会社から転職した新人CAの目線で語らせていた。「常にエレガントであれ」と、歩き方から階段の昇り降り、タクシーの乗リ方時まで徹底指導しているのには恐れ入った。さすが世界一の評価を続けているだけはある。

観光にとっての大敵は疫病と犯罪。前者については徹底したデング熱対策により隣国・マレーシアより数段低い発生率がその効果を物語っていた。

後者に関しては“公共の場の風紀を守る”という国家戦略にもなっているのだが、小さなルール違反にも厳しく対処することで(様々な罰金で有名)、「この国は法規違反にうるさいし、へたに逆らうと仕事も生活もできない」と普段から思わせているようだ。

それに加えてさらに効果的なのは戸外の至る所に設置された監視カメラ。ただ、ここまで密集していると完全にマイノリティリポートの世界。我々の感覚だと、少々息苦しい。夜の繁華街をも国家当局が管理徹底しているのには驚いた。

番組では紹介されていないが、国際手配されている犯罪者やテロリストが入国しないよう、チャンギ国際空港には世界最高水準の水際システムが配備されている。また、あることで知ったのだが、同国の警察のIT装備は犯罪大都市・NY並みで、犯罪の予防・摘発に賭ける意欲は並大抵ではないことは間違いない。

金融の促進に関しては番組でも紹介があったが、株式取引税と相続税、住民税がゼロ、実質的な所得税は5~6%程度(日本ではそれぞれ概ね20%、50%、10%、40%)なのは凄いことである。世界から富裕層が殺到するわけである(だから一人あたりのGDPや世帯当たり資産が飛び抜けて高いのは当然なのである)。

最後に紹介された、官僚国家のための官僚選抜の厳しさ(小学校の時点での試験で決まる!)と、官僚に対する手厚い報酬は初めて知る内容だった。給料やボーナスは、固定給と変動給に分かれ、GDP成長率とも連動している。ある程度のポジション以上になると国家経営の企業の幹部にもなり、億円の単位の年収にまでなるそうだ。

もちろん優秀な人材を国家に奉仕させるためだが、裏を返すと「不正に手を染めさせないため」という明確な目的が透けて見える。ここが日本や中国より戦略性があるところだろう。

番組のコメンテーターの一人がいみじくも言っていたが、「シンガポールは国家というより会社」。効率を重んじ、利潤を生みだすことを目的としているので、ルール違反に厳しく、個人の信条やプライバシーの保護には限定的。まったくその通り。この体質に拒絶反応がない人にはとても清潔で住みやすい国らしい。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

新分野に挑む技術者魂を観た

7月29日に放送されたガイアの夜明けは「逆境の技術者~異分野への挑戦~」という、違う分野の商品をつくり人気を博している製造会社の話だった。2つの主ストーリーの間に挟まれる様々なメーカーの異分野製品も面白かった。

最初に紹介されたのは富士通の植物工場。ここの特徴は、もともと半導体工場であったこと、そして野菜を育てているのが元半導体技術者たちであること。海外勢に押されてリストラを余儀なくされ、半導体工場3棟のうち1棟を閉鎖して、野菜づくりに乗り出したのだ。

第一の工夫は、半導体事業で使っていたクリーンルームを転用すること。植物工場内にほこりを持ち込むことなく、限りなく無菌状態での栽培を可能にした。その結果、洗う必要がなく、新鮮な状態が長持ちするシャキシャキと美味しいレタスが育ち、しかも新鮮さが2週間続くという。高価だが人気のようだ。

もうひとつ半導体製造で培われた技術が採用されている。レタスを育てる液体肥料の与え方だ。半導体製造には多くの薬品を使う。その供給システムのノウハウを水耕栽培に応用した。数種類の液体肥料を、必要なときに必要な分だけ与えることができる。これが富士通の農分野でのノウハウの一部にもなっているようだ。

もう一つの柱を育てるための試行錯誤も続けた。最終的に狙いを定めたのは低カリウムほうれん草。ほうれん草400種の中から水耕栽培に適した6品種を専門家からアドバイスをもらい、実際に育ててみることとした。1ヶ月後、花が咲かず、最も生育がよかった品種を工場で育てることを決めた。カリウム含有量が少ないことで、ほうれん草特有の苦味がなく、生でも食べられる、ほうれん草となったのだ。

後半に紹介されたのは、サクラクレパスにシャープから転職した技術者、うね山氏。半導体レーザーや太陽電池などの生産技術に携わってきた。同社に存在する温度・気圧や湿度に反応して色が変わる特殊なインク技術を応用して新しい事業分野を開発することが期待されているのだ。

プラズマ加工技術は、半導体をはじめスマートフォンやテレビに使われる最先端技術だが、加工する製品に正しくプラズマが当たっているかを調べるためには、これまで特殊な計測装置で測るしか方法はなく、時間とコストがかかっていた。

そこにビジネスチャンスを見いだしたうね山氏は、特殊なインクを開発しプラズマの強さが色でわかる検査シールの開発を行っている。プラズマが強く当たるほど、色が濃く変色しる仕組みである。

何度かの試作と失敗を重ね、開発を始めて2年、待ち望まれていた商品化が決まった。これで簡単に安価にプラズマの状態を評価(検査)することが可能となり、製造業界全体の底上げに役立つ評価ツールとなる。商品名プラズマークは、1枚950円と安価で、既に数社への納入が決まっているとのこと。素晴らしい。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

最新記事
月別アーカイブ
プロフィール

austintex

Author:austintex
FC2ブログへようこそ!

カテゴリ
最新トラックバック
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR