日本への興味を増す中国人、中国から離れたい日本人

9月28日(月)に放送された未来世紀ジパングは「シリーズ"中国異変" 反日中国でなぜ?知られざる日本ブーム」。とても興味深い情報が満載だった。最近の中国といえば「抗日軍事パレード」「経済崩壊か?」といったネガティブなものばかりだったので、意外な中国の側面を教えてもらった気がした。

まずは日本のスーパー銭湯「極楽湯」が上海で人気を呼んでいる様子が紹介される。そしてそれに続いて「極楽湯」の運営法をそっくり真似した中国製のスーパー銭湯の様子も。でも似て非なる模倣店の状況とそれを偵察して、「これなら怖くない。でもこんなコピー店で極楽湯と勘違いして欲しくない」という「極楽湯」の現地責任者の力強い言葉。何となくほっとしてしまうのも日本人の性か。

そして「爆買いツアーの“仕掛け人”」の話。上海と日本を結んでいる豪華クルーズ船が2700人の中国人を乗せて向かった先は長崎市。彼らの最大の目的は、やはり買い物だ。しかし今、爆買いツアーに新たな変化が起きている。ドラッグストアでの彼らの買い物の様子を見ていると、ある特定の商品だけが飛ぶように売れていた。彼らは中国にいる“仕掛け人”のおすすめ商品を買っているのだ。その情報源とは、一人の若い女性ブロガーだった。

中国・上海には彼女のような「日本で何が人気なのか」を紹介する人気ブロガーが何人かおり、日本製品に埋め尽くされた自身の生活をブログで発信しているのだ。そしてそれがとても凄い数(54,000人!)のフォロワーを伴っており、それが日本ツアーでの爆買いにつながっているのだ。個人的趣味でやっているのだが、当然、日本のメーカーも放っておかない。その口コミ力に期待して、彼女たちに新商品を逸早く紹介しているマーケティング活動を行っているのだ。

最初はむちゃくちゃ不思議だったのが、中国の若者に絶大な人気を誇る日本人、山下智博さん(30歳)の話。見かけは大してぱっとしないし(失礼!)、日本では全く無名の人物だが、上海の街を歩けば写真をせがまれ、感動して泣き出す人まで現れるほどの人気ぶり。ほとんどアイドル並みだ。あるイベントに行くと、3人の警備員に囲まれるVIP待遇だ。数百人のファンが追っかけてくる異常事態に。山下さんは一体なぜ、中国でカリスマになったのか?

実は山下さんは上海大学に通う日本人留学生。前衛芸術を研究している。独学で学んだ中国語を駆使し、日本に関する情報を伝える自作動画を毎日ネットにアップしている。(教科書に載っていない)日常的な日本語会話や、今の日本の若者文化に関する情報を率直かつ面白く伝えており、大人気なのだ(累計再生回数が何と2億4千万回!)。中国最大のネット動画コンペで何とグランプリまで獲得したそうだ。このバラエティ的な映像表現が中国の若者の心を鷲づかみしたのだ。「本当の日本」を伝えてくれる真の文化大使だ。

同様に、日本に関する正しく詳しい情報を伝えてくれるメディアがある。「知日」という月刊誌だ。日本に関する特定のテーマ(「制服」「暴走族」「礼儀作法」等々)を深掘りして発行しているが、これが書店で売れ筋商品となっているのだ。本来は毎月発行なのだが、最近は当局の検閲が厳しく、2ケ月に1回になっているという。発行人に対し身の安全を危惧する声すらあるという。しかし必ずしも「親日」という内容ばかりではないため、当局もへたに手を出しにくいのだろう。

ファンの投票で順位を決めることができるアイドルグループSNH48(AKB48の上海版)が人気であることも中国政府には面白くないようで、対抗馬として「56輪の花」という官製アイドルグループを作って愛国的な歌を歌わせているとの話には思わず笑ってしまった。中国民衆もそこまでバカじゃないだろう。

一方、日本人の中国旅行がどん底だという。2010年に370万人いたのが、2014年には247万人と、日本人旅行者の数が激減したのだ。この大半は仕事での出張だろうから、プライベート旅行は壊滅状態といえる。大気汚染、食品問題、反日と、立て続けに問題が起こった結果だから、当然ではある。誰だってそんな国にプライベートで行くのは嫌だろう(仕事でもできる限り避けたいものだ)。

大手旅行会社H.I.S.でも、3年前の15分の1まで客数が落ち込んでいるそうだ。同業他社が撤退・縮小をする中、H.I.S.はスタッフ数を維持し、社を挙げて中国旅行を売り出そうと決意したのだ(かなり難しく悲壮な決断だ)。

そんな状況下、上海支店リーダーの安達さんが提案したのは「絶景ツアー」。目玉は、映画アバターのモデルとなった世界遺産・武凌源。太古の昔、地殻変動と雨による侵食によって作られた巨大な岩柱が3000以上並ぶ、壮大な光景だ。まさに秘境だ。

自然の「絶景」を前面に出して売り出そうとする安達さんに、平林社長が一言、「中国だと分かったほうがいい。中国を前面に出せ」と(個人的には疑問に思うが)。社長に対して反論できず、葛藤する安達さん。そして悩んだ末、その地方に住む少数民族との交流を加え、中国の奥深さを訴求することとした。これはヒットだ。でもやっぱりツアー客が本当に感動したのは「絶景」だった、とは思う。

いずれにせよ、上海や北京にはもう日本人は行きたくない。ましてや中途半端な地方都市はもっと危険だ。その点、日本にない広大な自然と歴史的背景を持つ土地であれば、いくら中国でも行きたいと考える日本人旅行者もいよう。H.I.S.が中国を離脱しない覚悟を決めたのなら、そうした極端なところを探し続けるしかない。
スポンサーサイト

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

消費税論議にみる財務省の深謀遠慮

財務省案の評判は散々である。確かに「軽減税率に関する代替案を提示せよ」というお題からは外れている。しかし「与党の議論を振り回す」という隠れた目的は既に達成している。そして真の目的である「軽減税率の導入」へと議論は向かいつつある。財務省の筋書き通りに事は進んでいるのではないか。


2017年4月予定の消費増税時に合わせて導入する軽減率案として財務省が提案した「日本型軽減税率制度」に対しては、与党からも識者からも批判が轟々と上がっている。

いわく「マイナンバーカードを持ち歩くなんて、消費者にとって面倒さとリスクが大きすぎる」「小売業者全てに読み取り装置導入と面倒な事務作業を強いる」「必要なインフラコストが無闇に高すぎる」「そもそも負担感の軽減にならない」などと散々である。ネット上にも「だから役所の連中は」といった憤慨する声が溢れている。

しかし財務省というお役所はやたらと頭のよい(しかも狡猾な)「官僚中の官僚」たちが集まった中央官庁である。過去、様々な策を弄して多くの政治家を言いくるめ、マスコミを通じて世論の方向性を操作してきた、その経験・ノウハウの蓄積は生半可なものではない。しかもその中でも主税局といえば、役所の予算を握る主計局と並んで、エリート部門だ。

そのエリート官僚たちが、この素人でもおかしいと感じる穴だらけの案を、これがベストだ、是非実現させたいと本気で考えたとは小生にはとても思えない。

決して一部の政治家たちが言うような「机上論に過ぎない」「財務省の役人は世の中を知らない」などというナイーブな(世間知らずな)提案であるはずがない。むしろこの案自体は「目くらまし」である可能性が高い、と考える次第である。

そう考えてみると、明らかに軽減税率制ではない内容なのに「日本型軽減税率」などという人を食った名をつけるのも、かなり確信犯的である。つまり批判され、潰されることを前提とした提案なのである。

その狙いを考える前に、財務省の立場をおさらいしよう。

周知のように、財務省は国家の財政を預かる役所である。その影響力の源は、各中央官庁に対する予算案査定の権利を握っていることと、国税庁を傘下に持っていることで税金逃れをしがちな政治家や企業を脅す手立てを持っていることである。

財政再建を錦の御旗にしていることも周知の通りである。ここで世の中的には勘違いが生じやすい。財政再建を絶対命題とする役所だから、「消費税再増税の実現」にはもちろん賛成であり、かつ税収入を減らす要素となる「軽減税率の導入」には反対だと。財務省案に対する批判の中にも、「あれは『軽減税率潰し』の陰謀だよ」という解説もまことしやかに飛び交っているらしい。しかしそれは「美しき誤解」とでもいうものだ。実は財務省は「軽減税率の導入」に賛成の立場なのだ。

決して「社会的弱者への配慮」などという理由ではなく、与党・公明党への政治的配慮でも当然なく、また「軽減税率を導入することで将来、さらなる増税が必要になった際に社会的に受け入れられやすくなる」という政策的判断が主たるものでもない(最後のは多少はありそうだが)。

「軽減税率」というものは線引きが難しく、大概の導入国ですったもんだの議論を呼んできた歴史がある。実際日本でも、軽減税率導入に関する与党協議がまとまらないため、財務省に一旦下駄を預けたからこそ、こんな事態を招いているという経緯がある。

もし「軽減税率」の導入が正式に決まり、しかも線引きに関しては例えば「生活必需品に適用」(これが落し処の本命)という方針が決まったら、実務的素案づくりは一旦財務省に任されるはずである(その後、正式には政治家による決裁が幾段かに分けて下される格好ではあるが)。

すると幾多の業界から「我々の製品(またはサービス)は軽減税率の対象にして欲しい」と、財務省詣でが始まることはほぼ確実だ。課税対象となるか否かは各業界にとっては死活問題であり、財務省は天下り先確保という利権が一挙に増えるという仕掛けだ。

さて、ここまでで財務省が「消費税増税推進」かつ「軽減税率導入賛成」の立場であることが理解できたと思う。この認識の上で、財務省が稚拙な案をこの段階で出してきた狙いは何か、考えてみていただきたい。小生は2つあると思う。

一つは、目くらましとしての財務省案を否定させた上で、最終的にはそれよりはずっとましな策として「軽減税率の導入やむなし」と自民党も世論も納得させること。これが主な狙いだろう。

実際、既に与党の議論は今や「財務省案か、軽減税率か」に収れんされ、大新聞や色んな識者が「軽減税率こそが唯一の解決策」だという論調に統一されつつある。

軽減税率に大反対してきた日本商工会議所、全国商工会連合会などの中小企業団体、日本チェーンストア協会などの小売り団体も、その声に押されて軽減税率に消極的だった自民党の政治家たちも、少しずつ外堀を埋められているのを感じているのではないか。

うまくいけば、小規模業者に益税を吐き出させる仕掛けとして有効な「インボイスの義務化」まで達成できるかも知れない。とはいえインボイス方式の導入というのは、財務省にとっては賛成してもよいが、そのために議論が紛糾するくらいなら、交渉条件として提示しておいて最終的には引っ込めてもいいと考えている程度の本気度ではないか。

もう一つの狙いはより巧妙な調整を要するものだ。それは議論の時間をある程度無駄遣いさせ、しかも世論を喚起させた上で、最後には「軽減税率の対象は生活必需品」といった「役所による解釈」を要する落し処に持っていくことだ。

「生鮮食品のみ」などと、あまりに線引きがはっきりとし過ぎては幾多の業界からの陳情を受け付ける余地がなくなり、財務省の利権につながらない。しかし逆に「準備の時間がなくなったので、軽減税率導入は次回の増税時には見送り」となってはまずい。

ましてや「低所得者の負担軽減がまとまらないため、消費税の増税自体を再度見送り」となってしまっては元も子もない。しかも最終的には、具体的な線引き案づくりは財務省任せとならなければ利権が生まれない。非常に微妙なさじ加減を要するのだ。

最終的にこの微妙な落し処に持っていくため、財務省は今後さらに、様々な手練手管を使う可能性が高い。そして最終的には多くの業界の陳情合戦に持ち込もうとするだろう。

心ある市民やマスコミはその部分にこそ監視の目を光らせるべきであって、目くらましである現「財務省案」の批判のために議論をもてあそんだり、政治家に余計な時間を使わせたりすべきではないのだ。

一方、小生のように企業の新しい戦略や改革を企画・推進する人間には、彼ら中央官僚の議論誘導法には学ぶべき点が少なくない。もちろん、狡猾な策を自ら弄することはお薦めしない。しかしながら、反対者がどう仕掛けてくるのか、議論を潰そうとするのか、非常に参考になることも事実だ。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

どん底を知る経営者たちは何をも恐れない

9月24日に放送されたカンブリア宮殿は10周年記念の「波乱万丈スペシャル~あの時があるから今がある~」。10周年を迎えたカンブリア宮殿では400人を超えるゲストが様々なエピソードを披露してきた。今回の放送では、紹介しきれなかった珠玉のエピソードを選び抜いて見せてくれた。

スタジオには2人のゲスト。ニトリホールディングス社長の似鳥昭雄(にとり あきお)氏と、ハイデイ日高の会長、神田正(かんだ ただし)氏。どちらも本編を観たが、魅力的なじいさん2人だ。

全国に367店舗を展開する家具・インテリアの「ニトリ」は年商4173億円の巨大企業。北海道で育った似鳥氏は、子供の頃は常に劣等生、若い時分も勤めが長く続かなかったダメな若者だったという。

23歳の時、自分で商売するしかないと思い、札幌市内に家具店を出店。店の名は「似鳥家具卸センター 北支店」。卸センターは「広くて安い」、支店は「本店がある」と客に思わせるための、似鳥氏のちょっとせこいアイデアだ。

しかし何と対人恐怖症のため、商売はうまくいかず赤字が続いたという。しかし結婚後、妻の百百代さんは愛嬌があって客に好まれ、そのおかげで売上げは倍増した。その頃のエピソードは笑える。夫婦で客に配達に行った際、運転席で待つ妻を残したまま、美人の客に勧められるまま2時間も飲み食いしていたため、似鳥氏は後で百百代さんに土下座する事態になったという。

その後、2号店を出店したが、当初は繁盛したが、2年後ライバル店の出現で売り上げは激減し、倒産の危機に追い込まれる。追い詰められた似鳥は、毎日、死ぬことばかり考えていたという。そんな似鳥にアメリカの家具視察の話が来る。そこで初めて今のニトリにつながる「しゃれた家具を安く」というビジネスモデルを思いついたのだという。しかし、倒産の危機のさなかに米国視察をする気によくなったものだと思う。

4号店を出店する際は、資金が無いためエアドーム型の店舗を計画する。しかしオープン当日、大雪のため店が潰れ、商品はほとんど損傷してしまう。しかし似鳥氏は、めげることなく「傷物 半端物大会」と称し半額で売り出した所、大盛況となった。アウトレット方式で切り抜けた訳だ。

今や日本を代表する大チェーンを築いた、波乱万丈の経営者は次のように言う。「人生は冒険であり、アドベンチャーだ。」と。

「熱烈中華食堂 日高屋」は首都圏を中心に約370店舗を展開している。年商344億円のラーメンチェーンを一代で築き上げたのが、ハイデイ日高の会長、神田正氏だ。彼の回については前にこのブログで取り上げたので、ここでは繰り返さない。
http://pathfinderscojp.blog.fc2.com/blog-entry-494.html

今回、神田会長が言った言葉で印象に残った言葉は、「大抵の人(ほかの経営者)はあと少しのところであきらめちゃうんだよね」。なるほどこの人の後半生は本当に粘りだったんだなぁ。彼は朴訥とした調子で言う。「順風満帆な人生なんてつまんないですよ。波乱万丈でいろいろあった方がいいよ」と。

その他に紹介されたエピソードの中で強烈な印象を与えられたのが幾つかある。例えばドトールコーヒー創業者の鳥羽博道氏。父子家庭で商売を手伝い、家計もやりくりしていたが、高校時代に父と口喧嘩。日本刀を振り下ろされて逃げ出し、着の身着のままで上京。それが結果として、この人の成功を導き出したのだ。

最後に、壱番屋(カレーハウスCoCo壱番屋)創業者、宗次徳二・直美夫妻。夫婦とも凄い生い立ちだ。夫・徳仁氏の幼少期は、道に生えている草を食べるほど極貧。妻も、父が10歳で亡くなり、親類に預けられる。その貧しさやみじめさを繰り返したくない2人は、家庭の味を追求したカレーと、家庭的暖かさを信条とした経営で、一大カレーチェーンにまで作り上げたのだ。こちらも強烈な人生だ。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

人工知能の将来を語るには早すぎるのか

今週、東工大にて開催された「人工知能は企業の味方なのか?」というシンポジウムに参加した。 http://ac.nikkeibp.co.jp/kd/ai0924/

「近未来の人工知能のビジネスへの応用と、そのチャンスを見出す」という触れ込みに、つい足を延ばした次第だ。サプライズはなかったが、満員の会場を見て、世の関心の高さに改めて触れた感じがした。

講演者は次の3人。はこだて未来大学 学長、中島秀之氏。(株)ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEO 清水亮氏。KDDI ソリューション事業企画本部 クラウドサービス企画部長 藤井彰人氏。

話が面白くて一番エンターテインメント性と刺激度が高かったのは清水氏だったが(将来のビジネスネタになりそうなものを幾つか見つけた)、パネルディスカッション「人工知能を語り尽くす~産業界の期待へどう応えるか~」で最も高い知性を見せてくれたのはさすが、中島学長だった。藤井氏もとても誠実な内容だった。

ただ、不思議なことに、どの人も例えば「今、IBMのワトソンが何をできて、日立やNECは何ができるのか」などという民間企業の最先端の競争状況については触れていなかった。藤井氏が若干、AIを使ったサービスを紹介してくれたが、「それ以上は自分で調べてね」ということなのだろうか。

「こういう分野はどこと組めばいいのか?」という素朴な疑問を幾つか持っていたのだが、少々一般論過ぎたきらいがある。それに折角だから専門家の口から具体的な得意・不得意を聴きたかったが、先に手を挙げていた質問者たちがえらくアカデミック?もしくは哲学的な質問をして、それで質問時間は終わってしまった。

モデレータが少々理解が浅いのか、それとも「小さな組織の未来学」という日経ビジネスの主催する集まりが狙っているのが中小企業なので、参加者のレベルはそんなに高くないと踏んだのか、一般的なやり取りをさせるに終わってしまい、突っ込みが無かったのが惜しい。それとも、人口知能の将来を語るにはまだ早すぎるのだろうか。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

調理ロボットは使い方次第でこんなに実用的

最近、サービスロボット(産業ロボットではない)に関する資料を色々と当たっている。そんな中、ワールドビジネスサテライトの特集「変貌する外食のいま」の第1夜(9/21)で調理ロボットを採り上げていた。これは普及しそうだ。

東京・墨田区にある刀削麺荘唐家 錦糸町店。客で賑わう店の名物は中国発祥の刀削麺。包丁で麺を削り出して作る、あれだ。店の奥で動くのは人形らしきもの。料理人に交じって働く調理ロボットは黙々と作業を続ける。これ、中国で開発された刀削麺ロボットの康真寧(やすまねえ)君、150万円(税別)なり。

実は2011年に放送したトレンドたまごで、中国の刀削麺ロボットを放送。その姿はまるでウルトラマン。オンエアを見た店の関係者が急いで中国にロボットを買いに行ったという。それが康真寧君。その導入を泣いて喜んだのは刀削麺職人の王さん。刀匠麺づくりは2キロ以上の生地を持ち続けるため、重労働で腱鞘炎になる職人が続出するほど。王さんは、康真寧君導入後は刀削麺からチャーハンづくりに転向し、今も店で腕を振るっているそうだ。

康真寧君の実力は大したものだ。普通の職人が作った麺は長さや厚さにばらつきがあるが、
康真寧君が作った麺は一定。そしてロボット導入後、その安定した品質とスピードで、1ヵ月の売り上げは約3割アップ。大成功だ。

もう1件は神奈川・茅ヶ崎市の「中華 大新」。店で一番人気なのが、皮をパリッと焼き上げた特製ギョーザ、480円。この特製ギョーザを作っているのが、今3月から本格導入したロボット、その名も「餃子革命」、128万円(税別)。

具材をセット、皮をセット、落ちてきた具材を包むという3ステップで、熟練の職人のように仕上げる。ロボットの作業効率は手作業の10倍、さらに焼き上がりの違いも。ロボットの方が底を平らに包むため、均一に焼き目が付きパリッと仕上がるのだ。

導入前の2月の売り上げ約500万円が、7月には660万円とおよそ1.3倍にもなったという。

餃子革命を製造するのは浜松市の東亜工業という中小メーカー。国内シェア6割のギョーザ製造機械メーカーだ。ギョーザの形を決める金型はオーダーメード、職人が1日かけて削り出す。「1グラム単位のお客の要望に合わせて」職人が削ってお客の要望に合う型に仕上げるそうだ。

このロボットの評判を聞きつけ、国内外様々なところから注文が来ている。アメリカ・関東・埼玉・インドネシアとかUAEとか。

番組では餃子革命が出荷されるところから、新装オープンするギョーザ専門店で使われ、評判を聞きつけて多くの客がやってくるところまでを放送してくれた。これは人手不足の日本社会を変える要素の一つになるかも知れない。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

サイバーセキュリティーのプロは気の休まる時がない

9月19日(土)に再放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」は面白かった。題して「不屈の“トップガン”、サイバー攻撃に挑む」。サイバーセキュリティー技術者・名和利男氏(44)をフィーチャーした。

サイバーセキュリティー技術者の中でも最高の技術を持つ“トップガン”と称され、日本のみならず世界からも注目を集める、名和氏。元々は自衛隊のサイバー部隊出身だという。その仕事の大きな柱の1つは、サイバー攻撃を受けた可能性のある国や企業から依頼を受け、その実情を正しく捉えることにある。

例えば、データを破壊したり盗みとったりするマルウェアが紛れ込んでいるかどうか、また紛れ込んでいる場合、どのような悪さをするものなのか、その対応は一刻を争う。先日の年金事務所のお粗末な対応は極端としても、怪しいと思いながら半日でも放置していれば致命的かも知れない。

しかし年々巧妙化し、かつ悪質化しているサイバー攻撃において、攻撃の実態を正確に把握することは難しくなっている。そこで名和氏は、こうした緊急対応のとき、つねに「攻撃者になりきる」ことで作業にあたるという。

時に何万行にも及ぶ膨大なプログラムの中から、通常あり得ない、異常な文字列を見つけ出すこの作業。観ているだけで頭が痛くなりそうだった。文字や数字の羅列からいち早く異常な文字列を見つけるためには、たとえば、「金」や「個人情報」など、攻撃者はどの情報を狙っているのか、想像力を働かせながら探すことが重要だと名和氏は考える。なるほどねぇ。

名和氏の仕事のもう1つの大きな柱は、攻撃者を特定する追跡作業。これが面白い。名和氏は、攻撃者が情報交換などを行っているコミュニティサイトに入りこみ、公開されている攻撃者の写真や住所などの情報を入手していく。そんなことができるんですねぇ。そして、攻撃の事実とその人物が特定されたとき、身元がばれていることを相手に突きつけるのだ。ほとんどドラマですね。

身元が判明している事実に、相手は攻撃する意欲を失う。また、攻撃者はほかで成功した攻撃手法を使い回したり、みずから開発したマルウェアをベースとして設計変更をしたりすることが多い。その動向を把握出来ていれば、事前に対策も打ちやすくなるという。

「増加の一途をたどるサイバー攻撃に対しては、守るだけでは、十分ではない」――攻撃を根絶させたい名和氏は先手先手で犯罪者に挑み続けているのだ。

名和は、さまざまな機関や企業で、実際に攻撃を受けたときどのように対処すればいいのか、その判断能力を鍛える「サイバー演習」にも力を入れている。要は企業研修の一種だ。

その際、参加者がたとえ正しい答えを出しても、考え得る行動は本当にそれだけか、ほかに想定される状況はないか、と名和氏は繰り返し問い続ける。この「突っ込み」の感覚は小生の仕事にも通じる。

「サイバーセキュリティーの現場では想定していたことと全く違うことが発生して、現場が混乱するということが常だ」と名和氏は言う。その時点で準備をするのは不可能であり、だからこそ徹底した事前の準備をしていくしかないのだ。

「攻撃を受けたとき、必要となるのは、どれだけ不安要素を想定出来ているか、その準備に尽きる」――百戦錬磨の名和氏が肝に銘じる信念だ。これは本当のプロフェッショナル全てに通じる考えだと思う。

それにしても名和氏の日常は全く息つく暇もない。出先でありながら緊急要請・緊急出動がひっきりなしにあるようだ。多忙かつ緊張感が継続し、目と頭が休まらない。タフな人だとは思うが、これでは身が持たないのではないか。他人事ながら心配になってしまった。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

地域づくりの熱血リーダーの源は現場取材力

最近関わっているプロジェクトの一つにて地方活性化がテーマになっている。そのせいもあり、また元々東北には縁があり、NHKの「東北発 未来塾」を時折観ている。

9月14日(月)に放送された「地域づくりのチカラ」第2週は「哲ちゃん館長 熱血教室! 地域を“自立”させるには?」。熱血カリスマ・リーダー、豊重哲郎さんから学ぶ「地域づくりのチカラ」はとても納得性の高いものだった。

舞台は鹿児島県・柳谷集落。日本中から注目され、地方再生のモデルケースとなった"やねだん"。観光地もない、産業もない、若者もいない…と、存続の危機に陥っていたとのこと(この「若者もいない」というところが「ナポレオンの村」のようなドラマと違う現実だろう)。

行政に頼らない村おこしを成功させるため、20年前、集落のリーダーに就任した豊重さんが実行したことは何か?まずは軍資金づくりだったという。

豊重さんは最初に、地域おこしの"原点"となった場所、芋畑へ塾生たちを案内した。もとは耕作放棄地。地域再生の資金集めのために目を付けた。少し耕せば作物が育つが、問題は人手。そこで地元の高校生に声をかけ、集落の高齢者たちに向けてメッセージを発信した。「生のイチローを観に行きたいので、畑を貸してください!」と。いいなぁ。

豊重さんの読み通り、耕作放棄地を無料で貸すという高齢者が続出したのだ。さらに、初めて農作業をする高校生たちの姿を見かねたお年寄りが次々と手伝ったのだ(これも作戦のうち)。

自治会で運営しているので、収穫した作物の売り上げは集落が自由に使える「自主財源」となった。次に豊重さんが掲げた目標は、「町内会費を無料にしよう」。畑作業の参加者はさらに増え、芋の収穫は倍増。その財源を元手に、焼酎づくりなどの6次産業もはじめ、町内会費の無料化を実現したのだ。

国からもらう補助金と違い、集落で必要な物にすぐに使えるのが自主財源の魅力。戦略家・豊重さんは、さまざまな形で集落の人たちへ「還元」していった。運動不足解消とともに、話題づくりにもなる健康器具を導入。さらに、一人暮らしのお年寄りの家を対象にヘルプベルを設置。安全対策の還元だ。素晴らしいリーダーシップだと思う。

地域づくりのアイデアを出し、実現してきた豊重さんが最も大切にしてきたのは"取材力"だという。自分の目と耳で地域の人を見て、状況を分析するという意味だ。

「大切なのは、取材力。人を見る、状況を見る。目と耳で「やねだん」を見ているから、"台風が来たら、あそこからまず先に見ないといけない"、"ばあちゃん、タクシーが来てたね、大丈夫かい?"って。目配り、気配り、心配りが、自分の大きな財産になってくる。その思いが、俺流に解決策を考える、俺流に考え付く、俺流にアイデアを出す、といところにつながる。習慣づけていったら絶対できます。だから、絶対外を歩きなさい、外を見なさい」と。

こればっかりは地元に根付いていないとできない相談だ。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

「無水調理」で売るか、「自動調理」で売るか、シャープの新型調理鍋

9/17(木)に発表されたシャープの電気無水鍋「ヘルシオ ホットクック KN-HT99A」(11月5日に発売予定)はなかなか興味深い商品だ。
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/150917-a.html

メニューをセットすることで、自動で火加減が調整され、無水調理できる電気無水鍋だ。店頭予想価格は6万円前後(税抜)とちょっとお高いが、非常に手軽、かつ試食した人達の評価が高く、そこそこ売れる予感がする。

無水調理とは、水を使わずに野菜などの食材に含まれる水分を活用した調理方法のこと。他にも幾つかの調理器があったはずだ。ホットクックでは、ふたの内側に施した円錐の突起「旨みドロップ加工」が、食材から出た蒸気を水滴にして鍋の中を循環させるという。無水調理では、食材の持つビタミンCや葉酸など抗酸化作用のある栄養素やミネラルを多く残せる、食材本来のおいしさを味わうことができるという。何より、水を加えないので水っぽくならず、野菜の水分だけが絞り出されるような感じで、おいしさが凝縮されるようだ。

それに加えヘルシオ ホットクックが搭載する「まぜ技ユニット」は、メニューに合わせて最適なタイミングで具材をかき混ぜてくれる。これがなかなかの優れものだ。さらに温度や蒸気センサーを内蔵しており、火加減の調整も全自動だ。煮物など85種類のメニューから調理を選び、食材をセットするだけで、食材の状況を見極めて自動で調理してくれる。

つまりおいしさと手軽さが両立するという魅力的な家電品なのだ。「無水調理」で売るか、「自動調理」で売るか、マーケティング部門では贅沢な悩みが生じそうだ。ここのところ明るい話題の少なかったシャープの久々の期待商品だ。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

中国「バブル崩壊」は紛れもない事実だ

中国が引き金となった世界同時株安が多発している。ついに世界中が懸念していた「バブル崩壊」は始まったのか。そんな中、9月14日(月)に放送された未来世紀ジパングは『中国「バブル崩壊」の真相...知られざる裏側を緊急取材!』。実にタイムリーな緊急企画だ。

まず見せられるのは、国を挙げた都市計画のもと、ヨーロッパの街並みそっくりの模倣都市=フェイクタウン(こういう悪趣味な都市が幾つもあるのが模倣を恥ずかしと思わない中国らしいが、「中国11大模倣都市」という無謀な巨大都市開発計画があったらしい)の一つ“中国のパリ”だ。

街には3分の1規模のエッフェル塔や、目抜き通りの偽シャンゼリゼに10万人が住める巨大マンション群。しかし実態は「もぬけの殻」。街は「ゴースト・パリ」と呼ばれている。要は誰も済む気がないが、投資先として開発されたのだ。開発した不動産会社は既に不動産業をやめたという。フェイクタウンの多くが現状では「ゴースト○○」化しているのだ。

そして襲った今回の上海市場での株の大暴落。1億人の投資家が1000万円以上の財産を失ったと言われる。全財産を失い「跳楼」(飛び降り自殺)するケースが続出したのだ。そもそも虎の子の全財産を株式につぎ込んだり、借金をしてまで株式投資をしたりするなんて、この国の投資家に対する教育は一体どうなっていたのか。

それに対し今、証券会社は水着ギャルを使って「早まるな!上がるまで待とう!」を合い言葉に自殺防止キャンペーンを展開中だという。どっちもどっちだ。

そんな状況下で、“謎の踊り”が中国全土で大流行しているという。各地の広場で大勢の市民が一晩中踊りまくるのだ。いつしか全国に広まったらしい。単に大音響で流される音楽に合わせて自由に踊り狂うのだが、幕末の日本で流行った「ええじゃないか」を彷彿とさせる、実に異様な光景だ。

民衆の「やけくそ」気分や世紀末思想を表しているのだろうか。デモやストライキのような抗議行動じゃないので政府も直接取り締まったりはしないらしいが、政府も気味悪がっているのだろう、周囲で警察や軍人が警戒しており、場所によっては音楽を指定するらしい。バカ臭く滑稽だが、本当に異様な光景だ。

そして“世界の工場”の現状についてもレポートされていた。製造業が集積する広東省では今、製造不況が直撃していた。街の広場には行き場を失った数千台もの建設機械が放置され、工場では経営者の夜逃げが続出(こういった話は前から聴いていた)。中国人や韓国人・台湾人の経営者はマズイとなったら、可能な限り金を持って夜逃げするが、日本人経営者はなかなか踏ん切りがつかないのだ。

さらに日本企業も中国からの撤退も加速しており、これも以前から話題になっている。ある日系工場では労働者800人がストライキを起こし、日本人幹部が拉致・監禁されたことで相当な出費や損切をしての撤退を決断したという。

番組ではその様子を監視カメラの映像と写真、社長の証言により再現してくれた。中国経済を牽引してきた「世界の工場」が終焉したことを実感した。

番組後半はリゾートホテルの話だ。ラスベガスを引き離し、カジノタウンとして急成長を遂げたマカオは今や世界一だという。しかも上記のような情勢で今なお、新たなリゾートホテルが次々と建設されているのだという。これも驚きだ。

世界初「8の字観覧車」を備えたアトラクションホテルや、パリ風の巨大ホテルリゾートなど。成金趣味そのものだと感じた。その中に着工したばかりの注目ホテル。あの「アンビルトの女王」ザハ氏が設計したホテルだ。曲線を多用した「かつてない奇抜なホテル」は悪趣味の塊だった。

ところでマカオの年間5兆円を超える収入源が中国本土からの客だ。中でも数%と言われるVIPが5割を占める。関係者によると「一晩で数億円を賭ける」連中がわんさかいたのだという。

当然ながら中国経済悪化の影響がマカオを直撃しており、VIP専用ルームが次々と閉鎖中だ。番組では、VIPの実態とその現況を、関係者が赤裸々に告白。現在、中国本土で「未回収の借金の総額は3000億円」と明かした。中国バブルの恩恵に支えられてきた、マカオのバブルもまた終わろうとしているということだ。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

新規事業における素朴な疑問 (6) 曖昧な事業像の描き方

新規事業に取り組む大企業の行動パターンに関する素朴な疑問シリーズ、その6つめは事業構想案の可視化のやり方のブレ。部門によって異なるどころか、同じ部門でも人によってバラバラ。しかも考察不足のせいもあって、何を言いたいのか分からないことさえある。


小生が手伝う新規事業開発プロジェクトでは、クライアントのニーズによってプロジェクトの枠組みも進め方もかなり違っている。

最初からある程度事業像らしきものが決まっていることも少なくない。しかし典型的なパターンとしては、ゼロベースで考えて複数の事業案を生み出したい、といった話になることがよくある。この場合、数グループに分かれて各グループで最低1つの事業構想案まで創出して欲しい、といった進め方をすることが多い。

最初の段階では思いつき程度なので、あまり表記法にはこだわらない。一つのグループで2つ3つ、中には4つも5つもアイディアが出てくることもよくあるので、あまり描き方に凝って時間を使い過ぎたり、せっかく新しいアイディアが浮かんできたのに前のアイディアを描き切る間に忘れてしまったり、などということになっては本末転倒だからだ。

たいていは短い説明を付けた簡単な関係図だが、ほとんど文字だけの説明ということも割とある。むしろアイディアそのものが独創的なのか、面白そう(または儲かりそう)なのか、実現性があるのか、といったことがまず大事である。

さらに議論していく過程で、モノになりそうな感覚が持てるアイディアに絞った上で、担当を決めて(大概は思いついた当人である)、他のグループにも説明・共有することで、より多くの人数を掛けてアイディアを膨らまそうとする。

そこで担当となった人に、「この事業アイディアを他のグループの人にも分かるよう、図示してみてください」とお願いする。そこで仮に描き方を指定しなければ、数日後に出てくるものの多くが、何をするビジネスなのかすら分からない、実に曖昧な図と煩雑な文字説明に溢れているものになると覚悟したほうがいい。

それが分かっているので、実際には共通の表記法に統一するようにしている。その際、小生が「どんな表し方をすると皆さんが共通的に理解できますか?」とメンバー全体に尋ねると、かなりの割合の人が戸惑った顔をする。不思議なことに、新規事業開発の歴史も長く実績もある大企業であっても同様だ。仮に「事業構想」の企画書フォーマットが決まっていても、なぜか肝心の「事業イメージ」の可視化のやり方を決めていないため、人によって描き方がバラバラなのだ。

「やったことがない」、「どんな描き方をすればいいのかわからない」というのはごく普通の反応だ。「僕、絵心がないので、誰か他の人にお願いしていいですか?」という楽しくトンチンカンな反応をしてくる人も結構いる。

しかし中には、個人的に勉強していたり会社で研修していたりして、なかなか凄い反応を返してくれるケースもある。「ビジネスモデル・キャンバスはどうでしょう」とか、「戦略キャンバスは使ったことがあります」とかのコメントをくれる人たちだ。

MBAホルダーだったり、社外の勉強会などに参加して覚えてきたケースもあったりと、彼らの意欲は買いたいと思う。この2つの「キャンバス」の是非については後ほど論じたい。

いずれにせよ統一の表記法を決めて、それに沿って描いてきてもらう。それでも一部のグループの図は見掛けこそ一見それっぽいが、全く曖昧な内容のままであることが往々にしてある。そこには往々にして華麗で空虚なスローガンが踊っているものだ。

口頭と単純な文字説明では魅力的なビジネスに聞えたはずなのに、それは結局、中身が十分に練られていないままだからだ(後々のことを考えると頭が痛くなる瞬間だ)。まぁそれが本人たちにも自覚してもらえるという「効果」はあると割り切るしかないが…。

さて、建設的な話に立ち戻ろう。新しく思いついたビジネスモデルで最も知りたいのは、「旧来のものとどこがどう違うのか」「一体どうやって儲けるのか」の大事な2点だ。それらを伝えるのに適していると小生がお薦めしたいのは、「バリューチェーン」と「収益モデル」だ。

前者の「バリューチェーン」というのは少々紛らわしい。人によっては「ビジネスシステム」などと呼ぶし、かの経営学の大家、マイケル・ポーター教授が同じ用語を使って、全然違う「企業活動分析図」を表しているということもある。

しかし本来的には「バリューチェーン」というのは、業界の中の価値連鎖の中で当該企業がどんな役割を果たしているか(どんな価値機能を提供しているか)を表すものである。次のような図が典型的なものである(PCメーカーのデルの例)。
ValueChain.png

後者の「収益モデル」は、物やサービス(および情報)の流れとお金の流れをそれぞれ示すことで、このビジネスは誰が何に対しお金を払ってくれることで成り立つのかを表すものである。「収入モデル」とか「課金モデル」などと呼ぶ人もいるが、意味はほぼ同じだ。こちらも典型的には次のような図となる。
ProfitModel.png

この2つはビジネスモデルとしては不可欠の要素を表すものなので、新規事業の企画者だったら覚えておいて損はないだろう。ビジュアル的なので誰もが直観的に理解でき、きわめてオーソドックスな方法論でありながら、世の中で必ずしも十分に普及していないのは不思議なくらいだ。

「ビジネスモデル・キャンバス」のような複雑で高等レベルの手法を勉強する前に、まずはこちらを習得して欲しい。できれば全社で共通的に使えるようにしておくことが望ましいと思う。

さて、先ほどの「ビジネスモデル・キャンバス」と「戦略キャンバス」の話を最後に論じよう。新規事業プロジェクトでこれらを可視化手法として挙げる人たちに、実際に図示させて説明させようとすると、残念ながら尻込みすることがほとんどだ。

実際のところ、こうした場面において、生まれたばかりのビジネスアイディアを共有するのに向いているわけでもない(誤解して欲しくないが、小生はこれらのツールに批判的というわけではない)。その訳を簡単に説明しよう。

まず、「ビジネスモデル・キャンバス」は本来的には事業構想全体の分析・検討ツールである。いわば企画書のエッセンスをコンパクトにまとめたようなものだ。したがって、思いついたアイディアに抜けがないよう、様々な観点から肉付けするのには最適である。ある程度検討が進んだ段階からは他の人への伝達ツールにもなる。

しかし、思いついたばかりの新しいビジネスモデルのアイディアを短時間で、ビジネスモデル・キャンバスに的確に表せる人はそういない。ある程度の時間を掛けるか、練習を重ねないと難しいだろう。小生のよく知っている企業では管理職研修で教えているそうだが、使いこなすまで行く人は少ないようだ。

そして、普通の人のビジネスモデル・キャンバスによる説明を聴いて、すぐに理解できる人はもっと少ない。何せ全然直観的でなく、文字だらけのブロックの組み合わせだから、読んでも各ブロック間のつながりがピンと来ないのだ。

よほどうまく説明されないと、内容を誤解しがちでもある。図そのものに意味を持たせる方法論ではないからだ。

なお正確には、ビジネスモデル・キャンバスはビジュアル的に色々と書き込んで進化させることもできる。そうなれば非常に有効なコミュニケーション・ツールになるが、短時間で描けるような絵心のある人は少ない(大体それならポンチ絵のほうが速いだろう)。

では戦略キャンバスはどうだろう。こちらを挙げた人は多分、全く分かっていないで思いつきで言ってみただけか、「ビジネスモデル・キャンバス」と混同しただけだと思われる。

戦略キャンバスは、新しいカテゴリーの商品・サービスの分析・検討ツールなのだ(もしくはコミュニケーション・ツールとして使うこともあろう)。新ビジネスモデル開発のためではない。この点を誤解している向きが不思議と多いようだが、明確に区別しておいたほうがよかろう。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

責任感と完璧主義、負けず嫌いな人ほど洗脳されやすい

9月14日(月)に放送された「しくじり先生 俺みたいになるな!!」(テレビ朝日」を久しぶりに(というか初めて通しで)観た。もちろんビデオ録画だが。

今回はスペシャルの2時間48分。前半の元巨人軍の元木選手の話は「露払い」。本番は、「“洗脳”されて人生どん底に落ちてしまった辺見マリ先生」のほう。娘と一緒に観たが感想は同じで、「小説や2時間ドラマより凝縮された凄まじい実話。圧倒されて怖いくらい」というものだった。

辺見マリという歌手は、何十年か前、大ヒット曲「経験」で数々の新人賞を総ナメにし、その妖艶な振り付けとセクシーな雰囲気で世の男性たちから絶大な人気を博していた。そして大御所の西郷輝彦と結婚、芸能界引退、離婚といった派手な印象が強い。どうやらその後、(よくは覚えていないが)芸能界復帰、再度引退とか色々あったようだ。

しかし、華やかな芸能界での活躍の裏で、実は辺見マリは“洗脳”されていたのだという。“洗脳”が原因でなんと5億円も失い、人生のどん底に落ちてしまった彼女は、金銭トラブル、熟女ヌード、さらに家族との固執と、様々な不幸を経験することに。娘・辺見えみりのギャラにまで手を付けていたという告白には驚きと「なぜ?」という思いが拭えなかった。

今回の授業では、辺見マリが「私はこうして洗脳された」と、当時の経験を赤裸々に告白してくれた。本当に洗いざらい、「赤裸々」という言葉そのままに。その潔さに感服した。

さらに洗脳集団の手口の全貌も徹底解説してくれた。これを観た視聴者は(小生同様に)とてもショックだっただろうが、本当によく分かったはずだ。

番組の中で出ていたのは“AOSK”というキーワードだった。順に「安心(まずは警戒心を解く)」「驚き(何か「奇跡」を作りだす)」「嫉妬(仲間外れにしてメンバーになりたいと思わせる)」「囲い込み(完全に社会から隔離して批判精神を失わせて依存させる)」という4ステップだ。

「自分は絶対に洗脳されないと思っている人は、特に必見!」と番組宣伝であったが、本当にそうだと思った(小生が番宣に納得するなんて滅多にないことだ)。

芸能人のように独立心が強く、完璧主義で、強気で自分の判断能力に自信があるタイプのほうが洗脳にはまりやすいとのことだ。思ったのは、オーナー経営者も同様だということ。だからこそ怪しげな壺や骨とう品を買っているのかも知れないと納得してしまった。

「洗脳で人生を棒に振らないための授業」を辺見マリが実に「熱血講義」してくれた。バラエティ番組で感動するなんて、後にも先にもない経験だ。

それにしても「新拝み屋A」を中心とする今回の一味がまだ捕まっていない(つまり別の餌食を食い物にしているだろう)という事態は実に腹立たしい。「オレオレ詐欺」の連中以上に、こうした洗脳により被害者家族を身ぐるみはがして食い物にする犯罪集団がなかなか捕まらない現実にやるせなさを覚えてしまう。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

“超監視社会”の功罪両面を考える

アマゾンによる買い物・検索記録に基づくレコメンデーションや、グーグル検索によるプッシュ広告(仕事で検索した外国の会社の広告が出てくるのですぐに分かる)、facebookによる「友人ではないですか?」プッシュメッセージなどは、小生は非常に気色悪く感じるが、「便利だ」と好意的に捉える人たちも多くいよう。

しかしこれらはいわば自分のプライバシーを少しずつ大企業に譲り渡しているようなものだ。それらがいつ第三者経由で漏れ、悪用されるかも知れないと警戒すべきなのだ。事実は、第三者経由ではなく直接悪用される可能性も高まっている。Facebookに友人や家族の写真をタグ付きで載せまくる行為は、プライバシー情報のダダ漏れを招いているのだと自覚すべきだ(幸いにしてウチの家族はこうした行為に伴うリスクをよく理解しているので、ほぼしない)。

日本人と米国・欧州人とでは、何をプライバシー侵害として不快・不安に思うかが異なる。

米国人は利便性とプライバシーを秤に掛ける感覚が強く、「そこまで便利だったら(またはそこまでの必要性があるのだったら)OK」としてしまうところがある。導入まではかなり議論をするが、一旦導入したら制度の便利さを享受する(尤も、「愛国者法」に伴う各種の法制度はかなりいい加減なようだが)。

欧州人はかなり個人の自由というものへの価値を大切にするので(つい最近まで共産陣営が近くで締め付けを行っていたので、当然なのだが)、政府や大企業がプライバシーを握ることへの抵抗が強い。

日本人はそこまでロジカルに考えてではないが、大企業がプライバシーを握ることには生理的な嫌悪感がある。最近は政府機関への不信感も高まっているので、マイナンバー制度や軽減税率に関する財務省案をきっかけに、この問題はもっと議論されよう。

米国ですら政府がテロ・犯罪対策で行うことには功罪両論ある。おしなべて共和党系の人のほうが「防犯容認派」だろう。

9月10日(木)に放送されたBS世界のドキュメンタリー「“超監視社会”に生きる」(NHK)は幾つか重要な論点を提供してくれた。原題は”An Eye on You, Citizens Under Surveillance”、制作はARTE France / INTUITION Films & Docs / Les Bons Clientsというフランスの会社、2015年の作品だ。

原点は「現代社会においてプライバシーを守る方法はあるのだろうか?」という疑問だろう。私たちのネット上の行動はすべて記録され、保存されている。それを色んな組織・機関が利用している。

ルイジアナ州など一部の州や都市では積極的に協力して自らの家に設置したカメラの画像を提供する住民の動きすらある(実は日本でも北千住商店街などはかなりの数の防犯カメラ設置が犯罪発生率低下・検挙率向上につながっている)。メンフィス警察やサンタバーバラ警察などは過去の犯罪発生パターンを細かく分析することで時間帯ごとの犯罪発生スポットを綿密に予測し、多大な効果を上げている。

実は小生もこうした実態を調査したことがあるので、防犯効果を非常に高く評価する人間だ。街じゅうには防犯カメラが分散設置されているので公共の場所には既にプライバシーはほとんどないという前提の下、むしろそれらカメラをネットワーク化して、真に犯罪者検挙のために効果的ならしめて欲しい、と考える口である。
http://www.insightnow.jp/article/8052

しかし一方で、政府が防犯・テロ対策の名目でなんでもやっていいとは全く思わない。例えば、米国のように同盟国の重要人物の通信を傍受する行為は許すべきではない。

スノーデン氏が暴露したように、米国IT企業の通信設備を通じて、世界中の一般市民の通信データを傍受・蓄積する仕組みを持つというのは世界への挑戦とすら言える。民主主義でない国が真似をすることに抗議する資格を自ら放棄するものともいえるだろう。

欧米でも、政府や企業によるデータ収集は、民主主義と個人の自由を脅かすものであり、よりアクティブに自分たちの権利を守るべきだと主張する専門家も多い。元CIA職員やハッカーなど、最前線にいる当事者たちの証言でさえ賛否両論に分かれている現状をよく伝えてくれた番組だった。さすが米国主導のIT社会に批判的なフランスらしい内容だった。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

“日本発のお茶”の魅力を伝える

9月7日(月)に放送されたガイアの夜明けは「世界本格お茶ブーム!陰の仕掛け人たち」。なかなか楽しい内容だった。

舞台は大きく分けて3つ。インドネシアと米国、そしてタイ。世界的な緑茶ブームによって日本からの緑茶輸出額が2000年ごろから急激に増加し、2014年には2000年のおよそ6.5倍の78億円となっている。そんな世界的な緑茶ブームの影にある日本人の奮闘を追ってくれた。

いまインドネシアでは緑茶のペットボトルが大流行。ジャカルタの広場でも、若者たちがみな携帯していた。しかし、日本メーカーのものではない。地元メーカーがシェアの9割を占めているのだ。

そんなインドネシアの緑茶市場に殴り込みをかけるのが、アサヒグループホールディングス。アサヒ飲料は地元で一番愛されるよう「ICH OCHA(イチオチャ)」と名付けた緑茶ペットボトルの製造を始めた。果たして挽回できるのか?しかし普通の営業活動では全く太刀打ちできず、営業成績はさっぱり上がらない。

世界最大のイスラム教国インドネシアには年に一度、ラマダンと呼ばれる約1か月の断食期間がある。そしてラマダン明けの夕方には市民が一斉に食事を一心不乱に取る。その時が一大商戦のタイミングだという。それを狙った、一大営業作戦が始まった。

この様子は番組で事細かに放送された。自宅で家族とラマダン明けの食事をとるためモーターバイクにまたがって帰ろうとする人たちに向けて「ICH OCHA」というブランド名を呼びながら売り込みを始めると、一人、そしてまた一人と買ってくれるではないか。ものの数十分で用意した在庫は売り尽してしまった。恐るべし、「ラマダン作戦」。この調子でブランドを浸透させれば、やがて挽回の足固めもできよう。

一方アメリカでは本格的な「抹茶ブーム」が起こっている。例えば、スターバックスはティーバナというお茶の販売店を買収して全米を中心に300店舗を展開している。さらに、健康志向の高まりにより緑茶はアサイーなどと並んでスーパーフード(栄養バランスがよく健康によい成分が多く含まれている食品のこと)と呼ばれている。

「抹茶ブーム」のそもそものきっかけは1993年に発売された抹茶アイスとされる(ハワイではもっと早く、オバマ大統領が子どものときに大好物にしていたことは有名だ)。それを仕掛けたのが、ロサンゼルスに拠点を構える日本茶販売会社「前田園」の前田拓さん。緑茶を知ってもらう良い方法はないかと考えてつくったのが、抹茶アイスだったという。

そんな前田さんには、日本茶をさらに広めるための次なる計画があった。前田さんがいま取り組んでいるのが抹茶カフェチェーンのアメリカ展開だ。カフェには、前田さんの地元の長崎の企業が協力。たとえばカステラの文明堂、カフェの器を提供する波佐見焼の最大手白山陶器などだ。

その計画を後押しする強力な助っ人が「クールジャパン機構」や全日空。クールジャパン機構は、将来的に抹茶カフェチェーンを世界で1000店舗も展開することを目指している前田さんの事業に2億6000万円の出資を決め、全日空はカフェで自社が制作した映像を流すことで日本への送客に繋げる狙いがある。国をも巻き込んだ抹茶の一大プロジェクトが始まった。

タイの首都バンコク。ここでは不思議な抹茶メニューが沸騰していた。街の屋台で出てきたのは、なんと緑色のごはん。名物「緑茶チキンライス」だ。本物の抹茶を使って作っている。さらに、抹茶カレーを出す店もある。タイでは、抹茶が驚きの進化をしていたのだ。

そんなタイにも、抹茶を広める日本人がいた。島根県松江のお茶屋の4代目・中村寿男さんだ。日本のお茶業界の厳しい現状から海外に活路を見出そうと、2007年に日本茶カフェ「チャホ」をオープン。お店でこだわったのが、本格的に立てた抹茶を飲むことができるコーナーだ。抹茶を味わってもらうとともに茶道の心得やうんちくも教えている。

以前はほとんど知られていなかった抹茶が広くタイ国内に知れ渡ったきっかけは、評判を聞きつけたタイ王室から声がかかり、ソーンサワリ王女に抹茶を立てたことだった。その模様はテレビで放映され、抹茶と中村さんの名は一気に知れ渡ることとなったのだ。

中村さんによると、タイの人々の抹茶の対する反応は日本よりも良いそうだ。今後のビジネス展開について明るい展望が持てると語る中村さんは、タイに続いて他の抹茶未開の国でも抹茶の伝道師になるかも知れない。

世界の緑茶市場の80%は中国製が占める。しかし中国では抹茶はほとんど作られていない。抹茶こそ日本が世界で戦う上での武器になるはず。頑張れ、日本のお茶!

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

「アイボの修理」、頼む側と頼まれる側のそれぞれの事情

9月3日(木)に放送された「NEXT 未来のために」(NHK)の「最後まで向き合う~元電機メーカー・技術者の覚悟~」は考えさせられた。

ソニーが生産中止にした人工知能を持つロボット= AIBO・アイボの話である。去年、修理サービスが終了し、その後はメーカーの元技術者たちが修理にあたっているのだ。交換する部品がないなど、苦戦・奮闘する彼らの姿を追った番組だ。

99年の発売以来、多くの人たちが、会話ができダンスを踊れるアイボをペットのようにかわいがってきた。ところが去年、修理サポートが終了。困った人たちの「駆け込み寺」的にメーカーの元技術者たちが立ち上げた修理会社に、故障したアイボが次々と運び込まれるようになった。

ソニーで教えられた「製品には最後まで責任を持つ」をモットーに真摯に修理に取り組む技術者たち。その大多数は中高年となった技術者および元技術者だ。彼らの誠実な対応によって諦めかけていた「家族であるアイボ」が復活したときの、ユーザーの人たちの喜びの表情。これが見たくて修理という見かけ上は地道な仕事をしているのだな、と伝わってきた。

しかもアイボは修理に手間が掛かる構造をしているようだ。部品が生産されているときだったら部品交換で済むので簡単なのだが、部品のない今、ねじで開かない部分もあるのだという。修理の技術者は悪戦苦闘してこじ開けるのに半日掛かっていた。

大半の修理技術者はとっくに定年を迎えており、年金生活なのだろう。しかし契約社員としてソニーの修理部門で働いていて、この修理会社発足時に参画した、比較的若いメンバーは悩んでいた。2日掛けて修理して数千円の手間賃。これでは生活していけない。それでもお客さんの感謝の手紙を読んで、「もう少し我慢しようかな」とつぶやいていた。

これだけ価値のある仕事をしているのだから、(今いくらなのかも不明だが)修理代を上げ、それによって技術者に対する賃金をもっと上げるべきだと感じた。お客さんも年金生活で大変だとこぼすのかも知れないが、「家族のため」ならば値上げは認めてもらえるのではないか。

さもないと年金生活の高齢技術者以外は続けられなくなってしまう。最後は少し侘しく感じてしまった。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

AIは東大合格できるか、人の代わりに仕事をできるか?

ビッグデータ分析や自動運転などで近年急速な広がりを見せている人工知能(AI)。仕事での必要性もあるのだが、個人的にも興味が元々あるので、ずっと情報を追い掛けている。

2011年にスタートした「ロボットは東大に入れるか?」というユニークな名前のプロジェクトの責任者が国立情報学研究所 情報社会相関研究系の新井紀子教授(この方、実は一橋出身らしい)。

9月3日(木)に放送された日経プラス10(BSジャパン)の「トーク+(プラス)」コーナー「人工知能で東大合格を目指す…ここまで来た実用化と未来予想図」のゲストとして、新井教授は次のような素朴な疑問について語っていた。

将来ホワイトカラーの仕事の多くを奪うとも言われているAIは、一体この先どんなことまで出来るようになるのか?またそこから生まれる新たなビジネスは?

番組の中では(大学入試問題は難しすぎて視聴者がちんぷんかんぷんなので)中学生向け問題を例に挙げていたが、それでも大半の大人にはすぐには解けない問いを、人口知能はすぐに「問題が何を問うているのか」を認識し(この部分が難しいらしい)、すぐに数式を導き出して正解してしまった(ただし中学生が解くやり方ではなく、専門数学的な解法だったようだが)。

現在、このプロジェクトの成果を代ゼミの全国センター模擬試験で試してみると、偏差値はいずれも50点前後と、ほぼ受験生の平均値付近まできているらしい。国語・英語・世界史はおしなべてよく、数学と物理は難しいそうである(つまり問題文の解釈が難しいのだろう)。

あと、面白かったのは「人口知能に奪われやすい仕事とは?奪われにくい仕事とは?」という話題だった。キャスターの山川龍雄氏が特に気にしていたのだが、前者は「弁護士、銀行員(融資担当など)、薬剤師、記者」となっていたのだ。

新井教授の解説で納得できたのだが、要はAIとかコンピュータが得意なのは膨大なデータから条件に該当する記録を瞬時に検索し並べ替えたりすること。

弁護士・弁理士の助手や薬剤師などは過去の類似事例を引っ張り出して調査・分析することが中心だが、これはAIに代替されやすい。融資担当も膨大な過去の融資事例から倒産に至ったパターンなどを分析すれば、仕事の多くは済んでしまう(実は小生も以前、そうした提言をしたことがある)。記者も官庁や企業の発表文書を編集するだけの仕事なら、すぐにAIが代替できるとのことだ。

実際にはそうした「補助的」な業務はアシスタントや新人が行っているので、将来は彼らを育成する手段として敢えて残すのか、それともその部分はAIにやらせて、新人育成方法は別途編み出す必要があるのかが、いずれ問われるようになるとのことだった。

コンサルタントや投資銀行業務も似たようなものだ。もしかすると将来は戦略策定・交渉業務に長けたベテランとAIの組み合わせだけでほとんどのファームが仕事をこなすようになるのかも知れない。そうするとビッグファームと当社のようなブティックファームの違いはあまりなくなるということか。

ちなみに「人口知能に奪われにくい仕事」として例に挙がっていたのは、保育士と介護士。要は、過去のパターンをいくら覚え込んでも大して役に立たず、目の前の幼児や老人の個別的事情や感情をくみ取って個別に対処するしかないからだそうだ。確かにそうだし、ロボットに感情を理解しろといっても難しいということなのだろう。しかしペッパー君はもしかするとこのハードルも超えるのでは、と小生は怖々と期待(?)している。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

子育てと介護の「ダブルケア」問題は今、目の前にある問題だ

女性の晩婚化で出産年齢が高齢化し、親の介護と子育てを同時にしなければならないという「ダブルケア」。そうした負担に直面する世帯の増加が予測されている。この問題に詳しい研究者のウェブサイトを読む機会があった。http://double-care.com/

研究者は次のお二人。横浜国立大学 大学院国際社会科学研究科の相馬直子准教授と、英国・ブリストル大学 社会・政治・国際学研究科の山下順子講師である。彼女たちの主な研究フィールドが、晩産化・超少子化・高齢化が同時進行する郊外都市・横浜市であり、たまたま小生の住む街でもある。

彼女たちは、横浜で子育てと介護のダブルケアに直面する女性たちにインタビューをしたり、アンケート調査をしたりするなどして、ダブルケアという新たな社会的リスクの構造とその対応策を研究している。その調査によると、6歳以下の子どもを持つ母親1900人の内、ダブルケアの経験があるのは14%、数年先に直面する人が18%に上った。子育て世代にとってはかなり身近で切実な問題なのだ。

そして横浜はこの件に関し問題意識があり、識者や市民と対話しながら解決の糸口を見つけたいと考えているようだ。
http://yokohama.localgood.jp/project_theme/doublecare/

実はこのウェブサイトの右下にある「ローカルグッドニュース」の一つにも出ている、「横浜市、オープンデータを利活用した地域活性化プロジェクトの実証実験を開始〜ダブルケア(介護・保育)関連産業の事業者支援を目指す」という趣旨のプロジェクトに小生が支援しているメンバーが関わっており、他人事ではないのだ。

9月3日に放送されたBS11の「報道ライブ21 INsideOUT」でも「育児と介護の『ダブルケア』 横浜市の取り組み」と題し採り上げられていた。この問題に取り組んでいるNPO法人 シャーロックホームズの東恵子理事長と共に、横浜市政策局 政策部政策課の関口昌幸担当係長もゲスト出演し、横浜市の取り組みを語っていた。まだ具体的な政策を打つには至っていないが、こうした活動がより広範な関心を呼び、正しい政策提言につながることを期待したい。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

司法取引で冤罪を生まないために

今国会で審議している、刑事司法制度改革の関連法案。これによって、日本の捜査のあり方が大きく変わることになる。NHK「クローズアップ現代」の9月1日放送分は「えん罪は防げるか 司法取引で変わる捜査」は、期待と不安が入り混じった、しかし着実にやってくる司法改革を解説してくれた。

司法取引制度。他人の犯罪について供述し捜査に協力すると、その見返りに自分の罪が軽くなる制度だ。少し前、『天使と悪魔-未解決事件匿名交渉課-』というドラマ(警察官・剛力彩芽×弁護士・渡部篤郎の主演)もあったが、もう少し深刻な不安が「クロ現」では指摘されていた。

事件の核心につながる重要な証言を引き出し、犯罪の全容解明につながることが期待されている一方で、罪を軽くしてもらうために、うその供述をし、無実の人を事件に巻き込んでしまうのではないかという懸念も高まっているのだ。元々冤罪事件で始まった司法改革の一環として検討されてきた司法取引が、新たな冤罪を生むかも知れないという皮肉な構図だ。

間違いなく暴力団などの組織犯罪の解明には絶大なる効果を発揮しそうだ。今回の東芝の不正会計など、企業の組織的不正の解明にもかなり効果的だろう。

しかし同時に、従業員が無実の上司を罪に陥れる事態を防げるのか。社内規則で司法取引に応じないようにすることはできるのか。司法取引によって会社の上層部まで事件に巻き込まれるのではないかと多くの企業法務部門などが懸念しているのもよく理解できる。

番組では、詐欺事件で実刑判決を受けた男性が、匿名を条件に嘘の供述をする心理を語っていた。少しでも刑を軽くしたいと考えた男性は、「仕事仲間の指示でやった」と供述したのだ。

また、事件に巻き込まれた当事者が、新たなえん罪が生まれる危険性を語っていた。12年前に発覚した、名古屋市の道路清掃事業を巡る談合事件。予定価格を業者に漏らしたとして、市の職員らが逮捕された。その職員が、上司も談合に関与していたと、嘘の供述をしたのだ。判決では、部下の供述は事実に反すると認定され、無罪を言い渡した。しかし嘘の供述で逮捕され、休職を余儀なくされ、無罪が確定したのは逮捕から5年後。定年を迎えたあとのことだったという。

ひどい話だ。そして企業人にも他人事ではないということだ。こうした冤罪を生む可能性を少しでも小さくするためには、制度そのものと運用の両方に工夫が絶対に要る。

まず絶対的に必要なのは、嘘で自分の罪を軽くしようとする「インセンティブを消す」制度設計だ。司法取引時に嘘の証言で他人に罪を擦り付けようとしたものは、後日その嘘が判明した時点で司法取引の特別措置の効果はなくなり、加重刑が科されること。つまり「嘘で他人を陥れると余計に罪が重くなる」という制度にすることだ。

そして運用上、司法取引の場では、その「冤罪加重措置」について司法取引に応じようとしている当事者に明確に告げること。ちょうど検察取り調べ時に黙秘権をいちいち告げるのと同じように。そして司法取引によって告発があった場合には、通常の証言時よりも裏付けを重視すること。この2つは欠かせない。

犯罪告発に効果的な手段であればあるほど、こうした賢明な制度設計と慎重な運用が求められる。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

テラモーターズの電動バイクがアジアを駆ける

テラモーターズ。電動バイクのメーカーである。日本発で世界展開を狙う元気のよいベンチャーとして小生は以前から注目している。

ガイアの夜明け(テレビ東京系)にも久しぶりに登場(9月1日放送)。題して『日本の技術で世界を救う!新ベンチャーの底力』と、アジアをターゲットに市場開拓を進めている様子がレポートされていた。

2010年にテラモーターズを創業した社長の徳重徹さん(45歳)は「環境やエネルギー問題を抱える発展途上国の方が、先進国よりも電動バイクの需要が高い」と、現在、アジアをターゲットに市場開拓を進めている意図を語った。その徳重さんからバングラデシュを任されたのが、桑原康史さん(27歳)と上田晃裕さん(29歳)。いずれもこのベンチャーの理念に賛同し、大手企業から転職してきた。

バングラデシュは天然ガスの生産国だが、地域によって少しずつ枯渇が始まっている。二人はある地方都市に目をつけていた。そこは貧困地域のため貴重な天然ガスが行き届かず、電動の三輪タクシーが生活に欠かせない交通手段となっていた。いわば、いずれ天然ガスが枯渇するバングラデシュの先行事例となっていたのだ。

その町に先行して溢れていたのは中国製の電動三輪タクシー。安物のため「バッテリーが半年で使い物にならなくなる」と、ドライバーからは不満が続出していた。バッテリーを頻繁に交換しなければならないため、出費がかさむというのだ。

実はテラモーターズの売りは充電器。バッテリーへの負担が少ないため、中国製に比べて寿命が1.5倍長いという。現地に合わせての車体設計で割安な生産体制をスタートさせた桑原さんたちは、市場での逆転劇への自信を深めていた。1号店のオープンの直前に、日本の技術を詰め込んだ品質の高さ(しかも値段は中国製とほぼ同じ!)をタクシードライバーたちにアピールすると、好感触だ。

しかし、そこには予期せぬトラブルが待っていた。何と、1号店には完成車がオープン前日までに一台も納入されていないのだ。二人が慌てて工場に駆け付けると、まだ完成した車は一台もない。バングラデシュ従業員が直前までさぼっていたのだ。前日寝られなかったので昼間寝ていたという呆れた言い訳だ。二人は従業員を叱咤し、徹夜で何とか2台を組み立て、1号店に持ち込んでオープンを迎えることができた。

いよいよバングラデシュ1号店のオープン日には、早速タクシードライバーたちが店に押しかけてきた。順調に商談が進み、注文が積み上がるが、追加の完成車は全然届かない。遠くから来た客など、今日中に引き取りたい客ばかり。イライラが募る客と焦る桑原さんと上田さん。

片方が至急、工場に様子を見に行くと、従業員はのんびりと組み立てており、まだ一台も完成していない。どうやら今日も重役出勤だったようだ。従業員の尻を叩きながら一台、もう一台と完成するそばから店にピストン輸送する。完全に泥縄式だが仕方ない。それでも店に到着した完成車は我先に客が引き取っていく。引き渡しの様子は少々殺気立っていたようだ。

どうやらテラモーターズの電動三輪タクシーは高品質で市場でも競争力があるようだ。購入したタクシードライバーたちはがんがん商売に励んでいる。テラモーターズのは1.5年間バッテリーが持ち、半年で元が取れると言っていたので、1年分まるまる稼ぎになるのだ。それが証明される頃、テラモーターズの評判は現地で揺るぎないものになっているだろう。

ただし、工場の従業員は入れ替えておいたほうがよさそうだ。

テーマ : 経営コンサルタント
ジャンル : ビジネス

オリンピック・ロゴの白紙化に思う「塞翁が馬」

東京オリンピック/パラリンピックのロゴが「白紙化」されることが正式にアナウンスされた。もしかすると、とは思っていたが、いざ本当に発表されるとやっぱり驚きだ。オリンピック史上初の不名誉な事態だろう。国立競技場の建築デザインの「白紙化」に続いてというが、多分あれが先行してあったから、大会組織委員会の決断のハードルが下がっていたのだろう。

それほど注意してウォッチしていたわけではないので、正確な経緯は知らないが、大まかには次のような流れだったようだ。まずロゴが正式に発表された時点では大した騒動はなかった。しかしベルギーの劇場のロゴをデザインしたデザイナーが「盗作だ」と騒ぎ立ててから、一連の騒動が始まった。

このベルギーの劇場のロゴ・デザインについては商標登録もされていなかったために類似チェックの対象とはなっていなかった。確かに部分的に似ているが、単純なデザイン・ロゴの場合、偶然であの程度の類似性は生じてしまう。デザイナー本人(佐野氏)が記者会見してきっぱり否定した段階では、デザイン業界の大半の人間および知財弁護士なども問題にしていなかった。世論も一旦は納得したと思う。

しかし事態はその後、ネット上で反転した。佐野氏の事務所がデザインしたサントリーのトートバックに数点、盗作疑惑が浮上したのだ。小生も見たが、指摘の幾つかは一笑に付すべきものだが、数点は本当に怪しかった。やがて週刊誌やテレビなどによる佐野氏や事務所への糾弾が激しさを増していったようだ。

騒動を鎮めるため、大会組織委員会は再度記者会見を開き、そこで佐野氏と共に今回の応募時のデザインから修正した経緯とそのデザインの変遷を公開した。しかしそのオリジナルデザインが既存の他のデザインと似ていること(だから修正を指示されたのだが)、そうしたデザイン修正をさせてまで佐野氏に拘ったことで、大会組織委員会の中立性にまで疑問が付いたのだ。

それと平行して、事務所のスタッフを問い詰めたところトートバックに関する盗作を白状したのだろう。佐野氏は当該のトートバックのデザインを取り下げるよう、サントリーに自ら申し入れたそうだ。これを受けて、今まで佐野氏を擁護していた同僚のデザイナーやアートディレクターも手のひらを返したように彼を批判し始める結果になった。皮肉なものだ。

大会組織委員会は再三記者会見を開いて、佐野氏のデザインの考え方とそこから分かるオリジナル性を説明させていたが、そのための方法として、今後の雰囲気盛り上げのキャンペーンなどで、今回のロゴをベースに様々な文字を同様のデザインで創ることができる点を強調していた。それをポスターに使って街角で掲示した例も提示していた。ところがその際の背景となる街角の風景写真を他人のブログなどから無断でコピーしていたことがブログ所有者の指摘などで判明したのだ。これはデザイン事務所としては致命的だった(手間を惜しまずにスタッフが街角に出掛けて写真を取ればよかったのだ)。

自らの審査の正当性や客観性などを疑問視されてナーバスになっていた大会組織委員会は一挙に態度を硬化させ、佐野氏に「下りる」よう説得したようだ。「もうかばい切れない」という心理だったのだろう。佐野氏も潮時と考えざるを得なかったようだ。トートバックや使用シーン説明写真での盗用は認めるが、オリンピック・ロゴに関しては断固として盗用を否定すること、大会組織委員会もそこは同調することを条件として。

実際、オリンピック・ロゴに関しては(経緯も含めて考えても)盗用はなかったと思う。しかしトートバックや使用シーン説明写真での盗用といった些末な部分でのお粗末な管理により(これはデザイン事務所の責任者として脇の甘さを責められて当然だ)、とんだ不名誉を背負い込むことになったと、氏には半分同情する。

これからこの事務所の経営は立ちいかなくなり、佐野氏のデザイナーとしての能力を発揮する場面は極端に少なくなるかも知れない。オリンピック・ロゴのデザインコンペでの当選が引き起こした暗転である。まさに「人生、塞翁が馬」である。

テーマ : 社長ブログ
ジャンル : ビジネス

最新記事
月別アーカイブ
プロフィール

austintex

Author:austintex
FC2ブログへようこそ!

カテゴリ
最新トラックバック
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR