地域づくりの事例はとても参考になる

直近で再び、地方再生・創生・活性化をテーマにした仕事を複数請け負っている。大変だが面白い。

そんな折、NHKで面白い番組を目にした。6月25日(土)に放送された「TVシンポジウム いま“地域づくり”を語り合う」だ。住民たちが地域の課題に向き合い、力を合わせて地域づくりを成し遂げてきた事例をもとに、1人1人の能力を引き出し、誰もが安心して生き生きと暮らせる地域社会をつくっていくにはどうしたらいいかを紹介してくれた。

パネリストは、食の6次産業化に取り組む鹿児島県鹿屋市柳谷集落(通称やねだん)の豊重哲郎さん、小水力発電によるエネルギーの地域自給に取り組む平野彰秀さん、誰もが通えるデイケア施設を運営する富山市の阪井由佳子さん、総務省過疎問題懇談会座長を務める早稲田大学教授の宮口侗廸さん、そして、「FEC自給圏」を提唱している経済評論家の内橋克人さんの5人。
http://www.nhk.or.jp/chiiki/program/160625.html

「FEC自給圏」というのは、Food(食)・Energy(エネルギー)・Care(医療・介護・福祉)をできるだけ地域でまかなうことで自立した地域を目指すものだ。これは非常に正しいポイントをついた発想だと思う。
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奇跡の医療を間近に見る

最近考えさせられるが、あまりに進んだ延命治療については、半面で「ヒトはどこまで生き続けることが幸せなのか」という疑問すらもたらす。しかしやはり愛する家族が再び健康になってくれる喜びに勝るものはない。それも人間の真実だ。

6月13日に放送された「未来世紀ジパング」はそんな医療技術のありがたみを感じさせてくれるものだった。題して「奇跡の医療!世界最前線」だ。3つの「奇跡」の例を紹介してくれた。

一つ目はアメリカでの奇跡の出来事。現在67歳のラリーさんは30代の時、「網膜色素変性症」という病気で失明した(日本でもこの病気の患者数は5万人と推測)が最近、「アーガスⅡ」により光を取り戻したという。アメリカのセカンド・サイト社が開発した人工網膜のシステムだ。これを装着することで、なんと30年ぶりに妻の顔を見ることができたのだ。

この「アーガスⅡ」というメガネは、手術によって埋め込んだ人工網膜を使い、メガネに着けた小型カメラの映像を人工網膜に投影し見える仕組みだ。現在アメリカでは約200人がアーガスIIを使用しているという。ただし、アーガスIIで再現できる視覚は60画素で白黒なので、人間の判別ができるまでクリアなものではない(TVではそのイメージも紹介された)。そして手術費用は、約1,500万円と半端でない。

ちなみに日本ではアーガスIIの治療を受けることは出来ないが、人工網膜の研究は行われており、岡山大学が開発を進める「オーレップ」というのが有望だ。オーレップの材料は、ポリエチレンに光電変換色素を化学結合した人工網膜。光を電気エネルギーに変換する技術で太陽電池にも使われている。2017年末には実用化の許可申請を出す可能性があるという。メガネもいらず、ポリエチレン製のため手術費用も100万円というので、期待したい。

奇跡の医療の2つ目は不治の病に新治療発見という話。高齢化に伴い患者が急増している病気、「大動脈弁狭窄症」という心臓病は、加齢などにより心臓の大動脈の弁が石灰化、血液の流れが悪くなり心不全などを起こす病気だ。通常は外科手術によって治療するが、体力の落ちた高齢者にとっては手術ができないため、諦めて死を待つほかなかった。

ところが、外科手術をせずに治療するTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術」)という新技術がフランスで開発された。慶應義塾大学病院の林田健太郎医師は、フランスに渡りその技術を習得し、成功率100%を誇る。今や本国の医師を凌ぐほどの名声だ。2013年、「TAVI」は国民健康保険の適用となり、誰でも受けられる治療となった。TAVIの死亡率は日本では2%。世界では6.3%。日本は恵まれた国だ。

奇跡の医療の三つ目は、「医療のない地域に医療を」という話。今年5月、カンボジアに新しい病院ができた。治療代はなんと無料。患者が続々やってくる。この画期的な病院をつくったのは、日本のNPO法人ジャパンハート、「医療の届かないところに医療を届ける」ボランティア組織だ。

実はカンボジアには日本のような保険制度はなく、治療代が払えないため病気にかかっても諦めていた人が多かったのだ。この病院、「ジャパンハート医療センター」というが、全額日本からの寄付でまかなわれている。しかも、個人からの寄付が多いという。寄付のスタイルに特徴があり、吸引器、聴診器など必要な物を寄付する形をとっている。2014年の1年間で約1億2,000万円寄付が集まった。

さらにここで働く医者や看護師もボランティア、普段は日本で働いているが、数日間の休暇をとって治療にやってきて、また日本に帰るのだ。しかも、無給どころか渡航費も自己負担!

確かに奇跡だ。なぜこのシステムが成り立っているのだろうか?ジャパンハートでは12年間で2千人以上もの参加があったという。滞在期間が2日からという超短期で手伝えるため参加できる仕組みがとても画期的であることも間違いない。しかし何といっても、(自分で旅費などを払っても)医療の原点を体験する価値はあるというのが医師・看護師が参加する理由だという。素晴らしい人たちが多いのだ。

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『EU離脱』の代償は高くつきそうだ

英国の国民投票の途中情報を昼過ぎに見、「『離脱』ほぼ確定」と聴き、茫然とした。全く予想が外れた。

海外も国内もニュース等では拮抗しており、むしろ最近のコックス議員の暗殺事件で残留派が盛り返したと聞いていたし、ブックメーカーが残留派優勢と見ていたので(実はこの情報が一番有力だった)、なおさらだ。

色々と後講釈はあるが、ここまで英国民の「反移民・反ブリュッセル」感情が強かったのを読み違えたということだ。小生も世間の多くも。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kobayashiginko/20160624-00059221/

どうやら日本の証券関係者や投資家のかなり多くが、今朝一番で株式の「買い」に見切り発車していたらしい。開票が先行していた地域で残留派が優勢で、「もう大丈夫」と考えたのだろうが、ご愁傷さまだ。小生も忙しい中、買い付けの準備をしていたのだから、人のことは笑えない。

それにしても英国民のこの決断の代償はかなり高くつくだろう。ブルーワーカー層はあまり理解しようとしなかったのかも知れないが、間違いなく資本逃避が始まるだろうし、景気は急速に悪化しようし、その一方でポンド安による輸入物価高騰が起きるだろう。製造業が衰退し輸出するモノがあまりない英国としては、ポンド安はあまりメリットがなく、デメリットばかりではないか。

でもそうした短期的な経済的不安要素を感じても、この決断に至ったというのは、それだけ英国民が移民と、ブリュッセルの官僚と規制主義を嫌ったということだろう。こうした「大嫌い」という国民感情が大きな過ちを招くことがあるのは、日本の真珠湾攻撃やイランの米国大使館焼き討ち事件など、歴史には度々生じる事態である。

自分たちでは「英国は再び独立する!」と叫んでいたが、実は中国への従属の長い旅が始まったのかも知れない。米国陣営に所属しながら中国とも等距離を保とうとして、どちらからも見放されつつある韓国と似たような立場になるのかも知れない。

非EUになった英国から逃げ出す外資企業と若者は続出しても、この期に及んで進出してくれるとしたら、「火事場泥棒」的に底値で買い叩こうとする中国人くらいではないか。ギリシャ以上に役に立つ「欧州のポチ」として、中露同盟国に取り込もうとする動きが明白になるだろう。

一方、EU圏だからと英国に進出した日立や日産などの製造業は大きな痛手を被ることになった。従業員教育が満足いくレベルにまで至ったのに、対EU輸出では高い関税を課せられるので、EU内の競合に勝つのは大変になってしまう。この段になっては資産価値が暴落してしまうので、売り払うことも損だし癪だ。

我慢してEU外への輸出拠点としたいが、欧州内はノルウェーやスイスなど人口が少ないところばかりでロシアは中間層に購買力がない。中東も豊かな国は意外と人口が少ないし、道路距離が短い。あとは戦争または内戦中の荒れた国が多い。アフリカはまだ「離陸」していない。

つまり「なんでこんな国に進出したんだっけ?」と首をひねる事態になってしまったということだ。

ただし一部の人たち、たとえばロンドン在住の金融関係者はもしかすると大して困らないかも知れない。むしろExpatsや観光客はポンド安でリッチな滞在を満喫でき、そのおかげで金使いが派手になれば、ロンドンの商店・飲食店は(地元からの買い付けである限り)利幅が増える可能性だってある。

しかし今回の国民投票でLeaveに投票した大多数の人たちは損をするだろう。年金生活の老人たちは極端な物価高に苦しみ、ロンドンの商店主でもなく金融関係者でもない大多数の人たちは不景気にさらされ、職を失い、物価高におびえるだろう。ちょうど彼らが最近まで嘲っていたギリシャ国民のように。自業自得とはいえ皮肉なことになりそうだ。

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新規事業における素朴な疑問 (10) 民主主義的態度を装うリーダー

経営者は孤独なもの。そして新規事業を背負うリーダーというのは経営者の気概を持って事業メンバーを引っ張っていく必要があり、政治家的な振る舞いは不要だ。ましてや「民主的組織運営」を装うだけの優柔不断さは害毒にしかならない。


新規事業の推進責任者に抜擢された比較的経験の浅い人材が、気負い過ぎてなんでもかんでも独断専行で決めてしまうので、誰も付いてこなくて立往生してしまう、という話を時折聞く。だからといって、その逆に部下の意見をまんべんなく取り入れようとしたらどうなるか。

新規事業の企画段階ではよくあることだが、どれだけ様々な客観的データを集めて潜在客の意見を聴収したとしても、それ以上は客観的に頼れるものはなく、最後は主観的判断で決めなければいけない場面がある。例えば、売り出す製品のデザインであり、サービスの重要なユーザーインターフェースのあり方である。

また新規事業の運営の初期段階でよくあるのは、当初想定通りにいかないことが判明し、早急に修正しなければいけないのだが、どうすればいいのか誰にも正解が分からない場面だ。例えば、思ったように客数が伸びないので価格付けを変えるべきなのか、販促方法を追加・変更すべきなのか、それともチャネルそのものを考え直すべきなのか…。

いわば、暗くなりかけた山道で分かれ道に立って、右か左のいずれを選ぶべきかを決めなければいけない状態である。しかも懐中電灯もないため、迷ってばかりいると途中で暗闇に閉ざされてしまい、立往生してしまうことが確実という事態だ。

事業の主要メンバーは既に「自分はこう思う」という意見とその根拠は口にした。それぞれの立場と限られた経験に拠った意見なので、圧倒的な説得力は誰にもない。神ならぬ身でありながら事業の将来を左右する判断をするのだから、あとは最も幅広い情報に触れているはずの責任者に判断を委ねようという気に周囲はなっている。

この段になっても、部下に対し「どう思う?」と再び意見を繰り返させ、一向に判断できないリーダーの姿を目にしたら皆、どうなるだろう。いわゆる「小田原評定」の状態になってしまうのだ。

もしくはそれぞれの意見をつなぎ合わせただけの中途半端な折衷案でお茶を濁そうとしたらどうだろう。先ほどの例でいえば分かれ道の中間に突っ込むようなもので、確実に遭難してしまうだろう。

ある程度行き先が見えている既存事業においてさえ、意思決定のペンディングは緊張感と責任感に欠ける組織運営をもたらしかねない。それでも既存事業の場合、日常的な運営に迷うことが少ない分、しばらく時間稼ぎをしていてもパニックになることはない。秀吉の大軍が攻めてくるわけではない。

しかし時間との過酷な競争を余儀なくされる新規事業においては、こうした立ち止まっている時間が長いことは、それだけ競争者に先行を許すリスクを高めることを意味する。

経験値が少ないことにコンプレックスを持つ若きリーダーはさらに民主主義的なふるまいに及び、非常に危険な状況を招きかねない。この種のリーダーは怖いことに、一種の多数決で決めようとするかも知れない。つまり多数意見に従おうとするのだ。実は小生、そういう場面を目にしたことが何度かある(もちろん止めたが)。

多数派に従うことが正しいという保証などない。むしろ責任が曖昧になるだけで、禄でもない結果になりかねない。仮に結果オーライであっても、その組織にとって悪い前例を作ってしまう。

なぜこうした妙に「民主主義」的なふるまいに及ぶ若きリーダーたちが決して少なくないのか。実はいくつかの勉強会で、こうした経験を持つ人たちに(遠まわしではあるが)尋ねたことが何度かある。驚いたことに、彼らは別段おかしなことをしたとは思っていないのだ。それで組織が滑らかに回っていくならそのほうがよいではないか、という感覚なのだ。

どうやら「民主主義」的なふるまいというのが大人の正しい態度だと学校教育かクラブ活動で刷り込まれているのではないかというのが小生の仮説である。そして事業主導の経験がまだ少ない段階では、この過去の経験値に基づく方針でメンバーの信頼を勝ち取ろうとするのではないか。

さらに一部の先進的な組織運営例として、「エンパワーメント」などの言葉と共に「民主主義的」なやり方が日本にも紹介されてきた経緯もある。自分たちは頭ごなしに命令する「昭和オヤジ」たちとは違ってスマートなやり方ができるのだ、と考えたいのだろう。

しかし「民主主義的」運営では決して強い組織にはならないし、ましてやスピード重視の新規事業では致命的ですらある。やがて彼らも、この運営方針が企業経営、とりわけ新規事業の経営には向かないことを体験的に学習するのだ。

小生がよく存じ上げている、大企業で過去に新規事業をいくつか任され(その一部には手痛い失敗があり)、今や大きな事業を任されるようになった40代以上の人たちは皆、優柔不断でないのはもちろん、民主主義的態度を装うことなど決してない。

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製造の日本回帰、望ましくも険しい道

近年、超円高が止んで一時期は相当な円安が続いたのと、中国の人件費高騰が続いたせいで、日本から蜘蛛の子を散らすように消えてしまった製造機能を再び日本に戻そうという動きが目立つようになっている。

しかし一旦失った製造業の能力集積というものは、最終製品メーカーの思い付きや気まぐれだけではどうしようもない側面がある。それを見せつけたのが、6月17日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(TV東京系)の「ニッポン製"再起"に挑む!」の回だった。

年間70〜80種類の商品を開発・販売する家電メーカー『ツインバード工業』。本社は新潟県燕市、社員300人、年商130億円の中小メーカーだ。かつてはメッキ工場だったが、70年代に結婚式の引き出物を作り始め、電気ポットや携帯型テレビラジオ付きライトなど、人々が求めるアイデア商品を次々に世に送り出してきた。最近はユニークなデザインの製品を次々に出しており、我が家でも正面が鏡面のように美しいオーブントースタを最近購入している。

これに加え、他メーカーに近い品質ながら低価格の"ジェネリック家電"も多く生産。こうした多品種の開発を実現できたのは「何でも試作する開発力」と「生産を支える協力会社」だった。燕三条は古くからモノ作りの街、どんな商品でも量産化できる部品工場が数多くあったらだ。しかし、90年代の円高で生産拠点が中国へ移転し、地元の協力工場とも疎遠となっていった。

そんな中、ここ数年の円安と中国の人件費高騰で同社も戦略の変更を迫られ、国産回帰を検討していた。その第1号が扇風機。360度回転できる、今までにない商品だ。加えて、金属加工が盛んな地元・燕三条の技術である「磨き」や「絞り」をうまくいかした家電製品に作り上げる計画だ。

しかし、大きな問題があった。かつて部品供給してくれた地元工場が協力してくれるかどうかだ。実際、多くの地元の協力企業が規模縮小を強いられてきたため、腕のよい加工職人が減っているのだ。中には業態転換や廃業したところもある。番組では、ツインバード工業の企画部長が若手の担当を引き連れて、ご無沙汰している昔の協力工場(パーツ製造や金属加工など)に頭を下げに行く場面がいくつか出ていた。協力企業の社長の複雑な表情は見逃せなかった。

日本に戻そうというメーカーの努力は尊いが、「日本と下請けを見捨てたのは誰だったんだ?」と恨み言の一つも言いたい下請けの人たちの気持ちを忘れないで欲しいと感じた。

もう一つの例は、日本を捨てた前科のないクリーンな会社の話だった。以前にもこの番組で取り上げられていた、メード・イン・ジャパンを前面に打ち出して人気となったベンチャー腕時計ブランド「ノット」だ。

これまでは機械部分の日本製ムーブメントを使い、日本で組み立ててきたが、ボディや文字盤、針などの部品は中国製だった。しかしノットの遠藤社長は、これらの部品も日本製にして〝純日本製〟の腕時計復活を目指したいという。さらにこれを機会に、機械式高級腕時計づくりに挑戦しようというのだ。しかも価格を5万円以下という破格の設定にするという。正直、「無理だろ、それ」とつぶやいてしまった。

例えば、文字盤製造のできる工場をいざ探してもなかなか見つからない。文字盤に字を埋め込む「植字」などの技術は、とっくに中国に渡ってしまい、日本国内では既に衰退していたのだ(クビになるなど職人が廃業してしまっているのだ)。

遠藤社長は、ノットの時計を組み立てている秋田県仙北市の精密機器メーカー「セレクトラ」を訪問。同じ工場で文字盤も製造ができないか、依頼したのだ。職人が文字盤に「植字」する作業時間を測定すると、中国工場の職人の2~3倍も掛かることが判明。こればかりは熟練度の違いが現実に現れてしまうのだ。それでもこのメーカーは担当者に訓練をさせ、やがて中国工場の職人と同じレベルにまで達することができた。さすが日本人のまじめさと器用さだ。

一方、福島県須賀川市にある林精器では長年、国産高級腕時計のフレーム部分を製造してきた。特に"磨きの技術"は高い評価を受けている。この林精器にノットの新商品のフレーム部分を作ってもらいたいと遠藤社長は考える。

とはいえ、林精器製のフレームは、1つ10万円以上の機械式腕時計でしか使われない部品。最初はコストが合わないとして、難色を示される。しかし遠藤社長は自らシンプルで飽きないデザインを考え、それなら磨きを掛ける部分が少ないため、大幅なコストダウンも可能だと合意する。さすが伸び盛りのベンチャー社長、ちゃんと頭を使うところを分かっている!

横浜元町での新店舗で売り出したところ、どっとお客が殺到していた。この5万円の機械式腕時計も売れていた。それはお買い得だと思う。しかもその店では自分の好みの文字盤と針の組み合わせが選べ、その場で職人が組み立ててくれる仕組みになっている。いい意味で商売がうまいと感心した。

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印象的な名古屋港の4人のプロ

登場人物が違うのに、観るたびに「いやぁプロだね」と唸らされる番組、それがNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」だ。無茶苦茶忙しいこの頃でも、録り貯めてあるのを順次観てしまう。6月6日の放送は「巨大港スペシャル 日本の経済を支えるプロたち」と題し、名古屋港の4人のプロたちを紹介してくれた。

1人目は近藤賢二氏(46)。「ハッチ ボースン」と呼ばれる、自動車の船内積み込み作業のボスだ。名古屋港から運ばれる自動車は、専用の船に乗せられ海外や国内に届けられる。その年間輸出量は、海外だけでも年間130万台以上。40名以上のドライバーたちを指示し、大量の車を船に積み込む専門のプロが近藤氏だ。

言葉を使わず、手のサインと笛だけでさまざまな車を船内に誘導し、傷ひとつ付けず、隙間なく積み込んでいく。その数、1,000台以上。次々と流れてくる車の車種、大きさ、そしてドライバーの力量を見極め、積み込む場所を、瞬時に判断していかなければならない。その舞うような姿は何か芸術を観ているみたいだ。

どんな不測の事態が起ころうとも、時間内に確実に終わらせなければいけないこの仕事。その極意を、近藤氏は「川の流れのように、速いところは速く、ゆっくりなところはゆっくりと。…必ず動いている状態にするのがよい」という。名人の言葉だ。

2人目は安全航行のプロフェッショナル「水先人」、井上道彦氏(69)。弊社の名前の由来でもあり、興味深く観た。

名古屋港は漁船、貨物船、タンカーなど、常に大小さまざまな船舶が集中し混雑を極める。また航路が複雑に入り組むなど、国内主要港の中でも航行が難しい港だ。そこで実際に全長数百メートル、総重量10万トン近い大型船に乗り込み、船長に代わって船舶を安全かつ迅速に導くのが水先人の仕事だ。その中の最高級、一級水先人が井上氏だ。

井上氏の水先人としての信条は「安全に勝るものは何一つない」と極めてシンプルだ。巨大船の操船において、最も注意が必要なのが岸壁への着岸。少しでも勢い余って着岸すれば、岸壁は簡単に大破するし、船体も傷つく。井上氏は細心の注意を払い、出来うる限りソフトな着岸を目指す。その着岸方法は、まず岸壁に対し平行に船をとめ、タグボートで船を押しそのままソフトに着けるやり方。

よりスピーディに着岸する別の方法もある。平行にとめず、船の頭を岸壁に斜めに突っ込み、お尻だけを押すやり方だ。しかし井上氏は決してそれをしようとしない。「間違っても事故を起こさないためには、そんなカッコいい操船は出来ない。いわば船の操船で“匠の技“を見せることはない。むしろ大事なことは、安全そのもの」というのが氏の持論なのだ。

3人目は名古屋港で50年間船食を営む、刀禰(とね)昭子さん(72)。「船食」とは寄港する船に食料や日用品を届ける「船舶食糧品商」のこと。船員たちから頼りにされる「名古屋港のママさん」だ。

刀禰さんの元には年に600隻以上の船から注文がくる。船員の国籍はフィリピン人にインド人、ロジア人やベトナム人などさまざま。外国人船員の求める難しい注文でも、刀禰さんは決して断らない。それは外国航路の船にとって食料は死活問題だと知っているからだ。

そんな刀禰さんには、あるこだわりがある。それは野菜と果物の鮮度。長い航海を続ける船員たちのために少しでも鮮度の良いモノを食べてもらいたいと、どんなに忙しくても、野菜と果物は船に配達する直前に仕入れると決めている。単にオーダーどおりのものを届けるのではなく、鮮度という“真心”を添えるのだ。

「オーダーどおりのものを納めてあげるのは100%大事なんだけども、そこんところに私なりのアイデアを入れてあげるというのは、絶えず心がけている。その真心以外なにもない」。これが刀禰さんの真心だ。

4人目は、輸送実績トップを誇る特殊な大型重機「ストラドルキャリア」を操る会社で55人の作業員を束ねる監督、高野勝司氏(54)だ。

沿岸でのコンテナの運搬に使われる「ストラドルキャリア」。中でも進行方向に向かって横向きに座るタイプは、操縦が極めて難しい。信号もないターミナルの中を何台もが行き交う。だが名古屋港では導入以来、死亡事故ゼロを守っているという。

高野氏は朝一番に来ては、作業員のために毎朝ゆで卵を作る、人情深い監督だ。彼が大切にしていること。それは、作業員の安全を守るために、チームひとりひとりを見るということだ。高野氏は朝や夕方などに必ず皆に声を掛け、健康や心の状態などを見ている。例えば服用している薬の成分に眠気を起こすものがないかまでつぶさに尋ねる。そうしてチーム一人ひとりを見ることが、チームの安全につながると考えているのだ。よく分かる。派手ではないかも知れないが。それが大切なのだ。

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「新しいリサイクル事業」の目の付け所

最近気になるのが、それと見えないほどすぐれたリサイクル製品やリノベーション住宅。日本のような資源が少なく人口が減少する国では重要な国家サバイバル戦略だと思う。そんなことを普段思っているのだが、6月10日(金)に放送された「ガイアの夜明け」は示唆深かった。題して「捨てるの待った!~新たな"リサイクル"の幕開け~」。

最初は大阪市生野区の木工所「パレットハウスジャパン」。この町工場はユニークな材料を使っている。廃パレットを加工して家具を組み上げ、人気を呼んでいるのだ。「パレット」とは、工場や物流施設などで、フォークリフトで荷物を運ぶときに下に敷いて使う、木製のあれだ。輸入品とともに世界中から日本にやってきて、最後には産業廃棄物として処分されている。その「廃材」を無償で譲り受け、新たな商品を生み出しているのだ。

この社長・大町浩氏は、廃パレットならではの"使い込まれた"感じを逆手に取って「ビンテージ」風の商品に仕上げ、"味わい"にしているのだ。確かに出来上がった製品はなかなかいい感じで、ミスタードーナツの店舗で内装材に採用されたり、オフィスやカフェなどで人気を呼び始めたりしているようだ。 こんなリサイクル製品がもっと街に増えていい。

もう一つの動きは、施設がリニューアルされる度に、そこで "廃材"として処分されるものを、「昔の思い出を偲ぶ商品」に生まれ変わらせようという動きだ。この事業を手がけるのはチケット販売業「ぴあ」。これは新鮮な驚きだった。全国のイベント会場などと繋がりが深く、施設の解体・改修情報が常に入るうえ、できた商品をぴあのチケットシステムで販売できる、という強みを持つためだ。施設側も廃材を無料で引き取ってもらえるのでメリットがあるのだという。

最近でもホテルオークラ東京や国立競技場、横浜アリーナ等々、さまざまな人の思い出が詰まった施設が、相次いでリニューアルされている。人気家具メーカーとコラボして国立競技場の観客席を使った椅子を手がけたり、ホテルオークラ東京の壁の布地でつくったクッションなどを販売したりして人気を呼んでいるそうだ。

番組で紹介されたのは、武蔵野市で改装中の市民ホール。音楽やバレエなど、地域住民の思い出が詰まった施設だ。プロジェクトの責任者、「ぴあ」の米村修治さんは建物にまつわる「思い出」をテーマに、廃材を活用した商品づくりに乗り出した。バレエレッスン用のバーや楽器のパイプなどが、地元の家具職人やアクセサリー加工職人の手によって素敵な商品に再加工されて販売されていく光景は素敵だった。

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AIの進化動向を垣間見た

最近のプロジェクトの半分近くが、何らかの部分で人口知能(AI)の存在に影響されているか、もしくは人口知能をいかに効果的に使う/取り入れるかというものになっている。そのためAIの進化のテンポや方向性には常日頃関心を持たないではいられない。

5/15(日)と5/18(水)に放送されたNHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人口知能を探る」はまさにそのど真ん中を射るようなテーマだった。そして気づきも得ることができた。

将棋界最高の頭脳の持ち主といわれる羽生善治氏がレポータ役をやるというのも贅沢だが、個人的にも関心が強いことがよく伝わってきた。

AlphaGo(アルファ碁)に関するトピックは、世界最強棋士のイ・セドル九段が対戦前にあまりに自信過剰だったのが3連敗後にはすっかり自信喪失しているのが少々情けなかった。しかもやけくそ気味に打ったでたらめ手にAlphaGoが混乱して暴走したのには驚いた。ただ、だからといって「こんな暴走するようなAIを医療などのクリティカルな場面で使うのは危険過ぎないか」と訊ねた韓国人記者にはずっこけた(案の定、「まだ試作機です」と一刀両断されていた)。

Google傘下のディープマインド社の天才CEO、デミス・ハサビス(39)氏と羽生氏の対談がとても興味深いものだった。ディープランニング技術を深めていく過程、特に直感をAIにもたらそうという発想がユニークだ。さらに人間を超える創造性を得るために行ったのがAlphaGo同士で対局を繰り返すことだったというのが面白い。

後半の、シンガポールが既に社会システムの管理にAIを積極的に使っている様子が今回の番組で最も驚いた部分だ。都市交通システムの制御に使い始めたのは知っていたが、既に渋滞の解消に大きな効果をあげているとは大したものだ。

国内最大のDBS銀行で、職員の不正行為を未然に防ぐ人工知能を導入したというのが一番の驚きだ。収賄など不正な行為を画策しそうな職員をあぶり出す。24の項目があり、一人一人の取引の仕方、外部とのチャットの内容、メールの文面などを監視している。実際に不正行為を企てている職員を予測できる精度は90%だという。

同国政府は今後、国家の運営を次々と人工知能に委ねようとしている。そのために既に収集しているのが国民一人一人の行動データ(さすが中国以上の管理国家!)。交通機関の乗車履歴、スマートフォンからは個人の位置情報を1秒ごとに集めている。人間にストレスを与えず、かつ省エネも考えた交通ダイヤを人工知能が指示する。国営住宅にはセンサーが設置され、常日頃から住民の生活パターンを把握する。異変があればAIがすぐに気がつき、その緊急度まで判断、家族や救急隊に知らせるという。

「エネルギー供給、交通や医療の整備、犯罪の防止まで、人工知能に管理させることによって社会は飛躍的に効率化される」というスマート国家計画担当大臣ビビアン・バラクリシュナン氏の言葉に、なんとなく背筋が寒くなってしまった小生は旧世代なのだろうか。

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営業改革を考える (10) “人材使い捨て”組織は若者から見放される

今後、多くのニッポンの営業組織は若者の募集に苦労するだろう。その最大要因は、企業自身が“人材使い捨て”体質化したことにある。


営業組織は若い力を常に求める。
それだけ気力・体力を要する職場であることも理由の一つだ。それ以上に、人と会い話すことを習い性のようになるには、柔軟性がある若いうちのほうがよいと多くの企業が考えるからである(小生は年齢差より個人差のほうがずっと大きいと考えるが…)。
しかし今後、多くのニッポンの営業組織が若者の募集に苦労するだろうと小生は考えている。いや既に、人材募集支援会社の張り切りようから見て、その兆候は現れているようだ。
主な要因は3つある。一つは周知の通り、若者の絶対数がどんどん減っていることである。もう一つは企業側の問題で、「若者を育てる」能力が衰えていることである。最後はネット情報化である。後者の2つについては少々説明が必要だろう。
“失われた20年”の間の就職難のせいで若者は、人を大切にしない企業に対しても、「就職できれば御の字」とばかりに応募してくれた。しかし成果主義と人件費削減のせいで、中堅の営業マンはやたらと忙しくなり、昔のように先輩が後輩をじっくり指導する余裕を失ってしまっている(バブル世代の一部には、自らがきちんと指導されずにきてしまい、そもそもやり方が分からない人たちもいる)。
とりわけ、若手の営業マンを叱咤するだけでケアしない、若者使い捨て体質になってしまった企業が増えたことが近年問題になっている。いわゆる「ブラック企業」化である。
そうした企業の営業組織では、定着率を上げる努力を十分しないまま、営業マンの「取り換え」を繰り返してきた。就職難の時代にはそうした「ブラック企業的」なところにも応募が続いたゆえに可能だったやり方である。しかし労働市場は既に売り手市場に転換しており、こうした「若者を育てる」能力に欠ける企業は必然的に敬遠されつつある。
“追い出し部屋”によりまだまだ働き盛りのオジさん達を追い出している大企業もまた、“人材使い捨て”文化に染まってしまったとしか云いようがない。中には若手社員に対し「上が空くからキミ達には朗報だ」と暴言を吐く幹部もいるらしい。その姿に失望し会社への忠誠心を失った若者が転職活動に精を出すことには、頭が回らないとみえる。
しかもそうした“人材使い捨て”体質になってしまった企業の実態が、ネット上に漏れるようになっている。
従来は“2ちゃんねる”など、ちょっとアナーキーな媒体ばかりだったので、情報自体が胡散臭いと見られてきた。しかしFacebookやTwitterといったSNSが普及した今、知人からの口コミを通して、企業の風評がごく一般の人の目に触れるようになっている。どこまで確かかはともかく、転職サイトの一部では随分直截的に企業のブラック度が品評されている。
一旦「ブラック企業的」だという評価が定着すれば、若者の応募は極端に減る。本当のブラック企業だと社名を変えてしまうので痛くも痒くもないが、少々「ブラック企業」化した程度の普通の企業はこのトレンドの痛手を被る。
働き盛りのオジさん達を追い出した大企業もまた例外ではない。口コミで実態が伝えられ、それを読んだ人たちが噂を増幅する。怖い時代になったと覚悟すべきである。
もし自らの組織が“人材使い捨て”体質であると多少でも自覚するようなら、経営者および営業幹部はその体質を変えることを急がねばならない。
上に述べたトレンドは未来の話ではなく今日の話である。そして一旦「ブラック企業的」だとみなされれば、(昔の「人の噂も七十五日」と違い、今はネット上に残るため)その評判を塗り替えるには最低数年間の並大抵でない努力が必要になるのだから。

(本稿は2013年4月のコラム記事に加筆修正したものです。当時は予言じみていましたが、今や現実化したため、所々の表現を現在進行形に変えています)

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短期的視野しかない中国人経営者が日本のホテルを経営すると

このブログでも中国人の儲け主義に閉口する事例を時折挙げているが、彼らはいずれ自分の首を絞めることに気づかない。そんなことを教えてくれる例があった。5/28(土)に放送されたNHKのドキュメンタリー番組”NEXT 未来のために”は「中国人社長がやってきた 伊豆修善寺 “温泉ホテル”の9か月」。とても衝撃的な内容だった。

去年9月、伊豆・修善寺のホテル「滝亭」が外資に買収された。伊豆・修善寺のホテルを買収したのは中国の新興旅行会社。中国で過熱する日本旅行ブームに乗じて、このホテルを日本でのビジネス拡大の足がかりにしようと考えているのだ(これ自体は極めて健全なビジネス動機だ)。

社長の考えに基づき、副社長が運営責任者として日本に派遣され、従業員およそ50人の雇用や賃金は維持することを前提に、同ホテルでは業績改善に向けた経営方針の転換が図られた。それは“おもてなし”よりも効率を重視するものだった。

その戦略は極めて明快なものだった。中国人客をどんどん送ることで儲けのベースを拡大。中国人好みの土産物置く、従来のように料理を一品一品出すのを止めて一気に多くの皿を出す(多く見える方が中国人好み)、さらに宿泊客以外の客へのランチ営業もやる、というものだった。

中国人向けの接客やノルマの達成が求められるようになった従業員たち。これまで大切にしてきた日本型の接客“おもてなし”と、新たな経営方針の両立に悩み続けている。当然ながら仕事の量は大幅に増え、早朝から夜まで10時間以上働きづめの人が続出する羽目になる。一方で、一人ひとりのお客への目配りどころか材料の手配すら間に合わず(もしかすると値切り過ぎてこのホテルへの配達が後回しにされた?)、食事中の客を大幅に待たせることもしばしば。

このやり方に反発した接客責任者が退職願を出した後のドタバタ振りには呆れかえった。仲裁に入った日本人の部長に対し、「もしここに残りたいなら一ヶ月の間は料飲ではなくて施設清掃の方でパートとして働いてもらう。その期間の仕事ぶりや態度を見て、その上で正社員に戻すかどうか考える」と居丈高そのもの。まったく問題のありかを把握しようとしない。

当然、(会社の反省を期待していた)接客責任者は退職。その後も退職が相次ぎその数は5人にのぼった。しかし過去最高益を達成する勢いに、本社の中国人社長がご機嫌で視察に訪れる。その際に「人手が足らない」と訴える従業員に対し、中国人社長は「売り上げが上がっても従業員を増やせば利益は上がらない」と言い放っていた。後日、日本人を雇うかわりに本社から若い(全く経験のない)中国人社員が送り込まれてくるのだった(人手を補うどころか足手まといになることは明白)。

何とも日本人からするととんでもないホテルが一丁出来上がり、という感じだ。これでも確かに短期的には儲けられるだろうが、日本人客はまず近寄らないだろうから、いずれ中国人客でさえ馬鹿にするのではないか。彼らは「日本人客が満足する、日本人によるハイレベルのサービス」を享受したいのだから。

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異色の地域共生戦略を進める「ふくや」の覚悟

弊社が支援するあるプロジェクトが始まろうとしている。地域創生、地域との共生が大きなテーマになるものだ。今回は異色といえば異色だ。

5月26日に放送されたカンブリア宮殿は参考になった。題して「“信頼”が商売を広げる!博多名物を生んだ『ふくや』感動経営術」。そう、あの辛子明太子の本家、「ふくや」だ。

「博多名物・明太子」は福岡県内だけで150以上のメーカーが切磋琢磨し、味を競い合っているそうだ。その「明太子」激戦区で売上NO.1に君臨するのが、地元客からの絶大な信頼を得ている「ふくや」。実際、地元の知人に言わせると「別格」だそうだ。

この番組で知ったのだが、実はこの「ふくや」は、試行錯誤の末に生み出したオリジナルの作り方を特許を取らずに地元のライバルメーカーにも無償で教えることで「明太子」を博多名物に育てあげた地元貢献企業でもあるのだ。

創業者・川原俊夫氏は敗戦後、韓国の釜山から引き上げ、食料品卸の店を始めた。氏は「皆に喜んで食べてもらえる惣菜を作りたい」と、幼い頃に韓国で食べた「スケトウダラの卵のキムチ漬」をヒントに試行錯誤を繰り返し、10年近い歳月をかけて、現在の明太子の原型となる「味の明太子」を生み出したのだ。しかも凄いことに、彼はその作り方を独り占めせず、ライバル店に惜しみなく公開していった。そのことで作り手が一帯に広がり、明太子は博多名物になったのだ。

戦争で生き残った体験から、俊夫氏は残った命を「地域の人への恩返しに使いたい」と強く考え、「ふくや」を起業したのだという。だから地域を発展させる手段として自らが考案した明太子の作り方を広く公開したのだ。素晴らしい精神だ。

そんな創業者の意思を受け継いだ4代目社長の川原正孝氏も、その信念を貫いている。「地域への恩返し」を行うためには、会社は存続しなければならない。そしてその理念を実現するために「ふくや」が選んだのが、地域との共生戦略だった。

地域と共に成長することを目指す「ふくや」は今、福岡だけでなく九州全体を地元と捉え、共に成長を目指す新たな仕掛けを打ち出している。その舞台が「ふくや」のルーツでもある食料品卸から派生した業務用スーパー「たべごろ百旬館」だ。

ここには「ふくや」のバイヤーが集めてきた九州各地の珍しい食材がズラリと並ぶ。客の大半はプロの料理人たち。彼らにその食材を使ってもらうことで、地元住民や観光客に「九州の新たな食の魅力」を広めていこうという狙いだ。さらに、こうした地域の飲食店とのつながりを活かして生産地の応援にまで乗り出していた。

民間企業でありながら地域との共生を戦略のベースに置く。自治体や金融機関以外には、なかなか口で言うほどたやすいことではないが、こうした経緯がある会社であれば信用される。今後も注目したい。

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食べる楽しみを失わせない

仕事でお付き合いしている方や先輩・同輩諸君の最近の話題の一つが「親の介護」だ。けがや病気で入院したことをきっかけに体力が弱り、自力で食べられなくなり、ひいては寝たきり介護のプロセスに入ってしまうケースが多い。

入院5月31日(火)に再放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」はそんな世代にとって必見だった。タイトルは「食べる喜びを、あきらめない」。「摂食えん下障害」を抱える人たちの食べる力を回復させるエキスパート、看護師・小山珠美さんをフィーチャしたものだった。

これまで小山さんが担当した患者およそ二千人のうち9割が再び食べることができるようになったとのこと。食べることを通じて見違えるように元気になっていくのだ。

往々にして医師の中には「治療」の実施と成功にしか関心がなく、病院経営者には患者を「稼ぐ手段」としか考えていない輩が少なくない。「誤えん性肺炎のリスクが避けられる」と、安易に「胃ろう」を施したがる。その結果、患者は寝たきりになりやすく、人生の質が急低下するにも拘らず。

口からの食事は、視覚・嗅覚・味覚を刺激し、脳の働きを活性化する。また、唾液の分泌が促されると、そこに含まれる酵素や抗体が感染症予防や免疫力向上の働きをする。そして何より、食べることは生きる喜びへとつながっていく。だからこそ小山さんは、口から食べることにこだわっているのだ。

摂食えん下障害を抱える人たちが口から食べるとき、とくに気をつけなければならないのは誤えんだ。食べものが気管を通じて肺に入り込むと、それが命取りになることさえある。
小山は積み上げてきた技術と持ち前の観察眼を駆使して、無理なく安全に食べさせていく。この技術がすごい。

まず大切なのは、アゴが上がりすぎないようにすること。アゴが上がると喉頭と気管が一直線になり、誤えんのリスクが高まる。小山は、肘を固定して姿勢をまっすぐに保つようにする。そして一口ごとに声をかけて、食べ物を意識させながら食事介助を行う。食べるときの背中の角度にも気をつかう。最初は30度からはじめて、飲み込む力の回復に応じて立ち上げていく。

さらに食事介助をするときの立ち位置も重要だ。たとえば脳卒中で体の左側にまひがある患者の場合。最初のうちは「左側半側空間無視(体の左側への意識が向きにくくなる)」の症状改善をめざして、患者の左側に立ち左手で食事介助をする。そして本人の右手の機能を引き出す段階に入ると、患者の右側に立ち、手を包み込むようにアシストしながらスプーンを口へと運ぶ。このため、左右どちらの手でも無理なく食事介助ができるようにしておくことが必須となる。

こうしたきめ細かな食事介助を通じて、患者たちは食べる力を取り戻していく。「自分だったらどうしてほしいか、自分と患者さんを置き換えたその先に技術が磨かれていく」と小山さんはいう。こんなエキスパートがいれば「胃ろう」を安易に選ぶ必要がなくなり、多くの患者が人生の楽しみを失わずに済むと思う。

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