値上げは知恵の勝負

4月30日の「ガイアの夜明け」(テレビ東京系)は「人気外食チェーン  価格攻防の裏側」と題し、国内外食産業の価格設定を巡る攻防を描いていた。国内の消費ムードが改善しつつある一方、円安により輸入食材が値上りしているからである。そこで番組は、"価格を上げての勝負"に出た「あきんどスシロー」(回転すしチェーン国内トップ)と、"高級化路線"に舵を切った「ロイヤルホスト」(ファミリーレストラン)の戦いを追う。

「105円均一」で業界トップとなった「あきんどスシロー」が、この春から189円(税抜き180円)という高価格商品を本格投入する。あわび、うに、中トロなどの高級食材を調達し、回転すしの常識を変えようという試みだ。豊崎賢一社長は「安ければ何でもいい時代から、もう少しお金を出してもいい物を食べたい、この『もう少し』の範囲がどこなのかを探るのが狙い」と語る。

189円寿司のラインナップが社長の一声で13品できた。調達責任者が全国を駆け回り、値段の約半分の原価でほぼ仕入れることができた。しかしアワビだけは国内で調達先が見つからない。そこで豊崎社長自らアワビ養殖世界一の地、韓国に飛び、数百店舗の仕入量を材料に価格交渉、決着する。

高級路線1号店は、ららぽーと柏の葉店。しかし直前に社長が試食するが、アワビはおいしくなかった。真横に切るのではボリューム感が出ないのだ。すぐに厨房に入り、指示を出す。「アワビは斜めに切って、ボリューム感を出せ。(捨てられそうになっていた)肝をつけろ」と。さすが元すし職人。

オープン初日。客の入りもよく、189円の高級ネタも順調に捌ける。しかし当初はアワビだけ動きが悪かった。急遽、豊崎社長自ら、皿に盛ったアワビ寿司を幾つも抱えて店内を売り歩く。途端に注文が出る。さすが商売人。オープン初日の売り上げは約120万円と大成功。

もう一つは『ロイヤルホスト』。本格レストランを目指しコックを大事にする点で、ファミレスの中では元々異色の存在である。しかしデフレ基調の中、他チェーンと同様の低価格競争に巻き込まれ、97年から2011年までの間、売上減少を続けていた。

2年前に社長になった矢崎氏は、江頭匡一氏の創業の原点に立ち返るべく、厨房機器を一新しコックが腕を振るう環境を整え、メニューを変えて高級化路線に転じた。そのお陰で16年振りの売上増を果たした。店内の客さんに聞くと、「手が込んでいる」「味が高級な感じ」と好評である。

高級化路線をさらに推し進めるため、看板メニューのステーキ肉を、本場米国でも人気のアンガス牛にする事となった。担当者の2人は社長に想定価格1,980円を提示したもの、あと200円の値下げを求められる。彼らは模索し、塊のアンガス肉の端の部分を活かすため、「アンガス牛のステーキ丼」を開発。無駄をなくすことでトータルコストを下げることができる。

アンガス牛ステーキのテスト販売が始まった「ロイヤルホスト 桜新町店」。価格は単品で1,780円(税抜き)との設定になったが、セットでは2,000円を超す。「アンガス牛のステーキ丼」も1,480円。割安なランチメニューが並ぶ中でもそれぞれ4枚と8杯と、売れ行きは好調。特に後者は(利益率が高そうだが)嬉しい誤算となった模様。

日本は今、間違いなく長年のデフレから抜け出しつつある。牛丼業界のように無益な消耗戦を繰り返すのではなく、価格戦略を真剣に考え直すべき機会である。言い換えれば、このタイミングでできなければ原価上昇により確実に利益は吹っ飛んでしまう、分水嶺に来ているのだと認識すべきである。

もちろん単に価格を上げるのでは、売上を減らすことで利益をかえって減らすだけに終わる。価格以上に価値を上げることで需要者に値上げを納得してもらえるようにメニュー等を組み替える必要がある。それは知恵の勝負なのだ。
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