赤字企業・パナソニックの前会長への巨額報酬に思う

パナソニックが昨年度、約15億円の役員報酬を松下正治・前名誉会長に支払ったことが報道された。松下氏は昨年6月に取締役を退任し、今7月に死去している。

この金額は、カシオ計算機名誉会長だった故・樫尾俊雄氏が11年度に得た13億3300万円を超えて実質トップであり、1億円以上の役員報酬の開示制度が始まった2010年以降で最高額となった模様だ。報道によると、パナソニックが昨年度、取締役4人に支払った退職慰労金計18億5500万円の4分の3程度が松下氏へのものだったようだ。世界的企業であるパナソニックとしても破格の扱いであることは間違いない。

ただ、報道が問題視しているのは、この情報が27日に公表した有価証券報告書に開示されていないこと。同社によると、06年度に退職慰労金制度を廃止し、すでに権利を得ていた額だけを退任時に支払うことにした。この費用は同年度に会計処理したため、「昨年度の支出ではなく、今回の開示の対象外」(広報)という。

しかしこの件に関する本質的な問題は情報開示ではない。大赤字を垂れ流し大リストラを強行している企業が、その第一の責任を問うことなく、巨額の役員報酬を「慰労金」として支払ったという点にある。

松下氏は創業者・松下幸之助氏の娘婿で、1947年から約65年にわたって取締役を務めた。いわゆる「中村革命」において旧体制の象徴視されながらも創業者一族ということで役員の座に留まることを認められたが、経営への貢献どころか抵抗勢力の中核であった時期が長い。元々社員から特別な尊敬を受けているわけでもない。

最近の同社の経営判断ミスに直接の関与をしているとは思えないが、その修正に貢献しているわけでもない。仮に同社のプラズマ薄型TVへの偏重の是正や松下電工や三洋電機との合併や組織再編で適切な指導的役割を果たしたという点があれば、こうした巨額報酬も多少は正当化されよう。しかしそんな前向きな情報は全くない(小生は前職の関係で多少なりともこの企業の情報が入ってくる)。

つまり松下氏には創業者の娘婿という以外、大した貢献を認めることはできない。さらに創業者一族で元社長・会長であったことから大株主の一人であり、役員報酬を除いて、その配当収入だけでも毎年家が建つほどであろうと推察できる。

一方で、ご存じのとおり、パナソニックは今、修羅場である。大規模な事業再編リストラを実施しつつあり、工場を畳み、市場撤退も大胆に進めている。それに伴い、異動はずっとましなほうで、多くの職場で早期退職や辞職勧告が進められており、貴重な戦力である技術者の放出もドラスティックに行われてきた(それを狙ってアイリスオーヤマが大阪で採用を展開し、開発センターを設けたことは周知の通り)。中には悪名高い「追い出し部屋」もそこかしこで実施されていた(小生の知人もその対象になっていた)。

こうした状況で、一人の「役得者」に対しバランスを欠く巨額の報酬を支払うことにパナソニックの現役員は平気で認めたのだろうか。多くの株主と消費者がパナソニックに対する基本的な信頼を失うことを懸念しなかったのだろうか。たとえあらかじめ決まっていた手続きに基づいて粛々と処理されると説明されたとしても、「この時期に認める訳にはいかない」と猛反対する役員はいなかったのだろうか。

もしそうなら、この企業の未来は暗い(グループ企業に所属したものとして残念極まりないが…)。
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