情報の取り扱いに関する職業倫理

このところ国内金融業界の不祥事が世間を騒がせている。非常に信じがたい不正が立て続けに起こっているのである。

一つはAIJ投資顧問による約2,000億円もの企業年金消失事件である。資産運用に大失敗したことはプロとしては恥ずかしい限りだが、問題はそこではない。その事実を隠ぺいして顧客に虚偽の運用実績を伝えて解約をさせなかったばかりか、虚偽の(しかも非現実的な)運営成績を宣伝して新規の契約を次々に獲得して被害を拡大したという。かなり悪質な詐欺行為であり厳罰が期待される。しかしこれはこの業界にはよくある類の話ではある。

もう一つ、より深刻なのは、公募増資を巡って相次いでいるインサイダー取引である。全日空・日本板硝子・みずほFG・国際石油開発帝石等の増資に絡んで、幾つかの証券会社や信託銀行が関与した疑いが、次から次へと出てくるのには驚く。インサイダー情報を漏らす側に実質的な罰則規定がない日本という国もどうかと思うが、自主規制で変わると宣言しながらこうした結果になっていることから考えると、結局、日本の証券会社の体質は昔と変わっていなかったのかと残念である。インサイダー取引が証券会社にとっては自殺行為なのだという認識が足らないのではないか。

翻って、経営コンサルティング業界もインサイダー情報や機密情報が飛び交う世界である。既存クライアントとの会話ではもちろん、DNA契約前に新規顧客候補がそういった情報を漏らすことも日常茶飯事である。実際上、いちいちDNAを交わしていられないので、まずは信用してお話しいただくのがごく普通であるし、こちらは必要最低限の関係者以外にはもちろん漏らさないし、それに関わる株式取引はご法度である。これは弁護士と同様、職業倫理上の問題でもある。こうした制約はその新規顧客との契約が成立しなかった後も、また既存クライアントとのプロジェクトが終わった後も、何年間も意味のある限り自己制約されるものである。

しかし中にはそうした感覚にルーズな人たちがいることも事実である。あるとき提携候補のコンサルティング会社の経営者の一人と色々な話をしているうちに、小生が過去実施したプロジェクトについて興味を持たれて色々と質問をされた。そこまではいいのだが、具体的な社名を当てようと「○○社ですか、それとも××社ですか」としつこいのには困った。

そういった情報を開示してよいという約束をいただいた場合でない限り、具体名は公表できないのが業界の常識なのに、である。どういうことに苦労したかなど、細かい状況の話までしているのだから実際にやったことは間違いなく伝わっているし、企業サイズも伝えているのだから、情報交換としては十分なはずなのに、まるで「インサイダー情報を共有しないと仲間とは云えませんよ」と言わんばかりなのである。その会社とは提携話をそれ以上進めないままである。
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