「印刷業界の駆け込み寺」はデザイン力という付加価値が「選ばれる理由」

10月3日放送のカンブリア宮殿は「脱・下請けで大躍進!世界が駆け込む印刷所!」と題し、グラフ社長、北川一成(きたがわ・いっせい)氏をフィーチャーした。

兵庫県加西市に本社を置く、従業員40人の印刷会社「グラフ」。DNPと凸版が市場の4分の一を占める中、地方の印刷会社と言えば、その多くは大手印刷会社の下請けであり、少し前まではグラフも99%を下請け仕事に頼る、倒産寸前の印刷会社だった。

だが、グラフは下請けの仕事を、今ほとんどしていない。それどころか他の印刷会社で断わられた「特殊な印刷」の仕事が次々に舞い込む。社長の北川一成氏がたった一人で、世界を舞台に活躍するオンリーワンの印刷所に生まれ変わらせたという。

家業の印刷所に入社後、北川氏は営業マンとして大市場・東京を攻めた。飛び込みで企業のポストカード印刷の仕事を請けたのだ。当時、相場で15~16万円したのに1件1万円で受注し、多いときには新規で3000件/月を開拓したという。どうしてそんなことができたのか。実はコストの大半は版下。通常、版下に同じデザインを16枚分刻むところ、北川氏は1つの版下に16社の異なるデザインを描き、刷ったのだ。発想の勝利だった。

次に北川氏が取り組んだのは、色とデザインだ。客が要求するどんな色でも出すように、色の組み合わせを片っ端から開発した。そのレシピをきちんと管理し、職人がきちんと出せるようにした。同時に、大学でデザインを学んだ北川氏自身のデザイン力をフルに使った。地元・加西市の造り酒屋「富久錦」から依頼されたロゴのデザインに取り組み(この「3回も断りに行った」エピソードが面白かった)、その斬新なデザインが有名デザイナーの登竜門といわれる日本グラフィックデザイナー協会の新人賞を受賞した。そこから色々な注文が舞い込んだ。

2000年に社長に就任した北川が、真っ先に取り組んだことは“脱・下請け”だった。当時のグラフは、下請けの仕事でフル稼働しており、デザインから印刷までを請負う“利益率の高い仕事”を受けられない状況に陥っていた。これを打破しようと北川が断行した「脱・下請け改革」の一つが“バカ社長のフリ”だった。取引先の目の前で“バカ社長”を演じて、「この会社に仕事を任せたら危ない」と思い込ませ、相手から断らせる作戦だ。これによりグラフは着実に下請けの仕事を減らしていき、3年間でゼロにまで至った。

顧客は世界の高級ブランドなど、質の高いものを作る会社を探して訪ねてくる企業が多く、普通の印刷会社が敬遠する複雑な印刷物を多く取り扱っており「印刷業界の駆け込み寺」と言われている。印刷技術とデザインで1千件以上の仕事を得ている。しかも今やグラフがデザイン・印刷した包装紙は「神通力」を生んでいる。

神戸市にある和菓子屋には行列が出来ており、「かりんとまんじゅう」が大人気。ロゴが気に入っておみやげで買っていく人もいる。また、篠山市にある蕎麦屋「ろあん松田」には昼食でも6300円という高級コースが用意されており、これも人気。やはり、ロゴが独特。金箔のツルツルした所とザラザラした所で色だけでなく体で感じられる印刷物はミュージシャン「LIVE IN PARIS」のジャケットで利用された。

バームクーヘンの老舗・ユーハイムの専務が依頼した新デザインが完成し、高島屋玉川店でお披露目された。赤・白・黒のコントラストはユーハイムの創業当時からのもので、パッケージに創業者の写真を入れたのも北川一成のアイディア。ユニフォームも新しくデザインした。来店客に人気だ。この人のデザインは嫌味がないのにエッジが効いている。

北川氏の原点は、幼いころの思い出にある。毎年、父や職人が大晦日の夜中まで「正月用の折り込みチラシ」の印刷作業にあたるのに、苦労して作ったチラシも年が明けるとゴミとして捨てられる。この体験を通して北川氏の中に生まれたものこそ“捨てられない印刷物”を目指すという思いだ。それがデザインという付加価値を加えることだったのだ。「付加価値」の意味を教えてくれる教科書のような話だと思った。
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