原発比率3案に対する経済団体の反発に思う

政府が示す「2030年における原発割合の3選択肢」に対し経済団体が強く反発している。昨日、経団連と日商がそれぞれ、「3案とも現実性に乏しい」と批判する意見書をまとめ、政府に提出した。経済同友会でも似たような批判が強く、近く意見書をまとめるそうだ。

2つの意見書によると、最も保守的な「原発割合20~25%案」でさえより現実的なものに再構築せよとされ、ましてや「0%案」や「15%案」は責任ある政府が選択すべきものではないと強烈に批判している。その懸念の中心は、電気代が上がり景気が悪化し、結果的にGDPや国民所得を下げることにある。政府が消費増税の前提にしている2%成長ができなくなり精々1%程度になると指摘している。何とか冷静な議論をというのが彼らの気持ちだろう。

確かに政府案は整合性に欠ける。管掌する省庁が違うといえど、同じ民主党政権の目玉政策なのに情けない限りである。しかし国民の8割が「0%案」を支持し、週末に原発再稼働反対デモが定常化するというかってない市民の意思が動き出している。冷静な市民でさえ「0%案」と「15%案」の間を揺れ動いているくらいなのに、「20~25%案」には国民の意思という視点はない。ましてや旧来の産業を代表する経済団体の意見には静的な分析の観点しかなく、ダイナミックな国家意思としてのエネルギー戦略という視点が欠如しているようだ。

必要なのは短期的な景気やエネルギーコストという「対策」と、中長期的な国民国家としてのエネルギー構成と経済体質の転換という「戦略意思」とを統合することである。前提条件として原油などの外来エネルギーの価格は今後も趨勢的には値上がりし、日本経済の成長の大きな制約になりつつあるという冷徹な認識が必要である。だからといって人類がコントロールできず、そのゴミ処理すらできない原発を維持拡大する選択肢は中長期的にはあり得ない。当面のつなぎとしてガス輸入を増やすことは現実的な施策だが、これとて相場次第で経済が左右され、供給国に首根っこを押さえられる圧力はますます高まる。

では現実的な選択肢は何か。小生が提案するのは、「コンクリートから省エネ」への集中投資転換である。今、民主党政権が消費増税のために自民・公明両党と裏取引して進めようとしている「国土強靭化」という美名に隠れた土建中心の従来型公共投資を転換し(最低限必要な都市インフラ維持を除けば)、「再生エネルギー」「省エネ」そして「都市の緑化・冷涼化」に集中投資するのである。

最初の項目は既に動き出しているので、それを加速・継続すればよい。日本の太陽光発電技術は世界トップ水準にあるが、生産量がまだ少ないため世界で苦戦してきた。国内市場を思い切って拡大することで低コスト化を進める施策を一層加速する。地熱発電は地震国ニッポンにとって最適なエネルギーでありながら、適地の多くが国立公園内にあることで難しいとする議論があるが、全く逆である。国立公園内にあるからこそ、国家意思で推進できるのである。過剰な環境負荷をもたらさない配慮は必要だが、原発の新設・更新の代わりとして国民が十分に納得できる選択肢ではないか。

そして「省エネ」である。一般家庭を含む範囲で真剣に取り組めば全消費量の15%程度の削減が可能だというのは実証済みであり、家電・自動車・機械などの一層の省エネ化に取り組むよう助成金を奮発してよい。またコ・ジェネと地域小規模発電の推進も立派な省エネである。排熱として捨てられている熱エネルギーは実は膨大なものである。発電地域で発生する熱エネルギーをその地域で活用することで全体のエネルギーロスを減らす。小さな発電設備を分散する方式に少しずつ変換することで、70~80%といわれる送電ロスを減らす。この構造変革は、原発の新規建設というあり得ない妄想や、中途半端な省エネ努力を凌駕するポテンシャルを秘めている。

また、都市の緑化・冷涼化の技術について日本は歴史的知恵の蓄積もハイテク技術もあり、あとは適用する場が拡がることが必要なだけである。具体的には、例えば公共施設の更新に際しては、屋上緑化または太陽光パネル設置、そして遮光ガラスの採用を義務付ける。民間施設でもそれらの省エネ設備投資(保水外壁パネル設置など含む)に今までにない思い切った補助金を出せばよい。兼業農家にばらまくカネがあったら、こうした投資を引き出す補助金のほうがずっと政策効果は大きい。

それによって短期的には大いなる景気刺激ができ、中期的には節電と涼しい都市が実現し、長期的には省エネによるエネルギー制約からの自由度を確保できる上に、関連産業の輸出できる技術・ノウハウが蓄積できる。要は、再び海外で売れる、もう一つの「クール・ジャパン」が出来るのである。こうした国民・国家の意思を盛り込んだ、エネルギー転換戦略を打ち出せば、日本のエネルギ体質は大きく変わることができる。
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