牛脂注入肉の扱いがリトマス試験紙?外食産業はどこまで正直になれるのか

1月21日に放送された「ガイアの夜明け」を録画で観ました。「検証!食品表示の偽装 食の信頼は取り戻せるか」というタイトルで、相次ぎ発覚した食品表示の偽装問題に対する幾つかの業界・会社の対応をレポートしてくれました。

食品表示の偽装問題に関しては2つの「素朴な疑問」があります。第一は、これまで何度も幾つかの業界で発覚した問題なのに、なぜ性懲りもなく(というか「他山の石」にできずに)飲食店や「中食」の現場は同じことを繰り返したのか。もう一つは、なぜこれほどまでに多くの企業が、食品の表示を偽ったのか(日本ホテル協会によると、加盟247ホテルのうち約3分の1が、何らかの虚偽表示をしていたということです)。

今回、レストランメニューなどで偽装表示が発覚した北海道を代表するホテル、札幌グランドホテルに取材が入りました。国際会議の開催や天皇皇后両陛下の御宿泊などの輝かしい歴史と信頼が一気に揺らいだ老舗です。偽装に至った経緯は何か、内部で検証していくと、様々な根深い原因が浮かんできたようです。

特に現場責任者である総料理長と料理長の2人がそうした虚偽表示をしていたこと自体を知らなかったということが吐露されました(これはこれで責任者としては非常に恥ずかしいこと故に、責任逃れのコメントではないと信じる)。つまり重要なガバナンス不在だということです。もう一つは、コスト削減によって目先の利益を上げるという圧力が不正にまで手を染める行為に走らせるほど強烈だということです。

しかし「実行犯」の現場のコック長たちは実に歯切れが悪かったですね。誰もが自分が「お客さんを騙していた」という事実をまともに認めたくないため、「長年の習慣を変えることまで思いつかなかった」と、業界慣習のせいにしていました。確かにそうした側面があるでしょうが、近年の「食品偽装」問題が農産物卸や加工業界で大問題になったことを彼らが知らなかったはずはありません。そのときはむしろ被害者面していたかも知れません。その意味では現場のリーダーたちには「自分がかわらなきゃ」という当事者意識は薄かったかも知れません。

問題は、今後それらをどう克服するのか、です。信頼回復に向けたホテルの総料理長の動きを番組は追いました。再発を防ぐため、総料理長は仕入れる材料を自らチャックする気になったようです。仕入業者から産地証明を取るなど、部下任せの姿勢を変えることにしたようです。これは第一歩ですね。

東京本社のホテル経営側「グランビスタ ホテル&リゾート」も全国で3つも偽装表示に関わったホテルが発覚し、本腰を入れざるを得ません。札幌までスタッフが出張し、現場でのメニュー企画から表示の仕方に至るまで全てプロセスを見直そうとしていました(これは我々が幾つかのクライアント企業でやったことを似ています)。ただ、気をつけないといけないのは、こうした見直しが現場を委縮させてしまっては元も子もないことです。往々にして保守的になりがちなこうした危機的状況においてこそ、お客様の関心を惹くためのメニュー企画出しや表示の仕方でいかに新しい発想を引き出すことができるかが本当は求められているのです。

番組の後半で面白かったのは、牛脂注入肉や成型肉など、「低価格でおいしい肉」を作り出す技術がいかに進化してきたかを伝えた部分です。牛脂注入肉や成型肉の需要を捉え、長年、開発・製造してきた企業があります。番組ではその代表的な1社を取材し、今回特別に工場内部に放送カメラが入り、その最新技術を捉えてくれました(とはいえ、小生は前にも観たことがあるのはなぜでしょう?)。固そうな赤身だけのニュージーランドビーフが、牛脂を注入されることで「霜降り」状態になるのです。ほとんどマジックです。

業者の名誉のために付け加えますが、食品安全上、全く問題はなく、味も数段よくなるとのことです。実際、格安のステーキチェーンはこうした牛脂注入肉を使用していますし、しっかりと表示しています。そう、これはIKEAが合板でよい製品を提供するのと同じように、安い原価でおいしい食材を提供する革新技術です。違法な成分を注入して紛い物を作っているわけではないので、胸を張って売り、買えばよいのです。食品を消費者に出す役割の人たちも、しっかりと正直に伝えればよいのにと思います。

残念ながら、牛脂注入肉を消費者に提供する外食産業は、マイナスイメージが大きいと考え、食材として使用しても積極的に表示しない、あるいは隠そうとする傾向が未だに続いているそうです。成型肉業者の社長は非常に悔しそうでした。彼らはまともに表示し、妥当な値段で提供しているのです。どうもその川下にある卸業者や外食産業において不当な表示で不当な利益を得てきた輩がかなりいそうです。こうした連中をのさばらせておいては、食に対する消費者の信頼はなかなか回復しません。外食産業の正直さがどの程度進むのか、是非ウォッチすべきですね。
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