和牛はWAGYUに対抗できるか

2月28日放送のガチアジア(NHKらしくないネーミングですが)は、「和牛 VS WAGYU アジア 牛肉市場をめぐる攻防」でした。日本が世界に誇る「和牛」をめぐり、オーストラリアで作られた「WAGYU」が対抗しており、相対的な低価格で香港などで市場を拡大しています。番組は牛肉市場をめぐる「和牛」と「WAGYU」の攻防に迫るものでした。

国は2020年までに牛肉の輸出量を今の5倍にまで増やす目標を掲げています。しかしその目論見を脅かす存在が現れています。

香港のスーパー。日本の食材も数多く並んでおり、和牛は富裕層をはじめ中間所得者層もターゲットにしています。そこには日本の和牛業者の姿があり、肉の卸の営業をしていましたが、その店ではオーストラリア産の「WAGYU」が低価格で売られていて、その値段にはとても太刀打ちできない様子でした。

WAGYUは10年ほど前から香港に入り始め、中間所得者層を中心に浸透しています。一方、和牛はBSE騒ぎで一時輸入を制限された時期があり、香港ではWAGYUにシェアを奪われています。

豪州ビクトリア州のデビッド・ブラックモアさんは黒毛和種と同じ遺伝子を受け継いでいる牛を育てており、アメリカから和牛の遺伝子を取り寄せて育て始めたということです。彼は日本の和牛の飼育の歴史なども学んでおり、100%純血のWAGYUを目指しました。ブラックモアさんが輸出しているWAGYUは交雑種に比べてきめ細かい霜降りが入っており、現在では輸出先を当初考えていた日本ではなく、アジアにシフトしていったのです。WAGYUは和牛とは逆に、中間所得者層から富裕層へと浸透しており、アジアで和牛との市場争いが始まっています。

日本で霜降りが重視されるようになったのは80年代後半のアメリカとの牛肉自由化交渉の合意がきっかけで、当時は安いアメリカ産牛肉が大量に流入してきました。そのとき、多くの畜産農家は和牛の付加価値を高めることに注力、霜降りが重要視されていったのです。その肉の品質を知ったアメリカの業者も日本から和牛の精液を輸入し、和牛の生産を開始しました。その精液と子孫が米国からオーストラリアに流れたのです(「移民」ならぬ「移牛」ですね)。日本の業界は今では精液の輸出を自制し、和牛を守る取り組みを行っていますが、遅きに失したといえます。

ビクトリア州のドミニック・ベイヤードさん。オーストラリア産WAGYUの受精卵を製造販売するビジネスを行っており、世界各国に輸出しています。最大の取引先は中国。

中国へと渡った受精卵は、例えば山東省の刘宝祥さんのもとへと渡っています。刘さんは去年から大量生産に乗り出しており、乳牛に目をつけ取引先を拡大しています(はっきり言って肉質は相当劣りそうです)。中国ではここ数年で牛肉の輸入量が急増しており、北京には刘さんが共同出資するレストランがオープンします。もちろん、取り扱うのは中国産WAGYU(豪州産と比べて格段に落ちそうですが、それでも普通の中国産牛肉に比べたら格段に美味しいでしょう)で、刘さんはこの店が成功すれば店をどんどん増やしたいと語っていました。

日本では輸出を伸ばすため、和牛のブランド力を強化する取り組みが始まっています。ミートコンパニオンの植村さんは、「カギはジャパンブランドを活かすことにある」と考えています。植村さんは和牛のロゴマークで「和牛」を全面に押し出し、長年産地同士で競ってきた業者を一つにまとめるために動いています。植村さんはサーロインと安い部位を組み合わせて取引することで価格を下げる取り組みを考え、和牛のPR映像も制作しました。

また家畜改良技術研究所では、和牛の優れた点を科学的に実証しようとしており、和牛に熱を加えた時に出る「香り」の分析を行っています。こうして日本の業界一丸となって「和牛」を世界に売り出そう、差別化しようと頑張っているわけです。

一方、WAGYUのほうもシスティマティックかつダイナミックです。オーストラリア・ビクトリア州で国際会議が開かれ、WAGYUに関する最先端の情報を交換し合う様子が映されていました。会議を主催したオーストラリアWAGYU協会は、世界各国で生産されている牛のDNAを鑑定し、和牛としての出自の証明書も発行しています。あのブラックモアさんはWAGYUビジネスを始めた時から餌の配合にこだわっており、日本の和牛の育て方にオーストラリアの環境を応用。WAGYU飼育マニュアルの提供も行っています。これらは正しいアプローチで、強敵ですね。


中国ではWAGYUの遺伝子を使って雪龍黒牛を育てる国家的な戦略が動き始めていました。中国では7年前から新しいブランド牛の研究開発を進めてきたということです。こちらも、カネと人海戦術にものをいわせた広告宣伝合戦を仕掛けてくるかも知れません。世界で日本の和牛業界が拡販していくには、こうした競合の動きと狙いをきちんと把握した上でコスト低減努力が欠かせませんが、JA/全中に依存してできるとも思えません。正直、少々心配です。
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