法人税率引き下げ論議に思うこと(その2)

税制改革の視点に関しても、法人税減税が最優先されるべきものではないと思えます。松井証券の松井社長は小生の大学の先輩であり、小生が尊敬する経営者のお一人ですが、最近、あるところで「留保金課税」を提案されており、「なるほど」と思うものでした。これは法人税の課税ベースを抜本的に変えてしまおうという話です。

現行の法人税は「配当支払い前の利益」に対して課税されます。それを「配当支払い後の残余利益」に対して課税するように変えようとするものです。この意味合いは結構深いものですし、経済のダイナミズムを理解されている提案だと感じます。

従来から「配当支払い前の利益」に法人税を掛けておいて、支払われた配当を受け取った人にも課税していることから、「二重課税」であると批判されてきました。その批判を誤魔化すために、法人が受け取った配当に関しては益金不算入制度というややこしい調整便法があるのですが、これを同時に廃止することも松井社長は提言されています。税務官僚がこねくり回して思いっきり歪んでしまった増改築家屋をすっきり建て直すようなものです。

そういう筋論だけでなく、実務的なメリットも指摘されています。配当原資に課税されていた分が減れば法人実効税率が下がるため、法人は自ずから配当性向を上げようとします。つまり問題になっている過剰な内部留保が減って、株主への移転が進むということです。

それだけ株式配当の魅力が上がることで(そしてますますインフレが進むことで)、銀行に預金するよりも配当の多い株式を持つことを選択する個人が増えるでしょう。つまり「銀行預金から株式投資へ」が促進されるのです(松井社長はネット証券業者なので、この点だけを捉えて我田引水だと批判されるかも知れません)。

なぜ株式投資の促進が重要かというと、新しい分野に産業の血液である資金を循環させる必要があるからです。バブル経済以来、日本の銀行の融資機能が極端に弱ってしまったので、中小企業・ベンチャーへの資金供給ルートである株式市場を再生させないと、日本経済が薄っぺらいままで細っていくからです。

松井社長の提案を実施しますと、法人の受け取り配当についてはプラスマイナス・ゼロになりそうですが、個人に関しては配当増額のメリットをそのまま得るので、企業から個人への所得移転が進みます。これは、昨今問題視されていた「個人→企業」への所得移転が進んでいる傾向にブレーキを掛けることにつながります。つまり個人所得を増やすことで、個人消費を促進し、景気回復を継続させる効果が期待できるのです。

課題がないわけではありません。今のところ金融資産を持つのは高齢者に極端に偏っているのが日本経済の特徴で、これはこれで社会構造上由々しき問題です。つまり上記の株式保有メリットを享受するのは高齢者ばかり、ということになってしまいかねません。しかし明らかに株式配当が有利な状況になってくれば、そしてまともな経済教育をやっておけば、若い年代も株式保有度合いは着実に高まるはずです。

今のように賃金上昇というルートしかないような状況では、たまたま大企業に勤めることができた人だけしか景気回復の恩恵に浴せないことになってしまいます。それに対し株式配当というルートが確立すれば、中小企業に勤めている人でも主婦でも自営業の人でも、企業業績に応じて資産を増やせる機会が増えるのです。要は中間層が豊かになる構造が可能になるのです。これこそ日本経済がまともな方向に再生する道筋です。
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