日本製技術を担ぐホンハイの戦略と意地

5月21日(水)に再放送されたドキュメンタリーWAVE「アジアの黒衣(くろこ) 動く~日本人技術者を取り込む台湾企業~」。今回は鴻海(ホンハイ)についてでした。

2年前に取り沙汰されたシャープとの出資交渉をめぐり、日本でも一躍その名が知られるようになった台湾企業・鴻海。カリスマ経営者・郭台銘が一代で築き上げた企業です。iPhoneなどのスマートフォンからPC、ゲーム機まで、あらゆる電子機器を「黒衣(くろこ)」として受託製造する、アジア、いや世界一のEMSです。水平分業のビジネスモデルを引っ提げ、圧倒的な規模とスピードを武器に業績を伸ばし、有名連結売上高は今やなんと13兆円超。

その鴻海が、新たなビジネスモデルに脱皮しようとしています。中国での人件費が高騰し「世界の工場」でなくなりつつあるため、そしてEMSでの同質化競争が激化し、価格の叩きあいが生まれているからです。

そのため鴻海は黒衣の域を超え、自らの企画・設計による中核部品・ディスプレイの開発・製造にまで乗り出し始めているのです。シャープへの出資検討も、最先端液晶技術の取り込みにより、この方面への技術展開を狙ったものと考えられています。その矛先は今、有機ELにまっしぐらに向かっています。

しかし有機ELによるディスプレイは世界の主要なエレクトロニクスメーカーが取り組みながら、液晶並みの量産コストの低減にことごとく挫折し、今や韓国のサムソンとLG電子しか量産化に取り組んでいるメーカーがなく、日本では(ソニーとパナソニックから事業譲渡を受けた)ジャパン・ディスプレイぐらいしか本格的な開発を続けているメーカーは残っていないという、いわくのある製品です。

プロジェクトを成功させるため、鴻海は日本人技術者を募ることにしました。世界のモノづくりの影の主役に踊り出ようとする、新興巨大企業の新たな戦略を番組は追ってくれました。

鴻海に最近採用され、有機ELプロジェクトの中核となっているメンバーは豪華です。元シャープの亀山工場長や、元日立の製造部長やソニーとサムソンで有機ELの開発の中核だった技術者などが紹介されていました。彼らは出身の日系メーカーが有機ELをあきらめるにつれて社内で活躍の場を失い、再起の場を欲していたのです。「もう一度有機ELに取り組める」。これが、彼らがヘッドハントに応じた唯一絶対の理由でしょう。

彼らが有機ELディスプレイの量産化は、高い画質を維持しながら液晶並みのコスト削減ができるか否かに掛っています。そのための技術開発は、ディスプレイ・メーカー以上に製造装置メーカーが握っているといって過言ではありません。そしてそうした最先端の高い技術を持っている半導体製造装置メーカーは世界でも限られ、日本はその少ないメーカーが残っている場所です。

郭CEOは「鴻海は台湾企業ではなくグローバル・メーカーだ」として、「日本と台湾が手を結ぶことでアジアで勝てる」と強調します・本社での戦略会議の場はほぼ全員台湾人で中国語が公用語。一方フォックスホン(ホンハイ)大阪事務所での有機ELプロジェクトはほぼ全員日本人なので公用語は日本語です。そして後者が今、鴻海の社運を担っているのです。なかなか感慨深い光景でした。

これは小生が何度か非難している、中韓企業による日本企業の技術盗用ではありません。日本メーカーがほぼ諦めた日本製技術による有機ELディスプレイを、ホンハイが量産化できることを期待したいと思います。
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