「技術売買 ある中小企業の決断」を観て

先日NHKで観たのが、東大阪市にある中小零細の加工企業の話である。

従業員14人、家電大手などと長い付き合いがあったが、去年の記録的な円高で大手メーカーの海外進出が進み、あおりを受けて業績が悪化したのだ。そして生命線ともいえる「オンリーワン」の技術を中国企業に売ることにしたという。社長も悩みぬいた末に「技術ならある。売るなら今しかない」と心を決めたのだ。30年かけて培った独自の加工技術には数千万円の値段がつき、この会社は一息つけた。しかし一方で技術が流出し、競合を育てることになったのも事実。長い目で見れば自分の首を絞めることになることも、この社長は自覚している。背に腹は代えられないが、苦渋の決断ということが伝わってきた。

最近、やはり技術売買という話に関わることがあり、他人事ではない。当事者の事情は様々なので一概には言えないが、この例のように苦渋の決断というのが増えてきているようだ。そして売買先として増えているのが中韓の2国である。サムソンやLG電子などは日本の大手メーカーから退職した技術者を高待遇で招き入れ、技術レベルを一挙に上げてきた。中国企業も最近は似たようなことをしているようだ。さらにこうした中小企業から技術を買い入れる方式も併せているのだ。

ソニーやパナソニックなど、小生の知人が勤めている大手家電メーカーの苦境が伝えられる。彼らの失敗は第一に商品企画であり、NC加工技術・3次元CAD/CAMを駆使してEMSが世界的に台頭する中、摺り合わせ技術を得意にする日本のモノ造りの基盤を活かす分野での勝ちパターンを展開できなかったというのが小生の見立てである。彼らは差別化に失敗した上に、事業投資のタイミングと物量の判断ミスがさらに傷口を悪化させたのである。

しかしそれだけでは収まらない。大手メーカーの経営の悪化がもたらしたのは、自社の技術流出に加え、彼らを支えてきた、日本のモノ造り基盤の崩壊の開始である。今こうして足元が崩壊し始めていることを、どれほどの家電メーカーや精密機器メーカーの幹部がきちんと理解しているだろうか。背筋がぞっとくるような話だが、今真剣に向き合わないと、昔の音響メーカーの二の舞となろう。

要はEMSにできないような商品を出すしかないのである。それには大きく2通りある。最先端の精密部品・素材を使った内製モジュールが核となる製品を作り上げるか、独自サービスやコンテンツを付加した、新しい概念のビジネスモデルを作り上げるか、いずれかであろう。前者は実は大手メーカーがこれまで追求して果たしていない道程であり、後者にはコマツという先例がある。小生はこの後者パターンのビジネスモデル革新を進めるお手伝いをしたいと考えている。
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