ニッポンの伝統工芸を蘇らせる会社を蘇らせたのは外国人

5月21日に放送されたTV東京系「カンブリア宮殿」は「日本らしさ、伝統」について考えさせられました。主役は文化財修復業界最大手の小西美術工藝社社長、デービッド・アトキンソン氏。元証券アナリスト、英国人です。そして小西美術工藝社は300年以上の歴史を持つ老舗の職人集団です。いわば「ニッポンの伝統工芸を蘇らせる会社」のトップが青い目をした外国人なのです。

徳川家康を神として祀る「日光東照宮」は世界遺産・日光の社寺の1つ。今年は、家康の没後400年にあたり、観光客で賑わっています。そして境内では、国宝「陽明門」の修復が半世紀ぶりに行われています。修復を手掛けるのは小西美術工藝社。高さ11.1メートルの陽明門の一番上の層で、職人たちが息をつめて緻密な作業をしています。修復費用は10億円で、作業は4年がかり。

そんな職人の世界で、アトキンソン社長は高い品質を要求し、陽明門の社内検査でも職人の仕事に容赦なくダメを出しています。職人を束ねる技術部門のトップが「社長は技術のことは分からないけど、美しいかどうかをみて、ダメ出しする」と言っていました。つまり本質を突くということなのですね。

一時は経営危機にあった同社が復活した背景には、苦い経験があったのです。アトキンソン氏が社長に就任する前に手掛けた住吉大社の補修後に塗装がすぐには剥げ落ちるという大問題が起きていました。新社長・アトキンソン氏は何度も門前払いをされながらも住吉大社に足を運び謝罪。修復をやり直し、住吉大社の信頼を回復したのです。反発していた職人たちも、その誠実な姿を目の当たりにして、「外国人社長」を見る目が変わったそうです。そしてアトキンソン社長が求める高い水準の仕事をしようと、より良い仕事をするようになったのです。

デービッド・アトキンソン氏は、元々はアメリカのゴールドマン・サックス証券の金融アナリスト。全く畑違いの経歴ですが、裏千家で茶名を持つなど、日本文化への造詣が深い人物でした。次期経営者を探していた小西美術の前社長に「数字が分かって日本文化にも詳しい」ことを買われ、請われて入社しました。しかしいざ入社してみると、聞いていたのとは大違い。全くの経営不在で、解決すべき問題が山積していたのです。

「伝統」という名のもと、職人の世界はどんぶり勘定。例えば若い職人の離職率は8割近く、職人不足が深刻でした。いわばベテランが過去の遺産にあぐらをかいて既得権益を貪っており、顧客と若い人材がなおざりにされていたのです。そこでアトキンソン社長は、300年の伝統を持つ純ニッポンの会社で、様々な改革に乗り出したのです。

それが(1)職人の正社員化と若手の待遇改善(の一方でベテラン社員の給与カット)、(2)どんぶり勘定を止め徹底的に無駄を省く(例えば営業車の私用や流用の禁止)、(3)仕事の進捗状況や原材料仕入れを数値化し効率アップ、といったところです。でもどれも普通の会社では当たり前に行われていることです。言い換えれば、それまで伝統にあぐらをかいてベテラン達が好き放題にやっていたために儲からなくなっていたことを、まともなやり方に変えた、ということなのです。

「経営改革」ってこんな実態が多いものなのです。すごく分かります。
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