司法取引で冤罪を生まないために

今国会で審議している、刑事司法制度改革の関連法案。これによって、日本の捜査のあり方が大きく変わることになる。NHK「クローズアップ現代」の9月1日放送分は「えん罪は防げるか 司法取引で変わる捜査」は、期待と不安が入り混じった、しかし着実にやってくる司法改革を解説してくれた。

司法取引制度。他人の犯罪について供述し捜査に協力すると、その見返りに自分の罪が軽くなる制度だ。少し前、『天使と悪魔-未解決事件匿名交渉課-』というドラマ(警察官・剛力彩芽×弁護士・渡部篤郎の主演)もあったが、もう少し深刻な不安が「クロ現」では指摘されていた。

事件の核心につながる重要な証言を引き出し、犯罪の全容解明につながることが期待されている一方で、罪を軽くしてもらうために、うその供述をし、無実の人を事件に巻き込んでしまうのではないかという懸念も高まっているのだ。元々冤罪事件で始まった司法改革の一環として検討されてきた司法取引が、新たな冤罪を生むかも知れないという皮肉な構図だ。

間違いなく暴力団などの組織犯罪の解明には絶大なる効果を発揮しそうだ。今回の東芝の不正会計など、企業の組織的不正の解明にもかなり効果的だろう。

しかし同時に、従業員が無実の上司を罪に陥れる事態を防げるのか。社内規則で司法取引に応じないようにすることはできるのか。司法取引によって会社の上層部まで事件に巻き込まれるのではないかと多くの企業法務部門などが懸念しているのもよく理解できる。

番組では、詐欺事件で実刑判決を受けた男性が、匿名を条件に嘘の供述をする心理を語っていた。少しでも刑を軽くしたいと考えた男性は、「仕事仲間の指示でやった」と供述したのだ。

また、事件に巻き込まれた当事者が、新たなえん罪が生まれる危険性を語っていた。12年前に発覚した、名古屋市の道路清掃事業を巡る談合事件。予定価格を業者に漏らしたとして、市の職員らが逮捕された。その職員が、上司も談合に関与していたと、嘘の供述をしたのだ。判決では、部下の供述は事実に反すると認定され、無罪を言い渡した。しかし嘘の供述で逮捕され、休職を余儀なくされ、無罪が確定したのは逮捕から5年後。定年を迎えたあとのことだったという。

ひどい話だ。そして企業人にも他人事ではないということだ。こうした冤罪を生む可能性を少しでも小さくするためには、制度そのものと運用の両方に工夫が絶対に要る。

まず絶対的に必要なのは、嘘で自分の罪を軽くしようとする「インセンティブを消す」制度設計だ。司法取引時に嘘の証言で他人に罪を擦り付けようとしたものは、後日その嘘が判明した時点で司法取引の特別措置の効果はなくなり、加重刑が科されること。つまり「嘘で他人を陥れると余計に罪が重くなる」という制度にすることだ。

そして運用上、司法取引の場では、その「冤罪加重措置」について司法取引に応じようとしている当事者に明確に告げること。ちょうど検察取り調べ時に黙秘権をいちいち告げるのと同じように。そして司法取引によって告発があった場合には、通常の証言時よりも裏付けを重視すること。この2つは欠かせない。

犯罪告発に効果的な手段であればあるほど、こうした賢明な制度設計と慎重な運用が求められる。
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