介護スタッフの処遇と業務の改善こそが人手不足解消の鍵(後編2)

「介護離職ゼロ」に不可欠な介護施設増のためには介護スタッフの人手不足の解消が欠かせない。「介護職の処遇改善」に並ぶ、そのためのボトルネック解消策として「業務の改善」と「職場の人間関係改善」を挙げたい。


『介護スタッフの処遇と業務の改善こそが人手不足解消の鍵(前編)』および『介護スタッフの処遇と業務の改善こそが人手不足解消の鍵(後編1)』より続く

ボトルネック解消策の第2ブロック「業務の改善」は、介護の生産性を大幅に上げるための、担い手の役割分担の見直しと業務の効率化である。決して流れ作業の強化などではない。

幾つかの研究で既に明らかになっているが、介護においては被介護者との信頼感を高めるためのアイコンタクトやソフトタッチなどの人間的触れ合いこそが重要であり、効率化すべきはそれ以外の部分だ。介護サービスは「接客業」であることを肝に銘ずべきなのだ。

関係者の方々はそうしたことを前提に、以下の業務改善方策例を読んで欲しい。いずれもどこかの事業所で取り組んで効果を上げているものなので、積極的に検討いただきたい。

一つ目は、労働環境上一番大きな「夜勤問題」の解決である。「下の世話」などと違って、夜勤が勤務シフトに混じることで引き起こされる体調の崩れや疲労蓄積は、慣れや当人の工夫で何とかなる問題ではない。特に少人数の施設では夜勤の頻度が高く、しかも一人夜勤といった実態が往々にしてあり、やりがいに燃えて就労したスタッフをも挫けさせるキツさなのである。

最も効果的な解決法は、一部のスタッフを夜勤専門とし、残りのスタッフを日中だけの勤務とすることだ。日勤専門になる大半のスタッフからは、一番の悩みがなくなると大歓迎されよう。

夜勤専門のスタッフには高めの給与を支払う必要があり、複数夜勤体制を確立するためには人数を増やす必要が出てくる施設も少なからずあろう。やはりこの体制整備を条件に、介護報酬の水準を底上げすべきだ。

夜勤専門のスタッフを見つけるのが難しい?一人は必ずしも介護士資格がなくても構わないと割り切れば選択肢は広がる。小生のお薦めはシングルマザー家族の住込み採用だ。お子さんが眠っている間に夜勤をこなし、お子さんが学校に出掛けてからぐっすりお休みいただくのだ。お年寄りたちも子供たちと一緒に住むことで元気をもらえる。

二つ目の業務改善はパートタイム・スタッフの積極採用・活用だ。「手離れ組」のかなりの割合は「パートタイムならばやってみてもいい」と考えている可能性が高い。介護事業者は頭を切り替えて、フルタイムと細切れパートタイムの混合シフトにトライして欲しい。

従来の紙ベースのやり方ではシフトを組むのが面倒になるが、今では非常に安価または無料ながら高品質のシフト作成・管理アプリが幾つも出回っている。

三つ目の改善は地域ボランティアの積極募集だ。掃除・修繕・話し相手等々、素人でもできる仕事は少なくない。それらを地域ボランティアにやってもらうことで、介護スタッフは本来の介護業務に専念でき、長時間労働を解消できる。

介護施設は地域社会に溶け込むためにも、チラシを撒くなどして地域の家庭に積極的に協力を呼び掛けて欲しい。定年後に暇を持て余しているダンナを「将来の参考よ」とかいって連れ出してくれるよう、奥さんたちに訴えるのだ。

また、「育児の悩み事を人生の先輩に相談できます」と称して、孤立しがちな子育てママたちを子供ごと受け入れるのもよい。ママたちはノイローゼにならずに済み、お年寄りも若い世代のために役立てることで張り合いが生まれよう。

できれば、前稿の追記で提案した生涯ポイント制の対象にこうした地域ボランティアも含めて欲しい。この介護ポイントを直接の目当てにボランティアに参加する人が増えるとは必ずしも思わないが、こうしたことが自分や家族に対し参加する踏ん切りを正当化し、それをきっかけに積極的に参加する人たちもいるのではないか。

四つ目の業務改善はツールの活用だ。特に無線インカムは、手が離せないときに介護スタッフ同士が連絡を取って助け合うことができて実に有用だ。利用者を待たせずに済み、スタッフのストレスも下がり、長時間勤務の解消にもなるので、離職防止効果もある。トータルで見て安い投資だ。

他にも「見守り」カメラやセンサー、徘徊対策のGPS発信機付の靴や足リング、ロボットスーツ等々のハイテクツールも今後普及しコストも低減するので、費用次第で検討に値しよう。

次に、ボトルネック解消策の第3ブロック、「職場の人間関係改善」の方策を考えたい。「処遇改善」と「業務改善」の努力をした上での話だが、少なくともスタッフの悩みやストレスを把握するため、上司定期面談くらいはどこの職場でも実施して欲しい。

しかし何より急務なのは腐ったリンゴを取り除くことだ。すなわち、他のスタッフや利用者から総スカンを食いながらも「頭数が必要」という理由で居座ることを許されてきた悪質なスタッフに対し、強烈な自省と改善を求め、それで直らない場合にはすっぱり辞めさせることだ。採用必要数が増えるので勇気が要るのは理解できるが、他のスタッフの離職を食い止めるためには急がねばならない。

最後に働く側への提言をしたい。強いプレッシャーを与えないと、悪質または凡庸な経営者は自ら仕組みを変えようとはしない。皆さん自身がその原動力となることが不可欠だ。それには口コミサイトやSNSの積極的利用が最も効果的だと小生は考える。

介護業界で働いている人たちが自らの経験に基づいてブラックな職場実態を告発し、就職・転職検討者たちがその情報を基に判断するようになれば、事態は大きく動く。

改善が進む職場には人が集まり、できない事業所は人手不足が加速して退出を余儀なくされるのだ。是非、冷静かつアクティブに動いて欲しい。

(本稿は、雑誌「公明」2016年4月号の特集「長寿社会を支えるために」の記事『深刻な介護の人手不足』解決の可能性を探る)をベースに追記等を行ったものです)
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