営業改革を考える (10) “人材使い捨て”組織は若者から見放される

今後、多くのニッポンの営業組織は若者の募集に苦労するだろう。その最大要因は、企業自身が“人材使い捨て”体質化したことにある。


営業組織は若い力を常に求める。
それだけ気力・体力を要する職場であることも理由の一つだ。それ以上に、人と会い話すことを習い性のようになるには、柔軟性がある若いうちのほうがよいと多くの企業が考えるからである(小生は年齢差より個人差のほうがずっと大きいと考えるが…)。
しかし今後、多くのニッポンの営業組織が若者の募集に苦労するだろうと小生は考えている。いや既に、人材募集支援会社の張り切りようから見て、その兆候は現れているようだ。
主な要因は3つある。一つは周知の通り、若者の絶対数がどんどん減っていることである。もう一つは企業側の問題で、「若者を育てる」能力が衰えていることである。最後はネット情報化である。後者の2つについては少々説明が必要だろう。
“失われた20年”の間の就職難のせいで若者は、人を大切にしない企業に対しても、「就職できれば御の字」とばかりに応募してくれた。しかし成果主義と人件費削減のせいで、中堅の営業マンはやたらと忙しくなり、昔のように先輩が後輩をじっくり指導する余裕を失ってしまっている(バブル世代の一部には、自らがきちんと指導されずにきてしまい、そもそもやり方が分からない人たちもいる)。
とりわけ、若手の営業マンを叱咤するだけでケアしない、若者使い捨て体質になってしまった企業が増えたことが近年問題になっている。いわゆる「ブラック企業」化である。
そうした企業の営業組織では、定着率を上げる努力を十分しないまま、営業マンの「取り換え」を繰り返してきた。就職難の時代にはそうした「ブラック企業的」なところにも応募が続いたゆえに可能だったやり方である。しかし労働市場は既に売り手市場に転換しており、こうした「若者を育てる」能力に欠ける企業は必然的に敬遠されつつある。
“追い出し部屋”によりまだまだ働き盛りのオジさん達を追い出している大企業もまた、“人材使い捨て”文化に染まってしまったとしか云いようがない。中には若手社員に対し「上が空くからキミ達には朗報だ」と暴言を吐く幹部もいるらしい。その姿に失望し会社への忠誠心を失った若者が転職活動に精を出すことには、頭が回らないとみえる。
しかもそうした“人材使い捨て”体質になってしまった企業の実態が、ネット上に漏れるようになっている。
従来は“2ちゃんねる”など、ちょっとアナーキーな媒体ばかりだったので、情報自体が胡散臭いと見られてきた。しかしFacebookやTwitterといったSNSが普及した今、知人からの口コミを通して、企業の風評がごく一般の人の目に触れるようになっている。どこまで確かかはともかく、転職サイトの一部では随分直截的に企業のブラック度が品評されている。
一旦「ブラック企業的」だという評価が定着すれば、若者の応募は極端に減る。本当のブラック企業だと社名を変えてしまうので痛くも痒くもないが、少々「ブラック企業」化した程度の普通の企業はこのトレンドの痛手を被る。
働き盛りのオジさん達を追い出した大企業もまた例外ではない。口コミで実態が伝えられ、それを読んだ人たちが噂を増幅する。怖い時代になったと覚悟すべきである。
もし自らの組織が“人材使い捨て”体質であると多少でも自覚するようなら、経営者および営業幹部はその体質を変えることを急がねばならない。
上に述べたトレンドは未来の話ではなく今日の話である。そして一旦「ブラック企業的」だとみなされれば、(昔の「人の噂も七十五日」と違い、今はネット上に残るため)その評判を塗り替えるには最低数年間の並大抵でない努力が必要になるのだから。

(本稿は2013年4月のコラム記事に加筆修正したものです。当時は予言じみていましたが、今や現実化したため、所々の表現を現在進行形に変えています)
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