奇跡の医療を間近に見る

最近考えさせられるが、あまりに進んだ延命治療については、半面で「ヒトはどこまで生き続けることが幸せなのか」という疑問すらもたらす。しかしやはり愛する家族が再び健康になってくれる喜びに勝るものはない。それも人間の真実だ。

6月13日に放送された「未来世紀ジパング」はそんな医療技術のありがたみを感じさせてくれるものだった。題して「奇跡の医療!世界最前線」だ。3つの「奇跡」の例を紹介してくれた。

一つ目はアメリカでの奇跡の出来事。現在67歳のラリーさんは30代の時、「網膜色素変性症」という病気で失明した(日本でもこの病気の患者数は5万人と推測)が最近、「アーガスⅡ」により光を取り戻したという。アメリカのセカンド・サイト社が開発した人工網膜のシステムだ。これを装着することで、なんと30年ぶりに妻の顔を見ることができたのだ。

この「アーガスⅡ」というメガネは、手術によって埋め込んだ人工網膜を使い、メガネに着けた小型カメラの映像を人工網膜に投影し見える仕組みだ。現在アメリカでは約200人がアーガスIIを使用しているという。ただし、アーガスIIで再現できる視覚は60画素で白黒なので、人間の判別ができるまでクリアなものではない(TVではそのイメージも紹介された)。そして手術費用は、約1,500万円と半端でない。

ちなみに日本ではアーガスIIの治療を受けることは出来ないが、人工網膜の研究は行われており、岡山大学が開発を進める「オーレップ」というのが有望だ。オーレップの材料は、ポリエチレンに光電変換色素を化学結合した人工網膜。光を電気エネルギーに変換する技術で太陽電池にも使われている。2017年末には実用化の許可申請を出す可能性があるという。メガネもいらず、ポリエチレン製のため手術費用も100万円というので、期待したい。

奇跡の医療の2つ目は不治の病に新治療発見という話。高齢化に伴い患者が急増している病気、「大動脈弁狭窄症」という心臓病は、加齢などにより心臓の大動脈の弁が石灰化、血液の流れが悪くなり心不全などを起こす病気だ。通常は外科手術によって治療するが、体力の落ちた高齢者にとっては手術ができないため、諦めて死を待つほかなかった。

ところが、外科手術をせずに治療するTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術」)という新技術がフランスで開発された。慶應義塾大学病院の林田健太郎医師は、フランスに渡りその技術を習得し、成功率100%を誇る。今や本国の医師を凌ぐほどの名声だ。2013年、「TAVI」は国民健康保険の適用となり、誰でも受けられる治療となった。TAVIの死亡率は日本では2%。世界では6.3%。日本は恵まれた国だ。

奇跡の医療の三つ目は、「医療のない地域に医療を」という話。今年5月、カンボジアに新しい病院ができた。治療代はなんと無料。患者が続々やってくる。この画期的な病院をつくったのは、日本のNPO法人ジャパンハート、「医療の届かないところに医療を届ける」ボランティア組織だ。

実はカンボジアには日本のような保険制度はなく、治療代が払えないため病気にかかっても諦めていた人が多かったのだ。この病院、「ジャパンハート医療センター」というが、全額日本からの寄付でまかなわれている。しかも、個人からの寄付が多いという。寄付のスタイルに特徴があり、吸引器、聴診器など必要な物を寄付する形をとっている。2014年の1年間で約1億2,000万円寄付が集まった。

さらにここで働く医者や看護師もボランティア、普段は日本で働いているが、数日間の休暇をとって治療にやってきて、また日本に帰るのだ。しかも、無給どころか渡航費も自己負担!

確かに奇跡だ。なぜこのシステムが成り立っているのだろうか?ジャパンハートでは12年間で2千人以上もの参加があったという。滞在期間が2日からという超短期で手伝えるため参加できる仕組みがとても画期的であることも間違いない。しかし何といっても、(自分で旅費などを払っても)医療の原点を体験する価値はあるというのが医師・看護師が参加する理由だという。素晴らしい人たちが多いのだ。
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