トランプ氏当選に思う、変質した「米国民にとってのプライオリティー」

米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が当選した。先ほど、勝利宣言の動画が配信されていた。
https://www.youtube.com/watch?v=BQjDaQLZgPY

知人の誰かがfacebookに書いていた「正気か?米国よ」というのが偽らざる感想だが、英国のEU離脱といい、今年はサプライズが続く。YouTubeコメントにあった”The end of the world”と感じる米国民も多いだろうが、むしろ「大国・米国の終わりの始まり」なのかも知れない。

客観的には先進国の中で米国の状況は最も恵まれている。エネルギー価格が低く、そのために物価も抑えられており、しかも景気はいい。財政赤字も収まっているため、金利は低い水準にコントロールされている。「アメリカを再びグレートな国にする」というトランプの主張は外野的には違和感が強かった。

確かにテロの問題はときに噴出するが、欧州やロシア、中東・アフリカと比べたらずっと安全だ。トラブルによって他人に銃で撃たれる危険は大きいが、それはこの国の人間が自ら選んだ道だ。

これで「職や安全が脅かされている」と、現状を不満に思う人たちが多いというのは客観的には贅沢に過ぎない。

大幅な減税を行うというのが彼の唯一の政策だが、それが実施されることで最も潤うのは富裕層だ。大幅な赤字を生むことは明白だから、やがて強烈なインフレに見舞われるか、トランプ後の政権は増税に戻さざるを得ないだろう。

TPPは批准されないだろうし、NAFTAの再交渉など、反グローバリズムを推進することで確かに米国企業の行動様式は変わるかも知れない。しかしメキシコや中国に移した製造拠点を戻すには、米国のスキルや産業集積は既に失われ過ぎているのではないか。結局、関税分と競争が減る分だけ高い買い物をするのは米国の消費者たちだ。

直近では、トランプ氏の当選により株式市場が相当混乱している。これによりちょっとしたリセッションが来るかも知れない。

そうした問題からのツケを払うのは米国の底辺層の人たちだ。つまり今回トランプ氏に投票した可能性が高い人たちだ。この構図もBrexit(英国のEU離脱)と同様だ。

政治的経験がなく、生まれた時からの大富豪で、人気テレビ番組の司会者として知られていたトランプ氏。しかしヒラリーとの討論会では敗色濃厚だった上に、戦没者遺族への侮辱発言や女性へのわいせつ発言等で、多くの人々から反発を食らった。致命的な痛手を被ったはずなのに、なぜかそのたびに支持率は復活した。

大統領の資質が欠如しているという指摘は妥当なものに思えたが、米国民の半分以上はそんなのOKと考えたのだ。いやもしかすると、今の米国民が考える「大統領の資質」というもの、そして彼らが大統領選で重要視したプライオリティーが全く変質していたのかも知れない。

ここで考えるべきは、白人底辺層だけでなく、「隠れトランプ」と呼ばれる、それなりに教育がありながらもトランプを支持した人たちが予想以上に多かったということだ。彼らは必ずしも職を脅かされている訳ではなく、むしろ米国社会の現状に「これではいけない」と危機感を抱えているということだ。

つまりオバマ政権の8年間を完全な失敗だったと総括しており、ヒラリー・クリントンではその継続でしかないと否定したということだ。8年前に熱狂下で誕生したオバマ政権への不信任投票がトランプを当選させたといってよいのではないか。この構図は、カーター政権に失望した世論がドナルド・レーガンに圧勝させた時の選挙を彷彿とさせる。

確かにこの数年、政治的にはきな臭いものが感じられたのは事実だ。特に銃規制や中絶問題、またはLGBTに関するイシューなどでは両極端に世論が分かれて議論にならない傾向が強くなっている。つまり保守派とリベラル派の対立が抜き差しならなくなっており、中道派がどんどん減ってきたのだ。

穏健なリベラル思想や世界との協調ではなく、マイノリティへの共感でもなく、過激な「外国人が悪だ」「米国の利益が第一だ」といったアジテーションが「(政治的イスタブリッシュメントではない)奴は何かを変えてくれる」という期待を生む。

欧州と同様、米国もまた不寛容な社会にとっくに先祖帰りしていたのは間違いない。そしてヒラリー・クリントン=「失われた」オバマ政権時代の継続を拒否したのだ。
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